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堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~  作者: KEY-STU
第一部 一章 悪魔たちの円舞曲(ロンド)

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96/2021

96.回避特化

 コユキが善悪の指示の元、回避特化を目指した様に、このモラクスも同様に速度特化なのはアヴォイダンスに付いてくるのを考慮すれば間違い無い。

 しかし、その上位互換スキルであるアクセルには対応出来なかった。

 兄であるオルクスがアクセルと同じ様なファイナルモードなる技を持っていたのは、先程の発言から容易に想像できた。

 

 じゃあ、同じ速度特化を持つ弟のモラクスは?

 一体上位互換に何を選んだのだろうか?


 そこまで考えてコユキは正解を予想することが出来た。


――――! エピドロミ! こいつ! 攻撃速度特化かっ! しかも射程も伸びるとか反則じゃない? まあ、攻撃は角だけだし、直線的なのが救いと言えば救いか? 何故か攻撃前に技名を叫んでくれてるから、タイミングもばっちり分かるし…… よしアクセルの移動距離をもう少し伸ばして様子を見よう!

 

 そう決めたコユキだったが次の瞬間、その予想は呆気なく裏切られたのであった。


『エピドロミ・アラージ』


 モラクスが囁くように言うと、周囲で蠢いていた球体の内、二つが其々(それぞれ)五個に分裂し、合計十個の小型球体へと変化したのだ。

 そしてじっと周囲を(うかが)うように集中を高めたまま黙り込むモラクス。

 一方のコユキは、横っ腹が痛くならないように、しかし安全を考慮して七メートル程距離を置いて一瞬だけアクセルを解除する。


『アネモス』


 声と同時にモラクスが一気に距離を詰めて来る。

 しかし、行動指針を決めたコユキは慌てた素振も見せずに、ボソッと小声で呟いて姿を消した。

 モラクスは両手を前方に並べて構えると、指、十指を広げてから技の名を告げた。


暴爪弾(アサルトバレット)


 十本の爪に纏った(まとった)球体から、間断なく連射され続けるオーラの弾丸が、前方に隙間無く展開され、その中から姿を現したコユキは胸の中心を押さえ、痛みに顔を歪めていた。

 

突角長槍(ロングホーンランス)!』


 漆黒の渦を纏った双角(そうかく)が、その隙を見逃さずに繰り出される。


『なんだと!?』


 絶好のタイミングで繰り出された角はコユキを刺し貫く事無く、虚しく空を切るのみだった、モラクスの口から驚嘆の声が漏れた。


 それもその筈、破壊力ではロングホーンランスに遠く及ばないアサルトバレットであったが、低位の悪魔であれば単発で昏倒(こんとう)させる事もある。

 ましてや人間がその凶弾をまともに受ければ絶命しても不思議は無い、如何に加護を受けた聖女であっても、かなりの深手を負う筈だった。


 それなのに、コユキはモラクスの目論見(もくろみ)をあざ笑うかのように、アクセルを使用し彼の目の前から姿を消したのであった。

 慮外(りょがい)の出来事に驚き、モラクスは二歩、三歩と後ずさりながら、この世に具現化してから初めて、戸惑ったような視線で見失ったコユキを探し続けるのだった。


 アクセルによる高速移動をしながらコユキは溢れ出る冷や汗を止めることが出来ないまま考えていた。


――――今のはヤバかった、かなり痛かったが直前に頭に響いたオルクス君の、『オウコクノツルギ、イマ!』の叫びと同時に体を包んだ白い光、恐らく善悪の『エクス・プライム』をオルクス君が届けてくれなければ痛いでは済まなかった筈だ。 二人には大感謝だよ、まだ全然ピンチなのに笑いがこみ上げて来てしまうぞ。 ここで戦っているのは自分独りじゃない、善悪とオルクス君、『聖女と愉快な仲間たち』みんなで戦っているってことが、改めて実感できた。 笑っちゃう理由はそれだけでは無い。 消極的過ぎるほどに、観察を続けていて(ようや)く分かったからね。 勿論、指から気弾を打つ技を持っているっていう瑣末(さまつ)な事じゃ無い。 モラクスの戦い方ってヤツを、何となくだが理解出来た気がした。 モラクスは、戦いを始めてから、頑なにロングホーンランスを使い続けていた、その間両手も足も一切使ってこなかった。 武器の類も持っていなかったから、あの角にかなりの自信を持っているのかと思っていた。 しかし、それは違っていた。 自分の攻撃でアタシを捉えられないと認めた瞬間、一気に今まで使って来なかった技を躊躇なく使ってきた。 ここまで使わなかったことで、突然の一手を成功させる為のフェイントにもしていた。 恐らく、こういった一手をまだ幾つも隠し持っているに違い無いと思える。 武器を持っていないのも、持つ必要が無いとかじゃ無く、持っていない方が戦いの手段が増えるからに違いない。所謂(いわゆる)、引き出しが多いってやつだろう。 それに、戦いにも慣れているようだ、こちらに悟られないようにギリギリまで待って、初見の技を繰り出してくるとは何ともいやらしい遣り方だ。 幸いアタシはそういう戦い方を好んでする人と訓練を繰り返して来たから、対処方法は分かっているつもりだ。 受けに回っても、初見攻撃の連続を受け続けて、精神も体力も削られまくってジリ貧だろう。 だから、イチかバチか、決めに行くしか無い! 強引にでもこちらのペースに引き込むんだ! 言ってやる、自分ばっかりずるいんじゃ無いですか~、って!

お読みいただきありがとうございます。

感謝! 感激! 感動! です(*'v'*)

まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、

皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。

これからもよろしくお願い致します。

拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。


Copyright(C)2019-KEY-STU

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[良い点] 緊迫感のある戦闘シーンでとても面白かったです。仲間がいるので、圧倒的な相手とも渡り合えているというのが、特に胸熱で良いと思います。 [一言] 本来当たれば即死だよなぁなどと、思っていたとこ…
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