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あなたが魔法の異世界をおくる。  作者: 島野虎太郎
巨大樹より
13/19

date12.記憶を辿って

はろーはろー、私です。

あー、大変大変。小説の投稿どころではありません。

なんて建前の上で、こんな投稿頻度ナメクジの小説を見ていただける人がいたら幸いです。

泣いて喜びます。

誇張しすぎたした。狂喜乱舞します。

今回は戦闘はないので、どちらかというと頭を使って頂ければ嬉しいです。いや、対して使わんかも。

それてば、本編、どぞー。


あらすじ

 グリーンフォールについた樹理らは、正体不明の地震と冒険者行方不明事件を解決するため、それぞれ行動を開始する。そして、リノハらが向かった先では、意識を失った子供が一人、路地裏に倒れていた。



 急いでレンガ造りの病院へ向かい、緊急で診察してもらった後、子供はカーテンで仕切られた部屋の中のベッドの上に寝かせられていた。5歳くらいの男の子だろうか。体が痩せこけており、目の隈がはっきりと浮かぶ様子が、どんな状況にこの子が置かれていたのかを察することができる。


医者「…おそらくは、空腹と疲労によるものでしょう。この子が起きた際には伝えてください。もう一度診察しますので。」

そう言うと医者は他の患者の元へと向かった。


ラッド「…なーんか、大変なことになったなぁ…。事件解決のために動いていたのに、まさか子供が倒れてるとは…。」と頭を抱えているラッドを横目に、リノハは子供の看病をしていた。


リノハ「そうですね…。まぁ、乗りかかった船ですし、最後まで見てあげましょうよ。」


ラッド「…船には乗ってないぞ?」


リノハ「そういうことじゃないです…。」


 そんな会話をしていると、子供の寝ているベッドから布の擦れた音がした。見ると、子供は目を覚まし、おもむろに起き上がった。


子供「……あ……れ…?ここぉ…どこ?」


リノハ「良かった!起きたんですね!」と安堵の表情を見せるが、子供には今の状況は理解できていないようだった。


子供「だ…だれ!?ママとパパはどこに行ったの!」

錯乱している様子の子供は、飛び上がるようにベッドを出て、ラッドにしがみついてきた。


ラッド「待て待て、今から話してやるからな。お医者さん呼ぶから。」とあやす。

 医者を呼んでくると、子供はベットに座らせ、ラッド達が路地裏で見つけたことを話した。子供は分かっているのかいないのか分からない表情で首を縦に振った。


 医者は姿勢を屈めると、子供に目線を合わせて質問を始める。

医者「それで、君は迷子なの?パパとママは?」


 子供は顔をうつ向かせ、

子供「…パパもママも、どこにもいなくなっちゃったの。」と話す。


医者「うんうん、いついなくなったの?」


子供「…パパもママも、いっしょにおでかけしてるときに、叫びながら暗くて狭い道に入っていっちゃって、一緒についていったの。それでね……」

言いかけたところで止まってしまっている子供にどうしたの?と声をかけるが、何も言わずに止まってしまった。


医者「それでどうしたの?」


子供「…わかんない。覚えてない。パパもママもいなくなってて、お腹もペコペコだった。」

"覚えてない"、両親のいなくなった瞬間がわからないのだ。

 

医者「そっかぁ…パパとかって、お仕事なにかな?」

と聞くと、子供は少し目を見開いて


子供「うん、パパが大きくて強いモンスターを倒す仕事をしてるって。」

つまりはこの子の父親は冒険者であるのだという。


ラッド「…なぁ、これって。」

聞かなくてもわかるだろう。簡単な結論だ。


リノハ「はい…誘拐事件です。」

 奇妙な巡り合わせは、ふと世界の歯車を回してしまった。




 医者によれば、子供は軽度の意識障害と憔悴による軽度の手足のしびれはあるが、手足のしびれはしばらくすれば治るだろうと言われた。しかし、意識障害は場合による…思い出す何かがなければ無理だろうとのことだった。

