10-4 冒険者ウエハース
本日もよろしくお願いします。
4月中旬。
その日は世間で2つのワードが飛び交っていた。
1つは丁度1年前の今日、命子たちが無限鳥居から帰還したということ。
つまりは記念日だ。
一部の人は数日前から無限鳥居に入ってこの日に帰還する聖地巡礼をして、朝のニュースでは「一年前の今日~」とお知らせするほど、世の中で高く認識する日であった。
日本だと、この日は『ダンジョンの日』となった。休日になったわけではなく、このあたりは数ある記念日と同様の名づけ文化と考えていいだろう。
重要なのはその日付で、命子によって地球さんプレミアムフィギュアを全人類に寄贈すると宣言され、人類が明確にファンタジーに適応し始めるきっかけになったこの日は、今年から日本の歴史の教科書に記載されるほどだった。
ちなみに、それに添えられた写真は、別の日に行なわれた地球儀寄贈式典のものになっている。
さて、本題はもう1つの話題である。
この記念日に合わせて、1つの商品が発売されることになったのである。
キーンコーンカーンコーンとチャイムが学校の終わりを告げた。
「まだだぞー」
しかし、無情にも、帰りのHRをするアネゴ先生はそわそわする生徒たちに『待て』を命じる。
アネゴ先生が配っているプリントを、生徒たちは一致団結するような速さで後ろの子に渡していった。
「提出は来週の月曜だからな。忘れないように」
「「「はい!」」」
元気にお返事した生徒たちは、その5秒後に忘れる子が続出した。
みんな心ここに在らずなのだ。
アネゴ先生は、明日も一応言おうと心に決めつつ、HRを終わりにした。
「気持ちはわかるが、車にはくれぐれも気をつけろよ。あとお前らのスピードは人に当たれば大ケガさせる恐れもある。その点も十分に気を付けるように」
「「「はい!」」」
「それじゃあ終わり。流」
「ニャウ!」
本日の日直はルルだった。
お仕事に熱心なルルは、シャンと背筋を伸ばした。
「者共、きりーちゅ! きょーつけーいっ! うむっ、礼! さよならデース!」
「「「さよならデース!」」」
「んふふぅ!」
ノリがいい者共が自分の挨拶を真似して、ルルはニコニコした。
いつもならケラケラ笑うところだが、今日の者共は別のことに意識が注がれていた。
「急げ! 急げ!」
カバンを背負い、わちゃわちゃと教室をあとにする生徒たち。
「お前ら、スカートだってこと忘れるな!」
「大丈夫です!」
アネゴ先生の注意に、生徒の一人がバッとスカートをまくり上げた。短パンを穿いていた。生徒は自分でやっておきながらはにかんで、教室から出ていった。
残されたアネゴ先生はおでこに手を当て、首を振った。
教室を飛び出すと、ほかのクラスの生徒たちも急ぎ足で昇降口に向かっていた。
命子たちもそんな中に混じっている。
「羊谷。廊下は走るなー」
「ひぅぐぅ!?」
命子が先生から注意された。
命子だけがなぜ……?
