8-10 救出部隊
本日もよろしくお願いします。
再び駆け出した一行の視界の先に、転移ゲートが見えてくる。
「命子君、ゲートの間の見取り図に触りたまえ!」
「え、わかりました!」
自衛官におぶわれた教授が指示を出す。走行する自衛官の背中にいるため、胸が押しつぶされて変な調子の声だった。
ブレーキをかけた命子は赤と青のゲートの間にある見取り図を触る。すると、見取り図がホログラムとなって立体化した。
「おー、こんな隠し要素が……」
教授を助ける前に見取り図は発見したが、触れなかった命子たちがどよめく。
「ふむ。海底にあった時とほぼ変わらないな。唯一、空を飛ぶというクジラの化石がなくなっただけか」
「な、なんですか、それ」
「次元龍やフニャルーのようなものだ。世界中に全部で72体いて、太平洋の底にも数体いる。そのうちの1体が空飛ぶクジラだ」
「えーっ!」
バネ風船から得た情報を話す教授に、命子たちはのけぞって驚いた。
「みんな、一応、この建物にはこういう要素もあることを覚えておきたまえ」
「わかりまし……んん? 教授、この立体図、中にいる人の情報が見れますよ。こことここに誰かいます。4階のやつは私たちですね。ほらこれ。これこれ」
「なに?」
命子が指さす8階と1階には、たしかに光点が点いていた。
「8階のほうは高山隊長で、1階は後続部隊ですかね。あっ、高山隊長の光が消えた……マジかよ……」
命子が指さして説明しているそばから、分断されてしまった自衛隊隊長の光が消えてしまった。
「これはたった今、捕まったのだろうな。ささら君とメリス君の光点もないわけだし、捕まると光点は出ないのだろう」
「とにかく、作戦を始めましょう」
いつまでも話していられないので、馬場が話を切って、一同を見回した。命子たちは頷き、全員が青いゲートに飛び込んでいく。
まず中に入ったのはルルだ。
この中で一番生存率が高いのが残念ながら自衛隊ではなく、素早さ特化のルルであった。
ルルがゲートをくぐると、そこは先ほども見た他の階層のゲートが並ぶフロアだった。そこには1体のバネ風船が浮いていた。
すぐにルルを発見して、接近してくる。
「こっちくるデス!」
ルルはその場から離れ、みんながゲートから安全に出られるように立ち回る。あらかじめ、1体なら戦闘、2体なら徹底的に逃げの一手を決めていたので、ルルは作戦に従った。
すぐさま戦闘が始まり、バネ風船の猛攻をルルが捌く形になった。
「作戦開始!」
「了解……っ!」
馬場の言葉に、少女を囮にすることになった自衛官たちは奥歯を噛みしめる。
一方、命子、紫蓮、馬場、そして自衛官におぶさった教授が、ルルに加勢する。連鎖的に、教授をおんぶしている自衛官も強制参加だ。
バネ風船の猛攻をルルと馬場と紫蓮が前に出て防ぎ、命子と教授が強烈な魔法を浴びせる陣形だ。
水撃砲を構築する命子は、そこで激戦の背景になっているゲートを見てハッとした。
「み、みんな、ゲートが何かをカウントダウンしてる! たぶんバネ風船が追加されるんだと思う!」
「時間は!?」
「あと20秒!」
おそらく先ほど来た際にも同じようにカウントダウンされていたのだろう。命子たちは、この部屋のルールを1つ発見する。
「強打!」
「水撃砲!」
「アイ、ランスだ!」
紫蓮が放った強打に対して、バネ風船はぐるんと体を回してパンチでパリィする。その背中に向けて、命子と教授が同時に魔法を放った。
命子の水撃砲をバリアが弾き、教授の水の精霊魔法がバネ風船に直撃する。
「撤収!」
すぐに馬場が指示を出し、命子たちは一目散に1階のゲートへ向けて走り出した。
直撃を受けたバネ風船は床でワンバウンドすると、ぐるんと腕を振り回して戦闘に復帰する。しかし、すぐにアイコンを出して、その場から消え去った。