 尚且つ誘拐事件に関わっているのならば、思い出して欲しいものだが…どうしようもならないだろう。


医者「しばらくは入院…ということにはなりますが、両親がいないとなると、心配ですね。」

と頭を下げる。


ラッド「う~ん…となると、この子の両親を早く見つけやんねぇとなぁ。」


その言葉を聞いて、少し考えてから、ハッとした表情をすると、ラッドへ目線を向けた。

リノハ「ラッドさん…!私たち、大事なことを忘れてます!」


ラッド「な、なんだって!?一体何を……!?」


リノハ「簡単なことです。一番最初に分かるようなことです…!」


一呼吸おいて、リノハはおもむろに口を開く。

リノハ「………名前を聞いてないです…!」


ラッド「…確かに!」

一番大事なことが抜けていた。名前の確認は第一優先だ。


リノハ「と、言うことで、君の名前はなんていうの?」


 彼は少しドギマギした後、答えた。


子供「えっと、僕の名前はシパフス・ルイスって言うの!」

 そう元気に答える彼の目は緑色だった。


 安静を確認したその後、自らの名前を告げて病院を出た。調査は続けていたがなかなか進展はなく、なんやかんやで調査を始めてから数刻が過ぎ去り、日も傾いて空が橙に染まるころ。ルイスの件で時間が経ったことで、これ以上収穫は見込めないだろうとラッド達はギルドに戻ることにした。


ラッド「ただいま戻りましたよー……ってええっ!?」

 目を見開く。

 戻ったラッドが見たのは、息絶えたかのように俯いた樹理。まるで真っ白に燃え尽きたような彼には、茫然自失というのが似合うだろう。


リノハ「どっ、どうしました!?」

 困惑したリノハの声に反応して顔を上げた樹理は事の発端を話す。


 リノハたちの外出後、なんやかんやで気絶した樹理は、コラハら二人の呼びかけに反応を示さず、今の今までぶっ倒れていたということだ。意気揚々と始めたはいいものの、結果的には手を煩わせてしまうものになり、申し訳ないのだという。