命子が一緒にいるのは、ささらとルルとメリスだ。
この3人は足が長い。
普通に歩いていたり、ちゃんと走っている際にはあまり関係ないのだが、早歩きだと足の長さが残酷なまでに差を作る。
なので、命子は小走りでなければ3人に追いつけないのだ。
「ひらめき! 合体!」
「ひゃん!?」
天才的閃きを得た命子はささらの背中におぶさった。
これにより、命子は先生から酷いことを言われなくて済む。
ささらはわずかにバランスを崩すが、いつもルルやメリスから強襲されているため、即座にバランスを整えて早歩きを続けた。
「命子さんは軽いですわね」
「でしょ? お芋3個分なの」
「まあ! うふふ」
「チョイスがメルヘンになり切れてないデス」
「じゃあなににするのさ!」
「バッタにするデス」
「カニがいいと思いますわ」
「グミが可愛いデスワよ」
「はい、メリス採用! バッタにカニって女子を舐めてんの!? 羊谷命子ちゃん、体重コーラグミ3個分ね」
そうこうするうちに、昇降口についた。
「ん」
ぴょいと片手を上げて挨拶したのは、先に終わって待っていた紫蓮だった。キャルメもその隣でニコニコしており、2人とも仲良くやっているようである。
「お待たせ。羊谷命子16歳、体重はバッタ3匹分です!」
「狂気のチョイス」
命子の自己紹介に、紫蓮が眠たげな目で慄いた。
「命子さん、コーラグミ3個分ですわよ?」
「はっ、間違えた!」
「それなら可愛い」
そんな命子たちの様子を見つめるキャルメは、ニコニコしながら女子高生について学んでいく。今後、カリーナたちの自己紹介がメルヘンになる恐れあり。
紫蓮たちと合流した命子はささら号から降り、みんなと一緒に走り出した。
昇降口から外に出た生徒たちは、もうこっちのものだと言わんばかりに、学校の外へ向けて走り始めている。
「みんなガチだな」
「それもやむなし」
「まあね」
苦笑いする命子に、紫蓮が眠たげな目をしながら言う。
女子高生たちが大急ぎで学校から出ていく原因でもあり、ダンジョンの日である本日に合わせて発売されるもの。
その名も『冒険者ウエハース』。
およそひと月半ほど前に行なわれたDRAGON東京大会。あの大会で選ばれた冒険者たちのカードが封入されたお菓子である。
そして、このカードには、風見女学園の生徒や卒業生も多く収録されていた。
女子高生たちはこれらのカードが欲しいのだ。
いや、欲しいというか、友達とくじ引きごっこで遊びたいという子のほうが多いかもしれない。あとはウィンシタ映えのためとか、開封動画を撮るためとか。
学校を出た命子たちは、あまりスピードを出し過ぎずに走り出す。
目指すは風女娘御用達のコンビニだ。
走る少女たちはスカートがめちゃくちゃヒラヒラしているがご安心、全員が短パンかスパッツを穿いているので。とはいえ、車を運転している男性は鋼の精神で運転する必要があるだろう。
「コンビニは売り切れだよー!」
しばらく進むと、すぐにほかの子が逆走してきた。
どうやら売り切れらしい。
「おのれ、さては小中学生だな!?」
「わからないデスよ。大人にこそコレクターはいるデス」
「まさかこれは……ハッ、そうか、大人買い!?」
「まるで名推理の様相」
紫蓮のツッコミを受けつつ、命子たちは菊池デパートへ向かった。
菊池デパートは風見町防衛戦でも多くの人が避難した大きな店舗だ。
ルルが言ったように、カードのコレクターは大人が多い。良いカードには莫大な値がつくため、資金力で負ける子供ではコレクションが難しいのだ。
新発売されたこの冒険者カードも、コレクターが多くなりそうというのがネット内での評価だった。
その最大の原因は『冒険者がカッコイイ』ということだが、命子たちの存在も購買欲を後押ししていた。
命子たちは知らないが、各地でも売り切れている店が多く出ていた。店の人も素人じゃないので、通常の商品よりも多く入荷しているのにだ。
建物が見えてきた頃、菊池デパートへ向けて走る女子高生たちへ元気よく声をかける集団が現れた。
中学生になった萌々子やクララたちだった。
「あっ、お姉ちゃんたちだ!」「あーっ、お姉さま!」
中学生は買い食いが禁止されているため、一度帰って着替えてきたようだ。
