最終話
再び魔導士評議会の魔法探知がザカリー・グラッドストンの痕跡を捉え、その姿が古の古城ダーケンパレスにあることが判明した。フェリックスは深い皺を寄せ、心配そうな表情を浮かべながら、冒険者たちを再び呼び寄せることに決断した。
冒険者たちは再び王城の会議室に呼び出され、フェリックスからの報せを聞かされた。フェリックスは厳粛な面持ちで語りかけた。「ザカリー・グラッドストンはダーケンパレスに潜んでいるようだ。彼がそこで何を企んでいるかはわからないが、彼を討たなければならない」
彼は続けて言った。「ダーケンパレスはかつての王家の城だが、今は忌まわしい存在によって乗っ取られてしまった。君たちの行く手は困難を極めるだろう。しかし、ザカリー・グラッドストンを打倒し、古城を清めることが必要だ」
冒険者たちはフェリックスに更なる情報を求めた。フェリックスは厳かな表情で答えた。「ザカリー・グラッドストンは闇に関わる邪悪な儀式を行おうとしているようだ。ダーケンパレスにはかつて禁じられた魔法や古代の秘術が封印されている。彼がそれらを解き放ち、邪悪なる存在を呼び寄せる危険性がある」
彼は地図を広げ、冒険者たちに目を向けながら続けた。「ダーケンパレスは古の古城で、その内部には迷宮のような構造が広がっている。ザカリーはおそらく地下の深部に潜んでいることだろう。しかも、彼の手先や仕掛けも多いはずだ。用心深く進むことが肝要だ。また、ダーケンパレスには古の守護者たちが封じられている。彼らはザカリーの手によって蘇り、冒険者たちを阻むだろう。だが、君たちには彼らと戦い、グラッドストンを食い止める役割がある」
冒険者たちはフェリックスの言葉を受け、再び冒険に身を投じることを決意した。彼らはフェリックスの導きに従い、ダーケンパレスへと向かう旅に出発したのだった。
ダーケンパレスに到着した冒険者たちは一様にその有様に険悪な意識を持った。一帯はすでに闇の瘴気に汚染され、植物は死滅していた。
アルフレッドがダーケンパレスの前に立ち、その陰鬱な影を仰ぎ見ながら、口にした。「この城はまるで歴史そのものが息づいているようだ。闇の力がここに渦巻いているのが感じられるな」
アンジェリアが頷きながら付け加えた。「古の力、それも禁断のものがここに封じられていた。見た目からして、グラッドストンのやりそうなこととは合ってる」
ライオネルは重厚な扉を見つめて言った。「守護者たちはこの城に封じ込められている。だが、どこにいるのかは分からん」
マーガレットが深く息をつきながら「ここに入ると、もう後戻りはできない。用心深く進むべきですね」と忠告した。冒険者たちは一致団結し、ダーケンパレスの扉を開くために進んでいく。
ダーケンパレスの内部はまさに魔法のような闇に包まれていた。高い天井が石畳の床を覆い、その上には大きなシャンデリアが揺れることもなく垂れ下がっていたが、それでも光はほとんど届かないほど薄暗かった。
広間の中央には巨大な石の玉座があり、それを取り囲むように古びた肖像画や暗黒の旗が掲げられていた。床には不気味な模様が刻まれ、時折、幽霊めいた影が通り過ぎるような錯覚に襲われた。
冷気が魔力のように辺りを覆い、冒険者たちは静かに進むことを余儀なくされた。行く先々で奇怪な音が聞こえ、壁からは幽霊のような姿が現れては消えていった。
廊下には古びたドアが点在し、その向こうには何が待ち受けているのか分からない不安が漂っていた。冒険者たちは進むべき方向を迷いながらも、ダーケンパレスの秘密に迫っていくのだった。
冒険者たちは闇の中を進み、ダーケンパレスの奥深くに探検者のように足跡を残していった。ドアを開けるたび、不気味な音が響き渡り、部屋の中には時折、幽霊のような影が現れては消えていく様子が見受けられた。
