第十二話
アルフレッドらはリンジー伯爵領の城下町に滞在していた。その日は冒険の休息として、酒場でくつろいでいた。木の温もりが感じられる暖炉のそばに座り――火は入っていないが――美味しいワインと香ばしいハムを楽しんでいた。
アルフレッドは一口ワインを飲みながら、くつろいでいる。ライオネルが新しい剣の切れ味に満足そうな笑みを浮かべ、アンジェリアが手に持つ魔法書に集中している。マーガレットは酒場の中でも優雅な佇まいで、微笑みながら周囲の様子を眺めていた。
彼らはフェリックスの仕事を成功裏に終え、ほっと一息ついていた。その仕事は重大で危険なものだったが、彼らの団結と勇気によって達成されたのだ。
アルフレッドはワインの杯を手に取り、仲間たちとの会話に身を委ねている。
「先日の仕事、無事に終わったな。心底安堵しているよ。フェリックスも喜んでくれるだろう」
アルフレッドが言うと、ライオネルが応えた。
「そうだな、まさに生き返ったみたいな気分だ。剣を振るう喜びを再び感じられたよ」
「私も新たな魔法の知識を手に入れることができたわ。その感覚は言葉では言い表せないほど充実感があるわ」
アンジェリアは言って、肩をすくめる。またマーガレットが言った。
「みんなと協力しながら、私たちは困難を乗り越えたのです。みなさんと一緒にいることが私の心を強くしてくれます」
「次はどんな冒険に挑もうか。この街には新たな依頼や情報がたくさんあるはずだ。まだ見ぬ未知の世界が待っているかな」
アルフレッドはワインを飲み干すと、ボトルからもう一杯注いだ。
酒場の中には他の冒険者たちも集まり、冒険の話や情報が交換されている。時折、冒険の依頼や新たな伝説の噂が耳に入り、アルフレッドらの冒険心をかきたてていた。
彼らはこの一時の休息を楽しみながらも、心の奥では次なる冒険の予感に胸を躍らせている。新たな目的や挑戦が彼らを待っていることを感じながら、彼らは再び冒険の舞台へと身を投じる覚悟を胸に秘めていた。それこそ冒険者の天命だ。
と、その時、突然外から騒乱の声が聞こえてきた。人々が急いで酒場を飛び出し、街の方向を見ると、黒い煙が立ち込めているのが見える。街に何か異変が起こっていることが伝わってきた。
アルフレッドと仲間たちは素早く立ち上がり、酒場を飛び出した。街の中心に向かって駆けると、そこには大きな竜が暴れていた。竜の咆哮と炎の吹き出しによって、街は混乱の中にあった。
アルフレッドたちは大きな竜が街を襲っている光景を目にする。彼らは迅速に行動を起こし、人々を守るために竜に立ち向かった。
アルフレッドは剣を手に取り、竜の攻撃を回避しながら機敏に接近する。彼は竜の弱点を見つけるために機敏な動きと剣術の技を駆使し、竜の体に連続攻撃を繰り出す。同時に、アンジェリアは魔法を使って竜に対抗し、炎や氷の魔法を放った。彼女の魔法は竜の鱗を貫き激痛を与え、その攻撃力を弱めた。
一方、ライオネルは竜の背に跳び乗り、剣と魔法を駆使して竜を攻撃した。彼は剣術と魔法の融合技を用いて、竜の体を斬りつけながら、同時に魔法の防御盾を展開して仲間たちを守った。
マーガレットは神聖な魔法と癒しの力を使い、仲間たちの傷を癒しながら戦闘をサポートする。彼女は竜の攻撃を回避しながら、仲間たちに癒しの魔法をかけ、その体力を回復させる。
彼らは連携を固めながら竜との激しい戦闘を続けた。剣や魔法の攻撃が竜の体を貫き、炎が空を舞い、回復の光が仲間たちを包み込む。彼らは竜の攻撃に立ち向かいながら、絶え間ない闘志と勇気を持って戦い続けた。
そして、彼らの攻勢の前に竜の力は次第に衰えていく。竜はそこかしこから出血して動きも鈍っていた。この竜は、後退しつつ、首を持ち上げた。そして、「ゴル……マル……メルド!」とドラゴンマジックを唱えた。直後、ドラゴンは大爆発を起こして自爆した。アルフレッドらは吹き飛ばされた。
静寂が戻った。アルフレッドと仲間たちは立ち上がった。周辺一帯は粉々になっていた。多くの人々が倒れている。
「ドラゴンが自爆するだと……信じられん」
アルフレッドらはマーガレットの回復を受けた。
「私、町の方たちの回復に向かいますね」
そう言って彼女は惨状の現場に駆けて行った。
アルフレッドらは驚愕しながらも、自分たちの身の安全を確認した後、マーガレットに続く決断をする。
「私たちも助けの手を差し伸べるべきよ。街の人々が回復できるよう、協力しましょう」とアンジェリアが言った。
