5-10特殊 夏の夜の夢
明けましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いします。
この回は本編に何も関わりはありません。
「命子さん、明けましておめでとうございますわ。本年もよろしくお願いいたします」
「え?」
三つ指をついて新年の挨拶する赤と金がゴージャスな振袖姿のささらに、命子は困惑した。
「メーコ、あけおめめデース! ことよろろんデスよ?」
「えぇ!?」
命子の斜め後方で、緑が目立つ振袖姿で三つ指をつくルルが、新年の挨拶をしてくる。
「羊谷命子、また年が明けた。これもまた宿命か……今年もよろしく」
「ふぇええ!?」
さらに命子の斜め後方で、紫と金色の上品な振袖姿で三つ指をつく紫蓮が。
「し、しまった、囲まれた!?」
トライアングルアタックだった。
「っていうか、え? しん……ねん? 今は夏休み……えぇ?」
うぅううう、と頭を抱える命子は、うんと頷き、開き直った。
「みんな、明けましておめでとうございます! 本年もよろしくお願いします! ひゃっふーい!」
そう言った命子も気づけば白とピンクの振袖を着ていた。
トライアングルを構成する3人にペコペコと頭を下げていく。
命子が頭を下げると3人はにっこりと笑って、シュバッと両腕を左右に広げた。
そして、大きな動作でガシーンと頭の上でネコミミを作る。
開き直った命子だったが、再び混乱した。混乱しすぎて指遊びが始まる。
「「「地球さんよ、目覚めの時ぞー」」」
3人によりそんな呪文と共に、ゴゴゴゴゴッと命子の足元が盛り上がる。
気づけば命子は富士山の上にいた。
アニメチックな富士山だ。命子一人分しか足場がないうえに、未だトライアングルする3人が近くでちょこんと座っている。
しかし、普段見下ろされる側の命子からすれば実に良い景色であった。頭が低いぜ!
「ピーヒョロロロロロロ!」
そんな命子の下へ、奇声を上げながらメリスが飛んできた。
なぜかくちばしをつけている。
そしてその上には萌々子が乗っていた。
「おねえちゃーん! これで決めてぇーっ!」
「フィニッシュブローは任されたぁーっ!」
萌々子は命子に何かをぶん投げた。
命子は慌ててそれをキャッチする。
「にゃもー」
「うぇえええ!?」
ニャモロカであった。
命子は混乱した。これで何をどうフィニッシュしろって言うのか。
ハッとして気づけば、トライアングルが萌々子とメリスを加えてペンタゴンになっている。
さらに全員がニャモロカを抱っこしていた。
「「「「「にゃもー」」」」」
5人がニャモロカを頭上に掲げる。
命子は、うむ、と大仰に頷き、自分もニャモロカを頭上へ掲げた。その周囲では魔導書がぐるぐると回っている。
「にゃもー」
すると、遥か地平の先から美しい朝陽が昇った。
「これぞ、天地創造なり!」
「「「「「わーっ!」」」」」
命子の高らかとした宣言に、5人が快哉を叫んだ。
「ふぅわっ!?」
命子はカッと目を見開いた。
命子を包む雪山用シュラフの上で、命子の起床に驚いてキスミア猫が顔を上げた。
「こいつめ、お前のせいで変な夢見ちゃったぞ!」
「にゃー(めんぼくねえ)」
「おっ、口答えか!?」
「にゃにゃーん(理不尽の極み)」
「もうほら、そこは重いから枕元へおいで」
まだ見張りは交代の時刻ではないので、二度寝することにした。
「ふぅ、まあ縁起が良い夢だったかな。これぞ天地創造なりっつってな、なんだそれ」
雪ダンジョンでの夏休みの一夜であった。
読んでくださりありがとうございます。