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堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~  作者: KEY-STU
第一部 一章 悪魔たちの円舞曲(ロンド)
27/1880

27.日直

 一人本堂に残されたコユキは太ったままで、いや自己嫌悪に陥った(おちいった)ままであった。


 何の前触れもなく、平和な日常は理不尽な襲撃者に壊され、のみならず自分を除く家族全員の自由をも奪われた。

 死霊のように青白い顔で押し黙った皆に囲まれて、確かにコユキは心から思った(ハズ)だった。

 ホラー感が気持ち悪い…… と、そしてついでに自らの手に依る家族の奪還を誓った。


 ほんの二日前の事である。


 先程の善悪の問いに調子良く答えていた時には、そんな誓い等、心の何処(どこ)にも残ってはいなかった。

 二日、そうたった二日である。

 ()しものコユキであっても分かった。

 こりゃ、人間じゃない、と……


 折角思ったのだ、試しに口にしてみた。


「あだじぃ、ぼう、じんげんじゃ……」


 余計に惨めだったし、全然慰めにならなかった処じゃない、……やらなきゃ良かった。


 泣きそうなのに、なぜか涙は出ない。

 掛け替えの無い家族が意識不明の状態で、どう言う訳か警察、公権力にも見放されてしまった。

 あの時、家族を救うために如何(いか)なる事も辞さないと、覚悟を決めたはずだった。

 曲がりなりにも坊主だから詳しいかもと、軽い気持ちで幼馴染の善悪を頼ってきた。

 

 アタシ自身が家族を助ける為のヒントを手にする為に…… 嫌な顔一つせずに、善悪は協力してくれた。

 自分が知っている事を教えてくれただけじゃなく、ご飯を食べさせてくれ、アタシが強くなる方法も考えてくれた。

 大して親しくも無いお客、一檀家に過ぎない我が家の家族を助ける為に、貴重な時間を何日も使ってくれたのだ。

 

 若しかしたら暇なだけなのかもしれないけれど……


 対してアタシはどうだ。


 やりたきゃ善悪一人でやりゃいいじゃん……?

 バッカじゃん……! むきになちゃってさぁ~……!?

 ガ・ン・バ・レ・ー・ェ・……!


 恥ずかしい…… 穴はあるから入れて欲しい…… 美少年に……


 やりたきゃ? 皆を助けたいのはアタシ自身だったじゃん!

 むきになるのが馬鹿?

 今むきにならなきゃそれこそムチムチプリンなだけの馬鹿じゃん!

 頑張れ? ちがうっ! 今言うべきは、ガ・ン・バ・ルー・ゥ・じゃん!


 そこまで、考えが至ると自分の内側からフツフツとやる気みたいな感情が湧きあがってきた。


 そうだアタシがやるんだ、善悪じゃないし、他の誰かでも無い。

 特にあのド腐れポリ公は、心を入れ替えて『手伝うよ』とか頼んできたとしても、もう遅い!

 絶対にやらしてやらん!


 それに、さっきの善悪の顔。

 あの呆れ返った様な、ウジ虫を見るような氷点下の表情。

 あの顔をされた上で、放置するとか普通に、無いっ!


 今から二十数年前、高校一年の時にアタシはあの表情で見られた記憶があった。




 その日アタシは日直だった。

 面倒臭かったが、仕事と言っても、黒板消しとホームルーム前後の担任の下僕(げぼく)役くらいだったので大人しく務めていた。


 ところが、その日はいつもと違って一つイレギュラーな事が起こったのだった。

 というのも、遡る(さかのぼる)事数日前、高校からほど近い団地でガスの爆発事故があり、四人もの尊い人命が犠牲になっていたからだ。


 行政は、犠牲者の冥福を祈る為に、(はなは)だ簡素ではあるが仮の慰霊式を行う事としたのだが、タイミング悪く今日であった。

 各クラスからは花束やお供え、手紙や千羽鶴などを日直が持って手向け(たむけ)る事になっていた。


 アタシも仕方なく男子の日直と一緒に、渋々花束片手に参加していた。

 急拵え(きゅうごしらえ)の祭壇に持ってきた花束を捧げた後は、何人かの偉い感じの人達が、犠牲者に向けて冥福を祈る的な事を語り掛けた。

 仕上げなのだろう、近隣のお寺から集められた感じの、坊主が声を合わせてしばらく読経(どっきょう)して慰霊式は終わりを告げた。


 因み(ちなみ)に、善悪ん家のおじさんは、最初こそ居たのだが、肝心の出番の頃にはどっかに行っちゃったみたいだった。

 自由でうらやましかった。


 ともかく、参加者たちは閉会と同時に三々五々、或いは学校に、又或いは職場へと帰っていった。

 死んだ人達の近しい人は来て居なかったのか、あっさりとした物である。


 人情紙風船、世知辛いねぇ……

 そんな風に思いながら、アタシもさっさと帰ろうとしたのだが、日直の相方に声を掛けられた。


「茶糖さん、ちょっとトイレ行ってくるから待っててよ」


 確かそんな台詞だったと思う。

 高校生にもなって漏らされてもあれだと思ったので、快諾し祭壇の前で何となく待っていた。

 思ったより遅いな、大かな? なんて考えながら、丁度目の前にあったお饅頭やお煎餅を食べながら暫く待っているとやがて帰ってきた。


 待っていた間にアタシも少し催したので、彼と入れ替わるようにお花摘みに向かった。

 場所は団地に隣接した児童遊具公園、通称JYパークのお手洗いだ。

お読みいただきありがとうございます。

感謝! 感激! 感動! です(*'v'*)

まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、

皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。

これからもよろしくお願い致します。

拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。


Copyright(C)2019-KEY-STU

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― 新着の感想 ―
[良い点] 真面目な話に行くかと思いきや、またコユキが碌でもないことをしたエピソードに持っていく流れが流石です。そんな急に人間変われない、という現実も見せてくれて面白かったです。思ったり言ったりまでは…
[一言] 一人本堂に残されたコユキは太ったままで、いや自己嫌悪に陥ったおちいったままであった。 →凄い表現で出鼻に読書のブーストがかかりました。 そんなスタートから高校の頃のお話になって不穏な空気に…
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