表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~  作者: KEY-STU
第一部 二章 暴虐の狂詩曲(ラプソディー)

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

370/2035

370.真核

本日7回目の投稿です。

1回目は『364.耳をそばだてる』ですので、

まだお読みでない方はそちらからお読み下さいませ。

 そんなオルクスの凶悪な思いに気が付かないままでバアルは言葉を続けるのであった。


「だけど兄上、今回の任務に送り出すにはさっ、この子チョット強すぎるよね?」


「む、そうか?」


「そうだよ! 少し弱い状態じゃないと任務を完遂(かんすい)できないんじゃないかな? としたら怒るかもよあの方々…… 『静寂(せいじゃく)秘匿(ひとく)()って分かれ道を覆い隠す』御方(おんかた)たちがさぁ」


「むぅ……」


 オルクスは見逃さなかった、自分が身を捧げ、あまつさえ全てを捨てでも仕えると誓いを捧げた完璧である存在、ルキフェルの瞳があろう事か僅か(わずか)ながら曇る、その現実を……


 オルクスは動揺を隠そうともせずに口にした。


「我が君…… お心を迷わせますな…… その心の(おり)は不肖オルクスめが解して(とかして)みせますゆえ……」


 オルクスの衷心(ちゅうしん)からの言葉に応えたのはルキフェルではなくバアルであった。


「いい覚悟だね、どの道そんな強大な魔力のままじゃ依り代が持たないからね、少し置いて行って貰わなきゃならないよ、貴卿(きけい)ほどの魔王なら真核(しんかく)を預けたとしても現世(うつしよ)での任務位できるだろう? どうかな?」


 魔王種は須く(すべからく)魔核の中に余剰な魔力を補填(ほてん)しておく真核(しんかく)を持つのが一般的である、真核の魔力は使い切っても枯渇(こかつ)することは無く僅か(わずか)にだが残留するのだ。この残留魔力によって自身に再生魔法を掛け続けることで復活する仕組みだ。


 当然アムシャ・スプンタたるオルクスも同様である、さらに七柱の兄妹弟(きょうだい)達は真核を失って尚、再生を果たす(すべ)を持っていた、真核を持たない状態で魔力の枯渇に陥った場合、周囲の命、生命力や想念、聖魔力や強い感情を吸収して復活を遂げる事が可能なのであった、この力は太古の昔、兄妹弟の行く末を案じたルキフェル自身が自らの魂魄を減らしてまで付与した物であった。


 故にバアルの提案通り、真核を預けた状態で現世(うつしよ)に赴いたとて格段の危険は無いものと思えた、だが、オルクスは難色を示したのである。


「残念ながらこのオルクスが現世に顕現するのに依り代など不要です、ですが我が君のご命令とあれば謹んで拝命するまで、弟君の仰る通り、確かに真核を持たずとも我が君の命令は完遂できましょう、さりながら、我が力の源泉とも言うべき真核を、失礼ながら()()、貴方にお預けする気にはなりませんな」


 挑発的な言葉に対してバアルの返事は意外なほど呆気(あっけ)らかんとした物であった。


「当然だろう? 真核を預かるのは兄上に決まってるじゃないか! じゃあ、それで決まりだね、任務の細かい指示は僕の部下ハミルカルから説明を受けてくれ、だけど、その前に――――」


 次の瞬間オルクスは全身を鎖で拘束されでもしたかのようにその動きを封じられてしまうのであった。

 何かの術式であることは明らかであったがその正体には見当もつかなかった。

 指先を動かそうとしても、込めた力と正反対の力によって相殺され阻害されてしまうのだ。

 呼吸すら同様の現象によってままならなかった。


「殺すと思うより早く殺さないと…… 魔神はね、殺すんじゃなくて、殺したって言うんだよ」


 不意に耳元から聞こえた声と共に体の自由が戻り、無拍で神速の剣を振るうオルクス、しかし振り抜いた先に声の主は存在せず、玉座の横から新たに言葉が掛けられるのであった。


