第0話 プロローグ 改訂版
俺の名はラムズ・ホーキンス。あと1週間で30歳を迎える高卒、彼女なし、実家暮らしの3点セット。
現実での職業は冴えないフリーターだが、俺にはもう一つの職業がある。
「それは異世界転生だ」
「何バカなこと言ってんの?飯冷めるから早く食べて頂戴」
「お袋、今めちゃいいとこだよ」
「はいはい。中二病も30までにしてね」
はあーーー
ため息もつきたくなる。フリーターでの稼ぎは月10万いくかいかないか。30なっても実家をでられない。世間一般から見たらただのニートだ。
二階にある自分の部屋から降り、座布団を引っ張り出し座る。手を合わせ、料理を口に運ぶ。
「美味いな」
実家の味というやつなのだろう。俺はいつも通りの動作を繰り返す。
まるでロボットみたいに……
最近流行りのマッチングアプリを開くが、すぐに閉じてしまう。
こんなのに10万が……
俺はついこないだマッチした女性と出会い、高級バッグを買わされ逃げられた。
そのトラウマを3か月も引きずっているのだ。
「最悪だ。くそくそ……」
気づくと俺は涙を流していた。床には強く叩いた跡が残っている。今更になって手がズキズキと痛み始める。これがアドレナリンってやつなのか。
「死にたい」
そんなことが頭によぎるが、そんな勇気すら持ち合わせていない。
テレビをつけるも時刻は10時、そんな時間に面白いテレビがやっているわけがない。
俺は気分転換に外にでることにした。
季節はまもなく冬、外は肌寒く今にも風を引きそうだ。外に出るのは5か月ぶりで、俺には春夏秋冬という概念が存在しない。自分の格好が半袖ということにも今気づく。
「寒いのか?」
感覚、感情そんなものも麻痺し始めてきている。俺は精神科でもらった薬を飲むために自販機の前に立つ。
「水、水……」
水を買おうとするも手持ちは120円しかない。10円足りない。
絶望、怒り、悲しみいろんな感情がこみあげてくる。
俺はその場に立ちこんでしまう。
「大丈夫ですか?」
そんな声が俺を現実に引き戻す。後ろを見ると近所の高校の制服を着た、ツインテールの女子生徒が俺に自分の着ているコートをかけてくれる。
真面目そうで、いかにも頭がいい優等生にみえる。
「ありがとう?でいいんだっけ」
母親以外の人間と話すのは、何年振りの事だろう。
ましてや、それが10代の高校生、JKだ。
「これですよね?飲み物」
彼女は俺が買えなかった自販機の水を渡してくる。薬を飲んで精神的に少しずつ安定してくる。
「何で助けてくれるんだ、俺なんかに……」
「大した理由じゃないですよ。私、いじめられてるんです。だから、失礼かもしれないですけど私と同じ境遇?なのかもって……」
こんな優しい子をいじめるなんて、今の世の中も終わっているな……
「すいませんもう行きますね。私お昼の買い出し任されたんで」
パシリってやつか、不登校を極めていた俺にはわからない。俺が横を見ると彼女はすでにこの場を立ち去っていた。
「おい、このコート」
白色のモフモフがついたコートを俺は返すために彼女を探すことにする。まだ、きちんとお礼もいえていない。
はぁはぁ……疲れた。
ろくに運動もしない引きこもりにはきつすぎる。街灯のポールにしがみつき必死に息を整える。
もう帰るか、雪も強くなり寒い。
大勢の人が行きかい、人混みにいるだけで疲れてしまう。
人混みを避け裏道にでると信号を待つ彼女を見つける。
「見つけた」俺の中に達成感のような安心感ともとれる感情がこみあげてくる。
信号が青になり、こちらに気づかない女子高生は前に進んでしまう。
「待ってくれ」
俺は必死に叫ぶが風が声を消してしまう。
ブゥゥンーーー
そんな音が俺の耳に入って来る。
反対車線は信号が赤なのに、乗用車は彼女に突っ込んでいく。
「危ない」
体が反射的に動き出す。今まで走った中で一番早く走った気がする。これが火事場のバカ力か。
俺は彼女を突き飛ばす。
次の瞬間俺の体に激痛が走る。
痛いーー痛いーー痛い……。
お腹から血がドバドバでてくる。
今日の出来事、過去の出来事がフラッシュバックし始める。
走馬灯が見えてくる。お袋ごめん。
俺は死んだ。 これは100回目の死だ。
俺の中に記憶が戻っていくのを感じる。 転生だーー




