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2-25 時代の節目が生んだ小さな英雄

 本日もよろしくお願いします。

「お姉ちゃああああああんあんあんあん!」


「妹よ! ひしっ!」


 仮設テントに近づくと、妹が泣きながら命子に抱き着いてきた。

 命子はいつもはあまりこんなことしない妹のデレに、ヒシッと抱き返す。


「「命子ぉ!」」


 さらに両親も加わる。


 同じように、ささらとルルの両親も来ていたようで、べんべん泣きながら娘たちを抱きしめた。ささらのママだけは、目にギュッと力を込めて涙を見せないのが命子には印象的だった。

 3泊4日のダンジョン行の果てに勝ち取った温もりに、押し寄せてくる感情の波に耐え切れず、ささらとルルもまた泣いた。


「ふぁあああああんあんあんあん! お母様ぁ、お父様ぁ!」


「パパァ、ママァ! たらいまあああんあんあんあんあん!」


 ささらは、淑女であらんとすることをしばし忘れて。

 ルルは、モデルのように美しいその顔を涙と鼻水で汚しながら。


 自分の何十倍もある龍に命子と共に果敢に挑んだ2人は、15歳という年相応の子供らしく、親の温もりの中で泣くのだった。


 それを見つめる命子は、妹と両親の頭をなでなでし、うんうんと頷く。

 その目の端からは、もらい泣きの雫が流れた。

 この少女、ダンジョンが普通に楽しくて、もらい泣き以上の涙が流れなかったのである。親の心、子知らずであった。


 それから恒例となった事情聴取となった。


 しかし、命子としてはマスコミがいるうちにやっておきたいことがあった。


『地球さんプレミアムフィギュア』についてだ。


 黄金のゲートの渦の前で、命子たちはこの地球儀をどうするか決めた。

 どこかのテレビ局に乗り込み、自分たちがこれをどうするか世界中に発信してもらうつもりだったのだ。もし地球儀を持っていたら、各国からいろんな人が来て、修行どころではなくなってしまうからだ。


 命子たちは無限鳥居の外がこんな状況だとは思っていなかったため、本来なら数日後にでも決行する予定だったが、幸い、テントの外にはマスコミがたくさんいる。

 さらに言えば、地球さんTVが配信されることで、地球儀の存在が明るみに出るため、早く手を打ちたかった。


 だから、命子は馬場に、自分たちが地球儀やいくつかの品をどうするか告げ、それについてマスコミに告知してしまいたいことを打ち明けた。

 馬場は、どこかへ電話してから、命子たちの提案を了承した。


 というわけで、命子たち3人は緊急記者会見を行なった。

 山の中腹で。




 命子たちの背後には、今、世の中を騒がすホットな町、風見町の灯が見える。

 記者たちのカメラからは角度的に映らないかもしれないが、そんな背景だ。


 命子たちに大小さまざまなレンズが向けられる。

 正真正銘、色んな人に見られる。

 というか、見られている。多くの局が特報扱いで生放送にしているのだ。


 しかし、龍の威圧にすら立ち向かった少女は、この程度のプレッシャーでは揺るぎはしない。

 というよりも、命子は、割とカメラが平気な女の子であった。

 それは風見ダンジョンから帰った日に泊まった病院の一室で、エネーチケーの収録をした経験が命子の中で息づいているからだ。そう、命子はカメラ慣れした女になっていたのである。いつエネーチケーで放送されるのかは謎に包まれているが。


 その後ろにいるカメラ素人のささらは、別にカメラとか気にしてませんわ、みたいな顔でお澄ましして、プルプルしている。

 ルルは、ニコニコ笑ってカメラ目線。


 周りには報道陣の他に、自衛隊員や警察官、命子たちの家族がいた。

 そんなギャラリーの中で、命子は深呼吸する。


 軽く開いた指に一本ずつ力を入れていき、伝えなければいけないことの個数を確認する。

 誰かが発言を急かすこともなく、静寂が30秒余り続いた。

 コスプレチックな衣装が闇夜の中でライトに照らされ、まるで異世界から来た娘たちを撮影しているようなおかしな絵になっていた。


 そうして、命子は口を開いた。


「みなさん、まず初めに行方不明になった私たちを心配してくださり、ありがとうございました。この通り、無事に帰ってくることができました」


 命子は前置きでお礼を言う。

 大の大人ですら上がってしまうようなこの状況の中で、落ち着いた物言いをする命子に、大人たちは感心した。

 一方、遠くから命子の様子を見つめるパパは、カメラに向かって堂々とする娘が滅茶苦茶遠くに感じた。

 母と妹は、娘(姉)すげぇ! といった目で見つめている。


「さて、これから私たちが言うことを、どうか利益など考えずに世界の人たちに届けていただきたいと願います」


 その言葉に、全報道陣が身体を震わせた。

 これは歴史に残る報道になると、長年の勘が全力で訴えかけてきたのだ。

 いったい、彼女たちはダンジョンの中で何を知ったのか。


「先ほど、地球さんが言っていたように、私たちは世界で初めてダンジョンをクリアしました。無限鳥居のダンジョンという場所です。そのご褒美に、一つの贈り物を頂きました。これです」


