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堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~  作者: KEY-STU
第一部 一章 悪魔たちの円舞曲(ロンド)
5/1898

5.妹 (挿絵あり)

 のっそりとコユキが母屋に入って行くと、台所から母親のミチエと妹のリョウコ、リエが談笑する声が聞こえてくる。


 妹達は週末になると子供を連れて実家に遊びに来ることが多いらしい。

 二人の妹の旦那達は無駄にスペックが高い、コユキ自身はそう思っているようだ。


 リョウコの夫は自衛隊員で、今はPKなんちゃら? 国連平和維持活ど、なんちゃらとかで指揮を取っているらしい。

 リエの夫は輸出入業の経営者で海外出張が多く、最近はコーヒー豆の買い付けとやらで大層忙しいそうな。


 ……ほーん、で? っていう、それがコユキの偽らざる気持だった。


 そのため、暇を持て余しっぱなしの妹二人は実家に入り浸っていたのである。


挿絵(By みてみん)


 姉妹の父親のヒロフミは、居間の畳の上に寝そべりいつも通り古臭いゲームに夢中なようだ。

 その側らで甥っ子と姪っ子が遊んでいるらしい、はしゃぐ声が聞こえて来ている。

 なんて平和な土曜日の昼下がり。


「何か、アタシに用かね?」


 台所のドアを開けながらコユキが変に偉そうな口調でそこにいた家族に声をかける。


「ああ、コユキ」


と母ミチエが、


「やっと来た! もぅ~おそいよぅ~」


「遅いよ」


と、次女のリョウコと三女のリエが、ほぼ同時に声をあげる。


 叔母のツミコは黙々とお菓子をつまみながらテレビから視線を外していない。

 祖母のトシコもテレビを見ながらお茶をすすっている。

 こちらには一瞥もくれない。

 そんなに熱中するほど面白い番組が? と見てみると、なにやらワイドショーの様な物である。

 たいして面白くもないだろうに、毎日の日課、惰性でただ画面を眺めているだけなのだろう。


 コユキは思う、嘆かわしい事この上ない、と…… 無論自分の事は俎上に上げても居ない、当然。


 母と二人の妹のいつになく大袈裟な感じの、必要以上な楽しさ演出用の満面な笑顔を見て、コユキにもなんとなく何の話か見当がついたようである。


「なるほどね、大体何の話かは想像がついたわ……」


「実はね、又ね、いい話があるのよ、この人なんだけどね…… あんたもう三十九なんだし…… ねぇ?」


 何やら写真をそっと押し出しながら満面の笑みでミチエが切り出している。

 コユキは特段驚くでも無く、ごく自然な感じで椅子に座りながら、


「むう、やっぱりその話か…… お見合いだよね?」


と、言いながら、目の前にあるリョウコが持ってきた手土産のチョコチップクッキーを三枚まとめてむんずと掴みそのまま口へ運ぶ。

 台所に入った瞬間から目を付けていたのだ、流石の観察眼、恐れ入る。


 三枚重ねチョコチップクッキーは、ジャガイモのチップスを食べるかのように何の抵抗も無くサクサクと音をたてながらその口腔に飲み込まれていく、かなり歯が良い様だ。


「おいしいわね。 ただ、もう少しチョコチップの粒が大きい方が好みだわ」


 聞かれてもいないのに批評をするコユキ。

 さりげなく自分の好みを伝える事も忘れていない、しっかりものだ。


 そんな相変わらずマイペースなコユキの様子を眺めながら、


「ユキ姉、そりゃぁ結婚するまでは話が来続けるでしょ? でも今度の人、割と良さそうよ♪」


 淡々と見合いをした事も無い(必要なかった)リエが言う。

 続けて、何が楽しいのかヘラヘラ笑顔を浮かべながら、妙に甘ったれた口調で、


「お見合い楽しそうで羨ましいなぁ~だってさぁ、ホテルのレストラン? とか料亭? でおいしいごはん食べられるんでしょぅ? アタシも一度位経験しておけば良かったかなぁ~」


とコユキの食欲に訴えてみる、見合いをした事も無い(必要なかった)リョウコ。


 リョウコの思惑通り食欲に訴えかけられただけでは無い様子で、ふんすっと気合に鼻を鳴らしたコユキが、期待のこもった表情を浮かべながら、その写真を見てみるとそこには決してオシャレとはいえないスーツを着込んだ四十代そこそこの男性が写っていた。


挿絵(By みてみん)


 黒髪、七三、黒縁メガネ、どちらかというと陰気な顔つきに底意地の悪そうな瞳。

 不健康そうな体躯(たいく)は小男に分類されるであろう。

 一見すれば欠点の塊のように見えるが、コユキは意外にも人の悪い所をあげつらって悦に入るような不完全な人間ではない。

 むしろ、数少ないその人の取り柄や長所を見つけ、それを誉めてやる気を出させるタイプだ。

 誉めて育てるタイプの上司であった。


 ただ残念な事に働いた経験がないため、まったくの死にスキルではあったが……


 コユキは、写真をじっくりと穴が空くんじゃないかと思う程見つめた後で、努めて無表情を意識しながら感想を口にした。

 ※顔肉が多すぎて表情が変わっていたとしても判別不能である


「うーん、そうだね? そう! うーん、真面目だよね、うん…… 真面目メガネ、しちさん真面目、しちさん黒メガネ真面目、いや、むしろただの真面目! 真面目以外に良いところ無いよね、これで真面目じゃなかったらどうしようもないよね! 彼が真面目で本当に良かったよ!」


 さすがコユキ。

 まさに誉め殺しである。


「そぅだよぉ~! 真面目な人っていいじゃ~ん!」


「うんうん、真面目は大事よ、いいんじゃない?」


 それを受けてどうやら妹達もコユキの人物評に乗ったようだった。

 まったく自主性の無い、ボキャブラリーに乏しい妹達である。

 嘆かわしいことこの上ないと、姉としては些か(いささか)心配になってしまったようだ。

 コユキは思っていた。

 

 まあ仕方が無い、姉より優れた妹など存在しないからね、クハハ、あたしの名前を言ってみろ。


 へ? コユキでしょ?

お読みいただきありがとうございます。

感謝! 感激! 感動! です(*'v'*)

まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、

皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。

これからもよろしくお願い致します。

拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。


Copyright(C)2019-KEY-STU

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[良い点] 小雪に見合いという意外性が面白いです。また、地の文が時折、皮肉をかますのも良いです。良い味が出ていると思います。 [一言] チョコチップクッキーを3枚行けるのはなかなか良いおデブですね。い…
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