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短編 93 幻想と愛玩の世界

作者: スモークされたサーモン


 可愛い世界の物語も書いてみたいなー。


 よし! 書いてやんよ!


 そんな感じで爆誕しました。


 一応童話です。



 

 とある世界のとある街。


 ここにはちょっと不思議な生き物達が暮らしています。


 彼らはぬいぐるみのような姿をしていたり、おもちゃの人形のような姿をしていました。


 ここは『幻想と愛玩の世界』


 ここに生きるものは全てがファンシーでキュートな姿をしているのです。


 これはそんな可愛らしい世界で起きた、とある事件の物語。



 ある日の事。今日も岡っ引きのネズミちゃんがちょこちょこと大通りを駆け抜けていました。向かう場所は同心詰所、ネズミちゃんの職場です。


 ネズミちゃんは必死になって走っています。ネズミなのに二足歩行でトコトコ走っています。可愛いですねぇ。

 

 岡っ引きのネズミちゃんは街の見回りがお仕事です。平和を守る立派なお仕事です。そして何か異常があれば、それを上司に伝える事になっています。


 ネズミちゃんの上司、同心の段五郎親分です。大きな猫さんです。ちょっと化け猫入ってます。この人がこの街の平和を守る同心さんです。同心というのは分かりやすく言うと警察みたいなものです。ヤクザみたいな警察官、そんな感じですねぇ。


 同心詰所の畳の上。ごろりと横たわりキセルをふかすその姿は決して警察官には見えません。むしろ極道にしか見えません。化け猫ですね。


「おやびーん! 大変ですー!」


「おぅ、なんでぃ」


「空からメテオが降って来てるですー!」


「……マジかっ!?」


 今日も街に、とびっきりの問題事が沸き起こりました。段五朗親分もびっくりです。


 この世界はキュートでファンシーですが、わりと容赦の無い世界でもあるのです。

 

 この世界を作った神様が決めたのです。


『ご都合主義……よくない』


 ファンシーな世界に何を抜かしているのか意味が分かりませんが、神様がそういうのなら、仕方ありません。なんたって神様ですからね。


 そんなことよりメテオです。


 メテオと言うよりミューティアもしくはミーティアと発音するのがお洒落です。


「おやびーん! どうするのですー!」


「メテオの規模はどんなもんでぃ!」


「なんかでっかいです」


「……そうかい」


 ねずみちゃんに過度な期待は禁物です。体も頭もちっこいのがねずみちゃんです。


 ひとまず町には避難警報が出されました。警鐘がカンカンと鳴らされます。町の全員が避難する大災厄です。段五朗親分もこういう天災には慣れてます。町の人も慣れてます。


 月に一度はとんでもない事が起きるこの世界。みんなで協力するのが当たり前の世界なのです。そうしないと全滅待ったなしですからね。


 町のみんなが町から離れた所に避難しました。町が見える丘です。ファンシーな町人達はみんなここでメテオ襲来に備えていました。


 くまのぬいぐるみに紅い牛の工芸品。西洋風のお人形さんなど町民の種族は雑多です。


 そして空がいきなり真っ赤になると、ついにメテオが降ってきたのです。


 空からやって来たメテオは三階建てのビルサイズでした。確かになんかでっかいです。それは町の外れに落ちて……ぼよんと弾んで宇宙に返っていきました。


 今回の大災厄は弾むメテオ。


 段五朗親分もびっくりです。


 なんかでっかいメテオは町の外れに大きなクレーターを残して宇宙に消えていきました。メテオスタンプです。


 町人達は大災厄が過ぎ去ると見るや、早速町の復興に取り掛かりました。メテオ跡地ということで観光地に出来ないか、みんなで頭を寄せての協議です。


 旗頭は、やたらと耳のでかいぬいぐるみです。甲高い声が勘に障ります。


 この世界の住人は強かです。ファンシーな見た目に反してガッツとバイタイリティに満ちた強者揃いなのです。


「おやびーん! あそこどうするんですー?」


「……どうするかねぇ」


「あそこに巣を作りたいですー!」


「怒られそうだからやめとけ」


 ねずみちゃんもこの世界の住人です。ハートの強さはタングステン。メテオに怯える様子もありませんでした。


 丘の上はまったりとした空気になりました。段五朗親分は今日もお仕事を終えてほっと一息です。


「今日もなんとかなったかねぇ」


 キセルに火を付け、ぷかぁと紫煙をくゆらす段五朗親分。猫なのにキセルがよく似合います。


 しかしここでねずみちゃんがぴたりと動きを止め、頭を傾げました。


「……あ。おやびん。言い忘れてたですー」


「……なんでい?」


 段五朗親分のキセルからは紫煙がぷわわーです。


「メテオは沢山落ちてくるのですー。なんか沢山降ってくるのですー」


「……なにぃ!?」


 そして急激に空が真っ赤に染まりました。


 この日、町は消え、辺りは見渡す限りのクレータースポットになりました。





 とんてんかん。とんてんかん。


 そんな音が丘の上に響き渡ります。


「おやびーん! 釘が背中に入ったですー! 取ってですー!」


「へいへい……」


 丘の上には町が再建されていました。町の人全員でまた一から町を作っているのです。

 

 この世界は容赦のない世界。


 町が滅んだ事も一度や二度ではありません。だからみんな慣れています。大工作業も手慣れたものなのです。


「おやびーん! 釘が刺さってるですー!」


「はいはい……」


 ねずみちゃんと段五朗親分はこの世界でも珍しいぬいぐるみではない生粋のねずみと猫。


 あまり器用ではありません。というかトンカチとか普通に持てません。キセルを持つのが精々なのです。


「ほれ、また見回り行ってこい」


「がってんですー!」


 ねずみちゃんは二足歩行で、とことこと走って行きました。クレータースポットへ一直線です。


 ねずみちゃんと段五朗親分が岡っ引きと同心をしているのはそういう訳なのです。


 この世界は容赦のない世界。


 適性に応じた暮らしをすることが、巡り巡ってみんなの為にもなるのです。


「おやびーん! 大変ですー!」


「帰ってくんの早ぇなぁおい」


 ねずみちゃんがすぐに帰ってきました。二足歩行でちょこちょこ走る姿は可愛いですね。


「エイリアンですー! エイリアンというか……化け物ですー! きしゃー! とか言ってますー!」


「……なんだと!?」


 ちょこちょこ走るねずみちゃんの後ろにはファンシーに喧嘩を売ってるグロいエイリアンが沢山おりました。


 皆さんよだれを垂らしてねずみちゃんの背中を見ています。よだれの落ちた地面から白い煙がプシューと出ています。


「……カチコミじゃあ! 全員武器を取れい!」


 今日も戦いが始まりました。死闘です。


 この世界はファンシーで満ちています。人形さんや、ぬいぐるみさんが刃物を持って空を飛び交います。エイリアンも『きしゃー!』です。


 ファンシーですねー。


 おしまい。




 今回の感想。


 この終わりかたが童話っぽい。あとネズミちゃん可愛い。


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