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君に贈る言葉 ~大切な人~  作者: 零式紫電(デバイス)
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プロローグ 出会い

いったい何回……



この空を見上げてたんだろう……





いったい何回……



この道を歩いていたんだろう……





いったい何回……



君の姿を見てきたんだろう……










そして、今、俺はその全てを見おろしている……



 



 ………はっきり言ってこの世界は腐ってる…



 毎日毎日、くだらない事件、事故、お偉いさん達の不祥事だ、なんだってニュースばっかやってるし、街に出てもただ騒音が鳴り響いてる……


 こんな世界に何が楽しくて生きているんだ?


 そう思いながら、電車から降りて学校に向かって、ただ歩いてる俺。


 高校3年になった春、春休みが終わり、久々の制服を着て登校していた俺。


 とは言っても俺は学校に行っても部活に入ってるわけでもなく、勉強だってそんなにやる気もない……


 というより、基本的面倒くさいことはしない主義だから、こういったことには全く興味がない……


 他の奴らには、将来の夢を語る奴も居るし、彼女の自慢をする奴、逆に彼女が欲しいってほざいてる奴も居るが、俺にとっては全く興味がない話だ……



 なにがそんなに……


 なにがそんなに……



 ……いや、文句を言うのも面倒くさくなったからやめよう…



「相変わらず、やる気のない歩き方してるな~。ヤマト!」



 俺の背後から俺、『月神ヤマト』の名を呼ぶ声がして振り返ると、俺に対して、デカいバックが飛んできた。


 ーードカッ!


 俺はそれを受け止めようとしたが、くだらないことを考えていたせいか、思いっきり顔面にバックをくらってしまったが、そんな俺をバックをぶつけてきた張本人は笑っていた。



「ダッセ~!

 なに、思いっきりくらってるんだよ!」



 そいつはそう笑いながら地面に落ちた自分のバックを拾い上げたが、俺はその『小林カズキ』に鼻頭を抑えながら怒鳴る。



「うっせ~よ!

 だいたい、いきなり飛んできたバックを受け止めれるわけないだろ!」


「わりぃ、お前だったら受け止めれると思ったからよ。つい出来心でな。

 やっぱり、部活やってないから反応が鈍くなるんだよ。

 お前だって、運動神経はそんなに悪くないんだから部活やってれば良かったのにな」


「……面倒くさい…」


「はいはい、いつも通りの解答ありがとうございます」



 俺のいつも通りやる気のない返答にカズキは少し呆れたように返していた。


 コイツとは中学校からの付き合いだが、高校に入って、俺が部活に入らないと言ってから、ほぼ毎朝、こういうやり取りをやっている。


 俺は不機嫌そうに立ち上がり、無言で歩き出すと、カズキは不機嫌な俺に気づき、平謝りをしながら俺の隣りを歩き出した。


 そんないつも通りのカズキの事を仕方なく許し、いつも通りに駅からの道を一緒にしばらく歩いたが、しばらくして学校が近くなった時に、俺はふと、あることに気が付いた。


 明らかに初々しい制服を着た、あどけない顔をした奴らが、所々に見えてきた。



「そういえば、昨日、入学式だったな…」



 そう、昨日は我が校の入学式だったが、新入生とその父兄だけで行われたので、実際に新入生を見るのが今日が初めてだ。


 ただ、俺がそうボソリと言った瞬間、カズキのバックが今度は俺の後頭部に振り落とされた。



 ーードカ!


「いって~な!またかよ!」


(せっかく人が許してやったことをまたやるのか!?)



 そう言おうとしたが、それよりも先にカズキはこっちを見ながら、目から炎が出そうな顔で周りにも聞こえる声で叫んだ。



「いいか!俺達の青春はあと1年しかないんだぞ!

 その短い期間の間で彼女が居ないなんて有り得ないだろ!

 だ・か・ら!

