12-19裏 蒼穹の風女 前編
本日もよろしくお願いします。
『ソラ。 』
あの時、パパはなんと言っていたっけ。
それは遠い日の思い出。
「また空見てんの?」
「思春期だからね~」
少女は屋上のベンチで仰向けになって寝転がり、空を見上げながら友人を軽くあしらった。
「思春期だからこんなパンツ履いてんの?」
「そうだよ。思春期だから縞パン。パンツ屋さんが言ってた」
「セールストークのバケモンじゃん。それじゃあ買っちゃうね」
「そうでしょ、私も目から鱗がザブンザブン出たよ。だから縞パン。理解したならスースーするからスカート降ろして」
ふぁさりと布地が太ももに掛かる。少女は最初から最後までクールであった。
「明後日から春休みだけど、部活は?」
「明後日は法事」
「新部長が巨大ピタ〇ラスイッチ作ってフォーチューブにあげるんだって」
「チビッ子先輩っぽいね。出るの?」
「うん、せっかくだしね。新入部員勧誘用でもあるみたいだし、参加しとかないとダメかなって」
「それじゃあ私も出るかな~。まあ、とにかく明後日は無理ね」
こんなふうに友人とまったり話す日々を続け、いつかは彼氏でも作り、父親との思い出も風化していくものだと思っていた。
少女の名前は、山海空。
風見女学園の命子たちの先輩である。
父親は航空機の設計者で、空をこよなく愛する人だった。
どういう経緯だったのかは小学生だったのでわからないが、ある晴れた日に家族でセスナ機に乗り、その時に父親がソラに向けて言った言葉があった。
「なんだったかな」
ソラはその時の言葉を思い出せなかった。
制服姿のソラは、その時の思い出の写真を撫でる。セスナ機の前で並んで撮った家族写真だ。
空の遊覧がよほど楽しかったのだろう、写真の中の自分は父親と手を繋ぎ笑顔で写っていた。その隣では2歳下の弟が母親にしがみついており、あまり空を楽しめなかった様子。
写真の中の父親は娘の目から見てもイケメンで、たぶん自分はファザコンなのだろうとソラは思っていた。
「もう1年か」
そんな父親が、ソラの高校入学を見ることなく大きな交通事故に巻き込まれて亡くなった。丁度1年前、ソラが春休みを満喫している日のことだった。
失意の中で入学した風見女学園では、中学まで頑張っていたテニス部に入る気になれなかった。されど、非行に走るほどの忘恩さもない。
それからはやる気が起こらず、ほどほどに勉強して、なんとなく選んだ工作部で活動し、この1年は流れに身を任せてきた。
「姉ちゃん、準備はできたか?」
弟がドアの向こうで呼びかけてくる。
「いま行くー」
ソラはそう言って、最後に姿見を見た。
そこに映っていたのは、無気力な目をした自分の姿だった。
こんな顔で父親の墓前に立つのか。
父親はこんな目をした女の子に育つように願っただろうか。
そんな想いが脳裏をチラついて強い後ろめたさを覚えるが、ソラはスッと目を逸らして、部屋を後にした。
今日は父親の1周忌だった。
そして、人類史における最も重要な日となる1日でもあった。
『ズォオオオオオオオオオオオオオオン!』
ソラとその家族がその声を聞いたのは、父親の墓前に手を合わせている時のことだった。
地球さんのレベルアップである。
地球さんの大告知は世界中へ同時に告げられたわけだが、万人が命子のようにスマホを持ってピョンピョンしていたわけではない。中には大変にシリアスな状況で聞いた人もいるのだ。ソラはシリアス勢だった。
最愛の父の墓前に手を合わせている最中に、選挙カーもびっくりな爆音でわけのわからないことを告げられれば、ブチギレ案件である。
山海家の面々は故人との対話の時間を台無しにされたと嫌な気分になりながら、その場を去ろうとした。
その時、ソラは誰かに頭を撫でられた気がした。
ハッと振り返ってもそこには誰もおらず、ただ、父の墓の前で線香の煙がゆらゆらと風に遊んでいた。
ソラは、先ほど地球さんと名乗る何者かが告げていたことを思い出す。
曰く、この世には神様がいるのだとか。
地球さんの話で重要な点は人それぞれ。ソラにとっては神様の有無が重要だったのだ。
本当に神様がいるのなら、パパをよろしくお願いします。
ソラは空を見上げてそう願うと、先を行く家族の背中を追いかけた。
この5分後には、この大告知が悪戯でも何でもないと山海家の面々は知ることになる。
