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地球さんはレベルアップしました!  作者: 生咲日月
第14章

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14-28 忍者ショー

大変遅くなりました。

本日もよろしくお願いします。


 新しい衣装を手に入れた命子たちがダンジョン街を練り歩く。


「……」


 命子は少し気に食わないことがあった。

 ルルとメリスは歩くと和風カーディガンから白い脚がチラチラと出るのだ。それがとっても色っぽくてカッコイイ。実際に、『命子ちゃんだ!』と驚かれたあとに、肩で風を切って歩くルルやメリスを見て、ほわーと見惚れる人が非常に多い。

 それに対して、命子も同じように巫女装束から足が出ているのに、カーディガンのラインからはあまり前に出ない。


 原因は一目瞭然。

 脚の長さから来る歩幅の大きさである……っ!


「シュバッ!」


 というわけで、人為的にカーディガンへ動きを与える。本体が素早く動くことでカーディガンがぶわりと翻り、脚がチラッ!


「いきなりなんだよ」


 怪訝そうな顔のヒナタに、ルルが言った。


「メーコはマントやローブが翻る系の演出が大好きデス。それがやりたいだけデス」


「あー、いつもの俗物か」


「なんだと!」


 バッ!


 いつもより多めに無駄な動きをする命子を連れて、ダンジョン街観光は続く。

 お土産を買い、あまり見ることがない西日本の冒険者の姿を見学し、時には同じ学校の友達と情報交換をしつつ、命子たちはダンジョン街の中心へ。


 すると、命子はお土産屋の軒先に知った顔を発見した。


「金剛さん、ごきげんよう」


「まあ羊谷さん。ちっす」


 昨日も会った聖姫森女学園の金剛部長だった。

 相当なお嬢様である金剛さんの口から小粋な「ちっす」が飛び出て、命子はしてやられたと思った。危機感を覚えた命子は、すかさず「ちっすちっす!」と目元にピースを作ってギャル味を出しておいた。


 対する金剛さんは、口元へ半開きの手を上品に添えてクスクスと笑う。どちらかというとキリリ系の大和撫子なのに、冗談をぶち込んでから気品さを見せつける親しみやすさの燕返し。これは修行部とかいう頭のおかしい集団の部長になるわけだと、命子は納得した。


「とても素敵なお召し物ですね」


「これですか? ついさっき買ったんです」


 命子はつま先でギュルンと回転し、和風カーディガンを人為的にふわり。


「ほう……羊谷さんはまるで物語に出てくる妖精のようですね」


「聞きましたか、ネコ共。審美眼を持っている人はこう評価するのです」


 金剛さんの意見に命子は、すかさず仲間たちへ見習うように注意した。その際にもふわりを忘れない命子は、完全に和風カーディガンの動きをコントロールするふわリスト。


「メーコはイタズラする類の妖精デス」


「ニャウ。適当な道を教えてキャッキャするヤツでゴザルな」


「物陰からひょこひょこと顔出しながら、延々とアニメのセリフを言い続ける鳥じゃない?」


 ところがそんな命子に友達たちは忌憚ない意見で返した。最後のナナコの意見については、なにそれ凄く見たいと命子は思った。


 探り探りの段階の人がいるので身内ではしゃぐのはほどほどにして、命子は金剛さんに向き直った。


「金剛さんもダンジョン街の見学ですか?」


「はい。今日は自由行動なんですよ。京都のダンジョン街は大成功を収めていることで有名ですから、学ぶことがとても多いです」


「わかりますぅ」


「ニャウ。ワビサビでケーザイ効果が凄いでゴザルな」


「JRAデスなー」


「ルルちゃん、それ競馬の元締めだよ! 何が言いたいかわからないけど絶対違うよ!」


 と女子高生が口々に同意して賢さアピールをした。

 しかし、ささらだけは風見町の名士の娘ということもあって、本当にちゃんと学んでいた。


 その時、ドンッと太鼓の音が鳴った。


「むむぅ! こ、これは!」


 命子は先ほど案内所で貰ったパンフレットをどこからともなく取り出して、裏面を見た。


「これだ、忍者ショー!」


「「にゃんと!?」」


「すぐ近くでやるみたい!」


「特等席を取るデス!」


「金剛さんも行きましょう!」


「え。あ、はい。ご一緒します」


 どうやら忍者ショーがあるようなので、命子たちは会場に急いだ。

 移動している間に太鼓の音が乱れ打ちになり、到着する頃にひときわ大きな音が鳴って終わった。


 そこはちょっとした憩いの場で、開けた場所にベンチや噴水が設置されていた。地場産のアイスやジュースなどのキッチンカーも来ており、新しい風が古都に吹き込んだようなオシャレな空間になっていた。とはいえ、ダンジョンができてまだ1年半と少しなわけで、この空間自体は元からあったのだろう。