 命子は地球儀の台座を持ち、高々と掲げる。


「地球さんプレミアムフィギュア」


 命子は勿体ぶって言葉を切った。


 この放送を見ている日本中の人の頭に疑問符が飛び交う。

 地球さんプレミアムフィギュアってwww

 その疑問符には笑いも多分に混じっていた。


 しかし、続く命子の言葉にその笑いも引っ込んでいく。


「この地球儀は、最大で直径9メートルまで大きくなります。一度設置するとその場から動かすことはできなくなります。そしてその効果は、世界中にあるダンジョンの所在がわかる、という物です。ちなみに乱暴に扱うとカルマが減るそうです」


 記者たちがゴクリと喉を鳴らした。


 女の子3人が、ダンジョンでとんでもない物をゲットして帰ってきた。

 これがあれば、未だ発見されていないダンジョンが速やかに分かるのだ。その価値は計り知れない。


 売ればいったいいくらになるのか。

 1億? 10億?

 いいや、そんな桁では利かないはずだ。


 単純に考えるだけでも、世界中の国から、いつ終わるとも分からないダンジョン捜索にかかる費用を極限まで削ることができるのだから。


 いったい、これを誰に売るつもりだろうか。オークションに出すのかもしれない。


 そんな物を掲げた少女は、こう言った。


「私たち3人は、この地球儀を全世界の人たちに寄贈します。管理は日本政府にお任せします。取り合いなどせずに、どうか世界のために仲良く使ってください」


 カメラのフラッシュが星空の下で瞬く。

 記者たちは、ペンを走らせながら、混乱していた。


 なんなんだ、この少女は、と。

 世界を揺るがす大発見をなんの気負いもなく言葉にし、凄まじい価値を宿した地球儀を世界の人に寄贈するだと?


 確かに全てのダンジョンの場所が分かってしまえば、価値は下がるだろう。

 けれど、この新たな時代のシンボル、そう例えば、世界遺産レベルの物になることはまず間違いない。

 いや、そもそもこれから先、ダンジョンが増えない保証だってないのだから、やっぱりその機能本来の価値は決して下がるまい。


 物の価値が分からないおバカな子なのか。

 それとも……


「次に、ダンジョン内で見つけた回復薬です。これは魔力を消費して人体を回復するものです。きっと色々な国で発見されて、研究が進んでいることでしょう。これも日本に寄贈します。3分の1は、キスミアにも送っていただきたいと思います。どうか研究の足しにしてください」


「か、回復薬……」


 耳の早い記者はすでに各国の軍隊がちらほらと見つけているという情報を得ていた。

 けれど、本当に実在するという確定した情報は得ていなかった。それが今、確定した。


「最後は、この初級装備やアクセサリーの作り方が書かれたレシピです。スキル【レシピ読解】を持っている人が読むと、作り方がわかる物です。これをいつかこの風見町にできるであろう、ダンジョン探索者のための施設に寄贈します。それができるまでは、日本政府に預けます。各国の方々、私たちのような初級装備を作りたかったら、日本政府に連絡してください」