萌々子は光子も連れてきており、胸元からぴょこんと顔を出して『知ってる人たちだ!』みたいな顔でささらたちを見ている。
「よーっす、みんな。どう、買えた?」
「はい!」
中学生たちはそう言って、カバンから冒険者ウエハースを出して見せてくれた。
これを誰に見せているかで、中学生たちの好きなお姉さまがわかる。
「1人3つだけなの?」
「はい。菊池のお爺ちゃんが購入制限つけたみたいですね。風見町の子供にたくさん買ってもらいたいみたいです」
「なるほどなー。菊池のじっちゃんらしいね」
「お姉ちゃん。まだまだあったけど、早くしないと売り切れちゃうかもしれないよ。高校生いっぱい来たし」
クララと話し込んでいた命子は、萌々子にそう言われてピョンと小さくジャンプした。
「ちょ、ちょっと待っててね。すぐに買ってくるから! みんな、行こう!」
「はい、急ぎますわよ!」
ささらがやる気を見せて、命子はちょっと驚いた。
しかし、不思議なことでもない。
ささらは、みんなでおまけ入りのお菓子を開ける遊びをしたことがない子なので、凄く楽しみなのだ。
菊池デパートの敷地内に入ると、入り口の横に行列ができていた。ほとんどが小中高校生である。
その列の先頭には仮設テントが組まれており、その下に大量の冒険者ウエハースが積まれていた。
どうやら中で販売すると店内が大変なことになるため、外で販売しているようである。
「菊池のじっちゃん、思い切ったなぁ」
「でもバカ売れ」
「だね」
命子たちは列の最後尾に並んだ。
「おっ、ナナコちゃんじゃん」
前のグループは命子のクラスメイトたちだった。
「あれ、命子ちゃん。コンビニ組じゃないの?」
「あっちは売り切れだったよ」
「やっぱりね」
「こっちは結構余裕で買えそうだね」
「でも購入制限があるって」
「聞いた聞いた。でも、そうしないと、子供が手に入らなくなっちゃうからね」
女子高生がたくさん集まれば、待ち時間も瞬く間に過ぎ去っていく。
あっという間に命子たちの番になった。
露店販売をしているのは、ほかならぬオーナーである菊池のおじいさんだった。高齢なのに活き活きとお会計をしている。
「菊池のじっちゃん、繁盛してますね」
「おー、命子ちゃんか。おかげさんでな」
命子たちは流れるように商品を選び、また流れるようにお会計を済ました。列から出て、命子は少しだけ菊池さんとお話しする。
「どのくらい仕入れたんですか?」
「そりゃ大量にだよ。なにせこの町の子がたくさんカード化されるんだから、うちがいっぱい仕入れないでどうするか」
「ありがとう、じっちゃん。おかげでみんな楽しめるよ」
「ははっ。いいカードが出るといいな」
「うん。それじゃあ頑張ってください!」
菊池さんと別れ、命子たちは萌々子たちと合流した。
ところ変わって、ここは青空修行道場。
命子たちは開封をグッと堪え、ここでみんなと開けることにした。
青空修行道場に到着すると、今日の子供たちはちょっと修行に身が入っていない様子。
土手を下りた命子たちも中学生を交えて車座になった。
そんな中で、ささらが「どうするんですの、どうするんですの!?」みたいにワクワクした目で周りを窺っている。この遊びの作法がわからないのだ。
この仕草は、萌々子の胸元から命子の頭の上に移動した光子に酷似していた。光子は人間さんの遊びに興味津々なのである。
「第一回、冒険者ウエハース、開封の儀を始めたいと思います。それでは始まりの儀式から行きましょう」
命子はパンパン、ズンズンッ! と2拍手してから左右片側ずつズンズンと畳んだ腕を弾ませる謎の踊りを始めた。それに続いて、ルルと紫蓮も同じことをする。
ささらは、「はー、なるほど」とリズムに合わせパンパン、ズンズンッ! とした。
「う、うむ」
命子とルルと紫蓮は、全部信じちゃうな、とささらが心配になった。
というわけで、開封の儀である。
命子は冒険者ウエハースを開けた。
まずは中から出てきたウエハースをもしゃもしゃする。
ちなみに、冒険者ウエハースの味は、バニラクリームとチョコの2種類がある。
「うまぁ」
命子は、長靴一杯いけると思いつつ、お目当てのカードを手に取った。
「ふぉおおお!」
命子は宝物をゲットしたように、カードを天に掲げた。
