表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~  作者: KEY-STU
第一部 一章 悪魔たちの円舞曲(ロンド)
67/1838

67.出撃! オールスターズ ①

 ロープが張り巡らされ、数百の蝋燭が林立する異様な光景の境内で、善悪はコユキと向き合っていた。

 彼の左右には、檀家の内でもスタミナと俊敏さに自信を持った若者達が五人づつ、計十人で片手にマイバスケット、もう片手にピンポン球を掴んで立っていた。


「望み通り十人の勇者に協力をお願いし、蝋燭の数も増やしたのでござる。 本当に良いのでござるか? 辞めるのならば今の内でござるぞ?」


「いいえ、自分の限界に挑戦したい気持ちに変わりはありません。 皆様、どうぞ宜しくお願いいたします」


 ペコリと頭を下げたコユキの姿は三日前と特段違わない様に見えたが、続いて善悪が発した言葉には、大きな違いがあった。


「うむ、ではそろそろ蝋が滴り落ちて来るのでござるよ。 いつも通り、自分のタイミングで始めるのでござる」


 ……

 なるほど、この三日の間に、訓練開始の切欠(きっかけ)はコユキの方から合図するように変わっていたらしい。

 言われて見れば、コユキはロープの下では無く、直ぐ脇で突入のタイミングを計っている様である。

 落ちる滴が増えていく(さま)を見つめながら、


「ス! ス! ス! ス! ス! ス! ス! ス! ス! ……」


 声に出しながら、左右に素早く体を揺らし始めた。

 この際、両足は微動だにしていない。

 まるで大地に根を張ったかの様にずっしりと安定したままであった。

 

 対して、揺らされ続けた全身を覆った豊富な贅肉たちが、体の部位毎に不規則に(うごめ)きまくり、まるでそれぞれが別個に意思を持った存在で有るかの様に、セルロースの脈動による自己主張(ダンス)を踊り競い合いながら饗宴を繰り広げ始めていた。


「行きます。 ボソッ」


 そう言いロープの下に入ったコユキの姿が、不意に(にじ)む様に前後左右に流れ始め、移動し続けて行く。

 表情の一切を変える事無く、手足の一切を動かす事無く、直立したままで数十センチづつ移動している様に見える。


 実の所、見えるだけで無くコユキは本当に手も足も動かしてはいないのだ。

 直立しながら、自らの体に(わず)かに捻りを加えることで、全身の贅肉に指向性を与える事で移動していたのであった。


「スッ! スッ! ……スッ! ……スッ! ……」

 

 善悪始め、檀家オールスターズの投げるボールを事も無く避けていくコユキ。

 彼らの投じた全ては、コユキの残像を追いかける事しか出来なかったのであった。

 万事休す、そう思われた時に善悪が叫んだ。


「作戦変更でござる! 砲撃パターンをイプシロンに変更でござる! 御先祖の名誉を守るでござるよ! 一発でも当てるのでござる! 」


「「「「「はいっ! 和尚様!」」」」」


 一斉に投球の仕方を変えるオールスターズ。


 一隊は今まで通り、コユキの姿を追いつつ直接狙う者達であり、四名がこれを担当している。

 次の一隊は、目で確認したコユキの左右に数十センチの場所を二人一組、二チームで予測して狙って行く。

 残り二名と善悪は大量のボールを上空にばら撒くように投げたり、足元を覆うように撒き散らして、コユキの動きを阻害する奇襲を仕掛けて行った。


 お得意の回避を行うことに()いて、選択肢の(ほとん)どを封じられたコユキは、端目(はため)にはピンチに置かれたかに見えた。


 しかし、彼女は小さい声で何かを呟いたのだ。


「ボソッ」


 次の瞬間、彼女は消えた。

 比喩(ひゆ)ではなく、衆目の見つめ続ける中、忽然(こつぜん)とその存在を掻き消したのであった。


 ススススススススス……


 周辺に鳴り続ける無感情なコユキの声……


 その後は残像すら残さずに、避け続けているであろう彼女を捉えられた者など一人も居らず、パターン・イプシロンは瓦解(がかい)して行くのだった。

お読みいただきありがとうございます。

感謝! 感激! 感動! です(*'v'*)

まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、

皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。

これからもよろしくお願い致します。

拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。


Copyright(C)2019-KEY-STU

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー cont_access.php?citi_cont_id=140564926&size=200



fw2razgu4upfkla8gpm8kotvd1hy_1365_xc_ir_92ne.jpg
にくい、あんちきしょう…… ~食パンダッシュから始まる運命の恋~ は↑からどうぞ



eitdl1qu6rl9dw0pdminguyym7no_l63_h3_7h_23ex.jpg
3人共同制作の現場 小説創作の日常を描いた四コマ漫画 は↑からどうぞ



l7mi5f3nm5azilxhlieiu3mheqw_qn1_1kv_147_p1vu.jpg
侯爵令嬢、冒険者になる は↑からどうぞ
~王太子との婚約を一方的に破棄された令嬢はセカンドキャリアに冒険者を選ぶようです~ 



jvan90b61gbv4l7x89nz3akjuj8_op1_1hc_u0_dhig.jpg
見つからない場所 初挑戦したホラー短編 は↑からどうぞ



異世界転生モノ 短編です
8agz2quq44jc8ccv720aga36ljo7_c1g_xc_ir_97jo.jpg
【挿絵あり】脇役だって主役です ~転生を繰り返したサブキャストは結末を知りたい~ は↑からどうぞ



小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
[良い点] 贅肉を操るという設定が面白すぎて笑いました。なるほど、そうなるのですね(笑)善悪たちの無駄に良いチームワークも素敵でした。パターン・イプシロン、善悪らしさがよく出ていて素晴らしいです。 […
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