2002.絶対者
判別は魔力紋、しかし念の為声も出すな、相手はあのバアルじゃ、一筋縄では行かぬ魔神じゃぞい、整列前のキトラが真剣に言い聞かせた結果、誰一人咳一つ洩らす事無く沈黙のままズリズリと前を追って窮屈そうに進んだ結果、
『ちょっ、ちょっと待て! 押すなって、押すな…… 痛っいなーっ! 押すなと言っとるじゃろうがっ!』
『『『『「「…………」」』』』』
キトラが切れた。
理由は鏡面に辿りついたキトラが不意に停止し、背後の面々がそれと気付かずに押し込んでしまったからだ、即席での共同作業にありがちな事故である。
『待てって言ったら待てよ! 新品の依り代が潰れるかと思ったぞいっ!』
『『『『「「…………」」』』』』
『まあええわい…… 一旦仕切り直しじゃ、ほれ、下がるのじゃ』
『『『『「「…………」」』』』』
無言のまま、一列縦隊でとぼとぼ後退したメンバーはスタート地点まで戻るとこれまた無言で停止した。
独り、列から外れて振り向いたカメムシは残りの全メンバーに向けて言う、厳しい口調だ。
『先頭の儂が待てと言ったら待て、押すなと言ったら押すな、良いな? 言い付けを守らん者は連れて行かんからな? お留守番は嫌じゃろう?』
全員が無言のままで頷いた。
カメムシキトラはご満悦な表情で言葉、いや薫陶っぽいスピーチを続ける。
『じゃったら儂の言う通りにするんじゃのう~♪ 何しろ儂だけが元『聖女と愉快な仲間たち』正規メンバーじゃからのぉ~♪ ふぉふぉふぉ、立場の違いを良~く噛み締めてな? 儂を敬うんじゃぞい? ケタケタケタケタ!』
『ちっ!』
高慢なカメムシの増長し過ぎた態度、普段の立場からか思わず舌打ちを洩らしたのはグラムランドである。
『……何じゃ? まさか、この儂、『聖女と愉快な仲間たち』正規メンバー様である、このキトラに文句でもあるんじゃあるまいの~? あっ?』
『『『『「「…………」」』』』』
無言のままの面々は気まずそうに視線を逸らしているが、自分の言葉で立場による絶対的優位を再認識したキトラの言葉は止まらない。
『お前に話しているんじゃぞい? トカゲ』
『ンガっ? わ、我は何も言っていないのだっ!』
『お前じゃ無いわいっ! のぅ、竜王陛下』
『くっ……』
『何じゃっ? あぁっ? 良いぞい、言ってみいっ! ほれっ、言わんかぁっ! あ゛ぁ゛っ!』
『な…………』
『なにぃっ? 聞こえんぞっ?』
『何でもありま、せ、ん……』
『けっ! 根性無しめがっ!』
『くく……』
『る、ルッカ…………』
さしもの竜王陛下も絶対者の前では無力だ、幼馴染のレオニードは自分と同じサイズまで縮んだグラムランドのルッカ、その肩にそっと手を置いて慰めるしかなかった。
お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です(*'v'*)
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。
Copyright(C)2019-KEY-STU