「命子さん、なにが当たったんですの!?」
「これぇ!」
「まあ、素敵ですわ!」
ささらが胸の前で手を叩いて、褒めた。
「命子お姉さま、なにが出たんですか!?」
2人の凄いリアクションに、ただ事じゃないと見たクララが寄ってきたので、命子は引いたカードを見せてあげた。
『犬飼歳三 & ポチ吉』
おっちゃんと犬っころだった。【9-8で登場】
どちらかと言うと、犬が本体の絵柄である。
それを見たクララは、キラキラした目をスンとさせてから、ニコリと笑って命子へカードを返した。こういうのじゃないらしい。
だが、命子的にはありだし、ささらも楽しいからなんだって良かった。
そんな命子だが、ふと、一緒に開封の儀の輪にいるナナコが目に入った。
ナナコはなにやら、物を地面に叩きつけるような変なアクションをしている。
「なにやってんの?」
「これ? これは命子ちゃんのカードが来たら叩きつける練習だよ」
「やろうってのか!? 命子ちゃんやぞ!?」
命子は腕まくりをした。
命子の扱いはこんなものであった。
やはり一緒にいるキャルメは、そんな2人のやりとりを興味深そうに見つめた。
というわけで、みんなも1つ目を開けていく。
ウエハースを急いでもぐもぐして、いざカードとご対面。
カードを見て、みんな、「まぁ、そんなもんだよね」みたいな顔で笑い合う。
全員がカードコレクターではないし、ささらではないが、友達と開封の儀をするのが楽しいのであった。
冒険者カードは300種類+20種類も収録されている。プラス分は大会が予想以上に盛り上がったため、後になって特別収録されたものだ。
封入率はノーマルとレアカードを合わせた300種類が99%。特別収録の20種類がシークレットレアとして各0.05%ずつの計1%となっている。
こんなふうになっているので、お目当ての物を引き当てるのはノーマルやレアでもなかなか難しい。ちなみに、命子たちはレアとシークレットレアに1種類ずつ収録されている。
「きゃっふぅーい!」
命子が再びカードを掲げて、目をキラキラさせた。
「命子さん、なにが当たったんですの? ですの?」
「これこれぇ!」
「まあ! 素敵ですわ! ワタクシはこれが当たりましたわ」
「おーっ!」
命子とささらがカードを見せあって、先ほどと同じようにキャッキャする。
さすがお姉さま、今度こそ凄いカードを引いたんだ! みたいな顔でクララたちが集まってきて、カードを見せてもらった。
『アイズオブライフ 一番隊』
アイズオブライフの一番隊の6人が、紫の炎を纏って構えている絵柄のカードである。
クララはスンとしてから、笑顔でにっこりとした。
女子中学生的に、アイズオブライフのカードは無価値らしい。
ちなみに、ささらが引いたのは、『幻想甲賀衆 夫婦忍者』だった。忍者の格好をした夫婦のカードで、旦那は深く構え、奥さんはその後ろで妖艶に構えている絵柄だ。
そうして、3つ目のウエハースが開封されると、今度はキャルメが声をあげた。
「わわっ!」
「なになにぃ!?」
「なにが出たんですの?」
命子とささらが急いでキャルメのところに行った。
中学生もいる中で、一番この遊びに熱中している命子とささら。
「素敵なカードが当たりました」
そう言って見せてくれたのは。
『剣の深淵 森山嵐火』
サーベル老師のカードだった。
「ふわわっ、かっけぇ!」
「凄いですわ!」
「わわわっ、老師のカードですぅ!」
これには命子とささらは当然のこと、女子中学生たちもテンションが上がった。世にも珍しい、お爺ちゃんの写真を見て黄色い声を上げる女子たちである。
サーベル老師のカードは、サーベルを下ろして歩く老師の姿に、いくつもの残像エフェクトを加えたものだ。これは幻歩法を表現しているのだろう。
すると、クララが休憩していた老師をグイグイ引っ張ってやってきた。
キャルメのもう一つの人生でおそらく会っていたであろうサーベル老師。
しかもその技術で世界を崩壊させる引き金を引いただけあって、キャルメは少しはわはわした。
そんなキャルメに、老師はほっほっほっと笑った。
「ほっほっ、わしのカードか。どうじゃ、カッコよかろう?」
「は、はい」
「ほっほっほっ、ちょいと深淵というには大げさだがの」