一方、命子が注意喚起したゲートの数字が0になり、そこからバネ風船が一体現れる。
おかわりされたバネ風船は命子たちを発見するとすぐさま移動を開始した。
しかし、1番ゲートは目前だ。そこでは先に来ていた自衛官たちが、ルルや紫蓮をどんどん中に入れていっている。
彼らは万が一命子たちが敗北した際に、これまで得た情報を速やかに持ち帰るためにゲートの前まで来ていた。
「先に入って!」
命子はゲートの前で【龍眼】を使う。【龍眼】はマナや魔力を見るだけではなく、目をよくする機能も備わっている。それを使って、離れた場所にあるバネ風船が出てきたゲートを見た。
そのゲートの上では再びカウントダウンが始まっている。
「やっぱりこの部屋に人がいるとおかわりがあるんだな。あのゲートはバネ風船が出てくるゲートか……」
そのゲートは階層番号ではなく、固有名詞だったため命子には読めなかった。
「命子ちゃん!」
「はい!」
命子は馬場に急かされて青いゲートに飛び込んだ。
1階では、すでにルルと紫蓮と自衛官の1人がバネ風船と戦っていた。
「2人は追ってくるバネ風船に備えなさい!」
自衛官に指示を出す馬場の声を聞きながら、命子はルルたちに加勢する。
「今までで一番忙しい冒険だな」
そう呟く命子だが、言葉に反して口角が上がってしまっている。ささらとメリスは心配だが、楽しくてしかたがなかった。
そのバネ風船も撤退させ、命子たちはすぐさま走り出す。
「馬場さん、どうやらあの部屋からは追ってこないみたいですね」
「ええ、そうみたいね」
自衛官2人にゲートを越えて追ってくるかもしれないバネ風船に備えるよう指示を出したが、結局やってこなかったのだ。
「シレン、あそこだったデスか!?」
「うん!」
スタートの部屋の入り口は他の部屋と違ったが、念のためにルルは紫蓮に聞く。
ルルは先行して壁にタッチした。壁がカシャンと開く。
全員が滑るようにブレーキをかけ、武器を油断なく構えたルルの後ろから、部屋の中の様子を窺う。
モノリスの部屋にいた後続の自衛官がポカーンと口を開いて、その様子を見ていた。
一行はそんなことに構わず、中にどんどん入っていく。モノリスの部屋は相変わらずの空と海の風景を映していた。
「お、おいおい、命子ちゃん。大丈夫か!?」
「有鴨さん!」
「わっ、藤堂さん!」
「むむっ、滝沢さん」
そう言って駆けてきたのは、藤堂とその上官、そして滝沢だった。
「どうしてここに?」
「そりゃ、救出作戦だよ。精鋭部隊が36人投入されているぞ。まだ来る予定だ」
藤堂の言う通り、モノリスの部屋には強そうな人たちが揃っていた。
命子は帰らされる可能性を思い出し、これはヤバいと思った。でも、絶対についていく所存である。
「彼を至急帰還させます。緊急事態につき説明は後ほどします」
馬場が、藤堂の上官に言う。
そして、命子たちと一緒に行動していた自衛官の一人をすぐさまモノリスで帰還させる。
「ありがとう!」
命子が手を振ると、自衛官は自分だけ帰る悔しい気持ちを押し込めてビシッと敬礼した。
事態を把握できず混乱する救出部隊の前で、命子たちは今度こそ特大の息を吐いた。
命子たちが仲間の救出ではなく、まずこの部屋に戻ったのは、情報を外部へ伝えるためだ。
この施設ではおそらく死ぬことがないが、カプセルからの救出方法だけは絶対に外部へ伝えなければならなかった。そのため、誰かが戻らざるを得なかったのだ。
すでに事はささらとメリスだけのことではなく、自衛官数名も捕らわれてしまっているのだし。
幸いにして、命子たちが帰らされる話にはならなかった。