ライオネルも頷きながら言葉を続ける。「街の復興は我々冒険者たちの責任でもある。力になれることを示そう」
アルフレッドは同意し、迅速に行動を起こす。彼らは倒れている人々のそばに駆け寄り、マーガレットと協力して治療を施し始める。マーガレットでなくても初歩的な回復魔法はアルフレッド達も水晶玉で使える。マーガレットの神聖な魔法と癒しの力が、人々の傷を癒し、体力を回復させる。
一方で、アルフレッドは他の冒険者たちに声をかけ、街の復興の手伝いを頼む。彼らは一丸となって、瓦礫の撤去や建物の修復に取り組み、街を元の姿に戻そうと奮闘する。
それから一週間ほどして、街の復興は順調に進み、人々の表情も少しずつ明るさを取り戻していた。
「人々の笑顔を見ると、救われた気がするな」とアルフレッドが言った。
「それにしても、あの竜がなぜ自爆したのかはまだ謎だな」とライオネルが口を開く。
「竜は操られていたのよ。そうとしか考えられない。こんな街を突然竜が襲うなんて、普通じゃない。悪の竜ならともかく……何れにしても、何か邪悪な力の存在が働いたのは確かよ。私たちの冒険はまだ終わっていないと思う」アンジェリアがそう言ったた。
マーガレットは頷きながら言葉を続けた。「次なる冒険の目的は、竜の正体と邪悪な力の源を探り、それを根絶することですね。ただ……このような事件の手掛かりはどこから手を付ければいいのか……」
彼らは再び冒険の道に身を投じる覚悟を固め、次なる目的を探すために街を巡り始めるのであった。街の復興が進む中、彼らは新たな脅威と闘いながら、真実の探求に邁進するのだった。
そんなある日、アルフレッド達のもとへリンジー伯爵からの使者がやってきた。伯爵は至急彼らと会いたいとの事で、アルフレッドらは馬車に乗って伯爵の城へ向かった。
伯爵はアルフレッドたちを温かく迎え入れ、広間に招き入れた。そこで彼らは伯爵との会話を交わすこととなる。
広間には豪華な家具が並び、壁には歴代のリンジー伯爵の肖像画が飾られていた。伯爵は重厚な雰囲気を纏いながら、アルフレッドたちを静かに見つめていた。
「アルフレッド、ライオネル、アンジェリア、マーガレット、あなた方の勇気と忠誠心はフェリックスから聞いています。さて、私の手元には新たな情報が舞い込みました。周辺の森に不穏な動きがあるとの情報です」
アンジェリアが興味津々の表情で口を開いた。「不穏な動きですか? 具体的には何が起きているのでしょうか?」
伯爵は重々しく語った。「最近、森の中で異常な活動が観察されているのです。奇妙な生物や魔法のエネルギーが漂っているとの報告が寄せられています。王国の安全のために、その異変を調査して欲しいのです」
アルフレッドは真剣な表情で言葉を返した。「伯爵、ちょうど私たちは手掛かりを探していたのです。竜の一件以来、何か良くないことが蠢いているのは感じていました。異変の調査を引き受けましょう。出来ることなら解決に取り組みます」
伯爵はうなずきながら言葉を続けた。「その答えを聞いて安心しました。リンジー伯爵家としても、王国のために全力を尽くしたいと考えております。報酬も適切に準備させていただきますので、どうかご安心ください」
アルフレッドらは感謝の気持ちを込めて頭を下げた。「伯爵、この使命を果たすために全力を尽くします。王国とその民を守るために、私たちはここにいます」
伯爵は満足そうに微笑みながら会話を締めくくった。「それを聞いて、私も安心しました。神の加護があなたたちと共にありますように。さあ、早速行動に移しましょう」
彼らは会話を終え、新たな使命へと身を投じるために伯爵の邸宅を後にした。王国の安全と人々の平和のために、彼らの冒険は続くことになる。
アルフレッドたちは伯爵の城を後にし、森への調査へと向かうために旅立った。森の中へ足を踏み入れると、不穏な気配が漂っていた。樹木の葉がざわめき、風が荒れ狂っているかのように感じられた。
アンジェリアは魔法の感応力を高めながら周囲を探索し、「何か異常なエネルギーが近くに存在しているわ。私たちは正しい方向に向かっているようね」と伝えた。
ライオネルは剣を手にしっかりと握り締め、「用心深く進むべきだな。この森には何か邪悪な存在が潜んでいるかもしれない」と警戒心を強めた。
