1838.愛玩無限
しかし、効果の大きさ確かな実績、それ故分派も多く傍流も数え切れない。
何れの流れを汲んだヘソ天か、見抜くのも又、簡単では無いのがこの時代、なのである。
ちっ、んだよ…… 流派とかわかんねーのかよっ! エンジェルス時代かドジャースか、はたまた日本ハムか花巻東か、んな事俺でも判んだけどなー!
ふっふっふふふふ、ご安心頂きたい。
古今東西、灼熱の南も最果ての北も、観察し尽くした私、観察者にとってはヘソ天の流派如き赤子の手を捻る、いや、新生児のへその緒を引き千切って窓から放り投げる位に容易いのである、えっへん。
えーっとぉ、これはぁ…… 顔を横に背ける事無く視線だけ明後日の方に向けて、腹部はそれとなく膨らませている、それにニィニィと鳴く声も途切れる事無く一定の間隔を守っているからぁ…… うんっ! これはジバニャン流の主流、トムさん派に属するノンタン一派、恐らく三世宗家から袂を分けた彦根門派…… つまりっ、真・ヒコニャン・実践ヘソ天の秘奥義、愛玩無限っ! それに違い無いっ! どうだっ!
私、観察者の目利き、鑑識眼の成否は兎も角、この正統な『ヘソ天』を無視出来る脊椎動物は殆どいないだろう、愛でざるを得ない、その為だけに編み出された必殺の絶技なのだから……
案の定、殺戮を宣言したボア、ペトラは猛進していない。
ゆっくりと歩み寄る姿からは凶悪なラミングの意思は消え去ったかに見えた、良かった。
これが『ヘソ天』の力だ、完全服従の表現に可愛らしさ、更には憐憫を無理やり想起させる鳴き声、発生初期の生物だけが持つアザトさ、それらを再演可能な唯一の種、ネコ科だけに許された回避不可なスキル、それがベリーアップの進化系、ベリートラップに他ならないのだ。
腹の罠に捕らわれてしまえば、最早抵抗は無意味、いや悪足掻きに過ぎない。
言うなれば、リモートワークで想定を大きく下回る結果しか出せなかった職員が叫ぶ、
「ち、違うんです! 決してサボっていた訳では無くてですねっ! キーボードに乗ったウチの子を愛でていたら…… そのぉ……」
「何だと言うのかねっ! はっきりと言いたまえっ!」
「あの、その…… いつの間にか納期を過ぎていたんです……」
「はぁ?」
『ニャーン♪』
「あらあらあら、どうちたのかなー? よちよちよーち♪」
「ちょっ、き、君ぃっ!」
ブッ、プープープー
こんなコロナ禍で勃発した数多の事件の原因になった時間経過を忘れさせる悪質で強力なスキルなのである。
お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です(*'v'*)
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。
Copyright(C)2019-KEY-STU