それからは怒涛の日々だった。
何の偶然か、ソラの通う学校から世界的な大英雄が爆誕し、その怪電波を受信した生徒たちからも頭角を現す人物が続出した。
決定的な出来事は風見町防衛戦だ。
羊谷命子が世界中の人間にファンタジーの世界と向き合い生きることを認識させ、風見女学園が世界中の学生の意識を改革したとさえ言われるほど、世間から注目されることになる。
立場は人を成長させるというが、この評価がどこにでもいるキャッキャ系女子高生たちに大人の階段を爆走させるきっかけとなった。
ソラも例外ではなく、前よりも少し精力的に活動するようになっていた。
魔法少女になりつつ、工作部でみんなの防具を作り、休みの日にはパーティを組んでダンジョンに潜る。
「ソラちゃん。また飛行機作ってるんか?」
工作部のチビッ子な部長が言う。
ソラは、空いている時間に【生産魔法】を使いながら、よく飛行機の模型を作る子になっていたのだ。
「部長。なんとなくですけどね。魔法世界になったから飛行機も魔法の力を使うように変わるかなって想像しながら作ってます」
「浮遊石なんてのも発見されたかんな」
「はい。と、これで完成です」
「ライトフライヤーか」
「よく知ってますね」
「これでも工作部の部長だかんね!」
チビッ子部長はない胸を張って偉ぶった。
「飛ぶの?」
「たぶん無理です。ゴム動力は積んでますけど、飛ばすことを考えて機体を軽くしてませんから」
ソラはゴムを巻いて優しい手つきで模型の飛行機を飛ばしてみると、案の定、すぐに墜落してしまった。ちなみに、ゴム動力をつけたのはプロペラが回るとカッコいいからである。
「やっぱりダメですね」
「でも、【生産魔法】を使ったから頑丈だ」
「たしかにそれはポイント高いですね」
「上手に出来てるし、これは部室に飾っておこう!」
そんな楽しい日々を過ごしていると、次第に父親のことを思い出す日は少なくなっていった。でも、ふと青空を見上げると思い出す。
『ソラ。 』
あの時、パパはなんと言っていたんだっけ……。
そして、ソラの魂を燃え上がらせる事件が起きた。
命子たちが巻き込まれた龍宮事件。
その事件の最中に現れ、夜空の中に消えていった空飛びクジラをソラも見ることができたのだ。
神獣は資格を持つ者の心に大きな波紋を与える。
空に所縁を持つソラの心にも、その姿はいつまでも残り続けた。
「命子ちゃん。空飛びクジラにはどうやったら会える?」
「え、わからぬ!」
帰ってきた命子に尋ねてみるけど、わからぬ。
「ソラちゃん先輩はどうして会いたいの?」
逆にそう尋ねられて、ソラ自身もどうして会いたいのかわからなかった。
なので、自分の生い立ちを命子に話した。
「私が高校に上がる少し前に、パパが死んじゃったの。パパはさ、飛行機の設計者で自分も空を飛ぶのが好きだったんだ。一緒にセスナ機に乗ったこともあるんだよ。だから、なんとなく空飛びクジラに会いたいんだと思う」
「……そっか。それなら、もしかしたらこれが使えるかも」
「それは?」
「空飛びクジラから貰った笛。まだよくわかってないんだけど、この笛の音を聴くと空を飛ぶ夢を見られるんだ」
「マジか!? 聴かせて!」
というわけで、笛の音を聴かせてもらうと、その晩、本当に空を飛ぶ夢を見ることができた。それは爽快な夢だったけれど、目を覚ますとソラは涙を流していた。
そんな体験を贈ってくれた命子だが、それと同時に、絶対に誰にも言わないでほしいと指切りげんまんまでされて教えてもらったことがあった。
曰く、空飛ぶ船のレシピが見つかった、と。
たくさんの人の生活が懸かっているので国が慎重に管理しており、公表されるまでは誰にも教えてはならないと、命子が教えてくれたのだ。
ソラは命子との約束を守って誰にも飛空艇の情報は言わなかった。
その代わりに、命子が自分だけに教えてくれた意味をよく考えた。
「面白いじゃない、命子ちゃん……っ!」
それからソラは、【生産魔法】を長く維持するための魔力を上げ、率先してダンジョンに潜り、様々なレシピを学んで武具やアイテムを作った。いずれ公開される飛空艇のレシピを扱えるだけの技術を身に着けるために。
「ソラちゃん。次期の部長になってくんない?」
