2021.残酷な真実
暗澹たる気持ちでとぼとぼ歩いていたギレスラの前に、ギラギラと周囲の景色を反射する空間が現れた。
サイズ的に逢魔ケ原の奥で見た鏡面状の行き止まり、つまり防衛設備である事が判る。
それが東京ドーム二十個分の平地に直立しているのだ、当然縋るべき壁面は無い、只、鏡的な空間だけがそこに浮き出ているのだ。
一瞥したギレスラは思わずといった風情で呟く。
『しすさん、いやバアル式オートロック機構搭載型クラック、なのだ』
『やっぱりこれがバアル式オートロック機構搭載型クラック、なのね……』
『うむ、バアル式オートロック機構搭載型クラックに間違い無いのだ』
長いからもうしすさんで良いんじゃないか?
周囲、とりわけ至近な場所で汗を拭っていたドラゴンや獣人達は興味深そうに鏡面を覗き込んでいる。
『ここにレイブお兄ちゃんは入っていった、そうなのね?』
『うむ、後を追おうとしたカメムシのキトラパッパは排除され掛けて皆とばっちり、で、今に至る、なのだ』
『なるほど……』
野次馬達は少し離れる、賢明な対処だろう。
逆に身を乗り出したのはカメムシのキトラ長老だ。
『それがおかしいんじゃよ! 『聖女と愉快な仲間たち』の正規メンバーな筈の儂が入れなかったのじゃあ!』
『うん、それはアンタが只の物、腰蓑、つまり道具に過ぎない存在だと認識されていたからだと思うわよ』
『ど、道具、じゃと? ば、馬鹿なっ!』
『アタシじゃ無いわよ? アンタが仲間だと思っていた、『聖女と愉快な仲間たち』、が、アンタの事をそう思っていたって事! よ! 判る? ドューユーアンダスタン?』
ばっさり…… カメムシの長老キトラは俯いたまま小さく返す。
『あ、アイシー…… グスッ』
自ら名付け子を自称しているギレスラは即座に慰める、それはそうだろう、もう家族なんだからな、さもあらん。
『ぱ、パッパは悪く無いのだっ! パッパを単なる使い捨ての幾らでも代わりがきく道具だと思っていた『聖女と愉快な仲間たち』正規メンバー達が悪者なのだっ! 却って良かったのだ、そんな奴等の仲間じゃなくてっ! な? パッパ?』
『ウ、ウアアーン! シクシクシク……』
『え? 何? 何故泣くのだ? 薄情な奴等との縁は無事切れたのだぞ? ってか元々繋げられてはいなかったのだ♪』
『ウッ…… ウゥウゥッ、オーウオイオイオイ、オーイオイオイオイ!』
『グガァッ?』
やめてやれ…… もうこれ以上は彼には触れないでいてやってくれ……
お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です(*'v'*)
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。
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