012 鋼鉄の遺伝子の子供たち その3
「いまさらだけど、名前がないのは不便だな」
ピコバールが人形たちをみる。自分よりも小さいヒトを見てると、偉くなったようで嬉しいものだ。雑談の流れで名前がないことに気づいた。
「名前ですか」
「ありますよ」
「なんてよばれていたんだ?」
「UC079」と男の子は答えた。
「UC080」と女の子はと答えた。
「なんだ? 超有名なアニメの世紀っぽい名前だな」
「アニメ?」
「それ、なんですか?」
「ごほごほっ こっちの話だ。それにしても似合わない。キミらにはカッコよすぎる。理不尽だ」
「なんで怒るんですか」
軽戦車が、ダンプを揺らして笑った。
「キミらがカッコいいのが許せないみたいだ。心の狭いピコらしい」
「うるさい、ガオ。いま考えてるんだ」
うーん。腕をくんたピコバール。胸が出てないことを目立たたせながら、数分ほど考えこむ。彼女にしては長い思案から戻ると、びしっと、男の子を指さした。
「コテツ」
「はい?」
目を丸くする男の子をおいて、次に、女の子を指さした。
「イデコ」
「え?」
「鋼鉄の遺伝子の子供だから、コテツとイデコ。かっこいいだろ。しゃべる猫と終末伝説の巨人ではないぞ。決してない」
決してないのだ!
「ふむふむ。うーんまんだむ」
満足げにアゴを撫でたピコバール。その意味は彼女にしかわからない。
「はぁ……コテツ」
「イミフですが……イデコ」
人形たちは不満足そうに口を尖らせる。ピコバールの中では決定してしまって、覆りそうもない。
「じゃ行こうか。次の祠へ」
ピコバールは、軽戦車の上に載りあがった。




