第八話
アルフレッドたちはアンジェリアの実家であるコンロン公爵領のメイジキングスレー邸に立ち寄っていた。メイジキングスレー邸には温泉があり、アンジェリアはいつぞやの冒険で果たせなかった温泉を実家で堪能することにしたわけである。
邸内は壮大な魔法の建物であり、豪華な装飾が施された広間や庭園が広がっていた。アンジェリアは久しぶりに故郷に戻ってきた喜びを胸に、家族と再会することを心待ちにしていた。
邸内に入ると、アンジェリアの父親であるブルーノが彼らを迎えた。彼は威厳に満ちた姿でありながらも温かく、アンジェリアを抱きしめ、娘の頭を撫でた。アンジェリアは喜びと安堵の表情で父親に寄り添った。
「お父様、お久しぶりです」と彼女は微笑みながら言った。「私たちは冒険の旅から戻ってきました。そして、仲間たちを連れて故郷に立ち寄りました」
ブルーノは娘の手を取り、感謝の気持ちを込めて言葉を綴った。「アンジェリアよ、無事に戻ってきてくれて本当に嬉しい。そして、仲間たちもよくお見えになりましたね。私も君たちとお会いしたいと思っていたのです」
アンジェリアは冒険者たちを紹介した。「こちらがアルフレッド、剣術の達人であり、私の信頼できる仲間です。そして、ライオネル、彼もまた強靭な戦士であり、私たちの冒険に貢献してきました。そして、マーガレット、彼女は知識と支援の面で私たちをサポートしてくれました」
ブルーノは一人一人に目をやり、微笑みながら頷く。「君たちの冒険の報告を聞かせてくれ。私は心から感謝している。アンジェリアがこんなに素晴らしい仲間とともに旅をしていることを知ると、父親としてとても誇らしい思いが湧いてくるよ」
冒険者たちはブルーノの言葉を謙虚に受けとめ、彼の案内で邸内を巡った。広間では美しい絵画が飾られ、書物や宝石が保管されている部屋では神秘的な雰囲気が漂っていた。庭園には花々が咲き誇り、風にそよぐ木々が心地よい音を奏でていた。
その後、冒険者たちは疲れを癒すために邸内の温泉に案内された。温泉の部屋は静かで落ち着いた雰囲気であり、天然の温泉水が湧き出る大きな浴槽が用意されていた。冒険の疲れを癒すために、彼らは温泉の湯にゆっくりと身を浸した。
アンジェリアは温泉の湯に身を委ねながら、故郷の温もりを感じた。マーガレットも彼女に続き、温泉の中で心身をリラックスさせた。
アンジェリアとマーガレットは温泉の湯に身を委ねながら、軽快なトーンで会話を楽しんだ。彼女たちは冒険の過酷さや危険についての話題は置き、心地よい雰囲気の中で日常の些細なことや楽しい思い出について語り合った。
アンジェリアは明るく笑いながら、マーガレットに最近の出来事を聞いた。「マーガレット、最近何か楽しいことや興味深い出来事って何? 私たちは冒険の日々で忙しく過ごしているけど、時には普通の女子トークも楽しまないとね」
マーガレットは微笑みながら答えた。「そうですね、最近は研究に没頭していたので、外の世界とは少し疎遠になっていました。でも、最近は庭園での散歩を楽しんだり、料理に挑戦したりしています。実は、新しいレシピを試してみたんですよ。少しユニークな組み合わせでしたが、なかなか美味しかったです」
二人は笑いながら、食べ物の話題になった。お互いの好きな料理やお菓子の話に花を咲かせ、食べることの楽しさを分かち合った。彼女たちはリラックスした雰囲気の中で、日常の些細な喜びや楽しみを共有し、心地よい時間を過ごした。
時折、冒険の思い出や仲間たちとのエピソードも交えながら話が進んでいた。彼女たちはお互いの成長や困難を支え合い、笑顔と励ましの言葉を交わした。温泉の湯の中で心身をリラックスさせながら、二人は絆を深めた。
アルフレッドとライオネルは、アンジェリアとマーガレットが入っている女湯から聞こえてくる声を耳にしながら、温泉に入っていた。二人はこの温泉のひと時を楽しんでいた。
温泉の湯に浸かりながら、アルフレッドはリラックスした表情でライオネルに話しかけた。「久しぶりにゆっくり温泉に浸かるってのも悪くないな。アンジェリアさまさまってところか」
