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1-5 就職したよ

本日2話目です、ご注意ください。


 せっかく宝箱があるので、命子は宝箱に入って休憩することにした。

 どこもかしこも蛇が潜んでいるかもしれない草むらなので、オチオチ座ることもできない。空の箱は中々に有用だったのだ。


 空箱の中に体育座りして座るコンパクトサイズな命子は、草を合成した飴ちゃんを口の中でコロコロする。

 その姿は、まるで箱に入れられた子犬のよう。

 ここに男性が来たならば、きっと勘違いをしてしまうだろう。

 ダンジョンの宝箱でモンスター娘をゲット、ラブコメな人生の始まり始まりと。


 何もしないのもいかんので、命子は神剣オルティナに合成用鑑定を使ってみることにした。


 それによれば、どうやら神剣オルティナは、強化値は『0/125』らしい。

 これは魔導書と同じだ。同じレアリティなのだろう。

 なお、剣の命名者はこの場にいる誰かだろう。武器鑑定なんてスキルがあるならば、たぶんサーベルとか軍刀などと出てくるはずだ。


 幸いにして、一層で手に入れたバネがあぶれており、ポシェットに吊り下がっている。

 吊るす紐は、女子力アップを目指して買ったソーイングセットが大活躍した。

 その結果、まるで戦利品で飾り付ける蛮族みたいになっているけれど。女子力とはいったいなんなのか。


 そのバネをブチっと取り外し、オルティナに合成する。もちろん、【お気に入り】は忘れていない。


 神剣オルティナ『7/125』


「上がり幅が低いな。やっぱり強化物のレアリティが高いと、あまり強化できないみたいね」


 残りのバネも2本だけ残して全部合成する。

 2本残したのは、何かに使えるかもしれないからだ。


 最終的に神剣オルティナは『24/125』になった。

 強化が重いと命子は歯噛みした。


 次に、命子は久しぶりにステータスを見ることにした。


―――――


 羊谷命子

 15歳

 ジョブ 《変更可能》


 カルマ +1316


 レベル 4


 魔力量 13/30


 スキル【合成強化】


 称号【地球さんを祝福した者】【1層踏破者・ソロ】


―――――


「むむっ!?」


 命子は目を見張った。色々変わっているのだ。


 魔力量が減っているのは、【合成強化】を行なったからだ。

 今のところ、1回で5減る。

 自然回復は1分間に1前後。

 4回使って、時間が経って3回復したのだ。

 まあこれはいいのだ。


 次に称号が増えている点。

 称号の意味を知りたいと強く想うと、その効果が分かった。


―――――

【1層踏破者・ソロ】

 ダンジョンで1層をソロで越えた者に与えられる。

 君は冒険の世界へ一歩踏み出したのだ。


 効果・一度だけ敵からの深刻なダメージを無効にする。

―――――


「ほっほう、これは心強いな」


 この称号には、一度だけ深刻なダメージを無効にしてくれる効果があるらしい。

 2層目にソロで来る人を心配しているのだろうか。

 なんにしても、お守りとして大切にしよう。


 最後になんと言っても、これである。


『 ジョブ 《変更可能》 』と。


 これがどうして変更可能になったのか、原因はいくつか考えられる。

 2層に来た、レベル4になった、敵を一定数倒した、ダンジョン内に滞在した時間……

 まあそこら辺は偉い人に任せよう。


 命子は、ジョブに関して強く考えた。

 すると、目の前に新たなウインドウが開くと共に、脳内にジョブのルールがピシャゴーンする。

 数時間前に自分に芽生えたスキルを認識した時も起こった現象だ。

 新たにウインドウが開いているにもかかわらず、命子はほけーとした。


 まず、ジョブのルールについてだ。


――――


・ジョブはその人物に関わりがあるもの、もしくはダンジョン内で繰り返した行動が反映されて出現する。


・一度ジョブにつくと、24時間変更することができない。


・ジョブに就くことで、そのジョブに組み込まれている『ジョブスキル』を得ることができる。


・ジョブを変えるとジョブスキルは失われる。


・ジョブに就いて修練を積むことで、ジョブスキルを個人のスキルとして獲得できる。

 ジョブスキルがスキル化することで、ジョブを変えても恩恵が続くようになる。


・ジョブはクラスチェンジすることがある。


・カルマが低い者は、ジョブに就くことができない。


――――


「カルマが低い人は、相当きついんじゃないかな? まあ自業自得か。おっカルマっぽい、ウケる!」


 カルマが低い人が可哀想……とか言いそうな見た目のくせに、命子は割とドライであった。


 次に、ではどういうジョブがあるか。

 それは新たに出現したウインドウに並んでいた。どうやらこれが命子が就けるジョブらしい。


―――――


・女子高校生――夢がいっぱい。


・ロリ高校生――ひたすら可愛い。


・見習い短剣使い――短剣道の入り口。


・見習い合成強化士――【合成強化】系に特化する。


・見習い記録士――色々な記録を残せる。


・見習い魔導書士――魔導書を駆使して戦う。


・見習い狂戦士――入門編です。


―――――


「誰がロリか!」


 ふざけやがって、ちくしょうちくしょう!


