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堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~  作者: KEY-STU
第一部 一章 悪魔たちの円舞曲(ロンド)

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219/2031

219.世紀の泥仕合

本日8回目の投稿です。

1回目は『212.大魔王 アスタロト ①』ですので、

まだお読みでない方はそちらからお読み下さいませ。

 善悪が黒くなりつつある顔のままで漆黒の念珠に言った。


「ね、ねぇ! 新アンラ・マンユの君達にも力を借りたいのでござる! この善悪を助けて欲しいので、ござるっ!」


 叫ぶように告げた善悪の声に、恐らく新大罪でもリーダー的な存在のミカエルの名を(かた)っていたアスモデウス、確か日曜日担当だった子が自身なさそうに答えたのであった。


『……いや、俺達なんて…… ただの負け犬ですし…… こんな次元の違う闘いとか、えっと関わる資格無いですし…… 一番の、立派な、勝者である新大徳の皆さんが応援してるみたいなんで…… あの、えっと、……必要ないっすよね?』


 卑屈、いやヒクッツ! そう言うべきだろうか?

 先程までの自信はどこへやら、主に食い物扱いされたショックを引きずっているみたいであった、やれやれ……


「負け犬でござるか…… ぐはっ! そうかも知れぬが、人が人に負けたとしても犬になる事は無いのでござる! 君達は、少なくともこれまで、人が歩むべき(みち)(みち)(みち)の道しるべたる存在だった筈であろ? ならば! 人を導く存在であり、君たちの役目は啓蒙(けいもう)、それ以外に無い事は明白な事実でござる! グ、ぐはっ! 今こそ負けるかもしれない負けてしまった人の代表として、未知を切り開く為の一助足るべきではなかろうか? 相対的な勝ち負けではなく、今の自分より少しでも目指した明日をそう考えなければ、人としての、成長し続けるものの『(みち)』を示す事は出来ないのでは無かろうか? ぐぐぐぐぬぬぬぬっ! い、如何っか?」


「「「「「「「………… っ!」」」」」」」


 何の返事も無かった、なにも答えてはくれなかった……

 しかし、アンラ・マンユの黒い念珠は、かつて無いほどの光を放ち、手にした善悪に大いなる力を流し込んだのであった。


 旧七大徳と新七大徳双方から潤沢な魔力供給を受けた善悪は、ムッキムキの美坊主にトランスフォームを果たし、右手と歯茎にここまでに勝る力を込めたのである。

 胸鎖(きょうさ)乳突筋(にゅうとつきん)斜角筋(しゃかくきん)が強化された事で頚動脈が僅かに開き、顔色に朱が戻ったのも束の間、今度は一転して赤黒く顔面を染め始める善悪。


 何と言う精神力であろう、自分にも全く同じ苦痛が返ってくるというのに、怯む(ひるむ)事無くアスタロトの首を締め付け続けている。

 アスタロトも善悪も色こそ青と赤で違っていたが、徐々に顔が不自然に膨れ上がって行く様子も、反して首の中央が締め付けられて細められていく様も見事にシンクロしていた。


 死ぬでしょ? 見ている者がいれば誰でもそう感じるだろう状態で悪魔のアスタロトは兎も角、人間の筈の善悪までも生存しているだけでも驚きだ、密教の僧侶って凄いんだな! と改めて感心してしまう、私、観察者であった。


 なんて考えている間にも、念珠はどんどん絞まって行き、正面から見るとアラビア数字の八番目、むつかしく言えば『8』みたくなっている。

 ガクガクブルブルしている双方の内、最初に音を上げたのは驚く事に大悪魔、魔神アスタロトの方であったのだ。


「グェ、ジ、ジジィース……」


 ハッキリ聞き取れなかったが、まぁ、ギリ『リリース』と聞こえなくも無かった。

 リリースした瞬間、額から伸びて頭頂に向かって尖ったエランドっぽいグリグリ角から発せられたのは紫電の雷撃であった。


「イイイイイイイイイっ! こなくそぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおお!」


 感電しながらも善悪はアスタロトに対する絞殺を諦めていなかったようだ。

 故に続けて痺れながらもコユキに言ったのだ。


「イイイイイイイまっだ! ヤヤヤヤヤやっちまええええええええっ!」


 痙攣していたお蔭で腕力が少し増したのだろうか?

 善悪の握った念珠が初めてアスタロトの首を抉るように押し込められ、真っ青な鮮血が迸るのであった。


 ブシュゥ~ゥッ!!!!


 その言葉を受けたコユキは、なんと言うか、バリバリ、いやマリマリしていたのであった。

 善悪が苦しみながらアスタロトを追い詰め続ける苦行を目の当たりにしながらも、心を鬼にした『聖女と愉快な仲間たち』アンド神狼、サブトラクト善悪のメンバーは、助けに入りたい衝動を必死に押さえながら、只々、一途に魔力を限界まで高め、その全てをコユキに向けて送っていたのであった!


 マリマリマリマリマリマリィ!


 手に持つ筈の心強い味方、スプラタ・マンユと『真なる聖女』の証したるスプンタ・マンユも持たずに、自身に流し込まれる仲間達の力の充実に、一頻り(ひとしきり)浸ったコユキは静かな口調で言うのであった。


「……オートマタ」


 一切の躊躇無く体をアスタロト目掛けて倒れこむようにダッシュしたコユキの両手に、窓の外から勢い良く飛び戻った彼女だけの神器、スプラタとスプンタの魂が握られる。

 仲間達全員の魔力だけでなく、自身の聖魔力をも目一杯かぎ棒に込めたコユキは、美ボディと化し一筋の光の奔流となって突き進んだ。


 リフレクションを解除したままのアスタロトの肉体を屠る(ほふる)、その事だけを目的に振るわれた刃は、正しく、魔王アスタロトの胴体を四つに切り分けるのであった。

お読みいただきありがとうございます。

感謝! 感激! 感動! です(*'v'*)

まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、

皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。

これからもよろしくお願い致します。

拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。


Copyright(C)2019-KEY-STU

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[良い点] 激闘ですね。アスタロトの手強さがヒシヒシと感じられました。そして善悪の頑張りがとても見事でした。ただのオタク坊主だとしか思ってなくてゴメンね、と思った次第です。そしてこの激闘のはてにアスタ…
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