ライオネルも微笑みながら応えた。「そうだな、温泉は心地よい。冒険の中での緊張や戦闘の疲れが、ここで癒されるという感じだ。アンジェリアとマーガレットもきっと同じようにリラックスしていることだろう」
二人は温泉の湯に身を委ねながら、冒険の日々や最近の出来事について話した。彼らはお互いの成長や困難を共有し、冒険仲間としての親睦を深めた。
女湯からはアンジェリアとマーガレットの声や笑い声が聞こえ、アルフレッドとライオネルは微笑みながらその光景を想像した。彼らは冒険者としての責任や困難に立ち向かう一方で、温泉での癒しのひと時をリラックスして楽しんでいた。
やがて、アルフレッドとライオネルも温泉から上がり、身体を拭き、着替えた。彼らはアンジェリアとマーガレットが待つ広間に向かい、特別な食事の時間を共有するために準備が整った場所へと進んだ。
部屋に入ると、テーブルには新鮮な野菜や肉料理、香り高いスープ、そして美しく盛り付けられたデザートが並んでいた。アルフレッドとライオネルは料理の絶品に満足げな表情を浮かべていた。こんな料理はめったに口にできるわけもない。マーガレットは料理の見た目や香りを評価しながら、舌で味を確かめていた。アンジェリアは感謝の気持ちを込めてブルーノに微笑みながら、料理を楽しんでいた。
アルフレッドは舌鼓を打ちながら言った。「ブルーノ、本当に美味しい料理を用意してくれてありがとう。冒険の疲れを癒す最高の贅沢ですね」
ブルーノは満足そうに笑いながら、「皆さんが喜んでくれるなら、それが最大の喜びですよ」と答えた。
テーブルを囲んで、冒険者たちは料理を堪能した。それぞれの味わいや食材の組み合わせが織り成す調和は、彼らの舌と心を満たした。アルフレッドは食事をしながらアンジェリアに寄り添い、幸せなひとときを過ごした。ライオネルはぱくぱくと食べるのに忙しかったが、マーガレットは賑やかな食事の中で、冒険の喜びと友情に溢れるひとときを楽しんでいた。
闇の魔導士エドガー・ウォーロックは、アルフレッドらが休息している今を好機と捉え、襲撃を仕掛けることにした。冷徹な目つきで屋敷の中を魔法の目でスキャンし、セイセス=セイセスの魔戦士たちに指示を与える。彼らはエドガーの邪悪な力に従い、屋敷内に潜入し、アルフレッドらを倒すための罠を仕掛け始めた。
アルフレッドらはまだ気づかずに食事や会話を楽しんでいたが、次第に異変に気付き始める。屋敷の空気が重くなり、不気味な音が響き渡る。アルフレッドは感じた違和感に警戒し、仲間たちに注意を促した。
「何かおかしいぞ。ブルーノ、使用人たちを安全な場所へ避難させた方がいい」
「承知した」
ブルーノは魔導士評議会議員の一流の魔術師である。テレポートで転移した。
彼らは戦闘の準備を急いで整え、屋敷内を探索し始めた。
最初の罠として彼らが遭遇したのは「トラップフロア」である。廊下を進んでいくと、急に床が抜ける音が聞こえ、床の一部が急速に下に沈んでいくのが見えた。アルフレッドは素早く反応し、仲間たちに床を避けるよう合図した。彼らはうまく跳び越えたり、壁を利用して通り抜けたりしながら、トラップフロアを無事に突破した。
次に彼らが直面したのは「魔法陣の罠」であった。彼らは床や壁に描かれた魔法陣を警戒しながら進んでいた。アルフレッドがアンジェリアに合図を送り、彼女は魔法の知識を駆使して魔法陣の効果を解読する。彼らは正確なタイミングで魔法陣の上を素早く通り抜け、火の玉や稲妻の放電をかわしながら罠を突破した。
その後、彼らは「影の手」による罠に直面した。闇の中から伸びる手の影が彼らを襲い、動きを制限しようとする。しかし、アルフレッドは敏捷な動きで手の影をかわし、仲間たちに合図して攻撃を仕掛けた。彼らは影の手を打ち破りながら進み、この罠も突破した。
