2020.ギレスラって
無論、この間に足を投げ出したままで阿呆丸出しでいる程ギレスラも馬鹿では無いし自尊心だってあるにはあるのだ、多分。
彼は彼で、最初クラックに侵入した仲間たち、次々と目覚めてはポケーッとしているメンバー達への薫陶に忙しく過ごしていたのである。
独り独り丁寧にねちねちと説教を偉そう且つ自分の事は棚に上げるスタイルで言い続けた結果、クラック探検隊の初期メンバーはバラバラに瓦解、解散へと追い込まれてしまった。
切欠は注意力不足と生来の迂闊さを責められていたパダンパが不意に立ち上がりその場を勝手に離れていった事である。
慌てて呼び止めるギレスラに彼が自分の鬣を指差しながら返したセリフは、
『ちょ、ペトラ叔母さんに花見せてくるっす! 白のが毛色にマッチする筈なんすよっ!』
であった。
その後、同じく迂闊で軽率な行動で一行をピンチにしたと怒鳴られたミロブロは、軽い会釈と舌打ちを残してペトラを手伝いにいってしまい、狭小な場所で巨大化した事を攻撃されたグラムランドは、
『文句はそのバッタに申せ』
の一言だけを返すと、騒ぎに集まって来たドラゴン達を指揮して撤去作業に加わり、夜虎のレオニードも当然の様にその背を追って行ってしまった。
残されたカメムシは名付けのパッパで、バッタはとても強靱だ、仕方なくギレスラは正座をして自分自身の過ちと向き合う事にするしか無かった。
暫らくして、足が痺れて正座を崩し、バッタとカメムシと仲良くボーッとしていたニーズヘッグは妹豚猪の声に振り返るのである。
『鏡? なんかそれっぽい奴が出て来たわよギレスラお兄ちゃん』
『ンガッ! そ、そうか…… えっと、お、お疲れ様? なのだ……』
振り返った先ではドラゴンと魔獣、獣人達が揃って泥だらけになり汗を拭う姿があり、ギレスラは気まずそうに、そして眩しそうに目を背けたのである。
手伝えば良かった、そんな言葉を素直に口に出来ない自分を恥じたギレスラは、先に立って案内をするペトラの漆黒の背中、そこに飾られた純白のフウロソウを眺めながら声を発する。
『ず、随分手際が良かったのだ…… もうちょっとしたら我も手伝おうと思っていたのだが……』
『そうなんだ? でもギレスラお兄ちゃんが言った通り、壊しちゃったのはアタシだから』
『ンガッ、それは本当にそうなのだ』
『でしょ? アタシそそっかしくてゴメンね』
『うむ、今後はもっと慎重に行動するのだ』
『でも皆が手伝ってくれて嬉しかったわ』
『ふ、ふんっ、脇役共がたまには役に立たねばならん、そう思ったのではないか? わざとらしいのだ』
言いながらギレスラは自分の事が嫌いになったし、周囲でこのやり取りを聞いていた者達も漏れなく赤いニーズヘッグを大嫌いだと思った、これも暗黒時代のなせる業なのだろうか。
ここにレイブがいれば豪快に自分を怒って周囲の同情がこちらに向けられるのに…… そう考えて更に自己嫌悪に陥りつつもどこかで誰かに責任転嫁をしてしまう、人に限らず竜もまた弱い生き物なのだ。
お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です(*'v'*)
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。
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