第二十一話
魔導士評議会の魔法探査室はざわついていた。
「間違いないか」
上級魔術師が問うと、水晶玉を操る魔術師は頷いた。
「間違いありません。北の岩山要塞」
その言葉を聞いて、上級魔術師は宮廷魔術師フェリックスのもとへ急いだ。テレポートで彼の執務室に転移する。
「閣下」
その声にフェリックスは反応した。
「何か。重大事か」
「探知の魔法にグラッドストンの反応が」
「間違いないのか」
「はい」
そうして、フェリックスは口を開いた。
「冒険者たちを集めろ。この機を逃すなよ」
「はっ」
上級魔術師はまたテレポートで消えた。
フェリックスはややあって、自身の目で確かめるべく、魔法探査室にテレポートした。
それから程なくして、アルフレッドらも含め、全国の上級冒険者の水晶玉にフェリックスから召集のメッセージが送られた。
アルフレッドらもパレラシアへテレポートした。
会議室へ入ったアルフレッドらであったが、すでに先着の冒険者たちもいた。それから半時間の間に続々と冒険者たちが姿を現す。
そうして、やがてフェリックスも姿を見せた。
「どうやら全員揃ったようだな」
冒険者たちはざわめいていた。フェリックスは咳払いをして話し出した。
「グラッドストンが探知の術に現れた。場所は北の岩山要塞。ようやく奴が姿を見せた。この好機を逃すわけにはいかん。皆準備が整い次第、すぐに岩山要塞へ発ってくれ」
冒険者たちはフェリックスの言葉に固唾を呑み、準備を整えた。彼らはすぐに行動に移る覚悟でいた。
フェリックスは続けた。「グラッドストンは魔法使いの一団を引き連れている可能性が高い。その力は侮れない。だが、こっちも百戦錬磨だ。この任務が成功すれば、魔導士評議会への貢献は計り知れないものになるだろう」
アルフレッドは真剣な表情でうなずいた。他の冒険者たちも同様に決意を示した。
フェリックスは最後に言葉をかけた。「岩山要塞へのテレポートポータルが用意されている。こちらから指示を出すこともあるだろう。どんな困難にも立ち向かい、グラッドストンを打ち倒せ。全てが王国の平和のために」
冒険者たちはフェリックスの指示に従い、テレポートポータルを通って岩山要塞へと向かった。その先に待つであろう戦いと謎に向き合う覚悟を胸に、彼らは新たな選択に挑む。
岩山要塞へのテレポートが完了し、冒険者たちは目の前にそびえ立つ要塞を見上げた。その岩山要塞は堅牢な壁に守られ、いかにも防衛のしっかりとされた印象を与えた。
アルフレッドは仲間たちに向かって言った。「グラッドストンがここにいるという情報は確かだ。しかし、要塞内のどこに潜んでいるかは分からない。用心深く進もう」
仲間たちは静かに要塞へと進んだ。要塞内は幾重にも防衛が施され、通路や階段が入り組んでいた。時折、魔法の罠や仕掛けに注意しながら進む冒険者たちは、不穏な気配を感じていた。
アンジェリアは仲間たちに向かって低い声で囁いた。「何かがおかしい。この要塞には強力な魔法の防御が施されているわ」
ライオネルは構えながら応じた。「グラッドストンの手によるものか、それとも要塞自体が生命を持つ魔法のようなものか。どちらにせよ、俺たちは用心しなければならない」
進むにつれて、要塞内の異常さがますます明らかになった。通路の壁からは奇妙な影が時折動き、足元からは謎の音が聞こえてくる。冒険者たちは不安と緊張を抱きながら、要塞の奥深くへと進んでいく。
要塞の奥深くへ進むにつれて、冒険者たちはますます不気味な光景に遭遇した。壁に浮かび上がる幽霊のような存在や、奇怪な音を立てる壁画、不安定な床など、要塞内には異常が蔓延っていた。
マーガレットが囁いた。「これは普通の魔法じゃない。何かが要塞を歪めているようよ」
アンジェリアも同意した。「グラッドストンの仕業ではない。ここには別の力が働いているわ」
仲間たちは要塞内の謎を解き明かしながら進んでいった。時折、魔法の戦闘が発生し、要塞内の守護者たちと交戦しなければならなかった。彼らは要塞を守る存在で、誰かが要塞に侵入しようとすると反応して襲いかかってきた。
アルフレッドは言った。「これらの守護者たちは、要塞を守るために召喚された存在だ。俺たちは彼らを倒すしかない」
仲間たちは激しい戦闘を繰り広げ、守護者たちを一つずつ撃破していった。しかし、その都度新たな守護者が現れ、要塞内の異常は収まることはなかった。
要塞の中心に近づくにつれ、魔法の力がますます強まり、仲間たちは厳しい試練に立ち向かうことになった。床が崩れ、壁が妖しく光り、彼らを驚かせたが、彼らは決して立ち止まることはなかった。
アルフレッドは一団に向かって言った。「これは要塞が私たちを試しているんだ。この試練を乗り越えれば、要塞の心臓部に辿り着けるだろう」