マーガレットは神聖な魔法の光を身にまとい、「この森に害を及ぼす存在がいるならば、我々は神の加護のもとで戦わねばなりません。私たちの力を信じ、共に前進しましょう」と力強く言った。
彼らは慎重に森を進みながら、異変の原因を突き止めるための手がかりを探した。不気味な鳥の鳴き声や不規則な光の輝きが、彼らの耳と目を刺激する。途中で遭遇した奇妙な生物たちも彼らの存在を感じ、敵意をむき出しにして立ちはだかった。
しかし、アルフレッドたちは団結し、絶えず連携を取りながら敵と戦った。アルフレッドの剣が的確に切り込み、ライオネルの剣技が鮮やかに敵を撃退し、アンジェリアの魔法が炸裂し、マーガレットの癒しの力が仲間たちを支えた。
途中で彼らは遺跡や洞窟を見つけた。それはかつての文明の名残であり、魔法のアーティファクトが保管されている可能性があった。彼らは探索を進めながら、森の異変と遺跡の関連性を解明しようとした。
やがて、彼らの前に大きな霊気が立ち込める洞窟が姿を現した。その入り口からは邪悪なエネルギーが溢れ出ていた。彼らは決意を新たにし、洞窟に進んでいく。
洞窟の奥深くにはセイセス=セイセスの魔導士たちが研究していたとされる場所が広がっていた。壁には奇妙な記号や古代の文字が刻まれ、宝石で飾られた祭壇が目立つ。
アルフレッドたちは魔導士たちの研究の成果を辿り、邪悪な存在がこの地に関与していることを突き止めた。彼らは遺跡と異変の原因が結びついていることに気付いた。
「まだ新しい。ここでセイセス=セイセスが……奴ら、何をしていた」
アルフレッドは祭壇に目を落とした。
「何かがこの森一帯に干渉しているのは確かなようね」
アンジェリアが言った。
「とにかく進もう。その何かを見つけるためにも」
アルフレッドらは洞窟を奥へと進んでいった。そして――。
巨大な空間に出た。空が見える。
「これは……何だ」
ライオネルは無数に立っている異形な柱に近付いた。柱には培養液で満たされた膜が張ってあり、中にはドラゴンの幼生の姿があった。
「ドラゴン……? ドラゴンを作っているっていうの? それにここは凄い魔力に溢れている」
アンジェリアは驚愕していた。
この邪悪な企みは、人造ドラゴンであった。洞窟の奥では、ドラゴンが培養されていたのだ。アルフレッドたちは洞窟の奥で驚きの光景に遭遇することになる。人造ドラゴンが無数に培養液の中に浸かって眠っている光景が広がっていた。
アルフレッドらはその場に立ち尽くし、衝撃と疑問を抱きながらも、彼らはセイセス=セイセスの邪悪な企みが進行中であり、この人造ドラゴンがその一環であることに気付いた。
人造ドラゴンは闇の力によって生み出された、魔法と錬金術が融合した恐るべき存在であった。彼らは力強い竜の姿を持ちながら、意思や感情を持たず、ただ命令に従って行動する存在なのだ。セイセス=セイセスの魔導士たちは、これらの人造ドラゴンを使って邪悪な目的を果たそうとしていたのだ。
「どうやら気付いたようだな」
冒険者たちの背後から、セイセス=セイセスの魔導士たちが現れた。
「何れ発覚することは分かっていた。だがもう手遅れだ。研究は最終段階まで終了している」
「もしや……町を襲ったドラゴンは貴様らが」
アルフレッドは言った。
「察しがいいな。その通りだ。この施設はどちらにせよ廃棄するところだ。だが、これを見られた以上生きて返すわけにはいかんな」
セイセス=セイセスの魔導士たちは戦闘態勢をとった。
「どうかな」ライオネルは魔法剣を抜いた。
「あなた達を許すことは出来ません。竜族を、ドラゴンを作り出すなんて……」
マーガレットは怒っていた。
「あとの言葉はあの世で語るがいい! 死ね!」
セイセス=セイセスの魔導士たちは襲い掛かってきた。
アルフレッドたちがセイセス=セイセスの魔導士たちと対峙すると、彼らは瞬く間に強力な魔法を放ち始めた。闇のエネルギーが洞窟内に漂い、壁や柱が揺れ動くほどの圧倒的な力が感じられた。
魔導士たちは繊細な手つきで魔法を操り、強力な攻撃を繰り出す。炎の渦が床を舞い、雷光が洞窟を照らし、氷の刃が飛び交う。アルフレッドたちは必死にそれらの攻撃を避け、防御しながら反撃を試みるが、セイセス=セイセスの力は想像以上に強大だった。
ライオネルは剣術の技巧を駆使して魔導士たちに立ち向かうが、魔法の嵐に飲み込まれ、彼もまた攻撃を受けた。アンジェリアは防御結界を張りつつ魔法で応戦するが、セイセスたちの闇の魔法によって結界は次第に剥がれていく。
