新作RPG『ババクエ』
今作は猫大長老七宝先生の短編作品「新作RPG『ジジクエ』」(https://ncode.syosetu.com/n4779hr/)のオマージュ作品となります。
許可をくださった猫大長老七宝先生並びに編集者、映画製作スタッフ、各議員、各国首脳の皆様に心より感謝申し上げます。
それでは『ババクエ』レッツゴー!
やぁ、オレはこのRPGゲーム『ババクエ』の主人公『?????』だ。よろしくな!
簡単に説明するとオレはそのへんによくいる勇者ってやつだ! なろう地方にはうじゃうじゃいるだろ? それだぜ!
まずはオレに名前をつけてくれ! 5文字までで頼むぜ!
_ _ し っ こ ▹決定
名前をつけてくれてありがとな! 『しっこ』か⋯⋯いい名前だな! じゃあさっそく旅に出るぜ!
▹第1章 ババアの部屋
よーし探索だ! まず、匂いがすげぇな! なんか線香と香水とババアが混ざったような匂いがする! つまりめっちゃいい匂いってことだ! ご飯3杯と素パゲッティ500gはいけそうだぜ!
おっ! 部屋の真ん中にババアがいるぞ! 座布団に座ってお茶飲みながら鬼平犯科帳見てるぞ!
まずはレベルの確認だ。Qボタンを押してみてくれ。
ふむふむ、レベル82か。元気なのかどうか分かりづらいレベルだな。とりあえず話しかけてみるか?
▹はなしかける ぶっとばす
「おいババア、オレの名をいってみろ!!」
「どうしたのしっこちゃん」
実はこのババア、オレのばーちゃんなんだぜ! だからオレの名前を知ってるのは当然なんだぜ!
さて、これからどうする?
にらみつける しりをさわる
▹なぐりとばす ぼうげんをはく
「ぐほぁ!」
ババアは部屋の隅にあった抹茶オレのフィギュアの角で頭を打ち、真っ白な血を流している。
「フン、口ほどにもない⋯⋯」
「ピョコン!」
ババアが立ち上がり、仲間になりたそうにこちらを見ている。仲間にするか?
▹はい いいえ
ババアが仲間になった!
「よろしくねしっこちゃん」
「こちらこそよろしくね、おばあちゃん!」
ババアを仲間にしたからにはやることがあるぞ! 何か分かるか? そう、その通り! 装備だ! ババアは基本裸だからな、装備品を手に入れなきゃならない!
「しっこちゃんや、そこのももひきを取ってくれんかの」
ババアからの注文だ!
▹とる とらない
ババアのビリビリももひきを手に入れた!
それをババアの前に置くと、ババアはおもむろに履き始めた。
「暖かいのぅ⋯⋯」
ももひきを履いたババアの下半身は、毛がなくなった猫の腹のようだった。
「裏に干してあるブラを取ってきてくれんかの」
また注文だ!
とる ▹とらない
だよな! ババアの垂れ乳は最強の武器だからな!
自由自在に伸ばしたり動かしたりすることの出来るその乳は、モンキー・D・ゾフィーという別名を持っていた。
さて、ババアの着せ替えも終わったことだし、冒険に出かけるか!
▹第2章 ババアの森
ババアが生息する森だ。
さっき仲間にしたうちのババアは森に入ったと同時に迷子になっちまったからもう見つかる見込みはないだろう。ババアは全員同じ見た目だから、1個体を見つけるというのは不可能なんだ。
ババアの群れが現れた! まずはレベルの確認だ。Qボタンを押してみてくれ。
なるほど、全員レベル99か。おそらくこれは何らかの式典または同窓会だな。いやちょっと待てよ? 同窓会ならジジイが1人もいないのはおかしくないか? ジジイは全部死んだのか?
遠くから見てるから、もしかしたらババアに見えてるだけでジジイも混じってるのかもしれない。虫眼鏡ツールを使って確認してみよう! Tボタンだ!
ババアLv.99 ババアLv.99 ババアLv.99
ババアLv.99 ババアLv.99 ババアLv.99
ババアLv.99 ババアLv.99 ババアLv.99
ババアLv.99 ババアLv.99 ババアLv.99
空気の読めねぇババアどもだ! こういう時はババアみたいなジジイが混ざってるのが相場だろうが! まあいい! 次の行動の選択をしてくれ!
▹たたかう たたかう
そうだ、オレに後退はない! 帝王に逃走はないのだーっ! 死ねぇー!
わるぐち なぐりとばす
つばはき ▹しりをさわる
ババアなので当然全員全裸だ。つまりオレは簡単に奴らの尻を触ることが出来る!
全員の尻を触り終えたオレの手は、ほのかに天花粉の匂いがした。
12人は起き上がり、なにか言いたそうな顔でこちらを見ている。
『@&%#&#{}$¥+%#&』
全員一緒に喋ったので聞こえなかった。1人残して全員殺しますか?