樹理「いや…本当に申し訳ありません…。」

深々と頭を下げ、額には冷や汗が浮かんでいる。


 コラハは一度ため息をついて、頬杖をつきながら「疲れが溜まっていたのでしょう…。」と冷静に言った。

 メーレはそんなそんなと樹理に近づき慰めようとしているのが見て取れる。


メーレ「長旅してきて直行なんだろう?疲れが溜まっていて当然だよ。今日はゆっくり休んで、また明日にしようか。」

 その言葉に樹理は頷き、ラッドとリノハの二人も賛同して別れを告げる。その夜は早めに宿屋へ戻り、床へ着くことにした。


 食事をした後、木の床で敷かれた部屋にある小さめの椅子にそれぞれ座り込むと、話をし始める。


リノハ「……ホントに大丈夫なんですか?樹理さん。」

 と顔を覗き込んでくるリノハに少し体を引いて答える。


樹理「いや、本当に大丈夫だよ。ほら!今は何ともないしね。」

 軽々と腕を回すような動きをして自らの安静を伝える。


ラッド「…いや、別に体が動かせるから大丈夫ってわけじゃねぇだろ。」

 確かにその通りでグゥの音は出たが何も言い返せなかった。やけにこういうことに気づきやすいのがラッドだ。


ラッド「ま、ジュリが気絶したって言うんだったら、今日はしっかり寝て、明日に備えようぜー。」と言い立ち上がるとベッドへとボフンと音を立てて倒れ込んだ。


リノハ「そうですね…樹理さんにとっては慣れない環境でしょうし、疲労が溜まっていてもおかしくないですからね。話も明日にしましょう。それじゃあ、お休みなさい。」

 と言うと、同じくリノハもベッドに向かう。

自らも渋々戻った後、部屋に明かりを灯すランプを消して、その日は眠る。

 そーいや、ランプも"魔灯"みたいに"魔結石"で作られてんだよなぁ。そんなことを考えながら、深く深く夜に沈んだ。


 わけがなかった。考えることが多すぎる。

 静かに自らのステータスを見た。

まず自らのスキル。

"ソクドクジュツ"のスキルによって明らかに早い速度で本を読み終えることができた。

その上、"完全記憶能力"で内容さえ記憶できる…。

その点で言えば凄いことなのだが、確実に異常だ。

本の中の殆どが平仮名、片仮名、アルファベットで記されている中、古来より日本人が詠み続けてきた漢字が無い中でよく読めていると思う。

 それがスキルのお陰で成り立っているとして、何故自分は()()()()()()()()()()()()

 そこまでの力を成し得る人生だったか?

頭はまだしも、今の今まで目立った身体能力もなく、運動のあまりしない人間であるはずの自分が、なぜこの世界であそこまでの身体能力が出せる?

平和慣れした世界の中で生き続けてきたものが使えるようなものなのか?

……それとも、可視化できるようになって、初めて知覚したからなのか?だから発揮している?

…いや、なぜ可視化できている?ステータスを数値化しているこの"画面"は?


 まるで、ゲームみたいじゃないか。


……否。ありえない。

あり得るはずがないな

 これがもしもだ、ゲームの世界だというなら、自分がどんな状況に置かれているんだ?分からない…。分からない…。

 気絶する前に見たアレ(世界)は?本の並べられた本棚と、それと一緒にあった"高野樹理の本"は?