マーガレットは神聖な魔法で仲間たちの回復とサポートを行ったが、セイセスたちの攻撃は容赦なく、彼女自身も負傷した。アルフレッドも魔法剣を使い魔導士たちに立ち向かい、彼らの攻撃を防ぐが、自分達の力には限界を感じた。
セイセス=セイセスの魔導士たちは優位に立ち、アルフレッドたちを追い詰めていく。彼らの闇の魔法と知識の深さは、冒険者たちにとって非常に困難な戦いとなった。
苦戦しながらもアルフレッドたちは立ち上がり、絶えず連携を取りながらセイセス=セイセスに立ち向かった。
この激しい戦闘が数十分にわたり続いた。アルフレッドたちは全身傷だらけになりながらも戦い続け、魔導士たちに対して徐々に追いつめられていった。
だが、アルフレッドたちは苦戦しながらも持ち前の闘志と連携力を発揮し、反撃の機会をうかがっていた。
アルフレッドは剣に魔力を込め、一気に突進し、セイセス=セイセスの魔導士たちに斬りかかった。彼の剣は闘志に燃え、魔法の力が込められ、魔導士の防御を貫いて真っ二つにした。
ライオネルは剣術と魔法の融合技を駆使し、瞬間移動を交えながら魔導士たちに次々と攻撃を仕掛けた。彼の剣と炎の魔法が交錯し、洞窟内には爆風と炎が舞い上がり、魔導士たちは激しく焼かれた。
アンジェリアは闇のエネルギーを取り込んで強力な魔法を放った。彼女の手から放たれる氷の刃と炎の渦は今度は魔導士たちを貫き、彼らの攻撃を防いだ。
マーガレットは神聖な魔法と光の弓矢を使い、セイセスたちに対して絶大な攻撃力を発揮した。彼女の魔法は闇を浄化し、セイセスたちの邪悪な力を封じた。
アルフレッドたちの反撃によってセイセス=セイセスの魔導士たちは次第に追い詰められていく。彼らの防御が崩れ、攻撃が乱れ始めた。
「おのれ……これ程とは……冒険者ごときに」
残った魔導士たちは、舞い上がると、そのまま逃亡を図った。
しかし、アルフレッドとライオネルは魔法剣からエネルギー光線を放ち、アンジェリアは雷の嵐を、マーガレットは光の弓矢の連弾を放った。その最後の攻撃によって魔導士たちは全て討ち取られた。
「…………」
アルフレッド達は戦闘態勢を解除すると、広間を見渡した。
「このドラゴンたちには気の毒だが、この施設は破壊する必要があるだろう」
アルフレッドの言葉に、一同賛同であった。
そうして、アンジェリアの極大火炎弾の連射によってドラゴンを培養していた異形の柱は次々と焼き払われていった。
そうして、冒険者たちは洞窟を後にする。事の次第をリンジー伯爵に報告すべく、城下町へテレポートした。
「そうですか……そんなことが」リンジー伯爵は報告を受けて厳しい表情を浮かべていた。「ザカリー・グラッドストンはドラゴンの力を手に入れたと言ってもいいのですね」
アルフレッドは思案顔だった。
「確かに奴らは研究は最終段階まで終了していると言っていましたが……」
「憂慮すべき事態ですね。我々も竜族の力を借りる必要があるかも知れない。ですがこの時世では、我々にはザカリー・グラッドストンに対する団結が欠けている」
伯爵は言って吐息した。
「そう言えば」マーガレットが口を開いた。「私たちには竜族の仲間がいます。言え、仲間というか、友人というか、知り合いと言ったらいいのか」
「マーガレット、何を言ってるんだ?」
ライオネルが言うと、マーガレットは思い出させた。
「古竜ハル=ジゃのことです。忘れたんですか?」
「そうだわ。ハル=ジャのことを忘れていたわね。あのドラゴンなら、竜族全体に呼びかけてくれるかも」
そこで冒険者たちは伯爵に古竜ハル=ジャのことを話した。
「……望みがないよりはましというべきですね。その古竜が人間全体に味方してくれるでしょうか」
「それは分かりませんが」
マーガレットは言葉を濁した。
「まあ、ひとまず今回はセイセス=セイセスの施設は破壊したんだ。今はそこまでだな。手の届かないことを思い悩んでも無理な物は無理だ。またその時考えよう」
アルフレッドは言って、吐息した。
リンジー伯爵は言った。
「今日は夕食をご一緒しませんか。無事に領内の問題を解決してくれた、そのお礼もしたい」
「そいつは有難い、ぜひ」ライオネルは即答した。
そうして、人造ドラゴンの件はひとまず置くことになった。とにかくも今回できることを達成した冒険者たちは、伯爵の歓待を受けて満足な夕食にありつき、ふわふわのベッドで一夜を過ごすことが出来たのだった。




