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ピコと戦車と麦の道 ~なにもない麦の草原に放り出されたボク♀と軽戦車♂が旅をすることになったんだが?~  作者: キタボン
2章

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006 魔法の国 1日目

1章は、いろんな設定をくっつけてしまいましたが、以降は、3話(3日)がひとつのシンプルなお話になると思います。これがやりたくで書き始めたので。



 風に揺れる麦の草原。丘を越えたむこうにも続く丘の一本道を軽戦車がゆく。ひとり用にしては大きく、旅をするには小さなリュックがダンプの上で揺れた。軽戦車に乗ってる少女の腰は拳銃と短剣がぶらさがる。ドレスの上にジャンバー。ヘルメットを被った彼女の名はピコバール。


 軽戦車が聞いた。コンディションパネルには少年の画像が表示されてる。戦車に連動して、画の少年が動いた。


「ねぇピコ」


 ピコバールはヘルメットを脱ぐと、髪をくしゃくしゃにかきあげた。


「なんだい、ガオ」


「次の国が機械の国だといいな。仲間がいっぱいいると楽しい」


「さてね。着いてみないとわからない。それよりも、かゆくてしかたないんだ」


「汚っ! フケをオレに落とすな」


「しばらく風呂に入ってないからな。それで? なんで機械の国だといいんだ?」


「ため息の国は暗い人間ばかりだったろう。精神的に疲れてるから、機械でリフレッシュしたいのさ。ぶぶぶぶーーってな」


 精神的に疲れる戦車ガオが興奮。期待の高まりをダンプを小刻みに上げ下げして表現した。ピコバールのリュックが、そのたびとすんと跳ねまわる。


「せっかくの売り物が壊れる」


「70%が、壊れても問題ないガラクタだ」


「バカにするな。ぼくの色仕掛けで売りつけるんだ」


「ひゃはははっ。 色? ピコが色? ロりというには年増、エロには若い。そんなピコが色仕掛け? 笑い過ぎてネジが飛びそうだ!」


 ダンプをぎったんさせて、はしゃぐガオ。


「女子にむかって汚いとは。こうしてやる」


 ピコバールはいっそう頭を激しくかきむしる。剥離した白い物体キューティクル。つまりフケが、ぱっさぱっさと、操縦席の底に降りそそいだ。


「わー、やめろぉぉぉ!」


 風の音とガオのモーター音が鳴る麦の道。いつもと変わらぬ風景をピコと軽戦車がいく。こんな状態がさらに数日続いた。前の国を出たのはいつのこと。ふたりが忘れかけたころ、ようやく(ほこら)がみえてきた。(ほこら)は国への入口だ。


「着いたなガオ」


「やっと着いた。なんの国だろう」


「魔法の国と書いてある。機械じゃなくて残念だったな」


「いいんだ。機械は次の機会のお楽しみだ。キカイだけに」


「……」


「何か言いなよ」


 (ほこら)を通って国へはいる。入口に三角帽子をかぶった老人が待ち受けていた。老人はピコたちに気づく。持ってる杖をおおきくふって、歓迎ぶりを身振りであらわした。


「おお。ひさしぶりの旅の人じゃ。3年ぶりくらいかいの」


「はじめまして。ぼくはピコバール。こっちは相棒のガオ」


「軽戦車のガオだ」


「ピコさんに、ガオさん? 話す戦車とは珍しい。わしはドルージャ。魔法の国で国王をしておる」


「王さまがじきじきのお出迎え。エライ人物になったような気がしてくる」


「ほっほ。面白い旅人さんだの。ヒマじゃしいいんだ。ピコさんがよければワシの屋敷に泊まらんかの。外の国の話を聞きたいのじゃ」


「ピコ。いきなり屋敷に招く王様は怪しいぞ」


「言い過ぎだぞ、怪しいのは顔だけにしとけなんて、失礼だろ」


「そこまで言ってないし」


「……ほっほ。悪口はもっと小声でいうて欲しいの。メンタルは高野豆腐なのじゃ」


「しぶとそうなメンタルで。ぼくは移動販売をやってます。場所だけ貸してもらえればそれで」


「移動販売とは行商ということかの」


「そんなところ。売ったり買ったり」


 ガオが、今度は小声で「拾ったり」と付け加えた。


「外に生えてるという麦が欲しいのじゃが」


「あるけど。王様が期待するような良いものじゃないぞ」


「そうかそうか。商いなら中央の広場を使うとよい。人も集まるしうってつけじゃ。真っすぐいけばわかる」


「ありがとう。ついでに身体を洗える施設はない?」


「ほっほ。銭湯でよければ同じ広場の近くにあるの」


 さっそく広場にやってきたピコは、まず銭湯でキレイになる。さっぱりしたところで、公園の端に陣取り露店を準備する。慣れた手順で天幕を張って、折り畳みテーブルに魔法の道具と、なにかわからない物と、麦の穂を並べた。売り物はそれだけ。くすんだ土色の販売店が完成する。


 通りをゆく人々の姿は、とんがり帽子に長いローブ。ちらちら気に留めるひとは多いが、ピコの店で何かと買おうとする人はいない。売れないままに時間が過ぎて、太陽が傾きはじめた。


「ピコ婆や。お客は誰も買いにこないな、いつものように」


「ガオ爺よ。誰も寄ってこないぞ、いつものように」


 ふあーと身体を伸ばして椅子に腰掛ける。いつまでたっても客はこないまま空が暗くなり、今日の商売は店じまい。テーブルを引っ込め、入口を半分に閉じた。

 夕食だ。フライパンで肉と野菜を焼いて食べる。夜になり、天幕を完全に閉じる。日課をすませて、寝袋にはいった。


「お休みガオ」

「お休みピコ」


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