 この放送を見ていた日本の官僚たちは、頭を抱えた。

 すでにさっきから、世界初ダンジョン攻略者関連で連絡が引っ切り無しに来ているのに、そこにきてこれである。これは、過労死コースなのではないだろうか。

 しかし、少女たちがここまでのことをした以上、それに応えないのは大人の矜持に関わる。やるほかない。


 命子はふぅと息を吐いた。


 自分たちが持っていたくない物の所在は、これで全世界に告知できたはずだ。


 そうして、記者会見を終えても良いか馬場に目を向けると、その背景に父の姿が見えた。

 命子がダンジョンに入るのを反対する父。


 さらにカメラマンたちの背景には、お社の奥でダンジョンを封鎖していく自衛官たちの姿があった。

 いつになるか分からない民間人へのダンジョン開放。


 その2つが命子の胸の中で交差する。



 次に、私がダンジョンに入れるのは、いつになるのだろう。



 命子は、猫妖精のお宿で想像した賑やかな宿の様子を思い出す。

 それは本当にあった出来事ではないけれど、実現すればきっと凄く楽しい空間になるだろう。


 命子は、一生懸命修行する小学生たちを思い出す。

 あの子達がレベル3になれば、ぐんぐん強くなって、きっと風見町は凄い町になるはずだ。


 命子は、待っておるぞ、と錫杖を突きつけてきた天狗や百鬼夜行のことを思い出す。

 今のままでは奴らの足元にも及ばないけれど、いずれはきっと。


 命子は、龍を打ち倒し、3人で喜びを分かち合って泣いた温もりを思い出す。

 またあんな風に魂を震わせたい。



 あぁ、次に、私がダンジョンに入れるのは、いつになるのだろう……



 ―――気づけば、命子はカメラに向かって語り掛けていた。


「みなさん。世の中はファンタジーな世界になりました」


 命子はそう切り出すと、魔導書をふわりと浮上させて魔法待機状態にする。

 その魔法的な現象を前に、報道陣がゴクリと喉を鳴らす。


 一方で、馬場や自衛官たちは、ギョッとした顔をする。


 止めに入ろうとした馬場を、自衛隊隊長が慌てて止めた。

 一拍置く形になった馬場は、ハッとする。

 ここで命子を止めるのは危険なのだと気づいたのだ。


『莫大な価値のある物を、なぜ全て寄贈するという形にしたのか』


 全ての物品の寄贈先が明言された後のこのタイミングで馬場や自衛官が止めに入った場合、確実にまずい憶測が日本全土、いや世界中に飛び交うことになる。


 つまり、少女の言葉は、全て日本政府に言わされているのではないか、と。

 そして、日本政府は少女から手柄を奪ったのではないか、と。

 多くの物を寄贈すると宣言したあとのこのタイミングで少女の言葉を止めるのは、余計なことを言うなという実力行使なのではないか、と。


 もちろん、カルマが恐ろしすぎてそんなことできるはずがないが、カルマの解析が終わっているのなら話は変わってくる。カルマ解析など終わっているはずもないが、きっとそんな憶測だって世に蔓延するだろう。

 こうなるともう、様々な信頼が地に落ちることになってしまう。


 魔法待機状態という危険なことをしたから、と言えば大義は立つが、それは政府サイドの言い分で終わるだけだ。


 故に、馬場も自衛官たちも動けない。

 命子の話は誰にも邪魔されることなく、続いた。


 魔法待機状態の火弾と水弾の近くにそっと手を添えて、命子は言う。


「この程度で驚いていてはダメですよ。こんなこと、カルマさえプラスなら誰でもできるようになります」


 命子は魔法を解除して、魔導書を自分の身体の周りでくるくる回した。

 魔法を解除したのは、何かの間違いで暴発したら誰か死ぬかもしれないからだ。


「地球さんの話ではダンジョンからは魔物が出るようになるそうです。私はまだ出てきたという話は聞いていませんが、遅かれ早かれそうなるんでしょう。

 そうなった時、自治組織では手が回らなくなる可能性だって十分に考えられます。なにせ、まだダンジョンからどれほど魔物が出てくるか、どうやって出てくるか、誰も何も知らないのですから。

 そうして、もし魔物がアナタのところにやってきた時、戦うのも逃げるのも誰かを守るのも、力が無ければ成し得ません」


 命子はサーベルを抜き放ち、顔の正面で真っすぐに立てた。特に意味はない。カッコいいだけ。

 2つの魔導書を、身体の横で意味ありげにフワフワ浮かせる。これも特に意味はない。カッコいいだけ。

 しかし、カメラに映ったその姿は、世界がファンタジーに変わったという強い説得力を宿していた。


 命子は瞼を閉じ、朗々と言葉を紡ぐ。


「その時まで座して待ち、自分や大切な人の生き死にを来てくれるか分からない他者に委ねるか。それとも死に物狂いで修行して、愛する者を守るために敵を屠るか!」


 剣を中心にして左右に分かれた双眸が、クワッと見開く。

 龍の威圧さえ弾き飛ばした少女の眼光が、カメラを介してテレビの前の日本人たちに向けられる。


 最も強い眼差しを向けられた大江戸テレビのカメラマンが、ひゅっと息を飲んだ。

 そして、そのチャンネルでこの瞬間を見ていた者たちは、身体をビクつかせる。


「修行せい!!」


 命子は、顔の前に立てた剣の裏側で吠えた。


「後で泣くくらいなら修行せい! 世はまさに冒険の時代となったのだから! 小さな子供は逃げる術を学び、大人は守る術を学べ! 己を鍛え、ダンジョンの敵を倒し、大切な人を守るのだっ! 見よ、この風見町を! 子供からお年寄りまで多くの人が自分に出来る修行を始めているよ!」


