表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~  作者: KEY-STU
第一部 一章 悪魔たちの円舞曲(ロンド)

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

146/2030

146.アヴァドン (挿絵あり)

 以前チラッとご紹介した通り、スプラタ・マンユの七柱の中で、魔力量最大を誇るのが『蹂躙のアヴァドンカリンマトゥアヴァドン』である。

 シヴァで黒毛和牛百頭近く必要だったのだ、並大抵の野生生物では、それか大量の群れでも見つけなければ、パズス戦以前のようにコユキがギリギリの戦いを余儀なくされてしまう。


 思い悩んだ末にアヴァドンが顕現(けんげん)先に選んだのは、山口県下関市の唐戸(からと)魚市場に隣接した『海』であった。

 綺麗に整えられた臨海の護岸柵を、アヴァドンから魔力による浸食を受けた半魚人の様な悪魔たち、分かり易くいうと手足が生えた人サイズのトラフグ数百匹が、ワラワラと乗り越えて上陸して来たのであった。


挿絵(By みてみん)


 かぎ棒に聖魔力を流して、美ボディ化したコユキに釣られる様に、周辺に居た漁師さんや市場内で働いていたふぐ調理師免許保持者の料理人さん達も、血走った目で戦いに参加したのであった。


 高速でサクサクやっていると、血迷った漁師っぽいチャン兄が抱きつこうとしてきたのでアクセルで煙に巻いて、移動した先に、不自然な存在を見つけて近付いていった。

 そこに居たのは、下関の沖合いに間近く浮かぶ舟島、巌流島で宮本武蔵と戦い、命を散らした天才剣士、佐々木小次郎っぽい見た目の、可愛らしい『着ぐるみ』であった。


 ゆるキャラっぽい着ぐるみは、近付いたコユキの方向へ体毎向き直って、あろうことか着ぐるみを脱ぎ去ったのであった。

 戸惑う事無く。

 少し離れた場所から、避難しつつも事の成り行きを見ていただろう、子供達の悲嘆(ひたん)に暮れる泣き声が聞こえた様な気がしたが、一切構う事無く、中から登場した初老の女性はコユキに向かって語り掛けた。


 自分はアヴァドンだと言って、若干薄くなった頭頂部を見せて礼をした後、そろそろ制圧されそうなふぐ魚人に目を移して続けた、手土産です、と。

 それを聞いたコユキは苦笑いを浮かべ、かぎ棒を使って解放し、確り(しっかり)と赤い石を保護するのであった。


 後片付けのように透明の石を拾いつつ、残存するふぐ魚人を鮮やかな手並で(ほふ)っていく、コユキ(痩せ型)の姿を息を飲んで見つめるオッサンやニイチャン達。


 最後のふぐ魚人悪魔をかぎ棒で刺したコユキに対して、彼等はヤンヤヤンヤと拍手喝采、惜しみ無く賞賛の声を上げたのだが、周辺には活きの良いトラフグたちが、ビチビチと跳ね動き、ブヒブヒ、ビィービィーと豚鼻みたいな泣き声を響かせるのであった。


 何となくのノリで、無礼講でふぐ祭りじゃー! とか、(いか)つそうな漁労長みたいな人が叫ぶと、最早止める事など誰にも出来ない程の盛り上がりになってしまった。

 なったのなら、なってしまったら仕方が無い、そう考えたコユキは、お客さんや市場の店員さんたちに混ざって、生まれて始めてのテッサやテッチリ、フグカラに舌鼓を打つ事となった。


 当然、ショッキングピンクの毛糸の下着セットでは無く、いつものツナギとキャップ(神聖)を確り着込んだ格好であり、とっくに体型も元通りであった。


 タダじゃ悪いよ、なんて遠慮するヤツは馬鹿だ! と思っているコユキがバクバク頂いていると、キョロキョロと周りを見回しながら、適齢期っぽい漁師や店員たちが歩き回っている事に気が付いた。