最後に彼らは「幻影の迷宮」に直面した。通路や壁が変形し、迷宮のようになっている。アルフレッドらは周囲を注意深く観察し、正しい道を探した。アンジェリアが先頭に立ち、幻影を見破っていく。彼女は幻影を魔法の力で打ち消し、迷宮を抜け出す道を見つけた。
そこへセイセス=セイセスの魔戦士たちが十人ほど出現する。彼らはエドガーの手下であり、彼の邪悪な野望を支える存在である。
「こんなところまでやって来るとは、あとでブルーノに誤る必要があるな」
アルフレッドが言うと、アンジェリアは応じた。
「私の家を滅茶苦茶にして、許さない」
セイセス=セイセスの魔戦士たちは重装備の鎧を身にまとい、邪悪な剣や斧を手にアルフレッドらに近づいてくる。彼らの目は冷たく、闇の力に満ち溢れていた。
アンジェリアとマーガレットは味方にバフをかけておく。アルフレッドとライオネルは魔剣を握り締め、魔戦士たちに視線を向けた。
戦闘が勃発する。アルフレッドとライオネルは一斉に攻撃を仕掛け、セイセス=セイセスの魔戦士たちに立ち向かった。剣と斧が激しくぶつかり合い、火花が散る。アルフレッドの剣技は見事であり、ライオネルの魔剣は闇の力と激しくぶつかり合った。
一方、アンジェリアは魔法の力を駆使して相手の攻撃をかわし、彼らに対して猛烈な攻撃を仕掛けた。炎の渦巻きや稲妻の放電がセイセス=セイセスの魔戦士たちを襲い、彼らを次々と倒していく。
マーガレットは光の弓矢でアルフレッドらをサポートする。必中の光弾が魔戦士らを怯ませる。
アルフレッドとライオネルは激戦の末に魔戦士たちを切り捨てていく。そして。
「終わったか」
ライオネルは周囲を見渡す。魔戦士たちは黒い霞となって消失していく。
「この先は大広間よ。誰かいる」
アンジェリアは言って、仲間たちに警戒を促した。アルフレッドが扉を押し開ける。室内で待っていたのは、エドガー・ウォーロックであった。
「ほう……どうやら刺客は片付けたようだな」
「何者だ」
アルフレッドは魔剣を突き付けた。するとエドガーは笑声を放った。
「私はエドガー・ウォーロック。ザカリー卿から闇の力を頂いた魔導士よ。ここは丁度良かった。町の中で私自ら魔法を撃ち合うわけにはいかないからな」
「何を。もうこれでお前は終わりだろう」
ライオネルは言うと、マーガレットも続けた。
「邪悪な魔導士、逃がしはしません」
ウォーロックは口許に邪悪な笑みを浮かべる。
「冒険者諸君、では……これを食らえ!」
エドガーの指先から闇の稲妻が放たれた。
アルフレッドとライオネルは魔剣で、アンジェリアとマーガレットはシールドでそれを受け止める。
激しい戦闘が始まった。エドガーは闇の力を振りかざし、魔法の攻撃を繰り出してくる。彼の手元からは暗黒の炎が燃え盛り、邪悪な稲妻が煌めいた。
アルフレッドは剣を振りかざし、エドガーの魔法を弾き飛ばした。彼は俊敏な動きで接近し、連続した剣撃をエドガーに浴びせる。剣が闇の力と激しくぶつかり合い、空気中に衝撃の音が響き渡る。
アンジェリアは魔法陣を描き、魔法の盾を展開した。エドガーの闇の稲妻が迫ってくると、彼女の盾がその威力を防いだ。アンジェリアは迅速な身のこなしで魔法陣を駆使し、エドガーに反撃を仕掛けた。
「ウルトラミラクルサンダーボルト!」
ウォーロックはそのでたらめなアンジェリアの魔法をシールドで受け止める。
ライオネルは闘志に燃えながら魔剣を振り回す。その魔剣がウォーロックのバリアを破壊した。
マーガレットは祈りを捧げ、味方にバフをかけると、自身は聖なる光の弓矢を駆使して戦う。光の弓を引き絞り、次々とウォーロックに聖なる矢を叩き込んだ。
エドガーは闇の力を使いこなし、迫り来る冒険者たちに対抗する。彼の攻撃は凶悪で破壊力がある。闇の波動が全方位に放たれ、アルフレッドらは吹き飛ばされた。
マーガレットは全体魔法でダメージをすぐさま回復する。
冒険者たちはエドガーの強力な攻撃に打ちのめされながらも、立ち上がった。彼らは団結し、力を合わせてエドガーに立ち向かう決意を固める。
