7-19 鎌倉ダンジョン攻略
本日もよろしくお願いします。
「さあ、久しぶりのボス戦だ! みんな気合を入れていくよ!」
「ふんすぅ!」
「頑張りますわ!」
「ニャウ! ぶっ飛ばしてやるデス!」
「私だって負けないわ!」
「「「「……」」」」
命子の気合に、仲間たちが体を熱くして共鳴する。
しかし、最後の馬場のセリフで命子たちは気勢を削がれた。
最近の馬場は命子たちに混じってキャッキャしまくっているため、テンションと声がずいぶん若くなった。厳しい自衛隊の生活で培ったキレが消失されつつあるのだ。
今のだって、アニメで使われるとしたら17歳くらいのキャラのノリだ。決して落ち着き始めたアラサーキャラでは採用されまい。具体的に言えば、「負けない」の「ま」「け」の間がちょっと伸びつつ弾む言い方である。
出会った頃は優しそうでカッコイイ大人のお姉さんだったのにな、と命子は両手で鞭をピシンと鳴らしながらふんすふんすとする馬場を見つめた。対する馬場は命子たちから見つめられ、好感度が上がった気配を肌で感じていた。
今回の命子たちは、鎌倉ダンジョンを制覇するために活動していた。
冒険者にF級ダンジョンの25層以降を禁止していた制限がなくなり、今回の探索では25層からこの30層まで降りてきたわけである。
「頑張ってください!」
ボス戦に向かう命子たちに、そう応援する声がかかった。
この鎌倉ダンジョンで出会ったVR動画を撮影していた女性たちだ。
冒険者協会の制限があったので、トップクラス勢はF級の25層で足止めを食らっていた。命子たちもそうだが、何回かかけて25層まで降りて、すぐにクリアできるようにしていたのだ。
そんなわけで、彼女たちも命子たち同様に解禁されてすぐに攻略に乗り出したのである。
ちなみに待ち合わせしていたとかではなく、この場にいるのはたまたまだ。
緑色の膜でエリアを仕切られたダンジョンのボス戦は合同チームで挑むことができないため、1パーティーずつで挑むしかない。命子たちは先行させてもらう形だ。
また、彼女たちの他にも自衛隊の調査員が3名この場にいる。冒険者の制限が解放されたわけだが、本当にこの改正が正しかったのか冒険者たちのボス攻略を見て、調査しているのである。
ボス階層は3パーティずつしか滞在できないので、これでこのDサーバーは満席だ。
「それじゃあ、また地上で会いましょう」
「ちょっと馬場さん。それはフラグですよ」
さらりと口にした馬場に、命子と紫蓮があわあわし、ルルはぷぷーっと笑った。
昨今のアニメでは、先輩が手本を見せている最中に酷い目に遭うフラグパターンも多い。それが適用された場合、つまりは自分たちが酷い目に遭うということ。それでVRお姉さんたちは膜の外で「そんな!」などと言って絶望するのだ。
命子と紫蓮はほわほわーんとそんな様子を思い浮かべて、首をぶんぶん振って嫌な想像を振り払った。
気を取り直して五人は緑色の膜を越える。
鎌倉ダンジョンのボスはでっかいカニである。
――――――――――
『平家ガニ』
青い甲羅の周辺に武者鎧を纏う巨大なカニ。武者鎧を外したフォルムはベンケイガニに近い。
ただし、一対の大きなハサミの他にさらにもう一対の小さなハサミを持つ。4つのハサミがあるのだ。小さなハサミは器用な動きを、大きなハサミは主となる攻撃を行う。
纏っている武者鎧はダンジョンによるデザインだという指摘があり、実際に鎧を粉砕すると散らばった鎧の破片を無造作に体にくっつけて防御力を高める習性がある。本来は鉱石を体に着けるのではないかと推測される。
ほぼ移動しない受け身のボスだが、大ハサミ攻撃は素早く、前後反転する際のジャンプはかなり俊敏。
