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堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~  作者: KEY-STU
第一部 一章 悪魔たちの円舞曲(ロンド)
154/1852

154.How delicious! ②

 鈍すぎる太ったコユキは苦しんでいたが、そんな事を気に止める事も無く、木々の間から初老の男が現れたのであった。

 善悪の厳し目の問い掛けにも、その表情を一切変える事無く、渋いオッサンは歩み寄ったが、その背には、一般人ならお目に掛かる事は無いであろう、凶悪に見える『猟銃』が背負われていたのであった。


「ああ、ごめんな、名前か、俺ぁ狩野(カリノ)狩野(カリノ)猟師(リョウジ)ってモンだが、あんた()は? 罠師(わなし)かい?」


 人懐っこい声を聞いて、漸く(ようやく)善悪は警戒心を僅か(わずか)に緩めたようであった、群れを率いるリーダーとして心強いことこの上ない。


「ふぅ、猟師さんでござったかぁ、我々は、ただのハイカーでござるが、こんな場所で一体何を狩ろうとしていたのでござるか?」


 シラっと嘘を()いて誤魔化した善悪の問い掛けに、まんま猟師の『狩野(カリノ)猟師(リョウジ)』は答えた。


「ああ、害獣駆除、平たく言えば、鹿と猪の駆除だな、あんた等は、ハイカーがこんな所まで来る訳無いし…… そうか、アライグマの駆除で来たのか!」


 コユキのキャップの神聖なアライグマ、神様の姿を目にして、その上で駆除とか、良く言ってくれっちゃってる(ジジイ)であった。

 内心でソワソワと落ち着かない気分になっている(※理由は分かっていません)コユキに構わずに、狩野は言う。


「なんだか良い匂いがしてたからよ、キノコ焼いてんのかー! 美味そうだな~」


 中々に図々しい発言だけでなく、あからさまに喰わせろ、そんな表情を浮かべ、グイグイと来るもう良い歳をした狩野であった。

 コユキは軽くムカついていたが、そこは常識人だと自分で思い込んでいる善悪が、大人の対応を見せたのである。


「もし良かったら狩野氏も一緒にどうでござるか? 大勢の方が美味しいのでござるし」


「ちょ、善悪――――」


「お、いいのかい♪ じゃあ、御相伴(ごしょうばん)にあずかるとするかな、ちょっと待っていてくれ!」


 善悪の誘いにコユキが非難の声を上げ掛けたが、狩野は嬉しそうな声を上げると、元来た薮の中へと戻って行った。


「ちょっとぉ、何よ善悪ぅ、キノコ減っちゃうじゃないのよぉ」


 意地汚い事を堂々と主張したコユキ。


「まあまあ、安心するでござる、名付けて『エビで鯛を釣る大作戦』でござる」


 何やら企みがあるらしい、いつも以上に悪そうに笑っている。

 コユキが小首を傾げていると、先程入って行った薮から、狩野がガサガサ音を立てながら戻って来た、手に一塊(いっかい)の鹿肉を持って……


 コユキは、突然のジビエの登場に目を見張って思わず言葉を発する。


「えっ? そ、それ、どうしたんですか?」


 狩野は笑顔を浮かべて答える。


「これかい? 今朝撃った鹿だよ、この先の林道に止めたトラックの荷台でバラしてたんだ。 こいつも一緒に焼いて食べようと思って持ってきたんだが」


「おお、これは見事でござるな! ささ、座られよ! 互いに遠慮無しで頂くのでござる!」


 どうやら善悪の目論見通りの展開だった様で、一瞬コユキの方へ向けた表情はニタリとしていて、如何(いか)にもしてやったりといったものであった。


 そう、何度も言っているが密教の僧侶として修行に明け暮れてきた善悪には、狩野に付着した獲物、今回で言えば鹿肉の匂いを嗅ぎ取る事など造作も無い事であったのだ。

 コユキは胸中で唸るしか手を持たなかった。

 思ったのだ、思ってしまったのだ。


――――策士、ここに極まれりね…… ここに至って否は無いわね、ふっ、いいわ、アンタこそイマコウメイ、今日から呼ぶよ、ショカッツ(諸葛)とね……


 そして二人は、狩野の持ちこんだ、臭み皆無の鹿肉をお腹一杯堪能するのであった。

お読みいただきありがとうございます。

感謝! 感激! 感動! です(*'v'*)

まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、

皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。

これからもよろしくお願い致します。

拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。


Copyright(C)2019-KEY-STU

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― 新着の感想 ―
[良い点] さすが善悪ですね。目先の食欲にとらわれない深謀遠慮、素晴らしかったと思います。浅ましさを剥き出しにしている、コユキとは五十歩百歩なのは間違いありませんが。そして、名前が、ハンターさんのお名…
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