アルフレッドは魔剣を高く掲げ、勇猛なる剣技でエドガーに立ち向かっていく。彼の剣は闇の力と交差し、激しい火花を散らせた。アルフレッドの攻撃は素早く正確であり、エドガーを圧倒する勢いで迫った。
アンジェリアは魔法陣を描き、闇の魔法に対抗する。彼女の身のこなしは俊敏で、エドガーの攻撃を見切ってかわし、反撃の魔法を繰り出した。炎と稲妻がエドガーに襲いかかり、彼を苦しめた。
ライオネルは魔剣を構え、勇敢にエドガーに立ち向かう。彼の剣技は激しく、闇の力を断ち切ろうとする。ライオネルの魔剣はエドガーのバリアを破り、彼に深い傷を負わせた。
マーガレットは祈りを捧げ、聖なる光の力を味方に与える。彼女の光の弓矢はエドガーに向けられ、一矢ごとに正確に命中した。聖なる光はエドガーの闇を浄化し、彼を弱体化させた。
戦闘は激しさを増し、エドガーと冒険者たちの力の応酬が続いた。彼らは自身の技や魔法を駆使し、エドガーに立ち向かう。闘志に燃える彼らは絶え間ない攻撃を繰り出し、エドガーを追い詰めていった。
しかし、エドガーは執拗に抵抗し、闇の力を絶えず放ってくる。彼は冷酷な笑みを浮かべながら、冒険者たちに対してまたしても圧倒的な攻撃を仕掛けた。闇の稲妻が爆発し、冒険者たちを後退させる。戦闘は泥沼化し、彼らの体力は次第に限界に達していく。
冒険者たちはダメージをポーションで回復させる。まだだ。彼らの心には諦めることなく闘い続ける意志が燃えていた。
「まだ……まだ終わらせない!」
アルフレッドは息を切らせながらエドガーに立ち向かい、剣を振り下ろした。彼の剣は闇のバリアを突き破り、エドガーの体に深い傷を負わせた。それに応えるように、アンジェリアの魔法がエドガーを包み込んだ。炎と稲妻の渦が彼を取り囲み、大ダメージを与える。
ライオネルもまた息を吹き返し、魔剣を振りかざした。彼の剣技はさらに猛烈になり、エドガーに連続攻撃を浴びせかけた。闇の力が彼の剣を襲うが、ライオネルはその力を強く跳ね返し、エドガーに大打撃を与えた。
マーガレットは最後の力を振り絞り、光の弓を引き絞る。彼女の矢は一点を見逃さず、エドガーの弱点に突き刺さった。聖なる光が彼を包み込み、闇の力を浄化し始める。
エドガーは苦痛に顔を歪めながらも、執念深く抵抗を続けた。
「私はエドガー・ウォーロックだぞ、この私が冒険者などに敗れるはずがないのだ」
彼は闇の力をさらに高め、更なる一撃を放つ。闇の魔法が暴走し、アルフレッドらは倒れかけたが、絶対に諦めず、全身全霊で応戦した。
そして、その瞬間が訪れる。アルフレッドの剣がエドガーの体を貫き、アンジェリアの魔法が彼を包み込み、ライオネルの剣もまたこの邪悪な魔導士を貫き、マーガレットの矢が命中する。エドガーは悲鳴を上げながら倒れ、苦しみにもがいた。
「終わりだ……」
アルフレッドは息を切らせながら言った。彼と仲間たちの勝利の喜びと疲労感が入り混じった表情が浮かぶ。彼はエドガーに歩み寄ると、魔剣を振りかざした。エドガーは口を開いた。
「待て……助けてくれ……。私は、私は闇に堕ちたが、後悔していたんだ。私の心に残る光が良心の痛みを常に教えてくれていた。だから……」
アルフレッドは魔剣を一閃した。ウォーロックの首が飛ぶ。
「く……畜生……この俺が……っ。畜生……」
そうして、エドガー・ウォーロックの肉体は黒い霞となって消え去った。
「戯言は地獄で言え」
アルフレッドは魔剣を鞘に収めた。
戦いが終わって、アルフレッドらはブルーノに事の次第を報告した。ブルーノは驚いた様子だった。ウォーロックはかつて魔導士評議会議員だったという。
「ウォーロックがな……。だがよくやってくれた」
「それはそれとして、ブルーノ、申し訳ないが邸宅の中が滅茶苦茶になってしまいました」
「ああ……そんなものは魔法ですぐに直せる。気に病むことはない。それより、今日は泊まっていくといい。君たちもウォーロックとの戦いで疲労しただろう」
アルフレッドらはその言葉に甘えることにした。
かくして、冒険者たちはエドガー・ウォーロックを退けた。だがそれは次なる戦いの始まりでもあったのだ。