老師のカードを作る際、営業さんは『剣神』にしたかったのだが、それは老師が固く拒否した経緯があったりする。
老師はキャルメの頭をポンポンと叩いて去っていった。
まるで気にするなと言ってくれたようで、キャルメは白い髪が混じった頭をぺこりと下げるのだった。
命子たちは、ある程度のことを理解しているので、そんなキャルメに温かく微笑んだ。
そんなプチシリアスが展開された時である。
「もふぇええええええ!?」
ふいにナナコが叫んだ。
ウエハースを口に含んでいたようで、悲鳴が粉っぽい。
「なになに、どうしたの? このタイミングで叫んだってことは冗談じゃすまないけど、右頬と左頬、どっちがいい?」
拳をムニムニして近寄ってくる命子の顔と手に入れたカードを交互に見るナナコ。その尋常でない様子は、命子からの平手打ちを回避できそうだ。
「ま、まさかナナコちゃん! 私の!?」
「あわわわ……」
「スパンしたら許さないかんな!」
「あわわわわ……!」
命子に対応しているナナコ。
ささらがその背後に回り、スイーッと首を伸ばしてカードを覗き込む。楽しさのあまり大変はしたない行為に手を染めたお嬢さまの姿である。
「まあ!」
ささらは、目をまん丸に見開いて口を塞いだ。
「にゃー、しゅごいデスワよ!」
「ナナコが神引きしたデス!」
同じく覗き込んだメリスとルルも大騒ぎする。
「えーっ、なになに! 見せて見せて! 私にも見せてよぅ!」
「ちょ、まっ! 乱暴に扱わないで!」
これには辛抱堪らん命子が飛びついたが、ナナコはその顔面を押しのけて、カードを大切そうに胸に抱く。スパンとする言っていた子のツンデレ芸である。
そうして、落ち着いたところで、ナナコはカードを見せてくれた。
『小龍姫 羊谷命子 シークレットレア』
それは夜の闇の中、【覚醒:龍脈強化】の緑色のオーラを纏った命子が、水龍を発動させるために頑張っている時のカードだった。衝撃波で髪と和服の裾がはためいており、とてもカッコイイ。
そして、これがヤバいカードだと示す特別加工のキラキラ仕様。
「「「ふぉおおおお!」」」
それを見た中学生たちが、目をキラキラさせた。
そんなに騒いでいるので、それを聞きつけた女子高生たちまでやってきて、見学していく。
その様子はまるで美術館のよう。
館長であるナナコは、ハラハラしっぱなしだ。
子供がキャッキャして汚したらどうしようと。
一方の命子は、みんなが自分の素敵カードを見ているので、テレテレする。
思わず、むんっと【覚醒:龍脈強化】を解放して、さらに目をピカーッと光らせた。
そうして、やっぱり恥ずかしくてテレテレする。
「よし、それじゃあ終わりね! あたし、今日のところは帰りまーす!」
ナナコはそう言って美術館を閉め、あっという間に帰っていった。
「あいつはよほど命子ちゃんのカードが大切なんだな」
命子本人がうんうんと頷いて、去っていくナナコの後ろ姿を眺めるのだった。
のちに、世界中で多くのコレクターを生み出す冒険者カードの第1弾。
第1弾で封入されたシークレットレアの中でも、特に人気が高いものが以下の7つとなる。
『小龍姫 羊谷命子』
『御伽姫 笹笠ささら』
『猫人姫 流ルル』
『魔眼姫 有鴨紫蓮』
『美しき世界 メリス・メモケット』
『砂嵐の妖精 キャルメ』
『風見女学園乙女部隊 水妖の刃・村雨』
メリスのカードは、マナ進化の際に、仰向けになって浮かぶメリスの胸に、翡翠色の帯が吸い込まれていく様子を。
キャルメのカードは、大会中に見せた、紫のオーラを纏った演武を。
あくまでDRAGONでのことなので、終末の鐘事件のものは収録されていない。
全てのカードは、オリジナルか再収録かわかるように今後売られていくため、ナナコが手に入れた命子のカードは、割と早い段階でとんでもない値段になっていく。
けれど、命子のカードをスパンと叩きつける練習をしていた子は、友達のカードを決して手放さず、ずっと大切にするのだった。
読んでくださりありがとうございます。
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誤字報告も助かっております、ありがとうございます。