仲間たちは力を合わせ、要塞内のさまざまな罠や幻影に立ち向かった。アンジェリアは魔法で仲間たちを守り、ライオネルは力強い剣撃で敵を薙ぎ払い、マーガレットは知識と洞察力で謎を解き明かした。
ついに、仲間たちは要塞の中心に到達した。そこには巨大な水晶があり、その中にグラッドストンの姿が映し出されていた。グラッドストンは不敵な笑みを浮かべ、要塞の力を操っているようであった。
アルフレッドは決意を込めて言った。「グラッドストン、お前の邪悪な魔法はここまでだ。我々は王国を守るために貴様をここで討つ」
ザカリー・グラッドストン、邪悪な魔法使いの姿が水晶の中で、その目は冷徹で、口元には嘲笑が浮かんでいた。グラッドストンは周囲を取り囲む集団に向かって挑発的な言葉を投げかけた。
「愚か者たちよ。私を止めるつもりか? この要塞の力は、お前たちの力をはるかに上回っている。投降するか、死ぬか、選べ」
仲間たちは決して投降せず、団結して立ち向かった。五十人余の冒険者たちは、戦略的に配置され、慎重に行動した。アルフレッドは彼らに指示を出し、ライオネル、アンジェリア、マーガレットはそれぞれの役割に従事した。
そこで、冒険者たちの前に、彼の配下である闇の魔導士たちがテレポートで姿を現した。
「冒険者たちよ。お前たちの命運はこれまでだ」
冒険者たちは悪態をついた。だが、戦うしか選択肢は無かった。
闇の魔導士との壮絶な戦いが繰り広げられた。岩山要塞の中庭にて、アルフレッド、アンジェリア、ライオネル、マーガレット、そして彼らの他、冒険者たちが、闇の魔導士たちに立ち向かう準備を整えた。
闇の魔導士たちはザカリー・グラッドストンの指揮のもと、強力な闇の魔法を駆使した。彼らの目的は、グラッドストンを守りながらアルフレッドたちを排除することだ。戦闘は壮絶な魔法の応酬と剣技のぶつかり合いで繰り広げられた。
アルフレッドと仲間たちは、闇の魔導士たちの魔法を避けながら、的確な攻撃を仕掛けた。アンジェリアは仲間たちを庇う防御魔法を展開し、ライオネルは魔法剣を振り回して敵陣を切り裂いた。マーガレットは知識と魔法の力で仲間たちをサポートし、敵の魔法を無力化した。
闘いは激しさを増し、場所ごとに異なる闇の魔導士たちの力を見せつけられた。しかし、仲間たちは団結し、戦術的な優位性を築いた。一体ずつ闇の魔導士たちを撃退し、岩山要塞の中心部で、彼らの勝利の声が沸き起こった。
最後の闇の魔導士が倒れ、彼らの存在は完全に消え去った。アルフレッドと仲間たちは、ザカリー・グラッドストンの元へ向かう最終決戦に備え、新たな自信と絆を養った。
「やはり……我が手勢では無力であったか。予測されていたことではあるがな」
そう言って、ザカリー・グラッドストンは水晶玉の中で笑った。
「では、本当の闇のパワーを見せてやろう」
ザカリー・グラッドストンは強力な魔法を繰り出し、仲間たちに襲い掛かった。彼の魔法は破壊的で、要塞の力が彼を支えているようであった。しかし、仲間たちは団結し、互いに支え合った。アンジェリアの防御魔法が仲間たちを守り、ライオネルの剣技が敵を牽制し、マーガレットの神聖魔法が仲間たちをアシストした。
激しい戦闘が続き、集団としての連携が功を奏した。仲間たちは少しずつグラッドストンの魔法の抵抗を打破していった。彼の姿が次第に消えていき、水晶の中から力尽きた姿が映し出された。
ザカリー・グラッドストンは力尽きたが、完全に死ぬことはなかった。彼は無力となり、水晶に閉じ込められた。要塞の力も収まり、奇怪な現象は止まった。集団戦を終え、仲間たちは安堵の表情を浮かべた。
アルフレッドは五十人余の冒険者たちに感謝の言葉を述べた。「皆、よくやった。おかげで王国は守られた」
マーガレットは考え込むように言った。「ところで、この水晶玉……このままにしておいていいのかしら」
アンジェリアは思案顔だった。「どうかしら。ここで破壊しても大丈夫かもしれないけど……フェリックスに相談した方がいいかしら」
「それが無難かもな」ライオネルが言った。「何か仕掛けが残っているかも知れない」
「それにしても、これで本当にグラッドストンを倒すことが出来たのか……」
アルフレッドは水晶玉の中で膝をつくグラッドストンを見やる。
その時だった。水晶玉の中からグラッドストンの笑声が響き渡った。
「勝ったと思うか? 冒険者たちよ。これほどの歴戦の冒険者たちを集めることが出来るとは……我ながら上出来だ」
そして、グラッドストンは言った。
「死ね」
直後、水晶玉が閃光を放って大爆発を起こした。岩山要塞は崩壊し、崩れ落ちていった。