 広場には忍者ショーが行なわれるスペースが確保されており、命子たちは最前列の良い場所を取れた。


 和楽器の生演奏によるアップテンポのBGMと共に、華やかな衣装の集団がアクロバティックな動きで駆け込んできた。NINJAである。


「忍んでない系のヤツか」


「忍者も時代の波には逆らえないらしいね」


 率直な意見のヒナタに、命子がしみじみと言う。


 もはや忍者とは忍ばない者というのが世界共通認識。旧時代からその傾向はあったが、ルルやメリスを筆頭に多くの外国人NINJAの手によってトドメを刺された形である。


 ただ、今回の忍者集団のリーダーは黒をベースに紫の柄をアクセントにした衣装を着ており、どこかで闇を背負った日本風の忍者へのこだわりがあるように伺える。


「大昔には我が家にもお抱えの忍者がいたそうです」


 一緒に見学する金剛さんが言った。


「マジで!?」


「はい。我が家に代々仕えてくださっている執事家がその系譜だという話ですが、明治時代くらいに忍者としての役割は終わったそうです」


「はえー、本当にそんな人がいるんですね」


「忍者という存在がかつていたのは確かですし、世の中にはその血を引いている人は結構いるでしょうね」


 金剛さんの家が抱えていたのは、ちゃんと忍んでいる系の忍者だろう。

 それに対して、ショーをしているのはNINJAたち。その姿と動きはとっても派手。


 新時代の恩恵を受けたNINJAの身体能力は凄まじかった。


 一切支えられていない状態で地面に立てられた長梯子を、ほとんど手を使わずに駆け上がり、そこから隣に立てられたポールに飛び移る。

 最初こそポールは人に支えてもらっていたが、演者が飛び移るとそれらの補助はなくなった。それなのにポールは自立を保ち、演者はくるくると演技をしながら下に降りてくる。


 この長梯子とポールを起点にショーは展開され、空中でリンゴを切ったり、懐から花びらを投げたりと色々なバリエーションの演技を行なう。


「どういう術理なんだろう?」


「長梯子は伝統芸にあるので理屈はわかりますが、ポールについては確かにわかりませんね。あれほど動いてどのようにポールの重心を保っているのでしょう」


 命子と金剛さんはショーの構成よりも、体の動かし方が気になった。


 一方、ルルとメリスは猫目を子供のようにキラキラさせて、ショーを見ている。2人が楽しそうで、ささらもニコニコだ。


 ショーの流れが変わった。

 おどろおどろしさが少しある曲調に変わったかと思うと、髑髏の仮面を被った3人組がアクロバティックな動きで乱入したのだ。


「「にゃーっ!」」


「ルルさん、メリスさん! 悪い人みたいなのが来ましたわよ!」


「セーバイされるヤツデス!」


「エチゴヤーでゴザル!」


「あんな強そうな越後屋は見たことねえよ」


 見るからに悪役の登場にルルたちは大興奮。ヒナタは冷静にメリスの言葉にツッコンだ。


 そこから始まったのはバトル展開。

 先ほど使った長梯子やポールを使ったアクションを交えつつ、地上に空中にと派手なアクションで立ち回る。正義忍者も悪党忍者も、共にその練度はかなりダンジョンに潜っている人の動きだ。


 悪党2人が倒され、残るはボスと思しき1人のみ。しかし、その1人は凄く強い設定のようで、正義忍者は絶体絶命のピンチ!


「「「がんばえー!」」」


「立ち上がるデース!」


「奥義を出すでゴザルー!」


 子供たちに混じってルルとメリスの声援が飛び、その声に応えるように膝をついていた正義忍者たちが立ち上がる。


「行くぞ、みんな! 奥義!」


 奥義を出すらしい。メリスの声援がメタっていた。


 正義忍者たちが一斉に攻撃を仕掛け、悪党忍者の気を引く。その間にリーダー忍者とヒロインぽいくのいちが長梯子を駆け上がり、空中に飛び上がる。


「「幻影・飛天串刺し落とし!」」


 空中で男女が2人ずつに分身し、真下にいる悪党を串刺しにする。もちろん、串刺しのフリだ。


 その大技を見た命子は衝撃を受けた。


「ネットミームや!」


「いや、お前の一撃につけられた名前だけどな」


 命子の驚きに、ヒナタが思わずツッコンだ。テンションが高い命子たちにヒナタは大忙しである。


 かつて、風見町防衛戦で三頭龍に大ダメージを負わせた命子の一撃。ネットではその一撃にワイワイと様々な技名がつけられ、『飛天串刺し落とし』が最も有名な名前として定着した。たぶん、バカっぽさが良かったのだろう。ネットなんてそんなものだ。