 命子は箱の中で丸まって箱の底を叩いた。

 宝箱に割と余裕で収まっちゃうその体躯は、完全にロリであった。


 それはさておき。


「見習い剣士がないな」


 せっかく剣を手に入れたのに。

 やはりルールにあったように、ダンジョン内での行動が反映されて出現するのだろう。なにせ、命子は剣士としての活動はカッコいいポーズを取っただけだし、無くて当然だ。


 代わりに、見習い短剣使いがあるが、これはハサミを使っていたからだろう。

 これじゃあない。


 各ジョブはこれ以上の詳細が分からなかった。

 むしろ、詳細を知りたいと念じて、ウインドウに説明文が出てきたくらいだ。


 見習い記録士は、地図を描いたり、写真を撮ったから出たのだろう。

 見習い合成強化士と見習い魔導書士は、言うまでもない。


 命子は考えた末、《見習い魔導書士》にした。


 剣を手に入れたけれど、結局のところ現状で一番信頼感があるのは魔導書だ。

 何より、本が浮かぶという魔法的な現象が凄く好き。


 イロモノを選択する余裕はないし、見習い狂戦士も怖い。入門編って、その門は叩いちゃいけない門なのではなかろうか。


「こういうのはイロモノが強いっていうパターンもあるけど。まあいいや」


 命子は、ジョブチェンジした。


 見習い魔導書士になった瞬間、またもやピシャゴーンした。今度のは強い。

 まるでフレーメン反応をする猫みたいに、ほけーと口を開けた命子は、その間抜けな顔とは裏腹に、脳内で凄いことが起こっていた。


 見習い魔導書士について把握した命子は、歓喜した。


「これは命子ちゃんウェイクアップですわ!」


 下手すれば剣とかいらんかったかもしれん。

 そう思える程度には、ジョブの性能が魅力的だった。


 ステータスを確認してみると、こうなっていた。


―――――――


 羊谷命子

 15歳

 ジョブ 見習い魔導書士


 カルマ +1356《就職したよ +40》


 レベル 4


 魔力量 19/19


・スキル

【合成強化】


・ジョブスキル

【魔導書解放】

【魔導書装備枠+1】

【魔導書装備時、魔攻上昇 小】

【魔導書操作補正 小】

【魔導書作成・入門編】

【魔導書士の心得】


 称号【地球さんを祝福した者】【1層踏破者・ソロ】


―――――


 ステータス内に新たに『ジョブスキル』という項目が現れ、ジョブスキルがもりっと出現した。

 先ほどのピシャゴーンでジョブスキルの内容についても分かっている。


 注目すべきは、【魔導書解放】だ。

 これの効果が凄い。

 見習い魔導書士は、なんと、魔導書から魔法を放てるらしい。

 魔法の種類は、魔導書に宿っている魔法に限る。また、使用時は魔力が消費される。


 さらに【魔導書装備枠+1】の効果で、魔導書を合計2冊装備できるらしい。予備として残しておいた魔導書が活躍する時が来た。


【魔導書士の心得】は、魔導書士としての肉体を育む作用があるらしい。

 即効性はないようだ。


「んんっ!?」


 命子はギョッとした。

 どういうわけか、最大魔力量がごそっと減っていたのだ。

 魔導書士というからには、むしろ魔力量が上がってもよさそうなのに謎である。


 11ポイントも減ってるし、大丈夫かしら、と心配になるけれど、無くなっちゃったものは仕方がない。

 これでやりくりするしかないのだ。


 というわけで、命子は早速魔導書に魔法を放たせてみた。