そんなふうに頑張っていたからか、工作部のチビッ子部長からそう告げられたのはある意味当然だったのかもしれない。
「私がですか?」
「うん。ソラちゃん、飛空艇を作りたいんでしょ?」
その頃にはすでに飛空艇の存在は公にされており、チビッ子部長はこれまでのソラの姿からそんな予想をした。
「みんなもお金稼ぎたいだろうから武具フェスとかには出ないとダメだけど、空いてる時間を使ってみんなで飛空艇を作っていいぞ。どうだ?」
「いいんですか? 飛空艇を作りたいのは私情が入っちゃってますけど」
「いいぞ。どういう理由にしても学生が飛空艇を作るなんてカッコイイじゃん」
「……わかりました。私、やります!」
「うむっ! じゃあお願いな!」
こうして、ソラは工作部の新部長になるのだった。
DRAGON東京大会と同時に行なわれた武具フェスも終わり、3年生が卒業した3月。
工作部の部室では、ミーティングが行なわれていた。
「まずは改めて、武具フェスお疲れさまでした」
「「「お疲れさまでした!」」」
工作部の新部長となったソラの挨拶に、部員たちがニコニコでお返事する。どうやら、みんな武具フェスでたんまり稼げた様子である。
「じゃあ手元のプリントを見てね。ひとまず、目についた大型イベントの日程です。武具フェスが終わったばかりだけど、また8月に東京で行なわれます」
「忙しい!」
「GWに西の方でもやりますよね?」
「あまり場を荒らすのは問題だから、生産部連合の会議でそっちは不参加に決定しました。あっちはあっちの学校に任せましょう。基本的に私たちは近場で開催される武具フェスを狙っていくスタイルと考えてください」
「わかりました!」
修行部の生産部門は、工作部以外にもいくつかの部活がある。
魔物と戦うのは苦手だけどファンタジーには関わりたいという子は多く、その受け皿のひとつが生産職になりがちなわけだ。
なんでも屋の工作部、防御力を持った私服の開発をするオシャレ部、レシピから武具を作る武具部、素材の研究をする魔法科学部、魔法陣を研究する魔法陣研究部、ダンジョン素材で料理を作る料理部などなど。これらをひっくるめて生産部連合といった。
「じゃあこれからは夏に向けて作り溜めですか?」
「ううん。8月まで結構あるし新しいレシピや発明、素材が出るだろうから、6月の頭くらいまで製作は待ちます。4月に新部員も入ってくるしね」
「新部員……」
ソラの説明に、部員たちは未だ見ぬ新入部員たちに想いを馳せて、ビビった。
来年度の新入生は適当に風見女学園に入った自分たちとは違い、日本中の出来る子が入ってくるのだ。ビビらないでか。
「本日からは基本的にフリー活動に戻りますが、プリントにある決まった行事とは別に1年間の目標を立てたいと思います」
「依頼をやったり行事に参加しつつ、時間が空いたらコツコツやっていく感じですか?」
「そんな認識で大丈夫。それで私としては、みんなでこれを作りたいと提案します」
ソラは引き延ばされた飛空艇の写真をホワイトボードに貼った。
「ラビットフライヤー!」
「女子高生で作れるの!?」
「いいじゃん、世間がびっくりするようなの作ろう!」
そんなふうに、部員たちは乗り気だった。
「学生が作るのにどれくらいの日数がかかるのかちょっと予想がつかないんだけど、それじゃあ、ひとまず工作部の今年の目標として据えたいと思います」
ソラの言葉に、全員が頷いた。
そんなふうに、3年生が卒業して新しくなった工作部は活動を開始した。
4月になると、新入生が入学し、各生産部にも大量の新部員が入ってきた。
緊張気味な新部員たちは、ちょっとビックリすることがあった。
生産部系の部室が、凄く大きいのだ。
1年生には、こういう部の部室は技術室や家庭科室を使うイメージがあったのだが、風見女学園の生産系の部活は専用の部室棟があったのだ。
これは、修行部が大量に稼いだ金の税金対策として、税理士と相談して学校に献金して建てさせた物だった。
ちなみに土地については、もともと風見女学園にあったものである。少子化のあおりを受けた田舎の学校あるあるなのだが、風見女学園にも使わずに眠らせていた土地がかなりの面積あったのだ。時代を超え、この土地が魔改造されたわけである。
他にももうひとつ驚くことがあり、全員が同じツナギを着ていたのだ。
それが凄く可愛くてカッコイイ!
