表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~  作者: KEY-STU
第一部 二章 暴虐の狂詩曲(ラプソディー)

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

398/2035

398.正の遺産

本日3回目の投稿です。

1回目は『396.ショータイム!』ですので、

まだお読みでない方はそちらからお読み下さいませ。

 翌日、傷付いた善悪のメンタル面を心配し、ついででは有るが染み付いた牛糞の匂いが不愉快だったコユキは、次の遠征まで三日の休養を取ることを提案し、無事受け入れられたのである。



 そして中三日後、コユキと善悪の二人の姿を兵庫県神戸市の若松公園に見る事が出来た。


「うへえぇ~、これ程の物だとは…… 迫力ね、デカイわ~、ニュースやネットで見てたけどやっぱ本物は格別だわねぇ~」


 高さにして十五メートルを超え、重量は驚異の五十トンを誇る鉄人が戦闘に向け堂々とした構えを取る姿は圧巻の一言である。

 

 若松公園。

 この公園の名前を聞く時、中年真っただ中である二人には忘れたくても忘れられない、いいや忘れてはいけない、地球の暴威に対する記憶がいつも付いて回っていた。


 阪神淡路大震災。

 睦月(むつき)の未明、近代都市神戸に戦後初の激甚(げきじん)な被害と破壊を(もたら)した大地震は、日本のみならず世界中が注目する惨劇を引き起こした。


 マグニチュードは七を超え、都市部で頑強に敷設(ふせつ)されたと信じられていた近代建設の多くが、その神話の多くが砂上の楼閣(ろうかく)であったと人々に露呈した大災害であった。

 崩れ落ちた高速道路、電気も水道もガス、電話まで、全ての生活インフラを失った都市機能は完全に麻痺していたのである。

 直接の被害者も六千人を優に越えてしまい、大阪、京都の二府にまで被害は広がったのである。


 当時中学生であったコユキや善悪も、テレビに映し出されるショッキングでどこか現実離れした被災地の様子に、恐怖と嘆きを感じつつ見入った事を覚えていた。

 現実は如何にしようと現実であった。


 二人の通う中学でも、毛布や衣服、保存食や飲料水、パニックの中でも必死に被災地へ送る物資を集めたのであった。

 コユキも自分が編んだ編みぐるみを、セーターや毛糸のパンツに編み替えて数百着以上を供出した事は今でも忘れていない。


 支援が十分だったか? どこまでしたとしても、地元を破壊され、愛する人や家族を失い、今までの当たり前を奪いつくされた人々にとって十分になる筈など、無いのである……


 しかし、十年以上の歳月を要し、被災者たちは自ら立ち上がるガッツを世界に示したのだった。

 ルミナリエのガレリアを潜る(くぐる)人々は取り返した文明の清廉な光に未来への薄らとした希望を感じては年を跨ぎつづけ、地元球団の快挙に声を枯らして声援を送り続けた。


 頑張ろう神戸!


 自らに言い聞かせるような人々のガッツは悲しみを振り払うかのように、世界でも類を見ない程の速度でこの町の復興を果たした。

 被災後、仮設住宅が並び、人々の共助の舞台、人情と惻隠(そくいん)の象徴であった場所、多くの場所で『やさしさ』と『思いやり』が正に実践された、ここ若松公園もその一つであった。


 その後も多くの天災、人災に見舞われた日本は、令和の時代になっても尚、規格外の災害や、病魔新型コロナの蔓延に恐々とした日々を送っている。


 人は脆弱(ぜいじゃく)にして蒙昧(もうまい)で、大きな力に抗えない下らない存在なのであろうか?


 今コユキの前に聳え(そびえ)立つ鉄人はそうは言わないであろう。

 人は悲しみや絶望を乗り越えて、再び立ち上がる。

 悲劇を繰り返さないように、絶望を儚き希望に置き換えながらも、健気に気を張り続けていくのだ。


 語らぬ鉄人が、人類の浮かべる無理丸出しの我慢強い作り笑いを象徴しているようで…… 美しかった。

 

 思えば、あの未曽有の悲劇の後、様々な意識が日本人の中に生まれたのではなかろうか?

 災害に備える心と物資、ご近所への声かけ、生活インフラという言葉は現在ではライフラインと呼ばれている。

 子供でも知っている災害発生から七十二時間が生存確率に大きく関わるラインだと言う事もこの悲しみが教えてくれた事である。


 未だ被害は消えない……

 今後も同様の悲しみは繰り返されるのかもしれない、しかし、コユキは目の前で格好良いポーズを取り、どこか遠く、まるで日本の未来を見据える鉄人の瞳に力強い人の営みの姿を見出すのであった。

 負けない、決してどんな困難にも、悲しみを乗り越えて生き続けて見せる、死に瀕して笑って終われる様に、と……

 

 ライコー四天王の予言による確実な自身と善悪の消失を思い出しながら言うのであった。


「まあ、人類の死亡率は百パーだもんね! 頑張って生きるわよ! 無理して無理して頑張って頑張って生き捲るわよ! 見ていてねっ、鉄人さん!」

お読みいただきありがとうございます。

感謝! 感激! 感動! です(*'v'*)

まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、

皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。

これからもよろしくお願い致します。

拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。


Copyright(C)2019-KEY-STU

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー cont_access.php?citi_cont_id=140564926&size=200



fw2razgu4upfkla8gpm8kotvd1hy_1365_xc_ir_92ne.jpg
にくい、あんちきしょう…… ~食パンダッシュから始まる運命の恋~ は↑からどうぞ



eitdl1qu6rl9dw0pdminguyym7no_l63_h3_7h_23ex.jpg
3人共同制作の現場 小説創作の日常を描いた四コマ漫画 は↑からどうぞ



l7mi5f3nm5azilxhlieiu3mheqw_qn1_1kv_147_p1vu.jpg
侯爵令嬢、冒険者になる は↑からどうぞ
~王太子との婚約を一方的に破棄された令嬢はセカンドキャリアに冒険者を選ぶようです~ 



jvan90b61gbv4l7x89nz3akjuj8_op1_1hc_u0_dhig.jpg
見つからない場所 初挑戦したホラー短編 は↑からどうぞ



異世界転生モノ 短編です
8agz2quq44jc8ccv720aga36ljo7_c1g_xc_ir_97jo.jpg
【挿絵あり】脇役だって主役です ~転生を繰り返したサブキャストは結末を知りたい~ は↑からどうぞ



小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
[良い点] 大きな出来事の際にはいつも人生や命について考えさせられますよね。あの当時はまだ私も子供でしたが、地震の都度、人生の節目が訪れたようにも感じます。今の仕事に付いたのも、震災の直後だったことを…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