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堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~  作者: KEY-STU
第一部 一章 悪魔たちの円舞曲(ロンド)

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48/2021

48.手料理

 パクパクと食べ進めながら善悪がコユキに質問をした。


「ところでこの汁のベースは一体なんでござろ? パッと見た感じ醤油っぽい色でござるが全然違うのでござるよ」


「ああ、それは冷蔵庫にあったアイスコーヒー(無糖)ですね」


「ええぇっ?」


 ビックリであった。

 コーヒー?


 確かにそう言われて見れば香りも味も、元を辿っていくとそこに行きつく様な気もするが……

 考え込む善悪にコユキが続けて告げる。


「それで、なんかコクって言うかダシ? みたいの欲しいなって思って色々見ていたら、冷凍庫に茶色い(かたまり)があったんで、それをおろし器でおろして入れたんですけどぉ」


「な、なるほど。 たぶん僕ちんがストックしていたローストオニオンであろうな…… それで深みも増しているのでござるか……」


 色んな料理で使用する為、玉葱が安い時季に合わせて、セコセコ作り置きしていた万能オニオンが役に立ったようだ。

 それは重畳(ちょうじょう)、と、胸を撫で下ろした善悪に対してコユキは更に言葉を続ける。


「そこで味見をしたんですけど、塩分が足り無いなって思ったんです。 でも塩の置き場所が分かんなかったんで……」


「そ、それで?」(ゴクリッ)


「はい! そこで、冷凍庫の中に辛子明太子の凍った物を見つけたので、塩の変わりにおろし機でおろして加えたんですよね」


――――お、おぅ、そか、そか? ホッ


「その後、何か酸味も欲しいかなって感じたんですけど、酢が分からなかった所でピンっと来たわけですよ」


「き、来たの? ピ、ピンっが?」


「ええ来たんですよね、ピンっが。 これ漬物で代わりになんじゃね? って。 それで、糠床(ぬかどこ)からキュウリの漬物を出しておろし器でおろして入れたんですよね」


「ええぇぇっ! 糠は? ちゃんと洗ったでござるか?」


「いえ、そのままおろしましたけど。 ? 洗ったほうが良かったですかね?」


「え、マジ? 糠ごとおろしたんでござるか? マジで?」


「マジマンジ。 です。 ? あれ、ダメだったの?」


 キョトンとしながら少し戸惑った様子のコユキであった。

 善悪は思う、あれ俺、物心付いた頃からの継ぎ足しだぞ、っと……

 ちょっと焦った顔でコユキは自身の御自慢レシピの披露を続けた。


「ま、まぁ、糠はそんなに付いていなかったから大丈夫だとは思うんですが…… それ以外は甘みが足りないって感じたので、冷凍庫にあったスー○ーカップチョコミントを……」


「おろしたの?」


「そうです! 良く御存知ですね!」


 いや、ここまでおろし率高いからな、さしもの善悪でも気付くだろうさ。

 ってかそれは直ぐ溶けるから意味なくね?


 この間、二人とも素麺ズルズル、パクパク状態である、ある意味精神力、カンストしてんなお前ら、ってな感じである。


 しかしコユキは何やら尊敬の眼差しを善悪に向けつつ話を続けた。


「調理法方まで分かってしまうなんて、やっぱり先生ってとてつもないんですね。 尊敬しちゃいますよ~♪」


「えっ? い、いや、普通だと思うけどね、でござる。 えへへ」


 善悪もまんざらでは無い様子である。

 それを受けてコユキは尚更嬉しそうに調理の過程を語り続けた。


「それから、冷蔵庫の扉側のスペースに『おろし生生姜』『おろしニンニク』『もみじおろし』を見つけたので加えました」


「うん。 『おろし』だよね」


 もう善悪は気付き始めていた、こいつの調理って、『煮る』と『おろす』しかねぇんだなっと……

 しかし、善悪は甘く見ていたのだ。

 料理をした事が無い者が時として犯す、やってはいけない間違いの存在を……


「そこで完成って思ったんですよね。 でも見つけちゃったんですよね。 食器棚の上に置いてあった『干しシイタケ』を。 最初、ダシを探している内に見つけられれば良かったんですけどね♪ まぁ、折角見つけたんで、粗めにおろして具として振り掛けたんですけどね♪」


 …………

 ……


「えっ? 乾燥したまま…… これに入ってるの? 干しシイタケが?」


「ええ、そうですよ! 美味しかったですか? んふふ?」


 目の前で微笑むコユキに、善悪はそれ以上自身の中に生じた不安を口にする事は出来なかった。

 なにより、山盛りに盛られたテーブルの上の素麺は、見事に空っぽになって二人のお腹に収まってしまっていたのだから。


 なんか、歯に心地よいカリカリ感が有ったのは気付いていたのだが、まさか乾燥シイタケだったとは……


 現実逃避、いや、気持ちを切り替えるように善悪が話題を変えた。

 所謂(いわゆる)食後のトークタイムってやつだ。


「それにしても、今日は凄かったでござるなぁ~。 まさか『特化』がこれほど図に当たるとは嬉しい驚きでござったな~」


「んふふ、それもこれも先生の御指導の賜物、いえお陰ですよ~、んふふ」


 コユキも嬉しそうである。


 しかし、善悪は一つだけ、今日のコユキの成果の中で慰めて置かねばならない事に気が付いていたのであった。

 それを回収して置かないなんて事はない、ダメ、絶対!


 故に話題を切り替えることとした。

※注意※

干し椎茸は必ず水で十分に戻し、しっかり加熱調理してから食べましょう。

コユキと善悪が食べられたのは他人より胃腸が強かったからです。

良い子は絶対に真似しないでね!


お読みいただきありがとうございます。

感謝! 感激! 感動! です(*'v'*)

まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、

皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。

これからもよろしくお願い致します。

拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。


Copyright(C)2019-KEY-STU

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― 新着の感想 ―
[良い点] 恐ろしい。胃袋すごいですね。じわじわ笑いました。ほぼ全部おろしでしたね。私も似たようなものですが。こんなアグレッシブな料理はちょっと。善悪がすさまじいだけでしたね。 [一言] 前話で、コユ…
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