 命子の叫びが日本中のお茶の間に轟く。


 感受性豊かな者は、魂を震わせ。

 臆病な者は、目を逸らし。

 熱くなれない者は、手を震わせながらせせら笑う。


 しかし、全ての人の心の泉に石が投げ込まれた。

 波紋が広がっていく。


「けれど、ダンジョンに指導者なくして入れば、多くの人が死ぬでしょう。テレビの前のアナタは無事でも他のアナタは運悪く死ぬかもしれません。指導してくれる人がいなければ、それは必ず誰かの身に起きます。だから偉い人はどうか、どうかみんなが安全に強くなれるように導いてください」


 そうして命子は、締め括る。


「人と人が争う時代はもうおしまいだよ」


 命子は言いたいことを言って、剣を納めた。


「最後になりますが、改めて、みなさん、私たちの心配をしてくれてありがとうございました。ささらとルルと私でダンジョンクリアしましたよ。地球さんが動画を配信するらしいので、どうぞ見てみてください」


 にっこりと命子は微笑んで、その場を後にした。


 ささらとルルと妹が、命子をキラキラした目で見つめた。

 今の演説を後ろで聞いていたささらとルルは、1人で龍の下へ駆けだした小さな英雄の後ろ姿が重なって見えていた。


 その場を去り行く命子は、小さく頷いた。

 きっとこれだけやれば、ダンジョン開放が加速するぞ、と。


――――


【時代の節目が生んだ】羊谷命子ちゃんが武闘派だった件【小さな大英雄】


1、名無しの修行者

 ここは究極の生命体命子たんを語るスレ。

 寄贈された物を語りたい奴は他スレへ。


 次スレは≫970を踏んだ奴がよろしく。


 修行せい!


2、名無しの修行者

 1乙。


3、名無しの修行者

 早いね、1乙。


4、名無しの修行者

 なんだこれ鳥肌が凄いんだけど。

 修行せいっ!


5、名無しの修行者

 俺らは一体何を見せられたんだ?


6、名無しの修行者

 英雄誕生の瞬間以外にないだろうが。


7、名無しの修行者

 英雄度が高すぎない?

 もうちょっとマイルドでも良いんだよ?


8、名無しの修行者

 確かにフルスロットルではあった。


9、名無しの修行者

 命子ちゃんの覇気で息が止まったんだけど。


10、名無しの修行者

 俺なんて家電屋さんの売り場のテレビで見てたんだけど、その場にいた全員ヒュッてなったぞ。


11、名無しの修行者

 複数台のテレビから命子たんの覇気ぶつけられるとか死ぬじゃん。


12、名無しの修行者

 www


13、名無しの修行者

 俺はラーメン屋で見てたけど、店の中にいる人が全員ラーメンそっちのけだったからね。

 店主がテレビ凝視しながらコンロの火消してたよ。


14、名無しの修行者

 ラーメン作れよwww


15、名無しの修行者

 ラーメン作ってる場合じゃねえ(; ・`д・´)


16、名無しの修行者

 命子たんの覇気が強すぎて、色んな物を寄贈したインパクトが消し飛んだんだけど。


17、名無しの修行者

 あれらは今、別のスレでめっちゃ盛り上がってるぞ。


18、名無しの修行者

 修行せい!


19、名無しの修行者

 つべこべ言わずに修行せい!


20、名無しの修行者

 なぜここまで彼女は修行を推すのか。

 ダンジョンを見てきたから特別な危機感があるのかな?


21、名無しの修行者

 地球さんTVでそれもわかるかもしれないぞ。


22、名無しの修行者

 確かにそうだな。


23、名無しの修行者

 ちょっと走ってくるわ。


24、名無しの修行者

 まて、もうそろそろ動画配信が始まるぞ。


25、名無しの修行者

 >20、思い出せ、みんな。

 地球さんは、動画配信するにあたって、『これを見て、他の人間さんもやる気になってくれれば良いんだけどね』って言ってたぞ。


26、名無しの修行者

 確かに言ってたな。

 俺たち、やる気がないって思われてる?


27、名無しの修行者

 それに命子たんの言っていたことも一理ある。

 お前ら、ダンジョンの渦以外から敵が出てくる可能性を考えたことあったか?


