5-7裏 その頃の修行部
本日もよろしくお願いいたします。
命子たちがキスミアで雪ダンジョンに入っている頃。
風見ダンジョンから少し離れた広場。
そこには修行部部長や部員、顧問、計18名の姿があった。
「諸君! 今日から1泊2日の合宿です! ダンジョンは魔の領域、私たちの言うことをしっかりと聞いてケガなどないように頑張りましょう!」
「「「はい、部長!」」」
前に出て挨拶する部長の言葉に、部員たちが元気にお返事する。
冒険者やレベル教育者で賑わう広場で、女子高生たちに好奇の視線が集まった。
「良いお返事です! それでは、アネゴ先生からも一言お願いします!」
「誰がアネゴか」
修行部部長に場所を譲られ、命子の担任であり、修行部顧問のアネゴが前に出た。
口からスティックアメを取り出し、ヤンキーみたいな三白眼で見つめつつ、部員たちに言う。
「お前ら、ケガは一番ダメだ。面白くなったこの世界で長く楽しみたいのならば、無茶はタイミングを見極めてやれ。少なくとも、それは今回の探索ではない。各班長の指示に従い、無事に帰ってくるように」
「「「はい、アネゴ先生!」」」
「誰がアネゴか。まったく羊谷め……」
命子が内心で思っていた印象をうっかり口にしてしまったことをきっかけに、『アネゴ先生』はすっかり定着してしまった。
命子に鍛えられた魔法少女1期生は5人。
その5人を、1・2・2に分け、その下に4人ずつの魔法少女2期生を配置する。
部長、副部長A、副部長Bをリーダーとし、部長の班だけ生徒は5名になり、もう1人はアネゴが組み込まれる。
アネゴは先生だが、戦闘力は魔法少女1期生よりも低いため、今回は指示に従ってもらうことになる。
各班の装備は、貸出エプロンとヘルメットの他に、風見女学園・生産部隊によって作られた魔狩人の黒衣が装備される。ただし、第1期生の5人は貸出エプロンの代わりに、前回合成強化した自前の服やお洒落なヘルメットだ。
魔狩人の黒衣は、コートの裏側にヘビ皮を貼り付けた物だ。接着には布用の超強力両面テープを使用する。素材の提供は命子たち3人からであり、名義は修行部の備品として登録されている。
尤も、夏なのでまだ着てはいない。
他に、水の魔導書が4冊。
1冊は命子と潜った際に手に入れた物だが、他の3冊はヘビ皮同様に命子たちが提供した物だ。ダンジョンクリアするまでにそこそこの数が手に入ったため、プレゼントした。もちろん、修行部名義である。
この魔導書はその目的上、素人が使うため、合成強化はされていない。仲間を引っ叩いた時に大ダメージになってしまうからだ。
魔導書はストックしておいて困るものではないのだが、風見女学園の生徒が魔法スキルを手に入れるために使用したほうが価値が高いだろうと考えた結果である。
命子にばかり頼ってはいられないので、以降、魔法少女増産合宿で手に入れたアイテムは、修行部共同の備品・素材となるよう取り決められた。
武器は鉄パイプが主で、ダンジョン産の近接武器はない。
持ち物で特筆すべきは、回復薬だ。
これも命子たち提供だ。
こういった備品も、自分たちで10層に行けるようになった部員に最低1アイテムの提供をルールづけた。魔法を覚えられる代金みたいなものだ。冒険活動を続けないのならば、免除される。
総評して、現段階の初心者冒険者としては、かなり優れた装備と言えた。
「それでは、修行部部訓の唱和を行います!」
「ほ、本当にやるんですか?」
「やります!」
部長がそう宣言すると、恥ずかしがり屋さんな数名がはわーと顔を赤らめた。本当にあれをやるのかと。
緩いし魔法を覚えさせてくれるし、非常に良い部活だが、彼女たちはこの一点だけは勘弁してほしかった。
ノリノリな部長の、せーの、というふわふわした掛け声の後に、広場に女子高生たちの声が凛と響く。