▹はい いいえ
「愛知県に住んでいる海苔独り占め宇宙人を説得してきて欲しいのじゃ。勇者しっこよ、頼んだにょ」
なんと、森にいたババアはこの国の王女様だったのだ。オレはさっき、この国の王女様の尻を触ってしまったということになる。でも丸出しだったんだからオレは悪くないよな。よな?
▹第3章 寿司屋
戦ったら腹が減ったぜ。そこの寿司屋に入ろうぜ。寿司屋入店用のボタンはSボタンだぜ。
「へいらっしゃい! ⋯⋯こ、これは勇者様! よくぞお越しくださいました!」
勇者であるオレに対して「これ」って⋯⋯失礼じゃない?
ゆるす ▹ゆるさん
ビタン!
オレは店主の頬をひっぱたいた。手にほんのり炭火の匂いがついた。
「なに握りやしょう!」
「サル!」
「すいやせん、あいにくうちはサルは⋯⋯」
「じゃあカッパ巻!」
「すいやせん、カッパは絶滅危惧種なんで売れねえんでさ」
「じゃあサラダ巻!」
「すいやせん、サラダ巻もなんちゃら指定保護動物なんで⋯⋯」
「なんもないやないかい!」
みせをでる なぐる
ちゃをのむ ▹わるぐち
食べログ、星1、店主が目から醤油を垂れ流していて気持ち悪い、客に包丁を向けてくる(たまに刺してくる)、口の中に一瞬人が見えた(誘拐犯の可能性あり)、寿司が出てこない。
「食べログ書いたんでサービスしてください」
オレは見逃さなかった。店の壁に「食べログでわさびサービス」という張り紙があるのを。
店主はおもむろに右手の親指を鼻の穴に突っ込むと、米粒大の緑色の物体を取り出した。
「大将、これ鼻くそじゃないの?」
「これのどこが鼻くそなんでい! ちゃんと食ってみてから判断しろい!」
どう見ても鼻くそなんだよなぁ。
▹たべる はなにもどす
ツーンとくる辛さ、爽やかな風味、これは間違いなくわさびだ。だからなんだ。客にわさびを単体で出す寿司屋なんてあっていいのか。いや、ダメだ。
▹おあいそ はなくそ
おいしい おかわり
「大将、おあいそ!」
「あいよ! 399800円ね!」
「はぁ!? 鼻くそはサービスじゃなかったのかよ!」
「鼻くそじゃねぇ! わさびだ! サービスだよ! 割引のな!」
なんということだ、恐らく400000円が399800円になっているのだろう。セコい男だ。オレともあろう男がまさかこんな詐欺に引っかかってシマウマ。
「定価はいくらなんだ」
「8兆円です」
めっちゃ割引してんじゃん! 天使かよ!
「警察だーっ!」
警察が入って来た!
『漏れる漏れる漏れる漏れる漏れる漏れる♪』
着信だ。王女様からだ。
『早く海苔独り占め宇宙人を説得してこい!』
催促の電話だった。ケッ、ムカつくぜ。
「警察がなんの用で?」
「鼻くそわさび詐欺の常習犯として剛田ブタゴリラ、お前を逮捕する!」
「ひぃー! 濡れ衣だぁー!」
濡れ衣なわけないだろ。お前しかいねーよ。
「大人しく観念しろ! こらっ、糸を吐くな、糸を!」
ピーッて糸吐いてる。蜘蛛かよ。尻から吐くのキモイなぁ。
「ピーッ! ピーッ!」
ててて〜ん♪ しっこはレベルアップした。
たいりょくが2下がった。
けつあつが4上がった。
すばやさが1下がった。
きおくりょくが1下がった。
DVDレンタル無料券を1枚手に入れた。
「大人しくしろ! こらっ!」
「濡れ衣なんだぁーっ! ピーッ!」
「吐くなっつってんのに! クソ、聞き分けの悪い寿司屋だ⋯⋯あっ! 目に入った⋯⋯痛っ⋯⋯いったぁ⋯⋯」
「えっ⋯⋯ごめん、大丈夫? ちょっと見せて」
「触んないで、痛いから。こっち来ないで」
「いや、あの⋯⋯ごめん」
「謝んなくていいよ、もう無理だから」
「えっ⋯⋯でも」
「うん、ごめん。もう無理になったわ。お前もう無理」
「そ、そんなぁ⋯⋯!」
店を出ますか?
はい ▹いいえ
「早くどっか行ってくれる? あとこれ、先生に言うから」
「本当にごめん、だから先生に言うのはどうか⋯⋯」
「なにお前、さっきから謝ってたのってもしかして先生に言われたくなかったから? だから仕方なく謝ってたの?」
「いや、違うんだ。本当に心配だったから⋯⋯」
「じゃあ先生に言った方がいいよな。病院連れてってもらえるかもしれないし」
「そうなんだけど、でも、でも」
「でもなに? 怒られちゃうから? 親に電話行っちゃうかもしれないから? ってこと? なぁ」
「いや、あの、その⋯⋯うわあああああああああああ!」
大将は手に持っていた包丁で警察官の男を滅多刺しにしてしまった。やっと食材が手に入ったわけだ。
「今日は人間の握りが安いよー! たくさんあるから食べてってねー!」
店を出ますか?