 新入生に優しく接して好印象を残し、そのままGet!をしなければいけないのだよ!ヤマト君!」


「そのセリフ、去年も聞きましたが、それで結局あなたに彼女はできましたか?」


「いいえ…。アタックしたのべ30人、全てに断られました…」


(30人って…)



 正直、30人にもアタックしたカズキの勇気には称賛に値するかもしれないが、全て断られた事を考えると、これ以上話を広げるのは可哀相な感じがする。


 俺はカズキに対しての優しさのつもりで、それ以上何も言わなかったが、それでも呆れた溜め息は堪えることは出来なかった。


 ただ、そんな俺をよそにカズキは、自分なりの"青春論"を懲りずに語っていたが、俺はそんなカズキの話を聞き流しながら歩いていた。


 それでもカズキの青春論は止まらないまま学校の昇降口に着いた。



 ここまではいつもと変わらない日常だった…





 ちなみに俺らが通ってる学校は、俺の家から電車で2駅越えた所にある進学高校である。


 生徒数は約800人、男女の割合は半々ぐらいで、クラスは各学年にA~Fまである。


 別に大学進学とかに興味があったわけではないが、このご時世、高校は出とかないと何もできないから、とりあえず近い学校を選んだらこの学校だった。



 とは言っても、さっきも言ってた通り、俺は部活もやってないし、勉強の成績も真ん中よりちょっと上ぐらいで、交友関係も多くはない…


 はっきり言って、カズキの言う通り青春らしいことなんて一つもやってはなかった…



(結局、俺は高校で何をしたかったんだろう……)



 そう思うと、少なからず自分に対してカズキと同じ様な悲しい気持ちにはなった…



「はぁ~…」



 自然と出てくる小さな溜め息に自分にもまだ何かしらの希望を少なからず持っていた事を実感ながら俺は校舎の昇降口の戸を開けた。


 ただ、昇降口に着いてもカズキの話は続いていた。


 彼女が居れば色んなことができるとか、楽しい青春が贈れるとか、部活の励みにもなるとか、色々とあり余る元気で熱弁をしていたが、俺はカズキの話に対して、相づちをしてはいたが、はっきり言って聞いていない。


 そんな俺にカズキは嘆きに近い声で言ってくる。



「な~ヤマト。聞いてるのか?

 大切な高校生活があと一年しかない俺達にとってはとても大事なことなんだぞ」



「大事なことって言われてもな…

 別に俺はカズキみたいに焦ってないし、特に興味もない」



 カズキの嘆きに対して、いつも通り冷たく接する俺。


 本当に俺にとっては青春とか恋愛なんか関係ない話だと思っている。


 別に彼女が要らないとかではないが、今までそう言った相手も居なかったし、居たとしてもこう冷めた性格だから長続きはしないと思う。


 カズキの熱弁を聞いていたせいか、ガラにも無いことを考えながら、げた箱で上履きに履き替えていたが、そんな俺の横ではカズキはまだ嘆いていた。



「な~。ホントに助けてくれよ~。

 誰かいい娘を紹介してよ~・

 聞いてる?聞いてるのか!?ヤマト!」



 なんも反応を返さないまま、一人で教室に向かう俺に、カズキは半ばキレ気味に叫んでいた。


 すると、その瞬間、俺の背後に"何か"がぶつかる衝撃があった。



 ーードンッ!


「いってーな!

 なんだよカズキ!さっきからしつこいんだよ!

 いい加減にしろよ!」



 俺はまた、カズキがバックをぶつけてきたと思い、振り向きざまに激怒しながら叫んだ。


 だけど、振り向いた俺に対して、カズキの視線は俺の足元に向けられていて、俺の表情に気付くなり焦ったように叫んできた。



「俺じゃない!!