『乙女よ淑女たれ。その心に凛と咲く誇りを宿せ。
乙女よ修羅たれ。その体を暗雲切り裂く刃となせ。
乙女よ修行せい。己を磨き、新たな時代を華麗に生き抜くのだ。
我ら風見女学園修行部、乙女部隊!』
最近付け加えられた最後のキメ台詞まで、高らかに唱和する。
恥ずかしがり屋さんな少女たちは、顔を真っ赤にしてやけくそ気味だ。
アネゴも顔を真っ赤にしながら、腕組みをして耐えている。なんでこの部の顧問になっちゃったんだろうと自問自答を続けながら。
唱和が終わると、周辺から大きな喝采が巻き起こった。
女子高生の可愛い補正がこれでもかと働いた結果だった。
控えめに言って、大絶賛であった。
後に、風見ダンジョン近隣広場の名物となる『風見乙女の歌』の初披露であった。
最終ミーティングが終わり、修行部一行は列に並び始める。
女子高生17名+アネゴが固まっている姿は、先ほどの部訓の件もあり非常に視線を集めた。凛としていたと思ったら、今度はお菓子を食べてキャッキャしておるわ。
自分たちも周囲も飽きさせない女子高生フィールドを展開すること数十分後、全員が魔狩人の黒衣を羽織り、ダンジョンへ突入する。
魔狩人の黒衣を羽織った少女17名+1名がダンジョンに入っていく様は、まるでアニメみたいで、周囲の目に凄くカッコ良く映った。
部長はすぐさま周りの状況を確認して、敵が来ないか注意を払う。
そうしてから他のメンバーの行動を確認する。
ダンジョンは、入場時に敵に視認されない場所に出る。
しかし、その直後に角から出てくることはある。これが魔本だと結構危ないのだ。この点を後輩がちゃんとできているか確認しなければならないのだ。
アネゴも含め、すぐさま周りの確認を始めたことに部長はうむと頷いてから、ちゃんとできていることを褒めた。
続いて、点呼だ。
ぶっちゃけ、無事に入場できたことは見て分かっているが、部長はこういうのに憧れていた。18歳少女のやりたいことリストがどんどん埋まっていく。たーのしーぃ!
「それじゃあ、まずはアネゴ先生に魔導書を貸します。仲間に当てないように、気を付けて使ってください」
「ああ、了解した。あと誰がアネゴだ」
魔法少女化計画の肝は、魔導書だ。
魔導書を装備してしばらくして出現する『見習い魔導書士』に就き、【魔導書解放】で疑似的に魔法を使い、『見習い水魔法使い』を出現させるのである。
【水魔法】しかないのは寂しいが、いずれは全部の属性を集めたい。
ちなみに、命子に鍛えられた部長たち1期生は、ジョブさえ変えれば、水、土、火魔法を使える。
早速探索を始め、まずは部長が戦った。
出現したバネ風船に、部長は慌てず騒がず準備を始める。
「水よ!」
正面に向けた手のひらの前に、水の球が現れる。
部長は『見習い水魔法使い』なのだ。
「水弾!」
ドンッと高速で撃ちだされた水弾が、バネ風船にヒットする。
バネ風船はその一撃で光になって消えた。
『見習い魔法使い』の魔法は『見習い魔導書士』の魔導書魔法よりも強い。ちゃんとした杖を装備すれば、さらに強くなる。
その代わり、『見習い魔導書士』は魔導書の種類を変更するだけで多様な魔法を使える強みがある。
「ふへへえへ、超カッコいい……」
己の手からファンタジーが飛び出して敵をやっつけたことに、部長のニヤニヤが止まらない。
その背後で、部員たちがキラキラした目で部長を見つめる。
キリリ系の部長は、色々な意味で女子に人気が高かった。
ゴホンッと咳払いした部長は、顔を上気させつつ、みんなに言う。
「腕も鈍っていないので問題なくみんなを守れるでしょう。さっ、これからは1人ずつ戦ってもらいます。ただし、ミーティングで話した通り、魔本の場合は……はい、三島さん!」
「は、はい! 魔本の場合は曲がり角まで誘き寄せます!」
「その通り! 私なら普通に倒せますが、みんなの教官訓練も兼ねて手順通りにやりましょう!」