必殺技は『石壁』。攻撃ではなく防御の技。3秒で3メートルほどの強固な壁を作り上げる。石壁は必ず自身を中心に120度の扇形となって出現し、3回使われると高さ3メートルの円形の城壁が完成してしまう。
この壁を上がる術がない場合はボス撃破が不可能になるため注意が必要。またこの壁の上までハサミ攻撃は届くので、もたもたとよじ登るようならば絶対に出直すこと。
攻撃力はF級のボスの中でかなり低い部類だが、その反面、防御力が非常に高いうえに前述の石壁があるため、このボスは戦闘スキルだけでなく総合的な能力が必要になる。
余談だが、このネーミングは、鎌倉のボスであり武者鎧を纏っていることから、自衛官がシャレでつけた。その自衛官は現実にその名のカニが存在すると知らなかったと後の供述で判明。以降、学術名は『D・平家ガニ』となっている。
――――――――――
「食いでがありそうですわね」
「じゅるり」
命子たちは各々が武器を構える。
ささらと紫蓮の呟きでも聞こえたのか、平家ガニは8本の脚を怒らせて甲羅を少し高くすると自分を大きく見せた。
平家ガニはすぐに『石壁』を使い、自身の周辺に防御壁を作り始める。
「散開後に魔法攻撃!」
命子のかけ声とともに、全員が一斉に動き出す。
命子とささらはボス右へ、紫蓮とルルはボス左へ、そして馬場はそのまま石壁に向けて直進する。
「風弾! マジックフック!」
馬場が風弾を放ち、そのすぐ後にその風弾に向けて【鞭技・マジックフック】を放った。
マジックフックは物体に鞭を絡める、もしくは鞭をぴたりとくっつけることができ、主に空中移動を目的とした補助技である。
最近では馬場の【鞭技】も覚醒し、その物体の適応範囲が自身が放った魔法にも及ぶようになった。今まではなにもない平野などでは死にスキルだったのだが、覚醒したことによってかなりの機動力を得ることになった。
鞭に巻きつかれた風弾はすぐに消失してマジックフックは支えを失うが、消失する前に風弾が生み出した勢いで馬場は空中を飛び始める。
風弾とマジックフックをもう一度使用して、馬場はあっという間に平家ガニの頭上を取った。
「風弾! 風弾! よっと!」
魔法を2連打した馬場は、空中で身を捻るとさらにもう一度風弾を放って、それに向かってマジックフックを使用し、魔法攻撃を食らいながらも真下で大ハサミを構えていた平家ガニの攻撃範囲から退避する。
「「「キャー、カッコイイ!」」」
緑の膜によって馬場の耳には届かないが、ボスエリアの外でVRお姉さんたちが大騒ぎしている。
空中で舞うように戦う秘書官衣装の馬場は、紛れもなく素敵女子であった。
「覚醒した『鞭使い』って強いな」
「あんなふうに空を移動したら気持ちよさそうですわね」
命子とささらも移動しながらチラリと馬場の活躍を見て、凄く羨ましく思った。
しかし、手を広げすぎるのも問題だしなかなか難しいところである。ぶっちゃけ羨ましいジョブはかなり多いので、時間がいくらあっても足りなかった。そんな命子の『魔導書士』だって、世の中の人からすると凄く羨ましいジョブの一つだったりする。
そうこうしている間に、平家ガニの側面に出る。
すでに反対側ではルルと紫蓮が側面に辿り着き、火弾と氷弾を放ちまくっている。
いくつかヒットさせるものの、石壁の出現とともに遮られてしまう。
「水弾、火弾!」
「風弾ですわ!」
今度は命子たちが魔法を放つ。命子の角がピカピカと光り、本来は魔法使いの魔法よりも弱い魔導書魔法がメンバーの中で随一の効果を生む。
ちなみに、この中で命子だけが『小龍姫』をジョブにしているため、命子の魔法は【魔導書解放】を由来にしている。他のメンバーは『見習い魔法使い』系のため普通の魔法である。
多くの魔法で平家ガニの武者鎧はボロボロになり、青い甲羅が露出し始めている。
だが、露出したそばから小さなハサミが鎧の破片を拾い上げてせっせと体にくっつけて防御力を向上させていく。