「へぇ、無呼吸の一瞬に物質化かあ? なるほど『神速』ってのは伊達(だて)じゃないんだね! うん、良い剣だ!」


 先程と同じようにルキフェルの横で気楽な感じで佇みながら、いつの間にかオルクスが振り抜いた剣を手にしたバアルは、興味深そうに光り輝くそれを見つめている。


 オルクスは戦慄を覚えていた、切られた覚えもないのに、純白の首からは同じく真っ白な血液が滴り落ちている。


 『神速』と呼ばれる自分ですら目で追う事すらも出来ない動き、速いとかではなく転移などとも違う、まるで物理法則を無視、いや自分勝手に改変させたような術、認識や観測が一切用を為さない世界に引き摺り込まれたような感覚に陥ってしまったのだから無理もなかろう。


 あの手から剣を取り返すことなど、到底無理な事だと感じる、その時、


「『収束せよ(ソートアウト)』」


 ルキフェルの声が響き、奪われたはずの光り輝く剣はオルクスの手に戻り、切り裂かれた筈の首に付いた傷も無かったように塞がれ、流れ出た血液すらも忽然(こつぜん)と消え去ったのであった。


「あらら、面白かったのに」


「バアル! すまぬ弟の悪ふざけだ、オルクス許せよ」


「い、いいえ、勿体ない……」


「では、下がってハミルカルと言う者からの説明を受けよ、苦労を掛けるが世界の為だ、頼むぞ」


「ははっ、身に余るお言葉、お任せください、我が絶対なる真理の君よ、マラナ・タ」


 謁見の間から立ち去るオルクスの耳にルキフェルとバアルのやり取りが聞こえてきた。


「バアル、弟よ、悪ふざけが過ぎるぞ! オルクスは我が全幅の信頼を置く魔王である、事と次第によってはお前といえど……」


「ちょ、只の冗談だよ! 兄上への忠誠は変わらないってば、魂魄にかけるよ、マラナ・タ!」


 オルクスは驚いていた。

 マラナ・タ、それは人族が使うそれとは一線を画する言葉であった。


 悪魔がこの言葉を自らの主に対して口にするとき、その魂は無抵抗、消滅させられようとも一切の抵抗ができない無防備な状態に(さら)されるのである。

 心の底から信頼し、信用する者の前以外では決して口に出来ない言葉なのである。


 故にオルクスは思ったのであった。


――――あの軽薄で邪悪、得体の分からぬ魔神とはいえ、同じ主に魂魄を掛ける仲間、ということか…… 気に入らんが仕方ない、今は任務に集中する事としようか

お読みいただきありがとうございます。

感謝! 感激! 感動! です(*'v'*)

まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、

皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。

これからもよろしくお願い致します。

拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。


Copyright(C)2019-KEY-STU

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー cont_access.php?citi_cont_id=140564926&size=200



fw2razgu4upfkla8gpm8kotvd1hy_1365_xc_ir_92ne.jpg
にくい、あんちきしょう…… ~食パンダッシュから始まる運命の恋~ は↑からどうぞ



eitdl1qu6rl9dw0pdminguyym7no_l63_h3_7h_23ex.jpg
3人共同制作の現場 小説創作の日常を描いた四コマ漫画 は↑からどうぞ



l7mi5f3nm5azilxhlieiu3mheqw_qn1_1kv_147_p1vu.jpg
侯爵令嬢、冒険者になる は↑からどうぞ
~王太子との婚約を一方的に破棄された令嬢はセカンドキャリアに冒険者を選ぶようです~ 



jvan90b61gbv4l7x89nz3akjuj8_op1_1hc_u0_dhig.jpg
見つからない場所 初挑戦したホラー短編 は↑からどうぞ



異世界転生モノ 短編です
8agz2quq44jc8ccv720aga36ljo7_c1g_xc_ir_97jo.jpg
【挿絵あり】脇役だって主役です ~転生を繰り返したサブキャストは結末を知りたい~ は↑からどうぞ



小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
[良い点] バアルの独特な癖の強さがとてもよく伝わってくる内容でした。読んでいてとても面白かったです。オルクスとの探り合いにも似た攻防もさることながら、最後の一言に籠められた意味合いの微妙さが絶妙でし…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