理由は二つあり、一つは藤堂の【龍眼】ではこの施設の文字が完全には読めなかったからだ。スキルの熟練度的なものがあるのか、穴が非常に多い虫食い状態の文でしか読めないらしい。
もう一つの理由が、絆の指輪である。
この施設はGPSや無線などが壁を隔てると効果を発揮しなかった。
そのため、『SOSを発した仲間の位置がわかる』という効果を持っている絆の指輪を持っている命子たちは、捕まってもすぐに場所がわかる優秀なユニットだったのだ。
その代わりに、命子たち救出部隊には藤堂と滝沢のほかに、強い人が4人組み込まれる。
この施設の情報から今後の作戦まですっかり話し終わり、再び作戦が開始された。
作戦は自衛隊36人を6パーティに分け、そのうちの1つに命子たちが入る。ちなみに現在の自衛隊や各国の軍は、ダンジョン活動に合わせて1チームが6人編成の『班』になっている。
命子たちと最初から行動をともにしてくれていた静岡の自衛官は、モノリスの部屋で連絡係として待機である。
モノリスの部屋から1階廊下確保班(1廊下班)の自衛隊チームが飛び出していく。
「敵1体、接敵します!」
最初に出た自衛官がそう告げた直後、すぐさま戦闘に入った。
どうやら全員がスキルを覚醒させた日本屈指の精鋭部隊らしい。
「有鴨さん、そんなに強いんですか?」
まだモノリスの部屋にいる滝沢が紫蓮に尋ねる。
滝沢も三頭龍との戦いでスキルが覚醒しているし、なにより紫蓮の担当官だったのでこの場にいる。
「バカ強い」
無口系な紫蓮の言葉足らずな説明を受け、滝沢は命子へ視線を向けた。
「たぶん、本気を出されたらここの全員が普通に負けます」
「えーっ」
「マジかよ。でも本気は出さないと」
命子の言葉に、滝沢はのけぞり、藤堂は眉根を寄せた。
「レベルを合わせてくれてるんでしょうね。鬼ごっこっていうゲームにならなくなっちゃうし」
「地球さんの意志を感じるね。指導的なものが入っているのかもしれない」
やはりおぶさっている教授が言う。おぶさっているのにキリリとした顔だ。
ちなみに教授も命子たちと一緒に行く。連鎖的にさっきからずっとおんぶしてくれている自衛官も強制参加である。この人は南条さんという。
「もともと、この施設は別の研究をしていたはずなんだ。それは情報で得ているんだがね。それを鬼ごっこの施設に変更したなにかがあったはずだ」
「地球さんと話し合いとかですか?」
「まあそれはわからんが、なにせこの施設は1万2千年前から存在しているようだからね。星とコンタクトを取れるレベルの超文明の可能性はあるだろう」
「クリア!」
命子たちが話していると、1階の廊下が一時的に安全になった。
一行はすぐさま行動を開始する。
全力で走る中、今戦闘をした自衛官が戦闘の詳細を報告する。
まず言えるのはアホみたいに強いこと。
この中の誰も命子たちの強さを疑っていないが、それでもスーパーエリートを集めた精鋭部隊なのでいけるだろうと思っていた。
だが、相手の攻撃が始まれば防ぐので手いっぱい、反撃は不可能なレベル。攻撃は別の人がやらなければ無理というのが戦った感想だった。
命子とルルはそうだろそうだろと頷く。
そして、一回の戦闘で魔力の10分の1がなくなったそうだ。
鬼のバネ風船が出てくる頻度がわからないが、ずっと戦い続けるのは不可能と判断したようである。この件についてはすでに命子たちが報告しているので、準備が整い次第、おかわりの後続部隊が来る予定だ。しかも今回は仲間の位置がわかるアイテムを持って。
「あそこです!」
ゲートが見えたので、命子が叫ぶ。
続いて教授がおぶさりながら叫ぶ。
「番号を間違えないようにしてください!」
