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堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~  作者: KEY-STU
第一部 一章 悪魔たちの円舞曲(ロンド)
16/1836

16.ネルソン・マンデラ

 庫裏(くり)の中の居間に上がり込んだコユキは、座布団の上にどっかりと腰を下ろした。

 不安な気持ちを誤魔化す様に、座卓の上にあった茶菓子を次々と口の中へ放り込んでいく。

 善悪に弱い自分を見せたくなかったのに、我慢出来なかった。


 悲しいやら悔しいやらで、


「……なんか、いかにも坊さんのお菓子って感じっ」


フンッ、と鼻を鳴らし文句を言ったが…… 菓子に文句って。


 塩羊羹、六方焼、栗しぐれ、ぱり○こ…… そして塩羊羹、おっ、アルファベ○トチョコ発見、やったラッキ~……


――――もう、最悪、こんな時でも食欲ばっかりだよ、アタシ……


 コユキは、また泣きそうになるのをグッと堪えて誤魔化す様に大声で叫ぶ。


「……ぜ、善悪ーぅ! まだぁっ? こんな事してる場合じゃ無いんだってばぁっ!」


「はーいはい、ただいま~♪」


 お盆には大きめのグラスが二つ、一つには氷入りの麦茶、もう一つにはカ○ピスだ。


「お待たせ~! はい、コユキ殿っ! ちゃんと八対二で割ってあるから安心するでござる」


 もちろん八が原液、二が水である、コユキの好みを知り尽くした幼馴染の気遣いが有り難い事このうえない。


「ふぅ、もう喉カラカラだよ…… ありがと」


 コユキの中では濃いめよりの薄すめ、一般で言う所のどちらかと言えば濃いめ、のカル○スをグビグビと一気に飲み干した。


 善悪はコユキの向かいの座布団に腰を下ろした。

 座卓の脇にお盆を置いた動きに続いて、ツイっとコユキにほど近い畳に何かを置いた様である。

 見てみると、そこには新品と(おぼ)しいピンクのソックスが置いてあり、更にその上には大判の絆創膏が二枚乗っているではないか。


――――あ、(かかと)の…… そっか


 善悪のこうした細やかな気配りに、コユキは小さな頃から毎回感心させられて来た。


――――憎い程、気が回るのよね、それに相手を恐縮させ無いさり気無い所作、あくまでも自然体に影響しない絶妙のタイミングで…… 昔から、こいつのこういう所って、素直にモノ凄いって思う! 何となく、人としての格って言うか、魂の位階が違うって言うのか? うーん? 僧侶って職業だから、当然って言えばそうなのかもだけど、単純に坊主だから出来るとは思えないしぃ…… 尊敬するし、アタシももっと大きくなったら(今以上?)見習ってみたいと心から思う! でもでも、今大事な所は…… そこじゃないっ! 今一番に確認すべき事は……


「ねえ、善悪? なんで女物の靴下とか持ってんの? あんた()しかして…… 女そぅ」


「拙者のママンの物でござるっ! (ちな)みに新品でござる」


 喰い気味に答えられた。

 本気度から見てマジだな…… 善悪に対する疑惑は晴れた、良かった。

 しかし、コユキは小首を傾げて、再び善悪へと疑問を投げ掛けたのである。


「そういえば、善悪ん家のママン、いや、おばさんは? それにおじさんも! 今、奥に居るの?」


 言葉にした瞬間、不意に目の前の善悪から表情が消えただけでなく、眉間に皺を寄せ、大きな体が小刻みに震え出したではないか。


「っ!」


 コユキは理解した。


 二十年近く引き篭もっていた身では、ご近所の慶弔(けいちょう)には(うと)くなっていても当然だった。

 主な情報源はインターネットのニュースなのだから。

 ネルソンマンデラの訃報(ふほう)に涙を流して悲しんだコユキであっても、善悪ん家のご不幸には気付けなかったのだろう。


「ごめん、善悪…… なんか悪い事聞いちゃったよね…… あたし今自分の事でパニクっちゃってて…… ごめんね」


 コユキが申し訳なさそうに言うと、善悪は俯いたままゆっくりと顔を左右に振った。

 そして、無言のまま立ち上がると、部屋の端にある戸棚に向かい、引き出しの一つから数枚の写真を取り出した。


 再びコユキの前に腰を下ろした善悪は、写真をコユキの手前に置いて口を開いた。


「これを」

お読みいただきありがとうございます。

感謝! 感激! 感動! です(*'v'*)

まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、

皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。

これからもよろしくお願い致します。

拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。


Copyright(C)2019-KEY-STU

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― 新着の感想 ―
[良い点] お菓子の種類多すぎっ!(笑)さすがコユキの友人、よくわかっておられる。しかも、ママンって。さりげないギャグが散りばめられていて今回も、楽しかったです。 [一言] 善悪の口から何が飛び出すの…
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