「水弾発動!」


 命子は片方の魔導書に命じる。

 1層にいた魔本がそうしたように、魔導書が高速でページをめくっていく。

 しばらくすると水の球が形成され、この瞬間、発射タイミングは自分で選べ、狙いも定められるのだと理解した。


 狙う的なんてないので、適当に撃ちだしてみる。


 命子的には目にもとまらぬ剛速球が通路を飛んでいく。

 その速度はスピードガンがあれば、170キロを記録しただろう。魔本の魔法よりも速かった。


「ふぉおおおおおお!」


 命子はテンションが上がった。

 宝箱の縁をペシペシ叩き、興奮する。


 間接的にとは言え、魔法を使ってしまったのだ。

 もうこれは魔法少女レジェンダリー命子の始まり始まりである。


 もう一冊にも魔法を使わせてみる。

 命子が手に入れた魔導書は水魔法をつかう魔本から手に入れたからか、両方とも、水弾を放出するか、バケツ一杯分くらいの水を生成するかしかできなかった。


 しかし、十分すぎる。


「こうしちゃいられねぇ! フサポヨめ、やはり今日が貴様の命日よぉ!」


 宝箱の中から抜け出した命子は、しかして外に出した片足を、やっぱり待てよ、と引っ込める。

 そう言えば魔力を使ったのだった。


 ステータスを見てみれば、残り魔力量は9になっている。

 自然回復を考慮して推測するに、たぶん、一発で魔力を5使ったのだろう。


 命子は魔力が回復するまで、待つことにした。


 待っている間にスマホがブルった。

 バッテリーが終わってしまったのだ。

 命子は高校が決まってスマホを買ってもらったため、まだスマホ素人だ。だから、モバイルバッテリーなんて贅沢品は持っていない。残念ながら、これにて撮影は終了と相成った。


 スマホをポシェットの中に仕舞い、命子は暇な時間を過ごす。


 残り少なくなっていたペットボトルのお茶をゴキュゴキュと飲み、目を擦る。

 かれこれ7時間くらいはダンジョンを探索していた命子は、自分で思っているよりも疲れていた。

 ジッとしていると、途端に睡魔が命子の頭を優しく抱きしめてきた。


 寝ちゃダメだとステータスウインドウを開き、魔力量を見るけれど、未だ11で満タンに足りない。


 12……13……14


 数字が14に変わるのを見たのを最後に、命子は眠りに落ちていった。


 探索中に蛇が壁を登る姿を見ていた命子は、無意識のうちに宝箱の蓋をパタンと閉じた。


 命子にとって不幸中の幸いだったのは、箱に鍵穴やわずかな隙間があったことだろう。

 もし、密閉度が高い箱であったなら、命子は死んでいたかもしれない。


 この日、世界で初めてダンジョンで一日を過ごした剛の者が生まれたのだった。

読んでくださりありがとうございます。

また10分後くらいに投稿します。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 狂戦士とったら理性がとんでたんだろうか?
[一言] 宝箱をあけたらそこにはロリが ボーイ・ミーツ・ガール お持ち帰り不可避
[気になる点] ダンジョン探索での疑問なんですけど、排泄はどうしてるんだろう? 小さい方は二層目の今なら草むらで何とかなるけど、おっきい方を我慢する日数にも限界があるでしょう それまでに脱出は出来るの…
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