 下を見ろ!下を!!」



 その言葉に俺は足元を見下ろした。


 すると……



「あっ……」



 俺は思わず声を上げてしまった。


 そこには尻餅をついた女子がいた。


 どうやら、さっきの背中の衝撃はこの子がぶつかってきたせいらしい。


 その子は黒のショートヘアーで、女子としても小柄な体型をして、目に涙を浮かべながら、上目づかいに俺を見ていた。



「あの…大丈夫か?」



 俺はとりあえず彼女に手を差し出してみたが、彼女は俺の手を掴むこともなく自力で立ち上がると、すぐさま頭を下げてきた。



「大丈夫です。

 すみませんでした。」



 彼女はそう言い残すと、そそくさと走り去ってしまい、取り残された俺の所にカズキがやって来る。



「なんだ、あの子?

 1年かな?」


「さ~。クラス章に1-Dって書いてたから…

 たぶん、そうだと思うけど…」



 彼女の素早い一通りの行動に呆気に取られたように、俺達は立ってたが、そんな俺達の事には関係なく学校のチャイムは鳴る。



「やべ~。急ぐぞ!

 新年度早々に遅刻はマズイからな!」



 カズキがそう言うと走り出し、その声で我に帰った俺も一緒に走り出した。


とりあえず、自分達の教室に着いて扉を開けたが、別にクラス替えがあったわけでもなく、見慣れた光景が広がっていたのだが、チャイムが鳴ったばかりなのに既に担任の男性先生が教壇に立っていた。


そして、俺達を見るなり怒鳴りつける。



「なんだ!?

お前ら新年度早々遅刻か!?」



はっきり言って今日はツイてない気がする…



先生の怒鳴り声の中で、俺は一人そう思っていたが、そんな俺をよそにカズキは慌てて言い訳を先生に返したのだが…



「いや!!先生!

遅刻したのには理由がありまして、ヤマトが1年生の女子を泣かせてしまって……」



「「えぇ!?」」



カズキの言葉にクラス中から驚きの声があがる。



(そりゃあそうだろうな…

今まで、俺から女関係の話なんか一切なかったからな…)



どよめくクラスの反応に俺は至って冷静に見ていたが、何か引っかかるものを感じた。



……というより、カズキの説明だと誤解を招くのでは…



そう思い、俺は慌てて訂正しようとしたが……



「ち、違います!!

別に泣かせた訳じゃなくて…」


「月神、ホームルームが終わったら職員室に来い!!」



俺の訂正は虚しく先生の言葉にかき消された…



「とりあえず、席に座れ!!」


「はい……」



俺は先生の怒号に促されるままにしぶしぶ席着いたが、誤解を招く発言したカズキを無言で睨みつけた。


カズキもそれに気づいて、俺に無言で両手を合わせて謝った。



そして、ホームルーム終了後、俺の職員室行きが決定した……



(しかし、今日はついてない日だ…

 3年になった初日からこうだと、いったいこの先どうなるんだよ…)



窓際の席に着いた俺は窓の外をぼんやりと見つめながらも、珍しく将来のことを考えていた。


とは言っても、いきなり考えた所で、何をどうするかなんて思い付く訳もなく、結局ただただ窓の外を見つめただけだった。


だけど、そんな俺の事を察してかいなかは分からないが、先生が檄を飛ばす。



「いいか!お前らもあと1年で卒業だが、進路を決めてるのか?

まさか、決まってない奴は居ないと思うが、一応言っておくぞ!

それに他にも3年生になったら色々やることはあるし、個々が考えて……」


(進路か……)



先生の檄に片耳を向けながら、俺は心の中でそう呟いていたが…



「誰とは言わないが、女の子を泣かしてる暇があったら、ちゃんと進路を決めとけよ!」


「だから、違いますって言ってるじゃないですか!!」



俺がそう言って、先生の冷やかしに対して、反論をしようとしたが、タイミング悪くチャイムが鳴り響いた。



「じゃ、月神。言い訳は職員室で聞くから付いてこい」


「はい……」



仕方なく、俺は先生の後をついて行って教室を出たが、カズキの横を通る時に再度、カズキを睨みつけた。



「頑張りたまえ!」



カズキは苦笑をしながら手を振って言った。


それを見た俺はカズキを殴りたかったが、これ以上何かやるのも面倒だったので止めといた。



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