教授は非常に記憶力がいいため、すでにこの場の全員が未知の文明の数字表記を教わってメモしている。自分が入る番号の形も暗記済みだ。また、カプセルの操作方法も同じくメモ済みである。
ゲートフロア確保班(GF班)がまずなだれ込んでいく。
GF班は2パーティで、常にこのフロアを守ることになる。一番過酷な班である。
このなだれ込む一員の中に、GF班ではない命子も入っていた。
命子が4番目に入るとバネ風船との戦闘が今まさに始まろうとしていた。
バネ風船の猛攻を2人の自衛官が凌ぎ始めるが、それに構わず命子は【龍眼】を使ってバネ風船のおかわりゲートを注視する。
「あと43秒でおかわりがきます!」
「っ、了解!」
指揮官が嘘だろという心境を抑えて、全体に伝える。
しかし、指揮官のそんな心境とは裏腹に、戦っている人たちが口角をほんの少し上げているのを命子の良すぎる目はしっかりと捉えていた。「冒険してんなっ」と、「うむ」と頷く。
GF班が引きつけている間に、命子班はささらがいると思われる5階のゲートに到着した。
まず盾騎士の自衛官が入り、そのあとにどんどん続いていく。
命子と馬場だけは最後だ。命子は確かめなければならないことがあった。
「クリア!」
GF班がバネ風船を撤退させ、ゲートフロアをつかの間の安全地帯にする。
命子はその声を聞きながら、バネ風船がおかわりされるゲートをジッと睨みつける。
「あと5秒です! ……きます!」
命子の幼さの残る声とともに、ゲートからバネ風船が出てきて、すぐに活動を開始する。
「次は50秒後です! おそらく50秒刻みです!」
一回目は43秒と告げたが、あれは命子が4番目に入ったからだ。おそらくこのフロアに誰かが入ると、50秒のカウントダウンが始まるのだろう。もちろん一定ではない可能性があるので、その点はGF班も承知している。
「了解!」
命子はそれだけ告げて、5階へのゲートへ飛び込んだ。
現在、自衛隊は1階廊下班6人、GF班12人、2階探索班6人、3階探索班6人、命子班6人に分かれている。命子班には、命子、ルル、紫蓮、馬場、教授、南条さん、ウサギもいる。
各階の探索班は、バネ風船を撃破しつつ、各部屋を探索することになる。
命子が5階に入ると、藤堂が二刀流でバネ風船と戦っていた。
最近の藤堂の装備は、無限鳥居で買った戦装束風の和装の上にE級ダンジョンのボス製の黒い鎧を装着している。最近になってようやくE級ダンジョンのボスの装備が作れるようになったのだ。
おまけに頭に角が生えちゃっているものだから、命子は無双系ゲームのキャラみたいだなと思った。
しかし、ド派手な戦闘をしている藤堂だが、その全ては防御のために剣を振るっていた。
「ぬぉおおお……っ!」
藤堂は焦った声を上げながら、押され続けている。これは藤堂がハイワロなのではなく、このバネ風船と戦った者は誰しもが押され続ける。
しかし、人類最強という謳い文句がある藤堂が押されるのはどういうことか。
冷静に分析できる紫蓮と教授は、まさかと思った。
パーティの総戦闘力で手加減のランクが決まっているのでは、と。
「土槍!」
「クラッシュ!」
『土魔法使い』の魔法がバネ風船にバリアを使わせ、『斧使い』の武技がバネ風船に叩きこまれる。しかし、なにかがいけなかったのかクラッシュがバリアとパンチで弾かれる。
だが、バネ風船に隙が生まれたのを藤堂は見逃さなかった。
藤堂の角が真っ赤に輝く。
「焔の牙!」
二刀のロングソードに炎が宿り、バネ風船にエックス斬りを食らわせる。
「ふぉおおおっ!」
命子は目をキラキラさせて藤堂の必殺技に歓声を上げた。
しかし、攻撃を受けたバネ風船はケロッとしていつも通り復帰すると、アイコンを出してその場から消えていった。ノーダメージ感が半端じゃない。
「藤堂さん、申し訳ありません」