次第に彼らは、ダーケンパレスがかつて何かしらの重要な儀式や魔術の舞台であったことを感じ取った。広間の壁には、古びた肖像画や記号が描かれ、それぞれがかつての悠久の歴史を物語っているようだった。
進むにつれて、冒険者たちは魔法のような力場に包まれることがあり、それは彼らの歩みを遅くし、時折不気味な幻覚を見せるものだった。しかし、彼らは決して立ち止まることなく、使命に向かって前進した。
ダーケンパレスの中心に近づくほどに、魔力の影響が濃厚になり、冒険者たちはその影響を跳ね返すように力を合わせた。やがて、彼らは巨大な扉の前に立ちふさがれた。その扉の向こうには、ザカリー・グラッドストンの存在が感じられ、古の儀式が行われているのではないかと予感が漂っていた。
アルフレッドが扉を開ける瞬間、ダーケンパレスの奥底で起こっているであろう恐ろしい真実が彼らを待ち受けていることを、彼らはまだ知る由もなかった。
扉がゆっくりと開かれ、冒険者たちはその先に広がる広間に足を踏み入れた。そこにはザカリー・グラッドストンが、漆黒のローブに身を包み、古の呪文を唱えながら立っていた。
「遅すぎるな、冒険者たちよ。私の儀式はもはや止められない。暗黒の力がこの大地に再び満ちる瞬間が迫っている」
アルフレッドは一歩前に踏み出し、剣を構えた。「ザカリー・グラッドストン、この儀式を止めるしかない」
ザカリーは嘲笑のような笑みを浮かべ、「止める、と言うのか? それはできない。この力はすでに解き放たれたのだ」
広間の中央には祭壇があり、奇妙な記号が刻まれていた。光と影が交錯し、祭壇の周りには異次元のような異空間が形成されていた。
アンジェリアが声を荒げて言った。「あなたの狂気を止めるために、私たちは全力を尽くす!」
そう言って冒険者たちは攻撃に転じた。しかし、ザカリーは手元の杖を振るい、冒険者たちの攻撃を一蹴してしまう。彼の身体は暗黒の力によって強化され、冷徹なまなざしで彼らを見据えていた。
「無駄な努力だ。この力には勝てない。そして、もはやこの儀式は中断できない。私は絶対的な闇のパワーを得るのだ!」
ザカリーの声が広間に響く中、冒険者たちは彼との壮絶な戦いに突入した。
グラッドストンが放った暗黒の波動が部屋を満たし、冒険者たちはその前に立ちはだかる数々の邪悪な存在に立ち向かうことを余儀なくされた。影が次第に具現化し、それぞれが生前の痛みや怨みを背負って襲いかかってくる。
アルフレッドとライオネルは魔法剣を振りかざし、アンジェリアは魔法陣を展開し、マーガレットは神聖な矢を射る。しかし、影たちは数多く、その攻撃は容赦なく冒険者たちを襲った。
グラッドストンは闇の中で嗤い声を上げ、「この古代の呪いはこの地に根付き、滅ぼすことはできない。お前たちはただの踏み絵だ」と言い放った。
闘いの中で、アンジェリアが呪文を唱え、床に浮かぶ神秘的な模様を照らし出す。それが影たちを一瞬混乱に陥れ、冒険者たちは反撃のチャンスをつかんだ。
しかし、その隙をついて現れたグラッドストンは、恐ろしい呪文を放った。広間は暗黒に包まれ、冒険者たちは苦しむ中、彼の力を目の当たりにする。マーガレットが神聖な力を振り絞りながらも、グラッドストンの抵抗は激しく、その体は邪悪なエネルギーに満ち溢れていた。
アルフレッドは団結を訴え、「立ち上がれ、仲間たちよ! この悪しき影を打ち破るんだ!」と叫んだ。冒険者たちは一丸となり、最後の力を振り絞って反撃に転じた。
しかしグラッドストンの邪悪な力は冒険者たちに圧倒的なダメージを与えた。彼の呪文は部屋を揺るがすほどのエネルギーで満たされ、冒険者たちはその前に無力感を覚えた。アンジェリアの魔法がもはや影に通用しないほど、グラッドストンの力は増していった。