───いや、分からない。こんなぼやけた頭じゃ、碌な思考は出来ないだろう。

 今日はもう眠ろう─────。

 思考がより飛躍する前に、暗がりの中で目を瞑る。

こうして、夜は更けていった。


----------


 翌朝、曇り空に調子を狂わされながら、コッペパンのようなものを食す。もとよりそこまで食事が好きなわけではないが、米が恋しくなるのは、きっと日本人の(さが)だろう。

 身支度を整え、早速、ギルドに向かう。

 今日はそこそこの人でごった返しており、人の集まる掲示板には『くらがりネズミたいじ』だの、『やくそうしゅうしゅう』といったクエストが貼られている。

カウンターへ向かうと、受付の方に一つ話をする。


樹理「すみません、メーレさんらに用事があるのですが。」


 慌ただしさを感じる受付の男性から、

「ああ!リノハさん達ですね。こちらへどうぞ!」と案内を受け、部屋へ通された。


 僕らに気づいたメーレは笑みを浮かべて挨拶をする。

メーレ「おっ、おはよう!昨日は眠れたかな?」


樹理「はい、ぐっすりと!」

 会話を交わし、椅子に座る。

 昨日はそこそこテーブル上の書類が積もっていた気がするが、どうやら仕事の落ち着いたようだった。


メーレ「それじゃ、まずは昨日の出来事を話してもらえるかい?」

 そこで僕らは昨日ラッドたちが発見した子どものことを知った。


コラハ「…なるほど、記憶障害の子供…えーと、ルイスくんですか。」 

 昨日とあいも変わらず落ち着いた表情だ。


メーレ「話通りなら、誘拐事件と関連はありそうだ。俺も今日は仕事は少ないし、まずは病院に向かってみようか。」


 その言葉に賛同し、僕らは病院へと向かうことになった。




 人気のある道を進み、一際大きな建物の病院につく、レンガで作られた壁と置かれたベッドは、転生前に見た近代のものと似ているように感じた。簡素なものだ。

 受付を済ませ、早速その子がいる部屋へ向かう

 人はまちまち、ある程度見ただけだが、医療技術としては、やはり僕が転生する前の現代より劣る。回復魔法(ヒール)があるのだから、当たり前といえば当たり前だろう。

 仕切られたカーテンを開けると、そこには寝転がったまま宙を見る子供がいた。どうやら気付いた様子で体を重そうに起き上がった。


リノハ「おはようございます!…体調は大丈夫?元気?」

 話しかけると子供はゆっくりと頷いた。肌は白く、髪は黄緑、翡翠色の目はゆっくりとこちらを見つめた。


樹理「えーと、おはよう、ルイスくん、だったっけ?僕はタカノジュリって言うんだ。よろしくね。」

 子どもがどぎまぎしている。見ず知らずの人に挨拶されたら、警戒されるのは分かっている。


メーレ「やぁやぁ、俺はナツカグ・メーレっていうよ、メーレって呼んでくれよ。それで、この人がコラハさんって言うんだ。よろしくね。」


ルイス「────よ、よろしくおねがいします。」

 ルイスが口を開いた。緊張で話せていなかったのだろう。おどおどしていて視点は安定しない。碧色の綺麗な目をしている。


メーレ「じゃ、ちょっと今から君のお話を聞きたいんだ。いいかな?」



 ルイスがメーレに質問を受けているとき、ふと口を隠すように手を当てて俯くコラハを見た。


樹理「...コラハさん、何か?」

 呼びかけに気づくと、こちらへ体を向き直す。

コラハ「む…ああいや、少し考え事をしていたんだ。アイツのことでね。」


 アイツと呼ばれている人物について、質問してみる。

樹理「えっと、そういえばというのも何ですが。もう1人の国公騎士さんは?」


コラハ「あぁ、まだ来ていない。」

 彼は眉間にシワを寄せる。


樹理「ま、まだ…?一日は経ちましたよね…?」

 先日の呆れ具合からも中々のモノを感じていたのだが、一日遅れの遅刻魔とは恐ろしい話だ。一体どんな人なのか見てみたいところだ。


コラハ「……アイツはそういうヤツなんだ。もう慣れてしまったよ。」

 呆れたようなため息がコラハさんの苦悩を示していた。どうやら方向音痴らしい。

 地図はないのだろうか…?と疑問は持ったが、それはそれだ。元の世界()でも北が分からない人もいるのだ。


コラハ「一応念の為だが、アイツは大柄の橙色の髪のやつだ。もし会ったら言ってくれ、『コラハが用意してる』と。」

 その言葉を不思議に思いながら頷いた。こういう手のものは深堀りすべきではないと鉄則が決まっている。


 そんな話をしていると、どうやら質問は終わったようだった。

メーレ「お話してくれてありがとう。きっとパパとママを見つけるから、安心しててね。」

