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堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~  作者: KEY-STU
第一部 一章 悪魔たちの円舞曲(ロンド)

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113/2029

113.作戦会議 ②

 善悪は困ったように顔を(しか)めてから言葉を続けた。


「日帰りと言う訳には行かなくなったでござるな? 弱ったのはあの街にホテルとかあったかどうか……」


「うーん? あ、でも、オートキャンプ場なら有ったわよ、確か!」


「ああ、なるほど、そうなると次は行き方でござるなぁ、メルボルンからアデレードまではあっちの国内線で行くとして…… クーナルピンへは、あれか? レンタカーで……」


「……チョット」


「えー、運転なんてアタシ自信ないよ! お、そうだ! 善悪も一緒に行くならそっちは任せるわ!」


「ネェ……」


「あーまあ、左ハンドルとか右側通行とか多少気をつければ大丈夫であろう! よっしゃ、任された! でござる!」


「ナンイ、ジャネーヨッ! ホクイッ!」


「「なるほど」」


 想像通り北緯だった事に納得し、改めてタブレットをと、腰を浮かしかけた善悪を、今度はモラクスの言葉が制した。


「北緯と言う事でしたら、その座標は東京都台東区恩賜(おんし)上野公園、上野動物園内の西園、もっと正確に言えばキリン舎の北側、カバ舎の前でございます」


「え、う、嘘……」


 自信満々では無く、()も当然の事と言った風情のモラクスの断定に、思わず言葉を失うコユキであった。

 念の為、タブレットを取りに猛ダッシュした善悪が戻ってくると、興奮した声でコユキに言った。


「ピタリ、でござる! 寸分の狂いも無く! カバ舎の前で、ござるっ!」


「おぉ――――っ!! す、凄いわね! モラクス君!」


 感動した様なコユキの賛辞に対して、モラクスは打ち消す様に手を振って答えた。


「これしきの事、長く生を享受する身としては()したる事では…… 我が兄の様に、座標を特定する特技と比べれば稚技(ちぎ)に過ぎません」


「エッヘン!」


 慎ましくへりくだった言葉の中に、さりげない兄へのリスペクトを織り込んだモラクスと、その横で胸を張るオルクス。


「むむむ、何と言うか…… 立派なのでござる」


「ね、ね、アタシも思ちゃったわぁ、立派よね~ ……それに比べて」


「まあね…… でござるな」


「エーッ! ナ、ナンカッ?」


 不穏なムードに俄かに色めき立つオルクスに、善悪とコユキは諦めた様に答える。


「あー、別に何でも無い、何でも無い、でござる」


「そそ、()()()()より、モラクス君よね、ね、善悪?」


「うん、そうでござる、モラクス君でござるよ、うん、そう、モラクス君! でござる」


 別段何を言っている訳では無いが、感心した表情で弟モラクスを見つめる二人は、時折こちらに目を移す時、明らかな(あざけ)りが含まれている、とオルクスには思えた。

 急激に胸の中で沸き起こる、強烈な負けん気魂に突き動かされるように、オルクスはモラクスに飛び掛った。


「コノ! コノ! コノ!」


「お? 何だ、兄者、やるのか?」


 モラクスは落ち着いた様子でオルクスを受け止めたが、勢いを殺し切れずに、揃って座卓から転げ落ち、バタバタ戦いを始めた。

 見た目があれなだけに、大きささえ気にしなければ、天下で一番を決定する武道の大会、それも決勝みたいに見えていた。


「あらら、なんか始めちゃったわよ~、善悪?」


「ねぇ、まあ、モラクス君がちゃんと手加減してくれるであろ」


「そうねぇ、でも居たのね、弟に劣る兄とか? ね?」


「うん、そう言えば、あの『一子相伝』の兄達も結果的には末弟に負けていたでござるよ~」


「あ、そうよね! なるほど、姉妹はともかく兄弟ではそうなのかもねぇ」


「そそ、今見た通りでござるよ」


 そう結論付けた二人は、明日の午前中に顕現する悪魔に対応するための打ち合わせを始めるのであった。

お読みいただきありがとうございます。

感謝! 感激! 感動! です(*'v'*)

まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、

皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。

これからもよろしくお願い致します。

拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。


Copyright(C)2019-KEY-STU

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