012 鋼鉄の遺伝子の子供たち その2
太陽は朝と昼の間にあった。小休止の時間だ。
ご飯は朝昼晩。欠かさず食べることにしてるピコバール。それとは別に、お腹が空けば食べていた。
「ガオ。ぼくのリュックを知らないか?」
「さっき、どっかに飛んで行ったな。ほんの1時間くらい前に」
「なんでそのとき教えない!?」
「どうせつまらない物だ」
「うがーーー! 拾ってこよう!」
「待ってるから。道に迷うなよ」
2時間後。リュックを背負った少女が戻ってきた。汗だで、ヘルメットを片手にぶら下げ、ドレスがずれて、右肩が露わになっていた。
「はぁはぁ。いま帰った……あなたの胃腸は24時間働けますか?」
「誰に聞いてるんだ?」
「黙って。おやつの時間なんだ」
「もう昼だろう」
「おやつのあとに食べるのだ」
リュックから出したクッキーを口に放り込む。メリーゴーランドの出店で買ったものだ。ほかにも、ジュースやポップコーン、ホットドッグ、やきそばなども詰め込んであった。いかにもアミューズメントの町っぽいラインナップだ。
ぽりぽり。音から美味しそうだ。ごくんと飲み込む。2人の人形が指をくわえてみつめていた。ヘルメット少女はしぶしぶ訊ねる。
「……2人は何を食べるんだ? あげないけど」
「え-と」
どうみてもクッキーを欲しがってるのだが。渡すつもりは微塵もないピコバールは、有言実行で背中を向けた。ガオが見かねて助け船をだす。
「ピコ、聞いたんだから、クッキーをあげるんだよな?」
「ぼくを誰だと思ってる。食べたいなら買い値の3倍だ」
「ケチピコ」
「人生の厳しさを教えてやってるんだ」
「困ってる相手には身を削ってでも分け与える。それが人としての美しさだろう」
「ぼくは十分に美しいから、内面は醜くていいのだ。それで何を食べるんだ。クッキー以外で」
ふたりは見つめ合ってから、とっても言い難そうにいった。
「……ゲガロンマイト」
「へ?」
驚いたのはガオだ。ゲガロンマイトはエネルギー“流動雷”の塊。軽戦車の駆動力にもつかわれてる。天然の乾電池みたいなもの。“魔”とあるが魔力とも魔素とも異なる。使うことはできるが解明できてない危険な代物。どうしてこんな設定なのかは誰にもわからない。
「ほーお。ガオ聞いたな? ゲガロンマイトだそうだ。聞いたらあげるんだったっけ?」
「お。もうこんな時間。出発するぞピコ」
ガオはゴムクローラを動かし、逃げるように走り始めた。
ぷぷぷ。噴き出しそうになる口を押えながら、ピコバールが追いかける。
「おい! 人としての美しさは?」
「オレ。軽戦車。人に、あらず。さらばだ!」
最大船速。ガオは船ではないが、波紋を残すかのように左右の麦を倒す勢いで、遠くに見えなくなってしまった。
「わっはっは。あいつ点になったぞ。いっそ清々しい逃げっぷりだ。キミらにはクッキーあげよう」
「いいんですか?」
「面白いものが見れたからな。その謝礼だ」
「ありがとうございます」
2人は、美味しいおいしいと、何度もいいながら、もらったクッキーを頬張った。
「ホントに、食べるんだな」
「食べたものはエネルギーに変えられるんです。味だってわかります」
「へぇそれはいい。ガオは何も食べないからな。正直、ひとりでパクつくのは、つまらなかった。これからは3人で食べよう」
「ありがとうございます」
「嬉しいです」
人形のエネルギー接種は人間の食べ物でもよいこと。みんなで食べたほうがおいしいと知ったピコバールだった。