 ルイスが頷くと、メーレはおもむろに立ち上がる。


メーレ「長引いたかな?それじゃ、行こうか。」

 僕らはルイスに軽く手を降って、病院を後にした。


 時間はおそらくだが10時〜11時辺りだろう。太陽が薄く見える雲空の下にいた。

ラッド「そういや、次はどこ行くんだ?」


コラハ「次は中央大樹公園へ向かいましょう。近くには昨日二人が子供を見つけた場所があるんですよね?」

 その言葉に二人は頷く。


メーレ「おけ。じゃあ向かっている間にさっき聞いたことを話すね。」


 簡単要約してしまおう。まず、ルイスの親は二人とも冒険者であること。

そこそこギルド内では有名なこと。

行方不明になった日、家族で出かけており、その場所を通りかかったという。

そしてそれ以降の記憶がないことが判明した。


メーレ「もっと情報が欲しかったけれど、本人の状態から察するにちょっと今は無理かもね。」


コラハ「まぁ、仕方ないと言えば仕方ないでしょう。私達にはどうにもできませんしね。」

と眼鏡を上げた。


 情報整理をしながら歩き、僕らはルイスが見つかった路地裏へたどり着いた。


ラッド「ここだ。ここでルイスを見つけたんだ。びっくりしたぜ!まさか人が倒れてるとは思わなかったしな。」

 少しオーバーリアクション気味で説明を続けるラッドを横目に、路地裏を観察した。

 湿気が多く、お天道様の遮られた道は、やはり不気味な印象を与えた。


コラハ「...ここで一体何があったか、ですよね。ルイスくんのご両親について…この奥で分かるかもしれません。」


メーレ「ああ、そうだね。誘拐事件について、何か手がかりはあるだろう。準備はいいかい?」


三人「はい!」


こうして僕らは奥へと足を進めた。




5分程度だろうか、入り組んだ路地裏から再び大通りに出てしまった。


メーレ「…うーん、何もなかったね!」

おちゃらけている。何だったんだ、最初の号令。


リノハ「見事に手がかりなし…ですか。」

ラッド「ああ、そうだなぁ…。」

肩をガックリと落とす2人。


路地裏にはこれと言った違和感の感じるようなことは無かった。

あまり人気はなく、家の裏手が満遍なく敷き詰められた狭い通路。地下の下水路へ続き、周りの水溜まりが目立つ井戸や捨てられたゴミなどが見受けられた程度だった。


コラハ「うーん…情報はなしと。」

誰もが考え込む中、メーレが切り出す。


メーレ「そうだ!一度冒険者を助けたって前に言っただろう?あそこに行ってみないか?近くにあるんだ。」


リノハ「そうですね。いいと思います!」


メーレ「よし、それじゃあ、次の現場に行こうか!」


樹理「(...なんか、刑事みたいになってきた…!)」




次の場所は、さっきの路地裏とは打って変わって日は当たっており、見通しの良い道だった。奥には街灯(魔灯)が見えている。


メーレ「ここだね。四人とも準備はいいかい?」


ラッド「もちろんです。準備万端です。」


メーレ「それじゃ、行くよ!」




3分後、僕らは街の大通りに出ていた。


メーレ「........。」

樹理「......。」

ラッド「....。」

リノハ「.....。」

コラハ「..........。」


樹理「感想を、一言。」


メーレ「僕らの戦いはこれからだよ。ジュリくん。」


樹理「完ッ!!!!」


ラッド「終わっちゃだめだろ。」


見事に手がかり無し。

あまり人気のない道、と言ったところ。先程より入り組んでもおらず、空気の通りも良い。これまた下水道の井戸と、葉っぱの散らばる道だった。

結果的に、いわゆる手詰まり。八方塞がりである。


コラハ「...さて、どうします?」


ラッド「どうするか、犯人出るまで待つか?」


メーレ「また巻き込まれる人が増える。待ってられる余裕は無いよ。」


また、みんなが考え込んでしまう。

流石にここまで証拠が無いとなると困る。考えようがない。誰かを囮にすることも考えたが、そもそも狙われる基準が冒険者ならば、あまり有効ではないだろう。

そんな沈黙を、今度はリノハが破った。


リノハ「そ、そうです!そろそろご飯にしましょう!お腹も空いてきましたし、休憩したいですからね!」


樹理「...うん、そうだね。それがいいや。」


コラハ「私もですね。ちょうどいい頃合いでしょう。」


リノハの意見に賛同し、ふとリノハの方に向くと、違和感を感じた。


樹理「リノハ...もしかして、靴濡れちゃってる?」


リノハは少しびっくりした表情を見せる。

リノハ「え...あ、はい、実は。さっき井戸の周りの水たまりで少し...。」