「「「はい!」」」
修行部は、魔法少女になったら修行後に最低1回は後進を鍛える教官をやるルールを設けている。
ネズミ算式にどんどん魔法少女が増えていく構想だ。
そのためにも、教官としてどのような点に注意するべきか教えておく必要があるのだ。
そうして始まった1層探索は、前回の焼き直しだ。
実戦で武術練度を高めるのはほどほどにして、メインは武技での討伐。
1層で魔導書を一冊ドロップさせたかったが、出ず。
1層はレベル教育者優先なので、仕方なく2層へ移動する。
「ここからはヘビが出ます。このダンジョンのヘビは無毒なので、パニックなど起こさないように冷静に対処しましょう!」
「「「はい!」」」
「ひぅううう……」
部長の言葉に部員たちは元気に答え、アネゴがビクビクした。
アネゴはヘビが苦手だった。レディスネークとか言われてた過去を持ってそうな見た目なのに。なお、三白眼を気にする普通に真面目な女性である。
アネゴがキャーッと部長に抱き着いたりといったハプニングはあったものの、2層を越え、3層をメインの狩場とする。
各班には、1名ずつ生産部隊の人員が入っている。【防具限定合成強化】要員だ。
彼女たちの手により、2期生の服装がどんどん強化されていく。
エプロン、自前の服、魔狩人の黒衣、と3枚重ねになり盤石と言いたいところだが、装備は基本的に同部位内では二重までしか効果を発揮しないと研究で分かっている。
強い順に効果が発揮し、3番目以降は効果をなさないのだ。
どうしてこうなるのかは研究中である。
他に広報部隊の人員も1名ずつ入っており、自分の戦闘の合間に撮影を行う。
ネットで編集した動画を流し、風見女学園の生徒たちがいかに凄いかを世に知らしめ、就職、進学の援護射撃をするためだ。
もちろん、サイト閲覧数によるお金儲けも入ってくるためウハウハである。
風見女学園の生徒たちは、本当に新時代を華麗に駆け抜けようとしていた。
さて、本日はこの3層で泊まるので、宝箱捜索がてらダンジョン内を探索する。
魔導書はアネゴから他の部員に渡され、順調にジョブ一覧に『見習い水魔法使い』が出現していく。
尤も、一覧に出ているだけで実際に変更できるのはジョブ変更の24時間ルールが終わってからになるが。
風見ダンジョンは冒険者もたくさん入っているため、3層まで行くと3チームが同じDサーバーに滞在できるということは少ない。
案の定、各チームが別のDサーバーで一夜を過ごすことになった。
ゲート周辺のキャンプ地では、十数組の素人冒険者たちがある程度の距離を取ってテントを張っている。
女性の近くが安心できるので、どのチームも女性だけのパーティのそばでテントを張った。
各班ともに別のパーティと情報交換して、万が一にも予定帰還日時に帰れなかった際の救助の目安を残しておく。
見張りも女性パーティと共同にしたので、どの班も大人の女性とお話しする機会があった。
―――副部長AチームとOL兼冒険者
女子高生は大人の世界に興味津々だが、それ以上に大人のほうが風見女学園に興味津々だった。なにせ、日本で現在最もホットな高校なので。
そんな学校で過ごす少女たちは、どんな最先端に生きているのだろうか。
「風女は、裏マーケットがありますね」
「えぇえええ……?」
見張りが一緒になった2人のOLは、風見女学園の闇に触れた。
女子高生が一気に底知れぬ化け物に見え始めた。怖い。
その後、スマホで撮影された数々の魅惑の商品ラインナップに、OLたちはゴクリと喉を鳴らす。
危険な物ばかりだったのだ。
「あ、それは今一番人気の命子ちゃんぬいぐるみ・お姉たんおかえりバージョンです」
「ふぇええ、超可愛いんだけど。ねえねえ、これ欲しいんだけど」
OL1が眉を八の字にして言う。
