2005.様式美
『ジージジジッ、ジッジッジー!』
『テューポーンさんの言う通りなのだっ!』
いやだから判らないってばっ! 当たり前に進めようとするなよなっ!
「確かに……」
「済みませんでした」
『儂も大人気無かったのう、許せよ?』
『まあ誰が悪いとかじゃ無くねっすか? ほらこれからお互いに気を付けるとか? そっちのが建設的じゃないっすかね?』
『レオ、お前の息子も立派になったでは無いか!』
『ああいつの間にか…… フフッ、ついこの間まで子供だ子供だとばかり……』
…………そうか、全員判っている態で行くんだな? それで良いんだな? 言っておくがオーディエンスの皆さんにはちんぷんかんぷん訳ワカメだかんなっ! 本当に良いんだなっ、お前等っ!
『じゃあまあもう一度チャレンジするかのう、但しっ! 後ろから押すのは駄目じゃからな! あくまでも儂のペースで儂なりのタイミングで飛び込むんじゃから! 押すなよ、絶対にじゃぞい、良えな?』
再挑戦するらしい、兎に角進むのは善として、キトラの言葉に無言で頷きを返す一同も真面目な顔付きを揃えている、心強い。
再び一直線に整列した一行はキトラ自身のタイミングとやらを待って、タレントのバンジーを見守るテレビクルーみたいな感じである、固唾を呑む瞬間だ。
『良し!』
何が良いのかは皆目見当が付かないが恐らく自分なりに覚悟が決まったのだろう、しずしずと前回よりも慎重に歩を進めたキトラは次の瞬間、頭から鏡面に衝突した。
『痛ーっ……』
『ジジジーッ♪』
ウズラカメムシの成体は尖った頭の先端が鋭く前方に湾曲している。
そこから突っ込んだキトラのダメージは小さくない、触覚も少し折れてしまっているようだ、重傷だと言えるだろう。
普通のカメムシ、若しくは虫ベースの魔獣であれば即死レベルだがそこはそれ、中身が四聖獣で悪魔入り、しかもダメージ軽減スキル持ちなキトラだからこそ痛い位で済んでいるのだ。
しかしながら痛いものは痛い、健康な証だ。
生物にとって痛みとは生命の危機を回避する為に必要不可欠な警報システムに他なら無いのである。
だからキトラは厳しさ満点で叫んだ、とても痛んで生命維持ギリギリだったのだろう!
『痛っ…… 誰じゃゴラァっ! 押すなって言ったじゃろうぐぁっ! 何じゃっ! この中に言葉の判らん馬鹿でも居るんかっ! いやっ! 居るなっ! 誰なんじゃいっ!』
再び感情の起伏がマックスを指した、それ位痛かったのだろう。
お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です(*'v'*)
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。
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