「こいつが無限鳥居のボスだったら絶対に勝てなかったな」
平家ガニは、石壁、武者鎧、そして甲羅と三重の防御を持っているボスだ。攻撃力はヤマタノオロチ幻影体よりもずっと低いが、平家ガニはただただタフだった。当時の命子たちでは火力不足で討伐は不可能だっただろう。
「性質がカウンタータイプですから、負けはしなかったでしょうけどね」
命子の呟きにささらが答える。
勝てず、負けず、きっと命子たちは無限鳥居のボスエリアで暮らすことになっただろう。そして、近くの石壁の中でボスがずーっとじっとしているのだ。かなりシュールである。もっとも、あのダンジョンは夜になると性質が変わるので、ボスエリアに滞在できるのかは疑問だが。
そうこうしているうちに、命子たち側の石壁も完成して、平家ガニを守護する要塞ができあがった。
しかし、今の命子たちにたかが3メートル程度の壁は意味をなさない。
すぐに馬場が空中から魔法攻撃を始め、その隙にルルが壁の上へ飛び乗って攻撃に加わる。
ルルと馬場が囮になっている間に、紫蓮は壁を一つ蹴って片手を壁の上に引っかける。蔵の中で大人しくしていた頃の紫蓮だったら涙目でぷらーんとするしかなかっただろうが、今の紫蓮は片手で少し反動をつければ、そのままシュタッと石壁の上に登れてしまう。
「自分から鍋に入ったカニ」
石壁の上に立った紫蓮は、円形の石壁の中の様子を見てボソッと感想を言った。
ルル、紫蓮、馬場が石壁の上に立ち、魔法を放ちまくる。
それに対して平家ガニは2本の大ハサミで攻撃してくるが、それを回避できないメンバーはこの中にいなかった。
一方、最後の壁が出現したサイドにいる命子とささら。
ささらは素早さのステータスが高いので、ルル同様にあっという間に上ってしまう。
命子はまだシュババと上れるようなステータスではないので、魔導書を使う。
マナ進化した命子は、2冊の魔導書を交互に足場にすることでやろうと思えばいくらでも高いところに登れるようになっていた。怖いのでやらないが。
魔導書を配置して、ポンポンポンと三角飛びをしてひらりと石壁に上がる。これもまた見る人が見れば非常にスマートなアクションだろう。
5人が星型の頂点を描く配置で立って、壁の下に魔法を放ちまくる姿はかなりえげつない絵面である。まるで名軍師の策略の結果による作業風景のようだ。
今回の戦いではほぼ魔法しか使っていないが、ささらたちは武技スキルを使用しないことに決めていた。
各々が覚醒した武技スキルを使えば、防御力特化の平家ガニと言えども瞬殺だからだ。それはきっと一切経験値にならないだろう。なので、未熟な魔法を使って倒している。
石壁の上で5人は平家ガニの攻撃を回避しながら魔法を放つ。
大ハサミでの攻撃をルルが側転しながら回避すれば、その側転で移動した分だけ全員がぐるりと石壁の上を移動する。
平家ガニが前後をスイッチするためにジャンプして身を捻る。その際にもののついでと言わんばかりに大ハサミを薙ぎ払ってくると、5人はその攻撃を上へ下へと回避する。
それは、まるでキャンプファイヤーを囲んでダンスしているかのような奇妙な戦闘だった。しかし、平家ガニを倒すうえで、この奇妙な戦闘風景はどのパーティでも起こり得ることだった。壁の内側に下りて戦うのは、平家ガニがボディの全てを駆使してくるため一番難易度が高いのだ。
「動きが止まって見えるぜ」
【龍眼】を使う命子は、大ハサミをスッと回避する。
この二週間は暇さえあれば【覚醒・イメージトレーニング】を使って修行に明け暮れていた。
E級の魔物と2倍速で戦ったり、海外のボス情報を仕入れてみんなで戦ってみたり、命子たちの練度は急激に上がっていた。
もはや平家ガニなどザコでしかない。
フラグなので口には出さないが、全員がそう思っていた。
