010 ダンジョンの国 3日目
ピコバールが目を覚まして目に入ったのは紐だった。座席に紐で縛りつけられたいたのだ。みゅり様とジェーピンも縛られて転がされてる。
「なんだこれ! ピコ外して!」
周到である。ガオのゴムクローラも固定されていた。うすら笑いを浮かべるのは、ステレオタイプの山賊たちと、その頭目。
「案内ごくろう。みゅり殿のおかげで、ダンジョンが攻略が成ったわい。我々の勝利だ」
ぬっはっは。頭目が笑い、5人の手下たちも追従して腹を抱える。
「ドワルシュタイン主席」
ピコバールは驚いた。この国に来て一番のびっくりだ。
「この国の王様? 山賊のくせに?」
「我のどこが山賊だ」
薄汚れた頭巾、伸び放題のもじゃもじゃ髭。似合わない宝石を首にジャラジャラ。武器が曲刀とくれば、山賊しか思い当たらない。そうでないとすれば。
「海賊だった? ごめん」
「こんがきぃ! 主席を山とか海の賊あつかいしやがって」
「よさんか。いまはラスボス攻略だ」
「すいやせん。主席」
ますます、賊感を深めたピコバールだ。
「ラスボスはあなたの手に余るわ。私たちと共闘しなさい」
「共闘だ? 寝ぼけてるのか。次の主席もこのドワルシュタイン家がいただく。吉報を寝て待て。ぬっはっは」
扉が開く。主席と手下たちが入り、扉は閉じた。
敵がいなくなったので、ピコバールは火の魔法を発動。手首を縛る紐を焼いて灰にする。
「ピコくん魔法がつかえたのね。魔法アイテムの杖をもってるから、つかえないと思ってたわ」
「使えないなんて言ってないよ」
ピコバールは短刀で二人の紐を切って、ガオの鎖も外してあげる。鎖はリュックにしまう。ミュリ様が、紐で擦り切れて血がでてる手首をさする。みかねたジェーピンは魔法の杖を使って回復。ピコバールから買い取った杖だ。
「みゅり様。はじまります。私のうしろに控えてください」
ジェーピンが剣を抜く。その後ろに、みゅり様が隠れる。
「ピコ君とガオ君も、いい?」
「いいよ。段取りとはちがって楽になった」
「オレもいい。ダンジョン攻略もたいへんだよな。扉の奥とこちら。あっちとこっち。両方を倒さなきゃいけないなんて」
昨日の話だった。
みゅり様は走りながら、ラスボス攻略を説明した。扉の両方に現れること。人が少ないほうに強いモンスターが1匹出ること。強いモンスターを倒すまで、反対側のモンスターは、倍々で増えていくこと。
『人じゃないガオ君は数にはいらないわ。でもこの中で一番強い。だから、ピコ君と二人で強いモンスターを倒す。私たちはこらえる。この作戦しかないのよ』
二手に別れて倒す。そういう段取りだったのだが、分散することなく思い存分対峙できる。主席一味のおかげで。
ピコバールが銃を抜く。ガオはダンプを開いて2門の砲を展開する。扉の奥から怒声がしたのと同時に、3人の真ん中に、人型モンスターが実体化した。
「行くぞ!」
ジェーピンがかけ声とともに斬り込んだ。それを合図に二人の集中砲火。過剰戦力に耐えきれず、モンスターはあっけなく消滅した。
「中は、どうなってるかしらね」
「代々横取りしてる輩のことなど、知ったことじゃありません」
ぶ厚い扉を通して聞こえていた怒声と悲鳴が消え、やがて扉が開いた。10体のモンスターが襲いかかってきたが、3人は難なく討伐。みゅり様は念願のダンジョンコアを手に入れた。表情はさえなかった。
「嬉しくないわ。主席なんかドワルシュタインに押し付けるつもりだったのに」
モンスターも罠も消えたダンジョンの奥の部屋には、主席たちの無残な死体だけがあった。