OL1は独身であった。夜が寂しかった。お友達とダンジョンに潜っている今日とか、すごく楽しんでいたりする。
「風女の手芸部はジョブ補正と修行の成果で、ちょー上手いですからね」
「そうじゃなくて、これ欲しいんだけど」
そんな内部情報はいらないくらい超欲しかった。
「あっ、それは我らが部長です! 生徒たちの中で密かに大人気なんです。部長は素敵なので、三人娘と並んでフィギュア化されてます」
「この子、憧れだった先輩に似てるわ……ぱ、パンツは?」
「え? すみません、リアルにいる女子高生だしパンツはNGですね」
スマホを斜めにして覗き込むOL2に若干ヒキながら、フィギュアの仕様を説明する修行部部員。
なお、これらの商品は本人の了承を得ている。
「ネット通販はしてないの?」
「裏マーケットなので、残念ながら」
「ぬぅ……っ!」
ネット販売がないことに憤るOL2人に、修行部部員はこそっと耳打ちする。
外部販売の窓口はあるのだと。
紫色の百合のコサージュを学生カバンに付けた子が、バイヤーなのだと。
その子に合言葉を言えば注文できる、という情報をゲットするOLたち。
そして、これは決して他言してはならないのだと。
神妙に頷くOLたち。
OLたちとて、この情報が知れ渡ったら商品の製作が追い付かないことは理解できるので。
裏マーケットは、密かに風見女学園文化部の資金源になろうとしていた。
―――副部長Bチーム
Bチームと共同キャンプをするのは女子大生とOLの混成パーティだ。
ここでも闇マーケットを知る者が現れた。
今の女子高生はすげぇな、と思いながら借りたスマホに表示されている商品をスクロールしていく。なお、ダンジョンは電波が来ないので、写真撮影した物だ。
ぬいぐるみ、フィギュア、イメージCD、青空修行道場のカッコいいお兄さんの写真、素敵なお姉さまの写真、好きなアイドルのフィギュア等オーダーメイド……色々な物が売られている。
そんな中で何故かカッコいいお兄さんの写真がとても安い。……きっとたくさん売れるから高い必要はないのだ。
部長の写真が500円なのに売り切れているけれど、これはきっと3部くらいしか売ってなかったのだ。きっとそうに違いないのだ。
そんな中で、おかしな物があった。
ゆりゆりなイメージがある女子高生にはおよそ似つかわしくないものだ。
すすぅと修行部部員が一緒にスマホを覗き込み、少しボーイッシュなお姉さんに商品の説明をする。
「それは漫研のチーム・ところてんさんの新作です。修行の成果で手先が器用になり、過去最高の艶を表現できたとのことです。18歳未満はちょっとお断りになっていますがお姉さんは大丈夫ですね」
「ど、どういう話なんだ?」
「男と男の愛と戦いの話です」
「た、戦い?」
「はい、愛と肉弾戦のお話です」
「ひょ、表紙がそういう感じじゃないんだけど……」
「そうですか? 肉弾戦による切なさと苦しみがよく表現できている表紙だと思いますが。ちなみにこっちは魔界在住のお兄さんで、こっちは無限鳥居の鬼です。鬼は恐ろしい武器を持っています」
「ちょっと意味分かんないんだけど……」
お姉さんはもじもじチラチラした。まるでエロ本コーナーに迷い込んだ男子小学生のよう。
「もしよろしかったら、サンプルがありますので見てください」
スマホ内の隠しフォルダに隠しておいたサンプルを表示し、お姉さんにスマホを渡す。
お姉さんが、いやいいよ、と言っていたのも初めのうちだけ。
後学のためですよ、と優しく微笑むと、たしかにそうかもと、しぶしぶと興味津々で読み始めた。
そうして、修行部部員は他のことを始め、顔を真っ赤にして読むお姉さんをそっとしておく。
「えっ、あれ?」
お姉さんの瞳が戸惑いに揺れた。
生唾をゴックンと飲み込んだ刹那、夢中で捲った次のページがなかったのだ。サンプルゆえに……っ!
