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堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~  作者: KEY-STU
第一部 一章 悪魔たちの円舞曲(ロンド)

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147.わらわら

 秋田新幹線を降りたコユキは、大急ぎで大名旅行の代名詞、タクシーをチャーターして八郎潟(はちろうがた)へと向かうのであった。

 到着と前後するように、顕現した水生生物を依り代にしたであろう化け物達は、これまでの仲間、スプラタ・マンユ達とは少し違って見えた。


 何と言うか、野生? いやそんな普通の感覚ではなく、より邪悪な存在である事が、ヒシヒシと伝わってくる。

 思わずコユキは、ポッケに入れたアヴァドンを握り締めて言葉を(つむ)いだのであった。


「ヤバメの気配を感じるよ、アヴァドン君! 大人しくしていてね! アタシが何とかするからね!」


『……御意!』


 そんなやり取りをしていると、八郎潟の水辺から、ザバザバと姿を現した悪魔たちは、揃って、アジ・ダハーカの劣化版、一つ首の弱そうな蜥蜴(トカゲ)の様な姿をしていた。


  凶悪か凶悪で無いかと言えば、そりゃ、一般に生きる善男善女には脅威であるに否は無い!

  だって、パッと見リザードマンっぽい化け物だからね!

 まぁ、パズスとかアジ・ダハーカとかシヴァとか、ましてやアヴァドンとか、超弩級(ちょうどきゅう)の悪魔達を目にして来たコユキからしたら普通って言うか、大したこと無く感じられたのが正直な感想だった。


 八郎潟から、姿を現した悪魔達の総勢は、四十六体の蜥蜴(トカゲ)又は鶏の様な姿をしていた。

 よっしゃ! アタシが何とかするよって、気合を入れたコユキに対して、ポッケの中のアヴァドンが意見を頭の中に送ってきたのであった。


『コユキ様、この程度の相手であれば、私如きでもお役に立てるかもしれませぬ、宜しいですか?』


 コユキは思わず答えた。


「え? いいのん? まあ、何か出来るんだったらやってみて欲しいけど……」


 その適当な答えを聞いたアヴァドンは勇気凛々(りんりん)な感じで声に出したのであった。


『ひれ伏せ! 愚かな下賤(げせん)の者共よ! 我が声は命の(ことわり)! 我が怒りは天地の怒りであると知れ! 小さく弱き者共よ、只震えて刻め、その記憶に魔王種の恐怖を!』


 その言葉を聞いて、トカゲとニワトリ達は一斉に(こうべ)を垂れて、敵対の意思を消失させた。

 半数位は、もう、何ていうか、ヘソ天状態で完全に従属の意思を見せている。

 どうぞ! とアヴァドンの声がコユキに届いた。

 え? いいの? って感じでサクサクやっていたコユキにアヴァドンが自慢げに答えた。


『このレベルであれば我等スプラタ・マンユにとっては何と言う事はありませんよ! 特に我等が長兄オルクスにとっては息をするよりも容易い(たやすい)事であろうかと……』


 その発言にコユキは頭を抱えるので有った。


――――えー!! オルクス君って全然違うんだけどなぁ? この子達って本当に分かっているんだろうか? ハテナだよねぇ?


「? ん、あれれ? この子達の石は赤いのね? なんでだろう?」


 周囲に散らばった石を拾い集めようと近付いたコユキが疑問の声を上げた。

 ここ最近は、スプラタ・マンユ以外の『馬鹿』で顕現した悪魔的な生物からは透明な石しか出てきていなかったからだろう、赤い石を不思議そうに見ている。

 確かにスプラタ・マンユの赤い石と比べて、透明度も鮮やかな色調も変わり無く見える、一転大きさはかなり小さく小指の爪位だった。


 コユキの頭の中にアヴァドンの声が響いた。


『まあ、小者とはいえ単体の悪魔ですからな、魔核は勿論、(なまり)ベースの赤なのです。 野生動物は珪素(けいそ)ベースの石英(せきえい)、平たくいえばガラスな訳です』


 ん、んん! 今何かシラっと重要な事を言った気がするが、引き続き慎重に観察を続ける事にしよう。


「へぇ、そうなんだ~、でも、トカゲもニワトリも区別無く全く同じ大きさの石なのね?」


『ええ、こいつ等同じ下位悪魔(レッサーデーモン)なのですよ、鶏の方が雄、蜥蜴が雌、それぞれコカトリスとバジリスクと呼ばれてますね』


「えっ? それってあの有名な? ん? じゃあ()しかして視線を合わせてたら……」


『はい、石化しますね』 


 さも当然の様に声を届けてくるアヴァドンに、口をあんぐりとさせた後コユキが焦ったように言う。


「ちょっと、ヤバかったじゃないの! そういう大切な事は最初に教えて置いてよね! コユキショックっ!」


 コユキショックに陥ってしまったコユキに対して、一層気楽な感じの声を響かせて答えるアヴァドン。


『ははは、この程度の名無し如きの放射エネルギーで、我がマラナ・タがどうにかなる訳もございません、むしろこいつ等が石化するほうが理解出来ます』


「え! そ、そうなの?」


『はい、お二人揃って居られれば可能であると思いますよ』


「? ふ~ん? そう、なの、か…… ?」


 まだ良く分かっていない表情を浮かべてはいたが、コユキは気持ちを切り替えると赤い石拾いに集中する事にしたのであった。


 こんな感じで、サクサクッとシヴァ、アヴァドン、ついでに四十六柱の下位悪魔たちの保護を完了させたのであった。

お読みいただきありがとうございます。

感謝! 感激! 感動! です(*'v'*)

まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、

皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。

これからもよろしくお願い致します。

拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。


Copyright(C)2019-KEY-STU

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― 新着の感想 ―
[良い点] アヴァドン君が優秀過ぎますね。一家に一人欲しいぐらいです。なんか忠実なところも好印象です。ただ、あまりコユキを甘やかさないほうが。序盤から読んでいると増長しそうです(笑) [一言] 悪魔た…
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