『落下エネルギーを乗せて敵を串刺しにする』という使う機会が滅多にないのは明白な技だが、自身のファンタジーヂカラの証明としてその実演動画を投稿する人が世界的にとても多く、ネットミーム化されていた。そして、その際には『命道』やら『二刀』やら『バーニング』やら、冠言葉がつく習わしがあった。今回は『幻影』らしい。


 それはともかくとして。

 地面にレプリカ武器を突き立てた男女2名と分身2名の中央で、悪党忍者は「み、見事なりぃ」と倒された。


「「「わーっ!」」」「「にゃーっ!」」


 正義忍者が勝ったことで、子供たちとネコ共が大興奮。もちろん、大人も派手なアクションに大満足で拍手する。


 死亡していたはずの悪党忍者3人衆も混ざって、演者たちが観客に礼をする。


 拍手に包まれた中、リーダーがルルに近寄った。

 20代中頃だろうか、イケメンである。そして、おそらくヒロインくのいちとデキている。萌え属性の宝石箱のようなルルに接近するリーダーへ向けるヒロインくのいちの視線が、ハラハラしたものに変わっていた。


「流ルルさんですね」


「いかにもデス!」


「それに皆様も。お会いできて光栄です」


「これはご丁寧にメルシシルーデス。そちらも結構なNINJA道だったデスな。もうブブ漬けがバケツ一杯出てくるくらいデス」


「良い感じの言葉だと思っています」


 うむぅと深く頷きながら危険なセリフを言ったルルを、命子が光の速さでフォローした。


「ところでフウマ殿」


 ルルの言葉に、イケメン忍者と命子たちは首を傾げた。フウマとは誰だと。


「ワタシもあの階段のヤツをやってみたいデス」


「にゃー、フウマ殿、拙者もやりたいでゴザル!」


 イケメン忍者は『フウマって俺のこと!?』と内心で驚きつつも、ルルの申し出を喜んで受け入れた。なお、ルルは『梯子』という言葉がパッと出てこなかった。フウマは知っているのに。


「こちらこそ、ルルさんやメリスさんの技術を拝見したいと思っていました。ぜひ、挑戦してみてください」


 なんだかそんな流れになった。

 その話を聞いていた観光客は大騒ぎ。生ルルと生メリスが演舞を見せてくれるのだと。


「変なことになっちゃいました。お時間は大丈夫ですか?」


 ささらに付き添いをしてもらってフウマ殿と打ち合わせをしているルルとメリスを横目に、命子は金剛さんに問う。


「はい、時間は問題ありません。それよりもとても興味深いです」


「そうですね。それにしても、旅先でイベントを起こすのは大抵がささらなんですけど、今日はネコ共でしたね」


「ささらさんは剣士にとって憧れですからね」


「たぶん、絡まれ体質なだけだと思いますよ」


 すると、そばでナナコがスマホを片手に言った。


「みんなー、いま緊急でカメラを回しています。いまからルルちゃんとメリスちゃんが京都で演舞を披露します」


「その緊急でカメラってやつ、生で初めて聞いた!」


 録画にがっつり命子の声が入ったが、それも趣がある。


 ルルたちの打ち合わせが終わり、いよいよ演舞がスタートした。


 ルルとメリスが同時に行なうようで、少し距離を置いて長梯子とポールが補助の人の手によって立てられ、その中央に2人がいる位置取りだ。


 2人共が着ていた和風カーディガンを肩にかけた状態で、観客へキリリ顔を向ける。マナ進化を2回しているだけあって、真剣な顔をするだけでも溜息が出るほどの美少女っぷり。


 和楽器の生演奏が始まった。

 三味線や横笛から流れる曲は、2人がリクエストしたカッコイイアニメソング。


 BGMが始まると、2人が同時にその場で1mほどジャンプした。

 膝を曲げ、横回転を加えた跳躍だ。その瞬間、肩にかけていた和風カーディガンを手に取り、ぶわりとなびかせて体を覆う。


 観客の目に2人の姿が見えなくなった瞬間、和風カーディガンの幕から分身した状態のルルとメリスが飛び出した。いきなり4人に増えたことで、すでにどれが本物なのかわかる人は少ない。


 ダブルメリスは長梯子を裏と表から駆け上がり、ダブルルルはポールを使って演武を始めていた。


 ダブルルルは、それぞれ跳躍してポールの半ばを握ると、反動をつけて空に向かって蹴りを放つように天辺へと跳ぶ。その勢いはまるで矢のようだ。

 5mはあるポールの頂上を越えて跳躍したダブルルルは、空中で再び和風カーディガンをなびかせると、いつの間にか分身を終えて1人に戻っていた。

 そして、羽のように軽やかに、わずか10cmにも満たないポールの上に降り立つ。サイコでクラッシャーな総帥のような堂々とした立ち方だ。


 ところでルルはミニスカートである。

 当然、こんな高いところに登ろうものなら、必然的に観客はローアングルから見上げる形になる。それはもう、男子も女子もゴクリとしちゃうわけだが……残念! 中身はスパッツでした!