樹理「そっか、じゃあ乾かさなきゃ...。」

ふと、一つ思いつく。 


樹理「メーレさん、井戸は大体路地裏にあったりします?」


メーレ「まぁ、下水道用の井戸は大体路地裏。上水道用の井戸は大通りあたりにあるね。」


もう一つ、質問をする。

樹理「下水道って、あの井戸から点検していますか?」


メーレ「そうだよ。月初めあたりにね。」


樹理「上水道は点検は?」


メーレ「あまり...だね。湧き水を引っ張ってきて井戸へ流してるから。大体は井戸自体の点検だし。上水道は狭くてね。」


樹理「じゃあ、下水道の井戸を日常的に使う人はいます?」 


メーレ「いないさ、下水道だからね。」


そこで、一つの仮定が浮かんだ。


樹理「すいません、おそらく、なんですけど。犯人がどこにいるか。分かったかも知れません。」


全員が驚きの表情を示す。

メーレ「本当かい⁉︎犯人の場所が分かったって。」


樹理「はい。今から話しますね。」

こうして、自らの推理を始めた。


樹理「まず、一番最初に犯人がどこにいるか。というと、恐らく下水道にいます。」


コラハ「下水道…それはどうして?」


樹理「先ほどの二つの路地裏、そして事件の起きているところは人気のない場所。つまり路地裏で多く発生している、ということです。」

樹理「ここで多分、普通だったら、『人気が少なく、見られることのない路地裏なら、誘拐しやすい。』と考える人は多いと思います。」

樹理「なので、逆に考えました。路地裏だから人気が少なく、都合が良い。ではなく、都合のいい場所が路地裏だった、と。」


ラッド「『都合の良い場所が路地裏だった?』」


樹理「そうです。魔物は何らかの理由を持って下水道へ。目的は勿論、冒険者の誘拐ですね。人を連れ去ることのできる魔物なら、ある程度の大きさや力はあると思います。なら、狭い上水道よりはある程度広い下水道でしょう。」


そこにメーレが質問を投げかける

メーレ「しかし、なぜ下水道なんだ?他に幾らでも方法はあるはずだよ?」


樹理「確かにそうですね。しかし、僕が下水道だと考えたのは井戸の周りの状況です。変だと思いませんでしたか?」


そこでコラハはハッとする。

コラハ「なるほど、水溜まりですか。」


僕は頷いて続ける。

樹理「昨日と今日の天気を思い出してください。昨日は晴れ、今日は曇りです。いくら一昨日に雨が降ったとしても昨日の晴れで水溜まりも消えると思います。え…一昨日天気どうでした?」


メーレ「…雨だね。」


樹理「…まぁ、流石に今通った所は風通しがいいので、乾いているはずと思ってください。思ってください。」


ラッド「2回もいるか?」


樹理「とりあえず、そういう事なので、犯人は下水道にいるのではと。」


コラハは顎に手を当てる。

コラハ「なるほど、魔物であるならば、おそらく水生の生物では?」


メーレ「100%とは言えないけど、その可能性はあるね。」

続けてメーレは質問した。

メーレ「しかし、冒険者だけを執拗に襲う理由はなんなんだろうね。」


リノハ「そうです、そんなモンスターは聞いたことがないので。」


そして更に浮かび上がる疑問をコラハが口にした。

コラハ「…なぜ、冒険者達は路地裏にいたのでしょうか。」


ハッとする。

樹理「たまたま通った…という訳ではない気がしますね。下手に近寄るとは考えづらいです。」


メーレ「まぁ、それは()()に聞こうか。ジュリ君の考えだと、下水道にいるんだね。」


僕はおもむろに頷く。


メーレ「一応、こんな事もあろうかと、武器は用意してある。コラハもあるかい?」


コラハ「もちろんです。『備えあれば憂いなし』と言いますからね。」


メーレは僕らに向き直し、姿勢を直す。

メーレ「さて、僕らは昼ご飯の予定をキャンセルし、下水道に向かう!準備はいいかい?」


ラッド「え、キャンセルするのか?」


メーレ「なぁに、昼飯前ってやつさ!」

と意気揚々と答える


樹理「朝飯の前に言うものでは?」


メーレ「なに、ご飯の前なら何でも通じるさ。さて、それじゃ行こうか!」


テンション高めに見えるメーレを先頭に、僕らは元凶の待つと考えられる下水道へ向かう。その先に何が待ち受けるのか、だなんて考えた物の答えを出されるのはその3時間後の話だ。

閲覧していただきありがとうございました!

もし気に入って頂ければ、このナメクジヤローを応援していただからと嬉しいです。

んではまた次回で、ばいばーい。

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