010 ダンジョンの国 1日目
祠に入るとそこは、ほんのり明るい洞窟だった。ガオはライトを点けた。前と後、左と右をゴムクローラが軋ませて見てまわる。
「ピコ。ここなんて国だった?」
どこにも入口がない。洞窟というには人工チック。そんな通路の真ん中にいる。
「国を確認する前に転移したから知らない。まっすぐ行ってみようか」
ガオは大げさにがっかりしてみせる。コンディションパネルに表示されるのは、八の字眉の男の子。
「そそっかしいなピコは。兄貴分のオレがしっかりしなきゃ。決めた。まっすぐ進め」
進もうとしたすると、ピコバールの耳に音が聞こえた。
「まってガオ。なにか声が聞こえない? 灯りを消して」
「そんなごまかしてもダメだよ」
「いいから」
「まったくもう」
ガオがライトを消すと、さっきはなかった横道がみつかる。声はそこから聞こえるようだ。言い合ってようだ。
「あれはどこ行ったっけ? 無くしたねジェーピン。あれがないと困るのよ」
若い女性の声が、しゃくりあげながら言った。
「みゅり様がだらしないからです。人のせいにいないでください」
「困ったわどうしよう」
ピコバールがそっと、横道をのぞきこむ。大人の女性が困った困ったと連発すると、もっと大人の男性が、それみたことかと、口をへの字に結んだ。
「ピコ」
「しっ」
何を失くしたか知らないが、大きなものではなさそう。灯りかそれに代わるなにかと推測する。この暗さだ。みつけるのは相当に難しいが大切なものなら引き換えす。関わっても大丈夫だろうか。ピコバールはホルダーに手を置いた。
「どうもこうも、無いものはないのですから、このままダンジョンを戻りましょう」
「戻るのは嫌いだわ。新しいのをだすというのはどうかしら。無いなら出せばいいって発想の切り替えができる私って、天才だと思わない?」
「またですか。大切に扱えば長く使える物を。安易に出すからすぐ失くすと、なぜ気づかないのです」
「るっさいるっさい! 出すったら出すのよ。せーの!」
みゅり様が両手を前につきだした。何もない空中に肘から先が消える。そのまま、表情をくるくる変えること数度。納得してヒジを退くと、手先が何かをつかんで現れた。ピコバールは口の中でいう。
「闇魔法 ダークホール」
それは見たこともない形の特大トカゲ。ピコバールは、驚きの声をあげそうになるのをどうにか、こらえた。
「でっかいトカゲ!」
ガオが、声を張りあげた。
「誰?」
「みゅり様、ジェーピンの影に隠れてください」
ピコバール達のほうへ出ようとするみゅり様を、ジェーピンがかくまう。懐から銃を取り出してかまえた。
「あー。ぼくの名前はピコバール。旅人だけど、ここがどこだかわからないんだ。よかったらおしえてほしい」
姿を現したピコバールは、笑顔で両手をあげた。相手の銃先が心臓に狙い定める。
「みゅり様の命を狙う不届き者が。軽戦車などというバカげた戦力でダンジョン攻略とは、いかにも不相応。ちがうというなら潔白を証明してみせろ」
「証明といわれてもね。でも撃たれたらやり返すしそうなればこっちが勝つ。それでもいい?」
「やっちゃえピコ」
「戦車が話した。自立型か」
「いいじゃないジェーピン。多いほうが攻略は楽しいわ」




