1807.手向けのグルグル
驚き返しで目を剥いたレオニードにレイブは親切かつ手短な説明を始めた。
大体、レオニードの主役的な価値、及びその周囲に偶然居合わせた脇役たちの存在意義の希薄さ、加えてこれから起こり得る様々な危機に対する為、延いては全常識あり、かつコミュニケーション可能な生命体にとってより有益な生き方を貫き大いなる目的達成の為には、他ならぬレオニードの覚醒、つまりグルグル習得が必要不可欠である! そんな感じの内容であった。
レイブは力強く強固な意志を込めて言葉を締め括る。
「この脇役たちの為にもグルグルを憶えるのでっす! それがこの死んでいった弱者達への手向けに他なりまっせん! オケイ?」
『え! あ、ああ、まあオケイだが…… 脇役に弱者って……』
「では始めてくださいっ! さあっ、声を合わせて! グルグルグルグル、はいっ!」
『お、おう! ぐ、グルグル?』
「恥ずかしがらないっ! 大きな声でっ! グルグルグルグル、はいっ!」
『ぐ、グルグルグル! グルグルグルグル! こんな感じか?』
「悪くは無いです! さあ、顔が元通りになるまで続けて」
『っ! グルグルグルグル、グルグルグルグルグル!』
悲しみを一旦横に置いてレオニードは一心不乱にグルった…… それは主役だった自分の為に道半ばで倒れた脇役達、殊更、息子への贖罪と感謝、そして未来を背負う義務感と主役補正による強烈な責任感を具現化しているかの様であった。
続ける事、小一時間。
言い慣れないグルグル発声は舌の筋肉を疲弊させ、やがてグゥグゥ、そして鼻が詰まってしまった事で鼻濁音まで失ってウゥウゥへと、程無く言葉ですらなくなって行ったのである。
この間レオニードの膨れた顔の真ん前に立ち続け、励ましと叱責を繰り返して来たレイブの声が響く。
「ゴロゴロと喉を鳴らしたって仕方が無い、そー言ったよな? サボらずグルグルやらないとっ! それとももう飽きたの? かぁーっ、見下げ果てた根性無しだな? 良いのかそれで? 良い訳無いよな? ほれ、さっさとやれよ、死んだ皆ががっかりしているぞっ!」
『gorogorogoro…… グルグウルウルウゥウゥ、はぁはぁ、す、少し、や、休まないか? ほら、皆の亡骸だって、はぁはぁ、放置して置く訳にも、い、いかんだろ? ふぅふぅ』
お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です(*'v'*)
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。
これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。
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