アルフレッドが奮闘しても、彼の剣は影を斬り裂くことができず、ライオネルの剣もグラッドストンの呪いには抵抗できなかった。マーガレットの神聖な矢も、闇の中ではその輝きを失い、逆に呪いのエネルギーに変わっていく。
戦いの中、仲間の一人が倒れ、もう一人が力尽き、床には彼らの傷ついた姿が転がる。アルフレッドは何とか立ち上がり、「俺たちはここで終わるわけにはいかない!」と叫んだが、次なる呪文が彼らに迫る。
すると、アンジェリアが身を挺して魔法陣を展開。彼女の魔法陣が一瞬だけグラッドストンの呪いを封じ、冒険者たちは奇跡的に反撃の機会をつかんだ。アルフレッドが叫ぶ。「今だ! 全力で攻撃だ!」
彼らは生き残った仲間たちの力を借り、持てる力の全てを振り絞った。
グラッドストンの嘲笑が大広間にこだました。「馬鹿な冒険者ども。この我が手によって踏みにじられるべきなのだ」
彼の声は邪悪なエコーを帯び、冒険者たちの心に寒々とした感覚を呼び起こした。アルフレッドが立ち上がり再び剣を振るうが、グラッドストンはそれを軽々とかわした。一瞬にして、アンジェリア、ライオネル、マーガレットも同様に撃退され、彼らは再び床に倒れた。
「くだらない。もう終わりだ」グラッドストンが言った。冒険者たちの前に立ちはだかり、その手を挙げようとした。しかし、その瞬間、部屋全体が強力な光に包まれ、耳には美しい旋律が鳴り響いた。
光と音楽の力がグラッドストンを包み込み、彼の呪いに対抗した。それはアンジェリアの最後の抵抗だった。彼女は持てる力をすべて解放し、仲間たちに力を与えた。
アルフレッドが再び立ち上がり、剣を握り直した。アンジェリアの魔法が呪いを解除してくれたのだ。彼らは力を合わせ、グラッドストンに立ち向かう覚悟を新たにした。
光と闇、魔法の炎と清らかなる光芒が激しくぶつかった。アンジェリアとマーガレットら、魔法を使える者たちが織りなす防御の魔法が、グラッドストンの邪悪な魔法に対抗した。しかし、グラッドストンの魔法は強力で、冒険者たちはその威力に圧倒される瞬間が続いた。
アルフレッドとライオネルら近接系の冒険者たちは魔法剣の刀身で魔法を受け止めながら、グラッドストンの魔法に立ち向かった。アンジェリアとマーガレットら、魔法使いたちの魔法が煌めく中、氷と炎が交じり合い、大広間は神秘的な光と影で満たされた。
グラッドストンは冷笑しながら、自らの闇の力を増幅させていった。彼の瞳は赤く輝き、その存在はまるで深淵そのものだった。冒険者たちは力尽くでなんとか彼に立ち向かっていたが、次第に追い詰められていくのを感じていた。
アンジェリアは必死で呪文を唱え、マーガレットは神聖な力を注ぎ込んだが、グラッドストンの魔法はその全てを跳ね返すかのようだった。しかし、冒険者たちの絶え間ない努力が実を結び、彼らは再び反撃の機会をつかむことができた。
冒険者たちの連携がより一層強まり、アンジェリアの魔法陣が広がった。彼女の呪文は神秘的な輝きを放ち、グラッドストンの邪悪な魔法を押し戻していった。マーガレットの神聖なる力もそれに呼応し、闇の存在に対抗していった。
同時に、アルフレッドとライオネルは巧みな連携で剣を振るい、グラッドストンに立ち向かう。彼らの攻撃は冷徹な闇を断ち切り、削り取るような感触が広間に漂った。
しかし、グラッドストンはその傲慢な微笑を絶やさず、ますます強力な魔法を繰り出してくる。彼の体は影のように変幻し、攻防の瞬間が続いた。
アンジェリアは冒険者たちに向けて手を振り、声を張り上げる。「彼の力はまだ尽きていないわ。もっと強力な結界が必要。私たちの心を一つにして!」
