スライムは知りたい(短編化)
これはあるスライムを観察する物語。
始まりは爆発からの都市壊滅。全ての人々は死に絶え、その都市に存在した膨大な魂達は粉々になり宙空へと舞った。そのスライムはその魂の破片の塊から生まれたのだった。
本来であれば魂の破片は様々なところに流れて大小様々なモンスターになっただろう。しかし今回の事件では魂の欠片が散り散りになる事なく一か所に留まり続けた。宙空には微量の水分しかなく、スライム1匹分程度にしかならなかった。そうして生まれたのがこのスライムだった。
魂の総量が能力の上限を決める世界。本来なら人なら人の、ドラゴンならドラゴンに見合った魂の分量があり、そこから大きく外れた魂を持つ事は出来ない。
これをこのスライムは逸脱した。本来であれば本能的な行動が出来れば上々の粘体生命体は知能を持ち世界を探索していく。
第1部、自我(1話500字程度で10話)
太陽に因る損傷から逃れるために生まれた自己。生きるための逃走。そして闘争。
気が付けばスライムはそこそこに強くなっていった。けれどスライムは不意に遭遇したドラゴンと戦い撤退。成す術もなくドラゴンから逃げる事になった。
リベンジに燃えるスライムが数日後に見たのはドラゴンを狩る小さき動物、人間だった。
ドラゴンの圧倒的な力をいなし、罠にかけ、銀に輝く刃を突き立てる奇妙な生き物だった。
スライムにはどうしてドラゴンが負けるのか分からなくて怖かった。スライムはなんとなく感じていた魂の分量で強さを判断していた。人間の魂の分量はドラゴンの分量よりも圧倒的に少なく、本来なら何をしても負けるはずのない格差があったのだ。
だからスライムは人間を観察する事にした。
第二部、人間観察(1話2000字程度で10話)
スライムの居た場所は都市消滅の事件現場という事で周囲から人間の生息圏はなくなっていた。
スライムはドラゴンを狩った人間を隠れて追い、ついに人間の町を見つけた。
スライムは人間の町を外から眺め、その文明の大きさを知る。
出来るだけ痕跡を残さない様にしつつ、観察していく。
第三部、擬態と人間飼育(1話3000程度で30話)
外に出てくる人間を観察する事で人間の言葉を多少理解できる様になると、町の中が気になったスライムは体の一部を人間に擬態させて潜入させる事を計画した。
だがそれはなかなかに困難だった。
今までに会得していた擬態は臭いなどを偽装する事が主体にしていたため、視覚を意識した擬態になっていなかったのだ。
擬態した分体に出会う人間は襲い掛かってくるか、逃げるかしてしまうため、どうするべきか苦悩しているところ、ついには討伐隊が出される様になってしまった。
スライムは偶然先遣隊を捕まえたので、適当な場所に囲い込む事で人間の習性を観察する事に決めた。
怯える人、強気な人、隙を伺う人、様々な人がいる。擬態した分体で1人1人接してみるがなかなかに理解が出来ない。
スライムは自分が発する言葉がまだ正確な発音が出来ていない事に気づき、先遣隊を利用して人間という生き物への認識を擦り合わせていく。
先遣隊を失った人類がしつこく追手を出してくるので、度々移動しつつ人間へと姿を変えていく。
あとついでにいうと先遣隊の人々はストックホルム症候群起こしてオカンみたくなる人も出てくる。まぁ、自衛目的の偵察が主題であり、スライムは人類に対して敵意は大してこの段階ではないから。
第四部、町に潜入(書籍なら1巻の終幕部分)
スライムは旅人に扮して町へ向かう。
オカン化した先遣隊メンツに見送られ、完璧な人間形態を会得した擬態分体が町に向かって終幕。
スライムの探求はこれからだ!