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堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~  作者: KEY-STU
第一部 一章 悪魔たちの円舞曲(ロンド)

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122/2030

122.遠征 恩賜 上野動物園

 ホテルを出てコユキは上野動物園まで続く、湖畔を一人歩いていた。

 不忍池(しのばずのいけ)の中には、色取り取りのスワンボートが浮かんで、お客さんの訪れを待っていたが、今のコユキには白鳥ちゃん達に応える事は出来ないのだ。

 

 思わずコユキの口を吐いて出た言葉は、


「もう、よしおちゃんも来れれば良かったのにな~ ……ちぇっ! つまんないのぉ~」


であった。


 本人が目の前にいない時には、存外に素直なコユキの姿を再発見の瞬間であった。

 まぁ、面倒臭い事には違いが無い、小娘でもあるまいに面倒な事この上ないデブチンである。


 そんな甘酸っぱい酸味を帯びたコユキでも、歩き続けていれば、普通の人と同じ様に上野動物園へと辿り着く事が出来た、良かった良かった。

 コユキは(おもむろ)にスマホを取り出して善悪に定時連絡を入れる。


 ”アタシコユキ、今上野動物園の正門前にいるの”


 慌てていたのだろうか、時を置かずに続けざまに、もう一度ラインを送ってしまった。


 ”アタシコユキ、今あなたの後ろに、いるのおおおおぉぉぉ!!”


 間も何も考えずに、一回だけ突然送った偽メリーさんは、当然の様に何の驚きも与える事は無く、


『はいね、がんばってね』


という、定型文以下の超塩い返信を、善悪に送らせてしまったのであった。


 スマホで時刻を確認すると、出発前にオルクスが特定した顕現時刻まで、まだ一時間以上の余裕があった。

 コユキは東園の動物達を流し見しながら、目的の西園カバ舎へと向かうことに決めた。

 ゆっくりと向かってもかなり早めに着いてしまう事になるが、顕現と同時に祓う(はらう)に越した事は無い。

 三十九歳にもなって、今更物珍しい動物など見当たらなかったが、健気で純粋な彼等の姿に癒されつつ、歩を進めるのであった。





『ふぅ、俺の方は終わったようだ…… ユイはどうだ?』


『うん、うちも終わった? かな…… 力が溢れ出してきたよ』


『そうか、なら、早速救世(ぐぜ)をはじめよう、早いに越した事は無い』


『だね♪ 急いては事を仕損じるっていうもんね♪』


『……いや、それは、ま、まあ良い! 下がっていろよ』


 そう言うとジローは昨日と同様に、後ろ足で立ち上がった後、両足でコンクリートの壁に向かって倒れこむのだった。





「「「キャーっ!」」」


「た、たすけてー!」


「バケモノだぁ――――!」


「!!」


 ゾウ舎の向いで、腕を組んで物思いに(ふけ)っていたコユキは、人々の叫び声で我に返った。

 ここにあるリボンを模した、動物達の鎮魂碑、その横に掲げられた、過去の悲劇に思いを馳せている間に、随分時間が経過してしまっていたようだった。


 スマホを取り出して時刻を確認すると、案の定、顕現の予定時刻を越えた所であった。


「くっ、しまった、罠だったのか!」


 どんなパラノイアか知れないが、コユキは本気で口惜しそうにしている、困ったものだ。

 とは言え、


「こうしちゃいられん! 急げ――――! アヴォイダンス」


辛うじてまともな思考が残っていたようである、一安心だ。


 カバ舎の方向から、入園客が(なだ)れをうって逃げてきていた。

 その人の波を縫う様に、残像を残しつつ、グングン進んだコユキは、二体の巨大生物の目の前も、音も無く通り過ぎていく。


 通り過ぎた先の細い通路を左に入り、周りに人影が無い事を確認すると、(おもむろ)にツナギを脱ぎ始めた。

 脱いだツナギを丁寧に畳んで、アライグマのキャップをその上に重ね、スマホと財布をツナギの折り目に隠してから、植え込みの中に潜ませた。

 それはそうだろう、都会は恐い! これは全田舎者共通の認識なのだから……

お読みいただきありがとうございます。

感謝! 感激! 感動! です(*'v'*)

まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、

皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。

これからもよろしくお願い致します。

拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。


Copyright(C)2019-KEY-STU

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― 新着の感想 ―
[良い点] 都会は本当に怖いですが、用心するところしていれば、大丈夫だと思いたいですね。コユキは変装を覚えたのかな。カバ君たちの満を持しての大暴れがどうなるのか楽しみです。 [一言] 悪魔づきでなくて…
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