そして、特にフラグが具現化することもなく、ほどなくして甲羅に亀裂が入り、ルルの氷弾が内臓に達する。これによって一気に戦闘は終焉に向かった。
石壁の内側でボスが光の柱を立たせながら消失し、5人が立つ魔法の石壁も消えていく。
あとに残されたのは、青い巨大なカニの脚と腕、そして魔石だった。
「ひゃっふーい!」
「我らの勝利」
「シャーラやったデス!」
「うふふ、もうルルさんはー」
命子と紫蓮がパシンとハイタッチし、ルルがささらにおんぶしてほっぺをくっつけて喜ぶ。
そんな命子たちの様子を、馬場が期待を込めた視線で見つめる。
馬場はわーいと最年長者の自分に群がってくる少女たちを想像していたのだ。
「ピキーン!」
最近多くの人と関わって接待術が向上している命子が、馬場のキラキラした瞳からそんな心境を読み取る。
「馬場さん、やったねぇ!」
「え、えへへ、やったわね、命子ちゃん! あはは、あははは!」
命子は馬場と両手を繋ぎ、くるくる回りながら喜びを分かち合った。
ニッコニコな馬場のテンションと声はまた少し若返った。あと少しすればウィンシタで女子高生に混じってほっぺの横にお団子を作れるレベルに到達する。いや、もうなっているかもしれない。
ひとしきり喜んだあと、VRお姉さんたちが次に控えているのでリザルトの確認をする。
まずはボスドロップだ。
落ちたのは、巨大なカニの脚と腕、あとは大きな魔石。
脚と腕については戦った時よりも小さいが、普通のカニの物に比べればはるかに巨大だ。脚など伸ばせば1メートルはある。
「平家ガニのドロップは武具になる。だけど、食べることもできる。これはどちらかしか選べないけど、我は食べたい」
生産職の紫蓮が珍しくそう主張した。
「紫蓮さんが素材で使わないなら、ワタクシも食べてみたいですわ」
「あらっ、もしかしてささらちゃんはカニが好きなの?」
「ババ殿、シャーラのお家に泊まるとカニのお味噌汁がよく出てくるデス。5回泊まれば3回はカニのお味噌汁デス。カニ、しじみ、カニ、お吸い物、カニデス」
「ちょ、ルルさん、ワタクシの家の夕飯事情を……も、もう。その、お恥ずかしながら大好きなんですの。実は母もなんですわ」
「笹笠さんが……」
馬場はほわほわーんとささらママが真剣な顔でカニの身をほじくる姿を想像して、萌えた。まあ、笹笠家の味噌汁のカニは出汁用の身が細いものなので、馬場のイメージとはちょっと違うのだが。
とまあこのように、ダンジョンのボスドロップは必ずしも武具の素材になるばかりではなかった。中には料理に使える物も存在する。というよりも料理人用の素材なのだろう。
続いて、宝箱さんのチェックだ。
ささらのカニ好きの会話に入らなかった命子だが、その視線はついさっき出現した初クリア報酬の宝箱さんと仲間たちへ交互に注がれていた。
ここで命子はサーベル老師の秘技を使用してみることにした。体を少しだけ宝箱のほうへ傾けるのだ。するとそれに敏感に気づいた紫蓮が、「我もカニの味噌汁好き」と話に乗り始める。
「みんな、外で他の人が待ってるから早く場所空けよ?」
命子は注意した。
そんなこんなでいつも通り命子は特等席に座り、宝箱を開ける。
「さぁ今回のはなんじゃらほい!」
中に入っていたのは、特段代わり映えせずに、ダンジョン通貨のギニーとレシピだった。
ただ、レシピは未発見のものだったらしく当たりだ。命子としては大満足である。
「マッサージスーツのレシピ」
レシピを解読した紫蓮が、そう説明する。
「へぇ、それは……どういうの?」
マッサージ屋さんに行ったことがない命子だが、ごわごわした服装で施術できないというのは理解できるので、マッサージを効果的に受けるための正装なのかなと思った。ボディラインがくっきり出る感じだ。
しかし、そういうものではなかった。
