10-5 E級ダンジョン攻略 前編
本日もよろしくお願いします!
飛騨ダンジョン。
ロープウェイは乗降する場所を『駅』と呼称するが、新穂高と西穂高の駅を結ぶロープウェイの中間に、昨年、新たにひとつの駅が緊急増設された。
その駅からダンジョンまでの道が新設されているからだ。
そう、つまり、飛騨ダンジョンは山の中にあるのだ。
そんな場所にあるため、このダンジョンの発見は命子たちが地球さんプレミアムフィギュアを手に入れたあとのことだった。
命子たちはそのダンジョンの32階層を探索していた。
といっても、32階層の終点は目前で、次の角を曲がればすぐである。
「みんなもう来てるかな?」
「どうでしょう。ワタクシたちのスタート地点は良いポジションでしたし」
「でも、羊谷命子のせいでちょっとロスした」
「あれは宝箱さんが可愛すぎたから。なんなんだろうね、アイツらの可愛らしさ」
「知らん」
命子とささらと紫蓮がそう話しながら、ルルとメリスを見る。
2人のネコミミがピクピクと動いている。
命子たちは、これは到着している子がいるな、と察した。
案の定、角を曲がるとキャルメとその仲間たちの数名が、キャンプの準備をしていた。
「よーっす、みんな」
「あっ、みなさん」
キャルメがにこりと笑って命子たちを出迎えた。
「早かったね」
「はい、スタート地点に恵まれましたので。ほかの子たちはまだですね」
と、そんなふうに、今回はキャルメ団のみんなと合同で冒険していた。
時間は18時を回り、本日はキャルメ団と合同キャンプなのである。
その後も続々とキャルメ団のメンバーは揃っていき、夕食が始まる前には全員が揃った。
「良かった。ちゃんと機能してるね」
「我らが作ったんだから当然」
「ふふっ、ありがとう」
命子の言葉に、紫蓮が眠たげな目をしながら胸を張って言った。
ダンジョンはサーバーという概念がある。
階層ごとにサーバーは無数に存在し、各サーバーには20組・120人までしか入れない。
こういう仕組みなので、ダンジョンは団体で攻略することが極めて難しく、それは当然、命子たちも例外ではなかった。
まあ、命子たちがいるのはE級ダンジョンの深層なので探索パーティも少ないため、サーバーの調整はやれなくはないのだが、100%できるとは限らない。これができるのは、国などのダンジョン封鎖権がある大組織でなければ不可能だった。
しかし、命子とキャルメ団は狙ってこれを行なえていた。
これには秘密がある。
それが常闇の魔導工房が作ってくれた『レイドの腕輪』である。
その効果は破格なもので、親の腕輪と子の腕輪を魔力で同期させると、子の腕輪を持つ人は親の腕輪を持つ人のいるダンジョンサーバーに引き寄せられるというものだ。
これは20組、120人というサーバーの上限を超えても有効となっている。
欠点もいくつかある。
あくまでダンジョンサーバーに入れるだけであり、パーティごとにスタート地点はそれぞれ別という点。
レイドと言っておきながらボス戦に使えない点。
それと、パーティ内にその階層に行ったことがない人がいる場合は階層ワープが使えない点。
この腕輪は、世界でもかなり衝撃的なアイテムとなったが、その開発者はキスミアの魔法生産者であった。魔法強度測定器の発明といい、もはやキスミアを小国と侮る国はなかった。
「それにしても、最近のキスミアは本当に凄いね」
「「ニャウ!」」
命子が言うと、ルルとメリスは嬉しそうに笑った。
母国が世界中から注目されて嬉しいのだろう。
まあ、ルルとメリスが考えているよりも遥かに、元から日本では注目されているのだが。にゃーにゃー言うし。
「ぶっちゃけ、こういうのってアリアちゃんの実家にあるなんかの秘密から作られたやつだよね? っふぁ!?」
命子がそう言った瞬間、ルルとメリスがシュババと命子を囲んだ。
その首元に手刀が置かれ、唐突に絶体絶命のピンチである。
「お主、それをどこで聞いたデス」
「これは生かしておけぬデスワよ」
「ち、違うんです。紫蓮ちゃんはなにも知らないんです!」
「ぴゃわー。またこれ」