「それでは自己紹介が終わったので説明を始めます。新入部員の子たちは、まず私たちが着ているツナギを自分で作るのを目指してもらいます。この中にはレベル教育以外でダンジョンに入ったことがない子や初めて生産をする子もいるかと思いますが、先輩たちがサポートするから安心してください」
そう説明する部長のソラ自身も新入部員の育成に参加した。
さすがに超倍率の受験を合格しただけあって優秀な子が多く、飲み込みが早い。
本来なら東大や海外の名門大学を目指しちゃうような子たちなので、本来ならただのキャッキャ勢の一般女子高生には分が悪い。
こいつはヤバい。
2、3年生たちがソラに目配せした。
ソラも今のうちに先輩風を叩き込むのは賛成なので、本日の活動が終わると最後に1年生たちをある場所に案内した。
そこは工作部専用のガレージだった。
そんなのを自分たちが稼いだ金で建てている時点で、1年生たちにとって先輩は尊敬に値するのだが、ソラたちはその心情に気づかない。
「諸君、現在、私たちは秘密裏にあるものを作っています。しかし、女子高生がこれを作っていると国にバレたら新しく法律が作られてしまうかもしれませんので、完成するまで情報を漏らしてはいけません。いいですね?」
そんなヤバいものを!
後輩たちがゴクリと喉を鳴らす姿を見て、先輩たちもゴクリと喉を鳴らした。肩透かしにはなるまいか、と。
ソラがカギを開け、シャッターを上げた。
パチンと灯りのスイッチを入れると、ガレージの中が明るく照らされる。
そこは作業場になっており、中央には小型船が台の上に鎮座していた。
「わー、凄いです。船まで作っちゃうんですか?」
感心する1年生に、ソラが告げる。
「ううん、これは船は船でも空飛ぶ船、ラビットフライヤーよ」
「「「ら、ラビットフライヤー!」」」
ピシャゴーンと衝撃を受ける1年生を見て、イニシアチブのゲットを確信した先輩たちは胸を張った。ラビットフライヤーを作り始めておいて良かったぜ!