 一方、長梯子を表側と裏側から駆け上がるダブルメリス。フウマ殿たちもやっていたように手を一切使わずに駆け上がる超人技だ。

 最後の一段で跳躍したダブルメリスは、空中でくるんと身を翻したかと思うと分身を終えて1人に戻り、梯子の2本の支柱に片足ずつを置いて仁王立ち。和風カーディガンが風にたなびく姿は最高にクール。メリスも煌びやかな長い脚の根本を隠しているのはミニスカートなわけだが、やはり中身はスパーッツっ! 残念!


 最初こそ補助の人の手で立っていたポールと梯子だが、すでにその補助はなく、完全に2人のバランスのみで自立していた。


 そんなポールの上には金髪ネコ。長梯子の上には銀髪ネコ。

 太もも肌面積多めのくのいち装束を身に纏ったルルとメリス。向かい合う形の2人は、どちらも威風堂々とした立ち姿だ。


 これから始まる演舞を見逃すまいと、バッ、バッと観客たちの視線が左右に行き交う。

 修学旅行の男子学生はまだワンチャンあるのではないかと、ミニスカートの中へ向けて人生で一番集中する。だって、ネコシッポが生えているし、スパッツにだってなんらかのバグが発生しているかもしれないじゃないか……っ! が、ネコ共にそんな死角などありはしない!


 ルルとメリスがお互いに向けて跳躍する。

 2人は空中で交差した瞬間、お互いに右腕同士を絡ませてくるんと横回転。そして、物理法則を無視するようにルルは長梯子へ、メリスはポールへと移動する。


 2人が腕を絡ませて回転した場所には、2人の氷の残像が残っていた。ルルが編み出した『氷瀑人形の術』だ。

 氷の残像が落下を始めるよりも早く、氷瀑人形の術が発動して氷が弾けた。粉々になった氷の破片は太陽の光を浴びてキラキラと輝く。それと同時に、和楽器で演奏されるアニソンはサビへと突入。


 カッコイイ曲の中、氷の粒子が煌めく空中のステージで、ルルとメリスは開脚回転したり、バク転したりと華麗に舞う。

 観客たちは熱にうかされたようにその演舞を見上げる。


「マジでどういう理屈だ? 仲間の私でもわからん」


 どうして長梯子やポールは倒れないのか不思議な命子がそう呟くが、みんな2人の演舞に夢中で拾ってくれる人はいない。落ち着いた女の子である金剛さんですら夢中だ。なので、命子も気持ちを切り替えて『わぁ!』としておいた。


 いよいよ曲が終わるというところで、一番上から飛び降りた2人は、お互いに左右対称となるように片足を横へ広げ、カッコよく地面に降り立つ。俗にヒーロー着地と呼ばれる強者のみに許された着地方法だ。

 和風カーディガンが遅れて2人の背中へとかかり、それと同時に三味線が『ベベン! ベベン!』と演舞を締めくくった。


 その瞬間、割れんばかりの拍手が鳴り響いた。


「素晴らしい演舞でした!」


 フウマ殿が褒め称えるので、ルルとメリスは揃って胸を張りドヤドヤ。ヒロインくのいちは興奮しつつハラハラするという器用な顔。


「フウマ殿たちも随分頑張っているデス。1年後にはいまのワタシたちよりもずっと凄いことができるはずデスよ」


「はい。そうなれるように精進します」


「うむぅ! まあ、ワタシたちもショージンするから、追い越されないデスけどね!」


 今回のルルとメリスの演舞は風女の修学旅行編のワンシーンとして動画投稿され、大変好評となる。そして、イケメン忍者のことをフウマ殿と呼ぶ人が滅茶苦茶増えた。本当は田中なのに。


読んでくださりありがとうございます。


ブクマ、評価、感想大変励みになっております。

誤字報告も助かっています、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
適当な道を教えてキャッキャする妖精ではなくそもそも仲間が迷子(自称)の妖精では?正しい教えでドヤるタイプ
スパーーッツ!
どこぞの劇団所属なら今日から芸名フウマだな
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