命子によって鮮やかに売り払われた紫蓮が、ルルとメリスにもちゃもちゃされる。
そんな冗談にくすくすと笑うキャルメ団の面々。
今回の探索には男の子もおり、可愛らしいその様子に赤い顔をする初心な子もいる。
「なんにせよ、これのおかげで今後の楽しみ方も幅が広がるね」
命子は腕輪を撫でて笑った。
知らない冒険者たちとキャンプをするのも楽しいが、例えば、風見女学園として団体で潜るのも楽しそう。
さらに、子機を冒険者協会に預けて、親機をつけて冒険すれば、安全面も上がったりする。子機は必ず親機のあるサーバーに行けるという仕組みから、なにかがあった時に救護者がサーバーを虱潰しに探索せずに済むのだ。
そんな話をしていると、ささらが言った。
「みなさん、準備ができましたわ」
ささらは命子たちのパーティでお料理長になっている。いつもは補助として命子たちが順番に手伝うが、本日はキャルメ団の女の子と調理を楽しんでいた。
さて、本日の料理は、黒オオトカゲのシッポ焼きパーティである。
黒オオトカゲはとても人気が高い魔物で、良質なドロップを多く残す。
特に革は魔法生産者に超大人気で、かなり高額で取引されるものだ。
そして、これからみんなで食べるシッポ肉もそのひとつだ。
冒険者御用達のコンパクトバーベキューセットの上で、厚く切られたシッポ肉がジュージューと焼かれる。
「カリーナちゃんたちも一緒に来られたら良かったのにね」
命子は、網の上でお肉が悶絶する姿を見ながら、キャルメに言った。
キャルメは少し苦笑い気味に笑う。
「それはそうですが、僕たちは日本で暮らしたいですから。日本の子供たちが我慢しているのに、迎え入れてもらえた僕たちが横紙破りをするのはダメです」
「そっか、みんな偉いなー」
青空修行道場の子供たちも修行して強いし、カリーナたちもラクート時代の経験で非常に強い。ただ、冒険者になるには年齢が足りないだけ。
この年齢制限が18歳だったらと思うと、命子はゾッとしてしまう。
無いなら無いなりに新世界の探求は可能だろうが、今ほど多くの発見は望めなかっただろう。
「あっ、焼けてるよ。食べて食べて?」
「はい。いただきます」
キャルメは挨拶をして、器用な手つきで箸を使い、焼きたてのシッポのお肉をもぐもぐした。
「んー! 美味しいです!」
目を大きく広げて頬をほころばせるキャルメ。
命子はニコニコした。
ほかのメンバーもそれぞれの網でお肉を焼いて、楽しそうに食べている。
ラクートでの経験からか、全員が食べるのが好きなようで、良い顔でお肉を頬張っている。
キャルメ団はキャルメに限らず、男女問わずに小柄な子が多い。成長期にろくなものが食べられなかったためだ。しかし、日本に来てからそれも改善され、男の子は背が伸び、女の子は肉付きが良くなってきていた。
命子もうかうかしていられないので、さっそくシッポ肉を食べた。
「んまぁ……」
命子はもぐもぐごっくんしてから、ほわーとため息を吐いた。ちっちゃなお口から、美味しさ成分がエクトプラズムのように流れ出て、ダンジョンの空気に溶け込んでいく。
「羊谷命子、美味しさが口から逃げてる」
「はわ!」
これはいかんと、命子は慌ててお口にお肉をぶち込んでペカーッと目を見開いた。
「もぐもぐっみゃーっ」
ルルも顔を蕩けさせてみゃーと鳴く。
「ルル、それは拙者が育ててたお肉デスワよ!」
「もぐもぐもぐ……うみゃー!」
「猫っ気を出しても騙されないデスワよ!」
「まあまあメリスさん、ワタクシのを食べていいですわよ。はい、あーん」
「あーん! もぐもぐ、みゃー!」
と、どこもダンジョンバーベキューを楽しんでいる。
通常のトカゲの肉はコラーゲンたっぷりとか鶏に近いなどというが、黒オオトカゲのシッポ肉を食した者はそういうのを超越した美味と出会う。
命子たちの中で高級な物を食べた経験が一番あるのはささらだが、そのささらを以てしても、手間暇かけて飼育されたお肉のエリートたちに匹敵すると評価していた。
なぜこんなに美味しいのか。
地球さんが生物の本能である食欲を刺激して、ダンジョンへの進出を促しているのか?