冒険者たちはアンジェリアの指示に従い、心の中で力を合わせた。彼らの結集されたエネルギーが、アンジェリアの呪文に力を与え、大広間に響く轟音が魔法の激突を告げた。
そこには光と影、善と悪、生と死の戦いが繰り広げられていた。
広間に響く轟音がピークに達し、光と影が激しく交錯する中、アンジェリアの呪文が最高潮に達した。彼女の魔法陣は輝きを放ち、グラッドストンの邪悪なエネルギーを包み込んだ。その瞬間、広間全体が明るい光に包まれ、一瞬の間、全てが無音になった。
アルフレッドは「今だ!」とグラッドストンに突撃した。他の戦士たちもそれに続く。戦士たちは裂帛の気合と共に剣を突き入れた。確実に手ごたえはあった。
「馬鹿な……この闇が……」
グラッドストンの姿が灰と化して消失していく。そして、次第に光が収束し、広間に響く音も戻ってきた。冒険者たちが目を開けると、そこにはダーケンパレスの広間が広がっているだけでなく、グラッドストンの姿がもはや存在していなかった。
アンジェリアが力尽きながらも微笑むと、言った。「ザカリー・グラッドストンはもうここにはいない。呪いは解けたはず」
冒険者たちは安堵の表情を浮かべ、疲れ果てながらも共に勝利を喜んだ。マーガレットが祈りを捧げ、アルフレッドとライオネルは疲労困憊しながらも互いに力強く手を握った。
アルフレッド、アンジェリア、ライオネル、マーガレットら他冒険者たちはダーケンパレスを後にし、王都に凱旋した。フェリックスは彼らを迎え、深い感謝の意を示した。王都の人々も彼らの英雄的な行為に感謝し、歓呼の声を以て迎えた。
凱旋の宴では、冒険者たちは賞金や名誉の称号を授与され、人々の間で謳われるようになった。しかし、冒険者たちは冷静になって、未だかつて解決されていない謎や冒険が待っていることを知っていた。
フェリックスが彼らに微笑みかけながら言った。「君たちの冒険は終わりではなく、新たなる旅が待っている。大陸の平和のために、そして未知の冒険のために、これからも頼むぞ」
冒険者たちはその言葉に頷き、再び旅の途中に身を投じることを決意した。彼らの冒険は終わりを告げたが、新たな物語が幕を開けようとしていた。
「それでも人生は続くか」
アルフレッドの言葉に、アンジェリアはワイングラスを掲げた。
「ええ、そうね。引退の時ってわけじゃないわね。でもこれはいい経験よ。鉄は熱いうちに打てって言うでしょ」
「実にその通りだな」
ライオネルはマーガレットと共にやってきた。
「俺たちは若くして栄光を手に入れたが、その名に恥じない行動が求められる」
「今の私たちには何だってできる。アバンチュールだって何だって。少しは羽目を外してもいいかもね」
マーガレットの言葉にアルフレッドは肩をすくめた。
「聖職者の言葉とは思えないな」
「でも本当よ。私たちは勝ったのだから」
「ああ……本当にそうだよな。勝てば官軍、終わり良ければ総て良しだ」
アルフレッドはバルコニーに出ると、星空を見上げた。ザカリー・グラッドストンを巡る一連の旅は終わった。セイセス=セイセスの残党、闇の眷属、そう言った連中はグラッドストンを失って勢いを失うだろう。だがまだ闇の勢力が死滅したわけではない。油断はできない。
ともあれ、一つの旅が終わったことは確かだ。アルフレッドはしばらくその感慨に浸っていてもいいだろうと思った。
「アルフレッド! どこにいるの!」
アンジェリアだった。
「何だ騒々しい」
「全く、英雄が一人でなに黄昏れてるの。王女殿下がお呼びよ」
「やれやれ」
宴は続く。アルフレッドはアンジェリアに引っ張られて、王女殿下のもとへ向かった。
かくして一つの英雄譚が終わり、また新たな物語が始まる。