「船の形をしてますけど、それじゃあもう飛ぶってことですか?」
そう、ラビットフライヤーはすでに船の形をしていた。
「ううん、これは内部機構の仮組み。まだまだ序盤だね。ラビットフライヤーは外観からはわからないけど、板が二重になってるのよ。その板の間には複雑な魔導回路が張り巡らされるの。つまり今見えている部分の外側にも同じような外装がつくわけね」
ソラの説明に1年生ははえーっとした。
「工作部は長期目標と短期目標で動いています。これはコツコツやる長期目標。あなたたちも実力がついたら色々なことに参加してもらうことになると思うから、頑張ってね」
「「「はい!」」」
そんな元気なお返事を聞いて、先輩たちはホッとするのだった。
そんなふうに1年生の育成をしたり、生徒からの依頼で武具を作ったりする日々を送りながら、ソラは朝や夜に飛空艇の製作を続けた。
「先輩、今日も残業ですか?」
「言い方。でも、今日もちょっと作ってく」
「じゃあ私もちょっとやっていきます」
「ありがとう。じゃあ35番板から順番に成形お願い」
「わかりました」
「ソラ、私も手伝うよ」
「彼氏は?」
「いいのいいの」
「フラれても知らないわよ。それじゃあ、えーちゃんはモコちゃんを手伝ってあげて」
「オッケー」
工作部の子が一緒に残ってくれるかと思えば。
「よーっす! みんなで手伝いに来たぜー!」
そんなふうに他の部の子が手伝いに来てくれることもあった。
「あっ、そうだ。ご飯どうする? 私は料理部に注文してるけど、いまならまだ間に合うかもしれないよ」
「じゃあ私も注文してみるよ。モコちゃんは?」
「あっ、私の分もお願いします」
「魔法陣研究部は?」
「こっちはもう注文してきたから大丈夫」
「オッケー。あっ、もしもし、ランちゃん? まだ注文枠残ってる? 2人分、あ、いやもう2人来たわ。……食べるって。4人分できる?」
わいわいキャッキャと。
ソラを中心にして暇な子が手伝いに訪れ、まるで毎日が文化祭前夜のような賑わいを見せ、ちょっとずつ飛空艇が形になっていった。
そんな夜の作業のお供は、料理部の夕ご飯販売だ。
15時までに注文しなくてはいけないのだが、余分に作っているので割と飛び込みでも買うことができた。
おかず1品に白米という組み合わせで、おかずは完全に料理部の気まぐれで決定されるのだが、下手な物は出されないのでかなりの人気を博していた。教師ですら注文するくらいである。
2週間くらいすると、1年生からも手伝いたいという子が現れた。
【生産魔法】の特性上、絆を強めていないうちは共同作業ができないので、雑用を率先的にしてくれている。
少し前まで中学生だった彼女たちは、ガレージで食べる夕ご飯にお姉さん味を感じるのだった。
「なんか先輩たちはみんな凄くたくましいです。こんなふうに商売もして。チンジャオロースも超美味しいです」
その日はチンジャオ魔物肉丼だった。
ダンジョン素材のお肉を使っており、こんなの美味いに決まっている。
「商売はついでだよ。基本的にみんな修行してるの。生産部が修行をすればその成果が残るでしょ? 料理部の場合は、みんなに食べてもらってついでに500円ずつ徴収しているわけ」
「なるほど。修行せいですね」
「そゆこと」
「ウチはどんなふうについでに稼ぐんですか?」
「うーん、武具フェスの稼ぎは凄いわね。あとはみんなからの武具の注文とか、動画収入とかかな?」
「先輩たち、よく小手や脛あてを作ってますよね」
「うん。工作部が得意なのは小物だね。大きな装備だと武具部に注文が行くかな」
「はえー。学校内で経済が回ってます」
「あなたたちもお金を稼ぐなら個人事業の開業手続きするんだよ」
「あ、はい。その件は説明会がありました。でも、私は中学の頃に個人事業主になっちゃいましたね」
地球さんがレベルアップして1年が経ち、文部科学省は中学校以上の全ての教育機関に開業のガイダンスと税金の教育をするように定めていた。昨年度の確定申告が地獄だったゆえに……っ!
「冒険者やってるとそうなるわよね。風女は専属の税理士事務所と契約してるから、相談があれば遠慮なく言うんだよ。私たちもみんなガンガン使ってるし」
「はい。あっ、あのあの友達から依頼が来たらどうすればいいんですか?」
「そりゃお金取るわよ。そこはしっかりしないとダメだよ。生産部連合で価格表を作ってるから基本的にそれで依頼を受けるわけ。あとは防具検定も出さないとダメだからね」
「ピヨピヨしちゃダメってことですね」
「そゆこと」
そんなことを教えながら、GWが終わる頃には、1年生たちも自分のツナギを作り終え、ある程度勝手がわかるようになった様子。
一緒に作業をして、わいわいとご飯を食べれば絆なんてすぐにできるもので、飛空艇の製作を通じて【生産魔法】は学年を越えて交じり合うのだった。
読んでくださりありがとうございます。
ブクマ、評価、感想大変励みになっております。
誤字報告も助かっています、ありがとうございます。