この問いに関しては誰もわからないが、美味しく感じる原因については、日本の研究者がひとつの発見をしていた。
というか、命子が極めて重要なヒントを教授にぶん投げた。
『ダンジョンの食べ物を食べると、舌にある魔力回路がシュピピピって光るのはなんでだろう?』
命子の冒険手帳に書かれたその疑問。ミニキャラがシュピピピっとしている謎のイラストとともに丸文字で書かれたものだ。
それを教授が発見して、多くの研究者と『龍眼』持ち自衛官の協力を得て解明された、『魂の味覚』の発見であった。
これは魔力の味、すなわち『魔味』と名づけられた。
魔味はダンジョンのランクが上がるほど濃厚になり、D級の魔物が落とす食材の味は地上産のほぼ全ての食材を凌駕してしまう。
もちろん好き嫌いはあるが、教授曰く、人類は魔味の味に慣れていないのではないか、とのこと。昔の人が、砂糖や、味の基本になりそうな名前の粉粒を大変にありがたがったのと同じようなものだろう。
そんな発見の基となった命子の冒険手帳は、多くの人から注目を集めていたりする。
ちなみに、その論文には協力者として命子の名前が入っている。ほかにも引用されたりすることもあり、命子は割と論文に名前が掲載される子だった。
「キャルメちゃん。私のシッポ肉持っていっていいから、カリーナちゃんたちにも食べさせてあげて?」
「ふふっ、大丈夫ですよ。ちゃんとお土産で持って帰りますので。命子さんもご家族に食べさせてあげてください」
「はっ、そうだった」
このダンジョンにはもう何回も通って攻略を進めてきたので、命子たちもお土産でお肉を持って帰った。
全員の家族がとても喜んでくれているが、中でも紫蓮ママは「はわー」と言ってフリーズしてしまうほど美味しかったそうな。
ご飯を食べ終わって、しばらくキャルメ団の子たちとお喋りした。
その内容は、中学校のことや新入学した高校の話、ジョブやスキルの話である。
みんなちゃんと不便なく暮らしているようで、大変に満足しているようだ。
会話の中では、ほかにも日本人へ感謝している様子が感じられた。DRAGONでキャルメを助けてくれた件だ。
命子的には、たぶん日本人じゃなくてもやったんじゃないかなと思うが、感謝に水を差しても仕方がない。
あの日、キャルメ団の年長者の多くの子がマナ進化しており、それも話題として楽しめた。
こういう時、ささらはかなり大人しいのだが、今日はお料理を一緒にしたからか、楽しそうにお喋りできている。
ルルやメリスは同じ外国生まれということもあって、あるあるネタを共有したり。
キャルメ団には魔法生産をする子がいるので、紫蓮も無表情ながら刺激を受けている様子。
もちろん、命子も大変楽しい時間を過ごせた。
「わっ!」
ふいに、キャルメ団の女の子が嬉しそうな声をあげた。
時はお喋りタイム。そうなると必要なのはお菓子。
今のご時世、お菓子といえばこれである。
冒険者ウエハース!
