違う世界線に行きたくはないですか?
『違う世界線へ行きたくはないですか?』
そんな言葉と住所の書かれた紙が自分の家の郵便受けに入っていたら人はどんな行動をとるのだろう。
俺のとった行動は書いてある住所に行ってみる、だ。…いや、言い訳をさせて欲しい。俺だって普段の状態ならもちろんこんな怪しさしか感じない話を信じたりなんかしない。でも今の俺は上司からのパワハラが3年目に突入したうえに大学時代の友達からマルチ商法に誘われてしまったりと色んな出来事が積み重なってちょっと疲れてたんだ、そんな時にこの紙見つけてここから抜け出せるかもってなったら行きたくもなるだろう。
「本日はお集まりいただきありがとうございます。」
スーツの男が出てきた。この場にいる全員がその男の方を見る。ちなみにここには年代様々な男女が20人弱ほどいる。正直ここに来たのが俺だけじゃなくてほっとしている。
「皆様にはこれからこことは違う世界線に行ってもらいます。いわゆる異世界転移、というやつですね。」
ここに来た俺が言うのもなんだが言っている意味がわからない。
と、ちょうどそのタイミングで高校生くらいの青年が声をあげた。
「どういうことか説明してくれないか?というかまずあんた達は何者でどんな目的があって僕たちを異世界転移なんてさせようとしてるんだ?」
「そうですね、まず私たちは国のとある組織の人間です。世界線移動の方法やどんな目的かはお答えしかねるのですが、あなた達が世界線移動をすることで国が助かる、とだけ言っておきます。」
いかにも説明する気はありません。と言った感じのセリフだ。
「ここに来た以上皆様に拒否権はないのですが、私たちとしましても皆様には嫌々ではなく是非楽しく別世界線ライフを送っていただきたいのです。なので、皆様には特別にスキルというものをプレゼントさせていただきます。皆様お好きなんでしょ?スキルやステータスという言葉が。」
その言葉で全員の表情が変わった。なんだか上手くはぐらかされた気もするが、俺もスキルという言葉に少しわくわくしてしまった。
「では皆様ステータスオープンと唱えてください。」
何人かが「ステータスオープン」と唱えた直後に表情が変わった。
「ステータスオープン。」
そう俺が唱えると目の前に半透明の板のようなものが現れた。なになに?HPが75にATKが60、SPDが80か...これが高いのか低いのかよく分からないな...
「今、皆様には板のような、私たちはステータスボードと読るものが見えていると思います。では、お約束通りスキルをプレゼントさせていただきますのでステータスボードのスキルと書かれた欄に触れてみてください。」
言われた通りにスキルの欄に触れてみると獲得可能一覧と書かれた画面に切り替わった。
「皆様にはスキルポイント、SPを100ポイントプレゼントさせて頂きました。どうぞお好きなスキルをお選びください。」
「俺はこの獣特攻Ⅲと、火魔法Ⅱにするぞ!」
「私は治癒魔法Ⅳにするわ。」
スキルを即決したらしき人達が選んだスキルを宣言していた。
「特攻Ⅲに治癒Ⅳですか、皆様なかなかの才能をお持ちのようですね。実は獲得可能スキルは人によって違いましてその人の素質が現れるのですよ。」
なんだと?一体俺にはどんな素質があるのだろう。改めて獲得可能一覧に目を通す。
火魔法Ⅰ、水魔法Ⅰ、風魔法Ⅰ、俊敏Ⅰ、打撃耐性Ⅰ、虫特攻Ⅰ、…何だこのⅠのオンパレードは…
と思ったがまだ画面がスクロールできることに気がついた。
リトライ?何だこのスキルは。名前を見てもスキルの内容がよく分からない。これだけ数字の表記もないし、他のスキルの必要SPが10なのに対してこれだけ100だし。
色々疑問ではあったが、他の人がリトライを選択していないということはこれが俺だけが持つ素質ってやつなのかもしれない。そう思い俺はリトライを選択した。
「皆様スキルの選択が終了したようなのでそろそろ世界線移動を行いたいと思います。」
そのセリフと同時にスーツの男以外の全員の体が光に包まれる。
「では皆様。素敵で楽しい別世界線ライフを。」
その言葉と共に光が更に強くなり俺は思わず目を瞑ってしまった。
キャラクター紹介
青山 聖也:本作の主人公。25歳。大学卒業後ブラック企業へ就職。上司からのパワハラに耐えかね別世界線への移動を希望。