「ラバースーツみたいなのに魔力を込めると、ラバースーツが良い感じに体を揉み解してくれるらしい」
「やだ、なにそれ超欲しい!」
馬場が物凄く食いついた。
「じゃあ、我、馬場さんに作る。あと滝沢さんにも」
「ホント、紫蓮ちゃん!?」
「ぴゃ、ぴゃわー」
馬場にぐいぐい来られて、紫蓮は目を白黒させた。
「それでは、みなさん頑張ってください!」
ダンジョンボスを倒すと、控えの間には戻れない。
なので緑の膜を挟んでVRお姉さんたちを激励して、命子たちは黄金のゲートの中へ入って地上へ戻った。
地上では冒険者たちが列を作ってゲート入場を待っていた。
最近ではF級ダンジョンにアタックする冒険者がかなり増えたものの、レベル教育を行なっている風見ダンジョンのような常時鉄火場の入場風景ではなく、かなり余裕が見られる。
だから、黄金の光が立つと入場が一時止まり、全員が注目してきた。
スマホを構える人たちを見てハッとした命子は、いそいそとリュックを下ろしていつものやつを始めた。
「魔を見破りし龍眼をその身に宿すは大小龍姫 羊谷命子!」
命子は今日のために名乗りを考えてきた。最近のささらたちはカッコイイ名乗りを使い始めたので、負けていられなかった。大なのか小なのかは不明な龍姫である。
そうして、命子は目と角を無駄にぴかーっとさせて、魔導書を待機状態にさせる。
「炎の彼方に闇を見よ。深淵に座する焔の化身 有鴨紫蓮!」
命子の隣で指先から『種火』を出現させてカッコつける紫蓮。
火弾はさすがにマズいので、【火魔法】で他に覚えられる種火を使用。
「我が権能は万物を永久の眠りに誘うデス 戦猫ナッガーレ・ルル!」
ルルは本日一切使わなかった忍者刀をこの場で抜いて、冷気を放出させた。
【氷魔法】のもう一つの魔法は『氷生成』なのだが、ポロポロ落としちゃうのでこの演出である。
なお、ルルは難しい日本語がわからないので、実はささらママに考えてもらっている。ルルはささらママも大好きだった。
「さあ歌い舞え、この魂が司るは旋風の調べ! 笹笠ささら!」
もはやささらも慣れっこだ。
【風魔法】の『そよ風』を使用して、全員の髪と服をふわりとはためかせ、観衆の鼻腔に女の子の香りがふわりと直撃する。
「風の名を聞くがいい 我こそは嵐を呼ぶ用心棒 馬場翔子!」
そして、最近若くなったと評判の馬場も名乗りを決める。
命子をボスと考えるのなら、それを囲む四天王の中に風属性が2人いるバランスの悪さよ。たぶんどちらかは四天王最弱。
「我ら魔導五傑衆! 古の都に巣くいし化け物ガニを討伐せり!」
命子の口上とともに、五人が体の各所から紫のオーラをぶわりとさせる。
命子だけ【覚醒・イメージトレーニング】のちっちゃな炎だ。イメージしたのはバネ風船。キメポーズの最中だが、今も着々と近づいてきている。
なお、魔導五傑衆の中で純粋な魔法スキルを覚醒させているメンバーは誰もいない。
スマホで激写される中、命子たちはぺこりとお辞儀するとその場を立ち去った。
それと同時に、冒険者たちはメモを始めた。
実は最近、名乗りが流行っていた。
日本では中二病が痛いと思われやすい文化だったので、まずは海外で爆発的に増えたのだが、これをやるのとやらないのとではSNSのフォロワー数が二桁変わるレベルの効果があった。
冒険者の時代になって日本人も恥ずかしいとか言っていられない状況になり、カッコイイものに限らず、いかにして人の心を掴む名乗りを上げるかが、ネットで稼いでいる人たちのプロモーションのキモになっていた。
それはさておき。
こうして、命子たちはF級ダンジョンを攻略するのだった。
読んでくださりありがとうございます。
ブクマ、評価、感想、とても励みになっております。
誤字報告も助かっています。ありがとうございます。