 口々に、さっきの綺麗なねぇちゃん何処行った、とか、運命の(ヒト)を見つけたのに、とか、パイオツカイデーのチャンネェ…… とか言っているようだ。


 たぶん嫁不足とか深刻なのかも知れ無いな…… そう、少し同情したコユキは満腹になったのでさっさと帰る事にしたのであった。


 ふうぅ、これで味方、スプラタ・マンユはフルコンプリートだ、と、一安心したコユキは、善悪に作戦成功の暗号『トラトラトラ』を送ろうとしたのだが、その直前、逆に善悪から緊急連絡のタイトルで、珍しくメール形式でのアクセスがあったのだ。


 ふぐ寿司の駅弁を買い込んで居たコユキは(わず)かながら焦りを見せた。

 デザートの淡雪をまだ買って居なかったのである。


 兎に角、善悪が送ってきたメールの内容(英字の羅列)を自身の頭の中で処理して行った。

 今コユキは九七式欧文印字機と化していた、アメちゃん的に言えば『パープル』ってやつに成り切って心の中で、カタカタカタってやっていたのである。


 コユキは周りに聞こえ無い様に小さく呟いた。


「秋田県、八郎潟(はちろうがた)、だ、と……」


 なんで、行ったり来たりさせるんだろう! もう! 全く!

 これがコユキの正直な感想であった、それはそうだろう、つい最近山形まで行ったばかりなのだから……


 まあ、そんな愚痴を言っても仕方がない、それより大事な事を回収して置こう、保護直後に遠征を余儀なくされたアヴァドン君へのごめんなさい、フォローってやつが大切に違い無い。


「なんかゴメンね、アヴァドン君! 家に帰る前に秋田って所に行かなきゃなんなくなちゃってねぇ…… 疲れてるのは分かるんだけど、もうチット辛抱してね」


 コユキが(てのひら)に乗せたアヴァドンは、その金色の光りを輝かせるだけではなく、脳内に声を届けてくれた。


『御心配には及びません。 この、蹂躙のアヴァドン、持ちうる力を存分にお見せしてご覧に入れて見せましょう! くふふふふ』


 頼もしいことこの上ないな、コユキはそう思ったのであった。

お読みいただきありがとうございます。

感謝! 感激! 感動! です(*'v'*)

まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、

皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。

これからもよろしくお願い致します。

拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。


Copyright(C)2019-KEY-STU

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー cont_access.php?citi_cont_id=140564926&size=200



fw2razgu4upfkla8gpm8kotvd1hy_1365_xc_ir_92ne.jpg
にくい、あんちきしょう…… ~食パンダッシュから始まる運命の恋~ は↑からどうぞ



eitdl1qu6rl9dw0pdminguyym7no_l63_h3_7h_23ex.jpg
3人共同制作の現場 小説創作の日常を描いた四コマ漫画 は↑からどうぞ



l7mi5f3nm5azilxhlieiu3mheqw_qn1_1kv_147_p1vu.jpg
侯爵令嬢、冒険者になる は↑からどうぞ
~王太子との婚約を一方的に破棄された令嬢はセカンドキャリアに冒険者を選ぶようです~ 



jvan90b61gbv4l7x89nz3akjuj8_op1_1hc_u0_dhig.jpg
見つからない場所 初挑戦したホラー短編 は↑からどうぞ



異世界転生モノ 短編です
8agz2quq44jc8ccv720aga36ljo7_c1g_xc_ir_97jo.jpg
【挿絵あり】脇役だって主役です ~転生を繰り返したサブキャストは結末を知りたい~ は↑からどうぞ



小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
[良い点] なんか、アヴァドンくん、可愛いですね。秋田まで山口から行かされるのに、早速やる気なところが可愛いのでしょうか。つい直前までふぐの群れだったのに(笑)漁師の兄さんたちもとても面白かったです。…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