そう言ったのは、5階に先頭で入った盾職の自衛官だった。
攻撃を捌けずに吹っ飛ばされたため、代わりに藤堂が前面に立ったのだ。紫の炎を纏った盾職は、無限鳥居の首長竜の攻撃なら、盾で受ければダメージこそ貫通するがなんとか防げるので、このバネ風船もいけると思ったのである。
「攻撃を受けるのは無理そうだな。受け流しに徹してくれ」
藤堂はそう指示を出す。
「みんな、こっちデス!」
ルルの指示に従って、一行は廊下を走り出す。
命子は藤堂の隣を走って、今の必殺技について尋ねた。
「藤堂さん、今の必殺技なに? もしかして三次職が解放されてるの?」
「おう。俺は三次職が解放されたぞ。『剣豪』だな」
「マジかぁ。やっぱりマナ進化すると三次職が出るのか」
命子もマナ進化しているが、『魔導書士』の【魔導書解放 中級】がスキル化されていないため、上位ジョブが解放できていなかった。
しかし、その代わりに命子は種族専用ジョブの『小龍姫』に就いており、おそらくこれが藤堂よりも命子の方が【龍眼】の性能が高い理由だった。
「それであの必殺技が解放された『剣豪』の武技?」
「……あ、ああ、うん。そう」
「なるほど、自分で編み出した技を自分で名づけたんだね。焔の牙ぁ! 超カッコイイじゃん!」
「やめてくれぇ……っ!」
属性のマナ因子が覚醒すると、同じく覚醒しているスキルに乗せることができる場合があるとすでに判明している。藤堂はマナ進化したことで魔力の扱いに長けるようになったため、これを高い水準で使えるようになっていた。嬉しくて名前もつけちゃうほどだ。
以降、二刀流で繰り出される属性エックス斬りは、日本で『○○の牙』として長く愛されるようになる。
「あそこデス! にゃっ、もう一体いるデスか!?」
そうこうしているうちに、絆の指輪が示す位置までやってきた。
そして、廊下の向こう側からバネ風船もまた迫ってきていた。
「ここは俺らがやる! 命子ちゃんたちは救出を急げ!」
「お願いします!」
ルルがタッチした壁が開くと同時に、6人の自衛官がバネ風船と激突する。
部屋の中の作りは少し変わっており、教授がいた部屋はカプセルがいくつかの列を作っていたのに対して、この部屋のカプセルの並びは扇形だった。
そのカプセルの一つの中で、少しウェーブのかかった髪を広げて、ささらが静かに浮かんでいた。
「しゃ、シャーラァ!」
「ささら!」
「ささらさん!」
ルルと命子と紫蓮が走り出す。
近くで見たささらは、教授と同様に気泡を出しておらず、生きているのか判別がつかない。
「めめめめメーコ、いしょぐにゅしゅ!」
「ちょまっ、わかってるから落ち着いて! 液体呼吸、液体呼吸!」
「る、ルルさん、ステイ。液体呼吸!」
ルルが命子をグイグイ押すので、紫蓮が羽交い絞めにして落ち着かせる。
命子はすぐにタッチパネルを操作し始める。
「ふむ、ささら君の反応はやはり大きいのか……」
その隣で一緒についてきた教授が、タッチパネルに映っていた謎の仕様の心電図みたいなものを見て、呟く。
命子はすぐにささらを解放せずに、マナ進化の促進画面に移動した。
マナ進化の方向性はデフォルトになっており、その画面の一画では残り時間がカウントダウンしている。
「200万……約20日か。命子君、これがマナ進化の画面だね?」
「はい」
それだけ確認した命子は、すぐにささらの解放を進めた。
その隣で、13年と判断された自分との違いを教授は考える。
「シャーラァ、にゃぅう……メリスゥ……」
心配そうなルルの呟きが、室内に溶けていった。
読んでくださりありがとうございます!
ブクマ、評価、感想大変励みになっております。
誤字報告も助かっています、ありがとうございます。