お姉さんは、空腹時に大好物の厚切りサーロインステーキを没収された気分だった。フォークとナイフを持って、いただきまーすと言った残酷なタイミングで。
「続きは有料です」
にっこり。
ボーイッシュなお姉さんと修行部部員18歳はルイン友達になった。
―――部長チーム
ゴクリと唾を飲み込む音が重なる。
4つの視線の先には、部長が持っているクジがあった。
見張りのペア決めのクジだ。
その中には、一本だけ当たりくじが入っている。
部長とのペアである。
全員、カッコいい男の子は普通に好きだし、告られればOKもするだろう。
一方、部長はどうだろうか。
部長はそこらの男よりも素敵だし、もし告られたら悩んだ末にOKするだろう。……悩むのはポーズだ。そういう甘酸っぱいのをしてみたい。
チューで考えればもっと早いかもしれない。
そこら辺の男よりも、部長とのチューのほうが高い次元にあるように思える。
友チューとかウェルカムだ。
そんな部長と一緒のテントで寝られる券が、部長の綺麗な手に握られている。
結果、ひゃっふーいする者が1名。
すぐさま部長の腕を取り、ニッコニコだ。
部長はそんな後輩の喉を猫のようにゴロニャーンと悪戯する。
「3000円でどう?」
「やだ! ゴロニャーン!」
「わ、私は1万円までなら……っ!」
「フシャーッ! やだし!」
「わ、私はさえちゃんと一緒が良いっ! 私の当たりくじはこれだもん!」
百合子の必死な言葉に、親友の冴子は。
「じゃ、じゃあ……私もこれが当たりくじで良いけどぉ?」
などとバトルから降りる。
複雑な人間関係がそこにあった。
見せつけられた女子たちはゴクリッである。
アネゴはスティックアメを舐めながら、お酒飲みたいなと思った。
冒険者のお姉さんたちに戸惑いや夢を与えつつ、あるいは百合子と冴子の雰囲気が変わったことに仲間たちが、えぇええ、と戸惑いつつ。
第2回、風見女学園・総魔法少女化計画は2日目も無事に終えた。
全チームが6層まで到達し、合計4冊の水の魔導書と合成強化であぶれたドロップ品を持ち帰る。
魔石の8割をセリに出品し、残りのドロップは修行部名義でお持ち帰りだ。
修行部の合宿ルールとして、売却した物の売り上げを後日受け取り、そのお金の一部で合宿参加者のみで打ち上げをすることになっている。
残りのお金は、修行部の活動資金だ。
修行部は、生産部隊や広報部隊などお金が掛かる部門もあるので、活動資金はいくらあっても足りない。特に、生産部隊が作る魔狩人の黒衣などは、コートを買わなければならないし。
現在は、これで一先ず修行部の合宿は終わってしまった。
学校には冒険者になった者がこれ以上いないのだ。
明日、8月の冒険者免許試験が行われるので、その免許が各人に届き次第、また予約を入れて合宿だ。
8月の試験にはかなりの生徒が受験するため、相当に忙しくなると思われる。
部長や他の数名の3年生は、高校最後の年にもかかわらず最高に充実した高校生活をしていた。
大学受験とかもういいかなって感じであった。
実を言うと、部長はささらママが作ったMRSからスカウトが来ていた。
大学に行っていても、バイト従業員として雇うと言ってくれている。反対に、大学へ行かなくても正社員として雇用してくれるとも。
驚異の急成長を遂げるMRS。
布用の両面テープをサイト内で紹介したら、そのメーカーの売り上げが一気に伸びたのは、ある種の伝説だ。
ダンジョン総合攻略サイトを謳っているだけあり、従業員になればレベルも上げやすい。
それは学歴よりも下手をすれば価値があるのではなかろうか。
本社は風見町。
実家から徒歩15分。
そして、近くには風見女学園や青空修行道場がある。
休日なんかに、OG面して遊びに行くのだ。
あ、あれは初代部長だわ!
なんつって、ちやほやされまくるのである。
部長は、いよいよ大学に行く意味が見いだせなくなっていた。
読んでくださりありがとうございます。
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誤字報告も助かっています。ありがとうございます。