▹はい いいえ
だよな、人間なんて食えねえよな。あんな不味いもん2度と食いたくねえわ。
さぁ! ボタンを押してオレを海苔独り占め宇宙人の家に連れて行ってくれ! Aボタンだ!
「へいらっしゃーい!」
ここは愛知県で1番高い寿司屋だ。芸能人もよく訪れるのだという。オレ言ったよな、Aボタン押せって。Sボタンが寿司屋入店用のボタンだっていうのも言ったよな。なんでSボタン押すんだよ。また王女様に怒られるだろ。でもまぁ、さっきの店ではわさびしか食べられなかったし、ここで何か食べるか。
『漏れる漏れる漏れる漏れる漏れる漏れる♪』
また王女様から電話だ。出たくねぇ〜、けど出ないと何されるか分からんから出よ。
『いつまで寿司食べてるの! 早く本筋に戻りなさい! 読者はババアが見たくて来てるの! ババアが出てこないとブラバされちゃうよ?』
目が覚める思いだった。
そうだ、オレはババアを倒すために⋯⋯
違うよな、海苔独り占め宇宙人を説得するために冒険してるんだよな。ババア関係ないじゃん。なんなのこれ。本筋に戻っても読者離れてくやん。八方塞がりってやつ?
なんてね、大丈夫大丈夫、このゲームには「モードカスタム」があるから。好きなの選んでよ。
ババアチャンスモード(ババア出現でチャンス)
ババア激アツモード(ババア出現で激アツ)
ババアなしモード(ババアが出なくなります)
ババア多め(ババア出現率アップ)
▹ババア乱舞(ババア出現率大幅アップ)
【ババア乱舞】にカスタムを設定しました。
▹第4章 海苔独り占め宇宙人の家
さぁ! 今度こそAボタンを押してオレを海苔独り占め宇宙人の家に連れて行ってくれ!
「何時だと思ってんだ!」
海苔独り占め宇宙人に怒られてしまった。現在時刻6時40分。少し早かったか。
「お忙しいところすみません。これ、つまらないものですが⋯⋯」
オレは持参した紙袋からババア32種詰め合わせセットを取り出し、海苔独り占め宇宙人に差し出した。
「えっ、これ3000円くらいするやつじゃないですか! ありがとうございます〜、どうぞお上がりください」
やはり手土産の力は絶大だ。
オレは玄関でババアを脱ぎ、ちゃんと揃えた。こういうところで育ちの良さをアピールしていこう。
「すみませんね、朝食の最中だったもので」
机にはババーの塗られたトーストとババアの汁が置かれていた。そうか、それは申し訳ないことをしてしまった。
「こちらこそすみません、せっかくの優雅な朝食タイムにお邪魔しちゃって。オレのことはお構いなく、朝ごはん食べちゃってくださいっ!」
「お気遣いありがとうございます、すぐ食べますので」
「ゆっくりで大丈夫ですよ! 時間もたっぷりありますしおすし!」
「ありがとうございます」
そう言って海苔独り占め宇宙人は朝ごはんを食べ始めた。オレはその様子をじーーーーーっと見つめていた。海苔独り占め宇宙人はやたらと急いでいた気がする。ゆっくりでいいよって言ったのに。
「お待たせしました、ババアでも飲みながらお話しましょうか」
海苔独り占め宇宙人が温かいババアを淹れてくれたので、オレはありがたくいただいた。
▹にがっ! ぬるっ!
まずっ! からっ!
「にっっっっっが!!!!!」
「この苦味がいいんじゃないですかぁ」
海苔独り占め宇宙人がババアを飲み干して言った。
『ぬぬぬぬぬぬぬ〜♪』
王女様から電話だ。
『海苔独り占め宇宙人を撃破せよ!』
1日に何回かけてくるんだよ。借金取りでもここまでかけてこないぞ。
「というわけで済まないが、このババアソードで貴様を葬る。悪く思うな」
「フッ、ババアソードごときに敗れる我ではないわ! こちらにはババアシールドがあるのだ!」
ババアシールドといえばババアソードに並ぶ神器じゃないか! オレのババアソード最強の剣だが、最強の盾であるババアシールドを貫くことは出来るのか!?
「覚悟ーっ!」
「ごめん耳元で蚊がうるさいからちょっとタンマ」
海苔独り占め宇宙人は集中して周りを見ている。
▹ふいうち まってあげる
おいおい見損なったぞ。そんな選択をしちまうとはなぁ⋯⋯人でなしだよお前。来世に期待しな。
GAME OVER!
ちなみに盾より剣の方が強いらしいです。