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堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~  作者: KEY-STU
第一部 一章 悪魔たちの円舞曲(ロンド)

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74/2022

74.スゲー!

 手馴れた様子で訓練の準備を進める善悪にコユキは問い掛けた。


「ね、ねえ、センセ! アタシも武器の使い方とか覚えた方が良いですよね? 昨日の投げナイフとか……」


「お、おう! そうでござるな? いや、いきなりああいった事を不慣れな人間がやろうとするのは諸刃(もろは)の剣であるかな? 相手に取り上げられて逆に使われたら本末転倒も良い所でござるし…… まあ、最初は回避でござろ! 不安だったらそこらの砂でも拾ってポッケに入れて置くのでござるよ。 ほらあの目潰し! あれだって立派な武器でござるよ!」


「! なるほど!」


 答えるとコユキは回りの砂を両のポッケにパンパンに詰め出した、もうバレバレであった。


 そうこうしている内に準備も整い、始まった訓練に於いて、迫り来る蝋とピンポン球の全てをコユキは見事に(かわ)して見せたのであった。

 もう一度試しても結果は同じであった。


 昼食を食べた後、昼寝を始めるコユキのたっての願いを了承した善悪によって、蝋燭の数は増やされ、数回の訓練の後、檀家さんオールスターズが召集される事となったのであった。



 なるほど、そう言う事が有って、慌てまくっていつも以上の焦燥感に(さいな)まれた二人が、自分の成長限界や成長速度を無視して、生き残りの為にジャンプアップした姿がこれであったのだろう。


 そう言えば、コユキの成長ばかりに目が行きがちだが、善悪の指揮能力にも注目するべき成長が感じられた気がした様な……?

 何はともあれ、今コユキは善悪を覆うように降り積もった蝋の塊を除去し、ス――と足も動かさずに移動しながら、オールスターズの皆さんに声を掛け、労って(ねぎらって)いる所であった。


 疲れ果てて座り込んでいたベータチームがガンマ、アルファの両チームのメンバーに手を貸して、境内脇の水道で目や口に入った凶悪な刺激物を洗い流し始める。

 刺激物と農薬の二属性同時攻撃を受けた善悪もよろよろと立ち上がり、顔面を蒼白にしながらも、本堂の手前の(たた)きへ辿り着くとその場に力無くへたり込んだ。


 その間に一人庫裏(くり)の玄関へ入って行ったコユキは、丸められた布団を持ってスススと境内の中程まで移動する。

 布団を立てると(おもむろ)に体当たりをして、横倒しになった布団に膝を落とす、所謂(いわゆる)ニードロップであった。


フライング、つまりジャンプをしなかったのは、別に面倒臭くて端折(はしょ)った訳ではなく、ジャンプしたくても足がそこまで精緻(せいち)に動かせなかったからである。


 一回では無く、何度も何度も布団を立てて、同じ技を繰り返し練習するコユキは玉の様に流れ落ちる汗に濡れてびっしょりである。

 コユキが身を沈める度に、ズドッ!  ズドッ!  と重苦しい衝突音が響き渡る。


「すげぇーな、あれ」


コユキの練習を見ていたオールスターズの一人が思わず呟き、その声を聞いた何人かが頷きを返していた。


 暫く(しばらく)ニードロップを繰り返していたコユキだったが、自分なりに納得出来たのか、今度は布団にその太い腕の内肘を振るように叩きつける。

 振り切った勢いで布団に対して背を向ける形に回転し、腕を戻しながら肘を曲げる角度を深めて、背中から倒れ込むように布団を刺し貫く。


 一連の流れるような動きと、その後に響いたシュゴッ! と言う鋭い音に僅か(わずか)に遅れて響くドスンッ! とコユキが倒れた際の衝撃が軽く地面を揺らした。

 こちらも繰り返し繰り返し、インターバルも取らずに同じ事を続けて行くコユキ。

 

 いつのまにか、全員が集まったオールスターズは、息を呑んでその様子を注視している。


「ふうぅ~」


 十数回繰り返して、流石に息を切らしたコユキが動きを中断すると、それまで黙って見ていたオールスターズの面々が、手を叩きながら口々に賞賛の言葉を掛けてきた。


「スゲースゲー!」


「本当だよ、スゲーなー!」


「おお、すげーよ!」


「スゲーな、スゲーよ!」


「凄くスゲー、マジ凄い」


 その内の一人から、善悪が訓練前に皆さん用に準備しておいた、ペットボトルの『おーい、しぃ茶糖茶(無糖)』(父ヒロフミが一攫千金を狙って農協から借金までして作ったプライベートブランドである)を受け取りながらコユキは思った。


 このバッタ品まだ在庫が残っていたのかと、そして更に思ったのだ。

 これ、だいぶ前に発売した筈だけど、大丈夫かな…… と、キャップの賞味期限表示に目をやりながら、更に更に思った。

 ここらの農家さん達の語彙(ごい)力って、いやこの人達が特別なんだろうか…… と、そして漸く(ようやく)やっとこさ思ってくれたコユキはその疑問を口に出すのであった。


「え? 何で、拍手なんですか? それに凄いって、一体?」


 お茶を渡してきた比較的年配の男が代表して答える。

 たぶんリーダー的な存在なのかもしれない。


「いやいや、お姉さんの動きが凄かったから、みんな驚いて注目してたんだよ、大したもんだなぁ、特に体を起こす時と、エルボー決めた後に立ち上がる時の動き! ありゃ、一体どうやってるんだい?」


「ああ、なるほど~」


 どうやら、今のコユキの『独特過ぎる』動作の事を言っているらしい。

お読みいただきありがとうございます。

感謝! 感激! 感動! です(*'v'*)

まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、

皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。

これからもよろしくお願い致します。

拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。


Copyright(C)2019-KEY-STU

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― 新着の感想 ―
[良い点] コユキのデ武術は本物のようですね。努力の跡が見られて面白かったです。ウェイトあるからガチで人を殺せそうな破壊力がありそうです(汗)そして、時として人はちっとは焦ったほうが良いという真理もつ…
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