ガアナルシの思い
(視点ーガアナルシ)
私は最近奇妙なことに悩まされている。それは我が息子である次男のマドゥが異常だと言うことだ。
長男であるガルナが滅多にない突然変異種だったため、私はガルナに力を入れて教育していた。幼いにも関わらず魔物の狩り方を学ばせたり、魔法の使い方を教えていた。そのせいで次男のマドゥには長女のマルナの子守をさせていたのだが、どうもマドゥは変な子供だった。
まず1つ目に2歳という歳で流暢な言語を話していた。確かにガネルシア族は成長速度が早く2歳になれば言語を話せるがそれでも一語文だったりニ語文だ。しかしマドゥは早くして大人と変わらぬ言語を理解して話しているようだった。
そして2つ目に魔法を見せると目をキラキラとして近づいてきて、魔法についてやたらと聞きたがってくる。魔法に興味を抱くのはいいのだがガルナのこともあるため、私はマドゥにいつもはぐらかすのだがある時からマドゥは書庫にこもり、見ない間になぜか角が伸びているのだ。それも成人した大人と同じくらいまで角を伸ばしていた。
周りの者たちは私の家から突然変異種と4歳にして大人と同じ長さの角を持つ天才が生まれてきた奇跡の一家と呼んでいる。
それは非常に喜ばしいことなのだが問題はマドゥはあまり外に出ず、書庫に籠もってはマルナと一緒に本を読み続けるだけなのだ。マドゥはもっと集落の友達と仲良くするべきだし、このままではマルナまで内気な子に育ってしまうのではないかと不安だ…。
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「マドゥ!本を読むのもいいが、少しは外で遊んできたらどうだ?お前と同じ年に生まれたナーヤちゃんもマターくんも外に居るし遊んできなさい!」
よしよし、俺はついに言ったぞ。母さんは子供の好きなようにすくすくと育てましょうと言っていたが全く家から出ないなんて子供としてどうなんだと思う。これで良かったはずだ…。
「…マルナはどうするのですか?」
マドゥが痛いところをついてくる。
そう、今まで何度か外で遊んでもらおうとしたがマルナのことがあり、上手く逃げられていた。
マルナを母さんに子守をさせればいいと思い、やらした時、マルナはずっと泣いて、マドゥが来るまでひどい癇癪を起こしていたのだ。
「くっ…、しかしマドゥ!たまには外に出て身体を動かさないと狩りの時に魔物にやられてしまうかも知れないぞ。こういった外で遊ぶということは将来に繋がる大切な事だ。今できる時にやらねば後悔すると思う。そんなマドゥを俺は見たくないんだ。分かるな、マドゥ。」
「その事でしたら大丈夫です、お父さん。僕はすでに魔法を扱うことが出来ますし、しかも最近分かったのですが全身に魔力を通すとその魔力量に比例して身体強化されるんです!!僕の魔力量もまだまだですがもっと多くの量を身体に流せば更に!」
「ちょ、ちょっと待て、マドゥ!分かった分かったからいったん落ち着け!……うん?魔法が使えるだと…?ど、どういうことだ!?魔法の使い方なんて教えてないはずだぞ!」
「ええ、ですから本を読んで必死に練習して習得しました。」
「な、なに!?マドゥ、お前、絵本を読んでいたんじゃないのか!?マルナに絵本を読み聞かせているのかと思っていたが…。」
「……もういいですか?僕は魔法についてもう少し調べたいので失礼します。」
「あ、おい!待て、マドゥ!!……そうだ、お前の身体強化がどこまでなのか知るためにも今日の狩りに付いて来い。そこで文句なしと判断したらこれからも魔法について知識を深めるといい。だが、もし未熟と判断した場合はこれから俺たちと一緒に狩りに来てもらう…。いいな?」
「……分かりました。力が充分と分かればいいんですね?」
「あ、あぁ…。」
と、とりあえずは今日の狩りに連れ出すことが出来た。これで兄のガルナに触発されて、外で遊ぶようになればいいのだが、正直不安だ…。