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堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~  作者: KEY-STU
第一部 一章 悪魔たちの円舞曲(ロンド)

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207/2032

207.エピソード207 宝石

本日4回目の投稿です。

1回目は『204.エピソード204 おぼこ』になりますので、

まだお読みでない方はそちらからお読み下さいませ。

 コユキのアドバイスも耳に届いていないのか、同じ事を繰り返し呟いているルクスリア。

 コユキは悪戯(いたずら)な表情を浮かべて言葉を掛ける。


「ところで死んだと思っていた二人の息子達、気にならないの?」


「あ、う、うん! ねえ、教えてあの子達は? 元気にやっていますか? ちゃんと大きくなりましたか?」


 やはり、息子達の話を出してみると、それまでの混乱もどこへやら、一人の母親の顔に戻るルクスリアである。


「ええ、元気だったわよ、ま、ちと元気すぎるかもね、それぞれガス爆発の傷跡は残念だけど、ちゃんと大きく、ってか男前に育ってたわよ」


「ああ、元気でちゃんと大人に、男前に…… そう、良かった…… 良かった…… グスッ」


 安心したのかどうやら涙ぐんでいるようだ、そんなルクスリアを安心させるようにコユキが言った。


「『憤怒のイラ』にも言ったけど、アンタの息子達が道を踏み外しそうになったらアタシが説教してやるから心配しないでね!」


「はいっ! お手数ですが宜しくお願いします、聖女コユキさん、どうか、どうか、あの子達を導いてやってください。 この通りです」


「あいよっ! 今回の件が終わったら探してみるわね! それにしてもアンタすっかり母親の顔ね? 『おっかさんのルクスリア』ね?」


「ふふふ、女は自分の身を分けた子供の前では、いつまで経っても母親以外の何者でもないのよ、貴女もいつか分かるわ」


 コユキの問い掛けに笑顔で返したルクスリアだったが、その笑みは先程までと違い、優しく外連味(けれんみ)のない母親が我が子に向ける(いつく)しみに溢れた物であった。


 ヒョッ! ヒュッ! ユラユラ   ヒュンッ!


「あれれ? な、何だ!」


 コユキが驚いた声を上げてしまったのも無理は無かった。

 これまで、暫く(しばらく)やり取りしていると、ドヒュッと外に向かって飛んで行ってしまった今までの大罪と違い、『淫蕩のルクスリア』は控えめに、最初床の方に飛んで、次の瞬間天井へと移り、その後、迷ったように揺らめいた後、フロアの奥に見える、上階への階段に向かって一直線に飛んで行ったのだから。


 ルクスリアが飛んで行って、普通の石造りの広間に変わった景色の中、コユキもルクスリアを追いかけるようにアヴォイダンスを駆使して遅れない為に階段を、ビョーンビョーンと元気に上って行ったのであった。



 魔の住まう所、恥の城、ボシェットの塔、その最上階に当たる八階層に、遂に辿り着いてしまったコユキは、自身を先導するように飛び続けていた元『淫蕩のルクスリア』を追い続けていた視線を、八階層の荘厳(そうごん)な扉に移した瞬間釘付けとなるのであった。


 ここまでの重厚な扉と意を異なったその扉は、大きさこそ控えめであったが、豪奢(ごうしゃ)さではこれまでのどの扉も比ぶべきもない程の魅力を放っていたのであった。


 人の背より少しだけ大きいだろう扉の表面には、下方三分の一程の位置に、ラピスラズリやサファイヤといった青い宝玉を敷き詰めた荒々しい海の姿が彫金細工で現され、中心に当たる中層は、海から解き放たれた白波と、中空に迎え入れる風の精霊の如き白く、輝く光、真珠か?

 パール、ムーンストーン、透明なアクロアイトやタンビュライトだろうか?

 透明と純白を基調とした宝石たちが儚さと純粋を表現するように踊り狂い、残された上層三分の一には、灼熱の業火を表したかの様な、真紅の暴、滾る(たぎる)炎熱の渦がガーネット、ジルコニア、レッドトルマリンによって描かれ、ジャスパー、ストロベリークウォーツの鮮やかな赤味が、真紅の頂点、レッドルビーを称え立つように、炎、全てを喰らう焼失による簒奪(さんだつ)の意思を、褒め称えるかのように燃え上がらせていたのであった。


 ルクスリアを一所懸命に追っていたコユキはフラフラとその扉に近付いていった、まるで何かに魅了されてしまったかのように……


 そうして、扉の前に立ったコユキは、扉の上段、最も高い位置に飾り付けられた、一際大きなルビー、その場所に向かってコリコリ、ガリガリ、握り締めてグアァーグアァーと力一杯、外して持って帰ろうとしていたのであった。


 ウィィーン


「コユキ殿? えっと、何してるでござるか?」


「サンセンチ、ナニシテンノ?」


 不意に聞こえてきた懐かしい、いや、いつも聞いている声に、コユキも仕方なく指に込めていた力を緩め、そちらを向いて言うのであった。


「善悪、オルクス君、皆も…… このでかいルビーが外れないのよ…… 持って帰って売れば億は下らないと思ってね! ってか、アンタ等速かったわね? 階段凄かったでしょ?」


「カイダン?」


 首を傾げるオルクスに代わって善悪が答えた。


「拙者達はエレベーターで上がってきたのでござるが、気が付かなかったでござるか? 一階の右側にあったでござるよ~?」


「は? エレベーター? そんなのあったの?」


「うん、有ったでござるよ、普通に…… まさか、コユキ殿…… 登って来たの? 一階一階…… えっと、馬鹿みたいに?」


「くっ!」


 コユキ惨敗の巻! であった、しかもルビーも取れないし…… トホホ……

お読みいただきありがとうございます。

感謝! 感激! 感動! です(*'v'*)

まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、

皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。

これからもよろしくお願い致します。

拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。


Copyright(C)2019-KEY-STU

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[良い点] エレベーター落ちが素晴らしかったです。賢さすら見せ始めていた中、間抜けさを露呈したコユキがとても面白かったです。そして、がめつい。本当にがめついですね。魔界のルビーを金にしようだなんて。コ…
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