「なになに、なにが当たったの? 私はマッチョなおじさんが出たよ!」
命子は嬉しそうにマッチョなおじさんを見せびらかして、キャルメ団の子から微妙な顔をされた。
「えと、か、カシムたちの凄いのが当たりました」
もじもじして女の子が報告する。
それはカシムたちのパーティのシークレットレアだった。
「すっげぇ! シークレットレアだ!」
「凄いですわ!」
命子とささらはふぉおおとした。
ささらは引き続き、この遊びが楽しくて仕方ない様子。
だが、このやり取りを見ていた紫蓮は、眠たげな目をキュピンとした。
キャルメ団は少年少女が家族のように暮らしている。血がつながった子もいれば、そうでない子もいた。つまり、恋愛感情を抱く子もいるわけである。
この子がまさにそうで、カシムたちのパーティの中に好きな子がいるのだろう。
しかし、紫蓮は恋バナが苦手なので、気づいた素振りを一切見せない。
女の子はカードをみんなに見せてあげてから、大切そうに自分の冒険手帳に挟んで仕舞った。
命子も専用のカードケースにマッチョおじさんのカードを大切に収めつつ、ふと気になったことを聞いてみた。
「カリーナちゃんもこういうの好きでしょ?」
「あ、あはは……はい……」
キャルメは物凄く微妙な笑みを見せた。どうやら沼に嵌っている様子。
「お小遣いを全部ウエハースに使ってしまいました」
「全プッシュ。カリーナちゃんのお小遣いは1000円だっけ」
「はい。発売日に全部使って、そのあとはお買い物に行く度におねだりしてきます」
「身に覚えがありすぎる」
「我も」
命子と紫蓮はカリーナに親近感が湧いた。
2人が身に覚えがあるのは無理もない。なにせ、地球さんがレベルアップする直前まで、母親の持つお買い物カゴにお菓子を忍ばせていたのだから。
お母さんみたいな悩みを打ち明けるキャルメだが、完全に話す人を間違えている。
むしろ、命子と紫蓮はカリーナにおねだりテクニックを教える側の子たちだった。
「それではみなさん。丁度いいですし、そろそろお見せしましょうか?」
時間はあっという間に過ぎていき、そろそろいい時間になってきたところで、キャルメが言った。その視線の先には、曲がり角で命子たちを発見した魔物たちの姿が。
「うん、見せて!」
命子の言葉に、キャルメはにこりと頷いた。
「それじゃあシェリア。あとは任せたよ」
「うん、任せて」
女子の副リーダー的な女の子にそう言い、キャルメは魔物たちの前に出た。
その背後で、命子たちは真剣な面持ちで見学の構え。
魔物の数は6体。
この場の多くのメンバーがマナ進化しているとはいえ、倒せなくはないが1人だとキツイ数。
これを1人で捌くには、時間をかけるか魔力をガンガン使う必要がある。
そんな規模の相手の前に出たキャルメは、胸の前に手で三角を作り、息を吐き出すとともに前にゆっくりと突き出した。キャルメなりの深呼吸なのだろう。
心身の準備が整ったキャルメが、半眼で唱えた。
「光翅」
その瞬間、キャルメの背中に光り輝く2枚翅が出現した。
「「「「おーっ!」」」」
そのカッコイイ姿に、命子たちは揃って手をブンブン振って大興奮。
これが、キャルメが見せようかと提案したスキルである。
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【光翅】
光の2枚翅を生やす。その状態になると全能力が2割ほどアップする。時間制限が終わる、もしくは任意解除すると非常に疲れる。ゲームでいうところの『限界突破』的なスキル。
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能力を底上げする種族スキルはかなり発見されているが、条件付きとはいえ全能力が2割アップするのは破格の性能だった。
その性能が魔物さんに牙を剥く。
まず餌食になったのは、前衛の『武装木人』。
上質な木材を落とす大人気の魔物なのだが、簡単な武術を使うためなかなかに強い。それと同時に、戦っていて面白いという人も多い。
そんな武装木人の懐に一瞬にして飛び込んだキャルメは、掌底を腹に叩きこむ。
バキッと鈍い音を鳴らして上半身と下半身に分かれた武装木人は、一撃で光に還った。
「超強いデス!」
キャッキャするルルたち。
