1866.さっきの敵は
混迷は度合いを増している。
死んだ様に虚空を見つめ続けるレオニードは、穴と言う穴から体液をダダ漏れさせながら、時折全身を細かく痙攣させていた、そろそろな感じ、そう表現すれば判り易いだろうか。
近くで様子を見つめるレイブとギレスラは彼の変化に満足気な表情を浮かべていた。
効果あり、そう判断した兄弟は、一仕事終えた雰囲気で今後の成り行きを野次馬気分で観察中なのだ。
ビクンビクンしているレオニード、その耳汁塗れになった側面からレイブが大声で問い掛ける、多分見ているだけに飽きたのだろう。
「なあレオニードの兄貴っ! 今どんな感じ? 何か聞こえてるんだよな? なあなあ!」
ギレスラも続く、飽きていたのだろう。
『アスタさんに聞けたのか? 存在とか万物の意思とかなんとか、で、どうだ? 我の声だったのか? それともレイブっぽかったのか?』
『アブブブブ、アブブブゥ』
返事と言うか、顔面の振動による不審音しか発せられないレオニード、もうちょっとだ。
おつむの具合があまり良ろしくない兄弟は息を飲みつつ次の声を待っている、もうっ、本当に……
中はガヤガヤ、外はシーン、これなーんだ? 状態のレオニードに気楽な音曲が近付いて来た。
『ピー♪ ピピピー♪ ピピー♪ あら?』
口笛、いや鼻笛の主はスリーマンセルの賢い担当、ペトラであった。
機嫌が良い理由は一目瞭然、突き出した巨大な鼻の上部で、器用に踊る二粒の木の実、そう、紛失していたドングリを見事に見つけ出せたお蔭だろう。
ウキウキでご機嫌な四足歩行のスキップを目の前で止めたペトラは言葉を続ける。
『何コレ? レオ兄さん死に掛けてるじゃない! 何? 殺る事にしたの、お兄ちゃん達?』
物騒な妹の言葉に返すレイブはまだ小声のままだ、恐らくレオニードの返事を待ってでもいるのだろう、全く。
「何でだよ、殺したりしたらカーイソーじゃんか、パリーグ姉さんの旦那、俺達の兄貴なんだぞ?」
『ふーん、じゃあ何してんの?』
基本的にレイブを模範としているギレスラも小声だ、全くもう。
『今はレオニード兄さんの返事を待っているのだ、我々の魔力に含まれるアスタさんと会話中でな…… 丁度良い、お前も一緒に待つが良い』
『へー、でももう死んじゃうわよ? 一旦救っといた方が良いんじゃないの? カーイソーだし? でしょ?』
「『え?』」
どうやらレオニードが死ぬとは夢にも思っていなかったらしい…… ペトラは溜息と共に返す。
『はぁ~、じゃあ取り敢えず魔力を吸い上げちゃうわよ、その後必要そうならヒールを掛けてあげるわね』
「え、ああ、うん、そうだな……」
『レイブ、アスタさんとのお話はどーするのだ?』(コソッ)
「一旦おいて置こうぜ、カーイソーじゃん? なっ?」(コソソッ)
『はぁ~、じゃあ助けとくわよ?』
「お、おう、頼むな! えーっと、お、俺達はそうだっ! 旅立ちの支度でもすっか? い、行こうぜギレスラっ!」
『うむ、む、無論だ、ミロンにブロル、それにパダンパ、付いて来るのだ』
「「ははっ」」
『っす! あ、でも支度だったら殆ど済んでるっすよ?』
阿呆と阿呆の仲間たちはこの場を離れた、良かった。
お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です(*'v'*)
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。
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