28、名無しの修行者

 完全にダンジョンの渦から出てくるものだと思ってたわ。


29、名無しの修行者

 僕もそう思ってました。

 あそこで自衛隊が防いでくれるんだなって安心してました。


30、名無しの修行者

 俺もダンジョンの渦なんて目印があるから、そうなるんだと思ってたよ。

 だけど、命子たんはそうじゃない可能性を考えてるんじゃないか?


31、名無しの修行者

 全部、推測の域だけどな。

 けど、修行は必要になるかもしれないぞ。


32、名無しの修行者

 忙しくて修行する暇なんてないんだけど……


33、名無しの修行者

 ここに書き込む余裕があるなら大丈夫さ!


34、名無しの修行者

 確かにやべえ奴はここに書き込む暇があったら寝るな。

 自由の翼を手に入れる前の俺がそうだった。


35、名無しの修行者

 いや、電車の中で書き込んでるんだけど。


36、名無しの修行者

 だから、忙しすぎる奴は電車の中で寝るからな?

 マジ、スマホを弄る10分すらも惜しい地獄だから。


37、名無しの修行者

 命子たんは、自分に出来る修行しろって言ってんだよ。


38、名無しの修行者

 そうそう。通勤中に両手足に5キロの重りを付ければ、忙しくても修行できるだろ?


39、名無しの修行者

 死んじゃうんだけど。


40、名無しの修行者

 っていうか、修行しなければ良いじゃん。


41、名無しの修行者

 それな。


42、名無しの修行者

 は? お前、あの演説聞いて熱くなれないタイプ?


43、名無しの修行者

 いや、俺は修行するよ。仕事があるけど、30分とか1時間ずつでもやるつもり。


44、名無しの修行者

 ふむ、良い事だ。して、修行しなければ良いとは?


45、名無しの修行者

 ギャンブルと一緒だよ。

 自分や大切な人の前に魔物は現れないってほうにベットすれば良い。

 ほら、修行する必要なんてないだろ?


46、名無しの修行者

 無茶苦茶な理論だなwww

 

47、名無しの修行者

 そうか?

 勝った場合は修行する時間が節約できて得するし、負けたら命や怪我で支払う、それだけでしょ?


48、名無しの修行者

 負けのリスクがバカ高いじゃねえか!


49、名無しの修行者

 でも、修行しないって事は、ソイツにとって、賭けに勝った場合に得る時間の節約が命に釣り合ってるわけだろ?


50、名無しの修行者

 それはそうだが、世の中にはブラックってものがあってだな?


51、名無しの修行者

 世の中の人間がどれほどカルマを欲しているか知ってるか?

 ブラック企業だってしかるべき場所に相談を入れれば、今のご時世一瞬でテコ入れが入るぞ?

 そういうスレがあるから行ってこい。


52、名無しの修行者

 マジで?


53、名無しの修行者

 そういうブラックじゃなく、母子家庭なんかで本気で時間がない人だっているから、そこら辺のフォローをする制度は必要だろう。けれど、それは命子ちゃんに文句を言うことではない。政治家の仕事だ。


54、名無しの修行者

 なんにしても、スマホでゲームしている暇があるなら、少し考えるべきだろうな。


55、名無しの修行者

 そもそもさ、4日間も冒険してきた女の子3人が、あんな元気でいられる理由を考えないのか、お前ら。


56、名無しの修行者

 どういうこと?


57、名無しの修行者

 ステータスが上がると、仕事ごときじゃ疲れなくなる可能性があるんだよ。


58、名無しの修行者

 ふぁっ!


59、名無しの修行者

 あーっ!


60、名無しの修行者

 魔物を倒して命を繋ぐだけが、利益じゃないんだよ。

 たぶんな。


61、名無しの修行者

 57の補足だが、これから先の世界で修行ってもんが女にモテる要因の一つになる可能性が高いぞ!

 修行場は出会いの場になるわけさ。


62、名無しの修行者

 は? バカかよ。

 そ、そんな浮ついた気持ちで修行しねえし。

 さーて、命子たんみたいになるために、走ってくるかな!


63、名無しの修行者

 だから動画が始まるって!


 読んでくださりありがとうございます!


 ブクマ、評価、感想、とても嬉しいです。

 誤字報告もありがとうございます!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 泣いたー 2章は何回見ても泣きポイント多すぎる 話の展開や構成が神がかってる
[気になる点] そういえば3人の身体能力はどこまで上がったのかな? とりあえずルルは高速移動使えば世界記録は出せそう(笑)
[気になる点] >何十倍 ティラノサウルスでググると >全長13メートル、体高6メートル、体重7トン。 ちょっと縮めて、全長10m、体高5m、体重5t 命子は150cmくらいだっけ?体重は40kg…
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