2人は連撃で敵を倒すタイプなので、一撃必殺はカッコ良く見えるのだろう。
一方、命子と紫蓮はキャッキャしつつも、【龍眼】や【魔眼】でどんな魔力の使い方をしているのか熱心に見ていた。
「やっぱりあの翅がマナを吸収してるんだね」
「龍脈強化と似てる」
「同じようなスキルなのに、光翅が使用後に弱体するのはどういう理屈だろう?」
「翅という疑似器官を展開するから? んー……わからぬ」
2人が議論を交わしている間にも、キャルメは魔物さんたちを血祭りにあげていく。
2体目の武装木人が振るった木刀を回避し、回避と同時に武器を振るった腕が吹き飛ぶ。
「真・流水天昇」
武装木人が怯んだ瞬間、水属性を纏ったムーンサルトキックが繰り出される。
終わりの子にも使われた蹴り技の光翅版で、その威力はE級の敵へ使うにはあまりにオーバーキル。
案の定、武装木人は木っ端みじんになった。
次いでやってきたのは、敵グループのアタッカー枠、武装木人と同じく大人気の『黒オオトカゲ』だ。
流水天昇で空中にいるキャルメは、くるんと身を翻して魔導書を蹴り、黒オオトカゲに向かって落下した。
「真・水落鳥」
水属性を纏った落下蹴り、水落鳥。
水を纏ったエフェクトと光翅の軌道がとても美しい技だが、その優雅さに反して、黒オオトカゲさんは背骨から折れ曲がって一撃で昇天した。
着地したキャルメの背後から迫ってきていたのは『ハンマーナッツ』。石でも叩き割れそうなハンマー状のシッポを持つ大きなリスである。
くるんとバク転してシッポ攻撃を繰り出すハンマーナッツだが、その縦軌道の攻撃の先にキャルメはいない。回転するハンマーナッツの真横にいるのだ。
回避とともに引き絞られた右手が、音を置き去りにしたような鋭い正拳突きを放つ。
ハンマーナッツは壁に叩きつけられて、光に還った。
と、キャルメの足元に『破城ウリボウ』が突っ込んできた。
ノックバック性能が非常に高い体当たりをしてくるウリボウで、食らうと高防御力の盾職でも、足が弾かれて大きな隙を作らされる厄介な魔物である。
「水のヴェール」
しかし、水属性を宿したマントをキャルメが素早く払うと、破城ウリボウはジャンプ台に乗りあげたようにぶわりと真上にジャンプした。強烈な突進のエネルギーが完全に殺されてしまっている。
マントを払うアクションから流れるように蹴りが放たれ、空中で無防備を晒すウリボウが光に還っていく。
「全能力2割アップっていうのは相当に凄そうですわね」
ささらが先ほどまで楽しげだった顔をキリリとさせて、分析する。
「うん。私も全能力1割アップを使うけど、上昇したスペックの体を全部連動させると、最終的な攻撃力は1割どころじゃないね」
命子は実体験を交えてささらに答えた。
敏捷性が上がれば、足腰から生み出されるエネルギーもまた変わる。
つまり、命子の1割アップ、キャルメの2割アップには、武術的な要素が加味されていないのだ。
最後に後衛の魔法を使う狐がぶっ飛ばされ、キャルメの戦闘は終わった。
「凄くカッコ良かった!」
戻ってきたキャルメを命子がそう言って迎えた。
「えへへ、ありがとうございます」
光翅を背中に生やしたキャルメは、はにかんだ。その可愛らしい様子は、先ほどまで魔物さんたちをぶっ殺していた子とは思えない。
しかしご安心。大体の女性冒険者はこんなものである。
今のところ、命子が出会った冒険者で戦闘時と通常時に差があまりないのは、自らの母と紫蓮ママくらいだ。ほかはみんな凛々しさと可愛さを切り替えている。
ちなみに、ささらママは通常時がキリリとしていて、戦闘時がはわはわするタイプである。
「それじゃあ解除しますね。弱くなっちゃいますので、すみませんがよろしくお願いします」
キャルメが使う光翅の最大の欠点は、使用後に弱くなる点だ。
さすがにレベル0状態になるなんてことはないが、E級ダンジョンを探索するのは危ないくらいにまで弱くなる。
使いどころをしっかりと見極める必要があり、今回もあとは寝るだけなので使ったわけである。
キャルメの実演も終わり、所感などを尋ねつつ、この日は終わるのだった。
読んでくださりありがとうございます。
ブクマ、評価、感想大変励みになっております。
誤字報告も助かっています、ありがとうございます!